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静岡県、熱海土石流の開示文書に不鮮明加工か コピーだけでは再現不可

 熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土(残土処分場)が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、2007年の行政対応を記したカラー文書を静岡県が白黒化して不鮮明な状態で開示していた問題で、元のカラーの行政文書を白黒コピーしただけでは判読できない状態にならないことが10日までの印刷技術の専門家への取材で分かった。専門家は「手を加えているのは明らかだ」と指摘していて、県が開示に際し文書を加工していた疑いが浮上した。

静岡県が当初開示した白黒の文書。不鮮明で何が写っているのかほとんど分からない
静岡県が当初開示した白黒の文書。不鮮明で何が写っているのかほとんど分からない
静岡県の行政文書(元のカラー文書)。砂防指定地の標識を撮影した写真が掲載されているのが分かる
静岡県の行政文書(元のカラー文書)。砂防指定地の標識を撮影した写真が掲載されているのが分かる
元のカラー文書をコピー機を使って白黒にした文書(記者作業)。複数回コピーしても、県が 開示した白黒文書と異なり、判読できる
元のカラー文書をコピー機を使って白黒にした文書(記者作業)。複数回コピーしても、県が 開示した白黒文書と異なり、判読できる
静岡県が当初開示した白黒の文書。不鮮明で何が写っているのかほとんど分からない
静岡県の行政文書(元のカラー文書)。砂防指定地の標識を撮影した写真が掲載されているのが分かる
元のカラー文書をコピー機を使って白黒にした文書(記者作業)。複数回コピーしても、県が 開示した白黒文書と異なり、判読できる

 文書を保管していた県熱海土木事務所は取材に「白黒のコピーを複数回行い、画像処理は一切していないと開示当時の職員から聞いている」と説明した。
 問題の文書は、土石流起点の逢初(あいぞめ)川上流域から泥水が流れ出したことを受けて現地調査した07年4月の記録。盛り土が規制対象になると記された砂防指定地の標識や泥水を撮影したカラー写真が掲載されていた。県は今年2月、情報公開条例に基づく本紙の請求に応じて開示したが、元の文書がカラーだと説明せず、写真に何が写っているか読み取れない状態の白黒の文書を提示。その後、本紙の再三の指摘でカラー文書を再開示した。
 印刷会社で長年の勤務経験があり日本印刷技術協会講師を務める石塚晃さんに行政文書を提供し、分析を依頼した。石塚さんは「通常のコピー機は自動判別して写真がつぶれない設定になる。(県が当初開示した文書は)白っぽい部分が黒くなっていることが不自然だ」と解説。白黒コピーやスキャナーだけで判読できない状態にならないことや、文書の明るさとコントラストを一定の値に変えると不鮮明な状態になることを再現し確認した。「(県は)画像処理しているはずだ」とコメントした。
 情報公開制度に詳しいNPO法人情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は「不自然に解像度が落ちている。裏写り防止のためにコピーを繰り返す可能性はあるが、該当箇所は繰り返しコピーする必要はない」と述べた。
カラー⇒白黒はなぜ? 静岡県の説明、二転三転  静岡県はなぜ、熱海土石流のカラーの行政文書をわざわざ白黒にして開示していたのか―。川勝平太知事が4月の記者会見で、白黒化の経緯を調査する方針を表明して約2カ月たつが、担当者の説明は二転三転している。不自然な白黒化で判読できなくなった文書は他にも多数あるとみられる。
 県は当初、容量に制約があるホームページ(HP)に開示文書を掲載するとなればカラー文書はデータ量が大き過ぎるため、白黒にしてデータ量を小さくしたと説明していた。ところが、取材でカラー文書でもHPに掲載できていたことが分かると「当時の担当者がHPの容量を確認しないまま、白黒でなければ掲載できないと思い込んでいた」と説明を変えた。
 「本庁の担当者が画像処理をしてカラーを白黒に変えた」とも説明していたが、現在は「県熱海土木事務所の職員が白黒にした。本庁の担当者の思い違いだった」「(担当部署に)白黒専用のコピー機しかなかった」と改めている。
「情報の隠蔽」に該当 識者指摘  元静岡市情報公開審査会委員の前山亮吉静岡県立大教授(政治学)の話 元の文書に手を加えていたとすれば情報公開の趣旨から逸脱した「情報の隠蔽(いんぺい)」に明白に該当する。情報の隠蔽は、本件のように重大な結果を引き起こした事態に照らし、許されるべき行為ではなく、県の情報公開に関するモラルの低さを露呈している。

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