社会部 大橋弘典
おおはし・ひろのり 2002年入社。これまでに在住外国人問題や産科医不足問題、全国学力テスト教材問題、リニア大井川水問題、熱海土石流残土問題などのテーマを取材。「参院選、野党激突に『官邸介入』」「熱海土石流、上流砂防規制放置 20年前から国と静岡県」などの記事を報じた。 熱海土石流災害 追っかけ一覧ページ|あなたの静岡新聞
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「適応指導教室」進まぬ改称 文科省が変更推奨も 静岡県内温度差、当事者「自分は不適応なの…」
不登校の子どもの受け皿になっている学校外の公的な支援拠点「適応指導教室」の名称変更が県内で進んでいない。文部科学省は保護者からの「違和感がある」などという声を踏まえて2019年度に「教育支援センター」に変更し「適応指導教室」の使用をやめた。自治体に対しては「改称が望ましい」(同省担当者)としているが、県内では「適応指導教室」を使い続ける市町があり、対応が分かれている。 「自分が不適応だと言われているようだった」。不登校経験のある県内の男性(20)は当時を振り返る。不登校の子を支援する関係者の間には「呼び方が通常の教育体系から外れていることを表している」などと受け止める声も根強い。 「適
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不登校でも「学校」に行かせるべき?(2) 関係者インタビュー【賛否万論】
法的な縛りがなく活動の自由度の高い民間のフリースクールが、小中学校に通えない子どもの受け皿として注目を集めています。学校とは異なる空間で子どもの自己肯定感を高め、心のリハビリの場になっています。ひきこもりの支援に長年携わり、2020年に静岡市葵区で不登校の中高生向けに居場所を提供する「きみのスペース まんま」を開設した黒川彩子さん(43)に、子どもが不登校になる背景やフリースクールの実情を聞きました。 (社会部・大橋弘典) 黒川彩子さん 一斉教育の限界が来ている ひきこもり支援経験のあるフリースクール代表 黒川彩子さん フリースクールの定義や位置づけは。 定義は特に決まっていませ
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女性のセカンドキャリア考える 「経済自立」に高い関心 静岡市葵区でセミナー【70歳の壁 シニア雇用を考える】
シニア世代の就労を促す静岡市の官民連携組織「誰もが活躍推進協議会」がこのほど、セカンドキャリアについて考える女性向けのセミナーを同市葵区の静岡商工会議所で開いた。女性に特化して企画したのは初めてで、40代後半から60代の女性21人が受講。定員を上回る応募が寄せられ、関心の高さを示した。主催者側は「子育てを終えた女性の自立意識の高さが背景にあるのでは」としている。 シニアの雇用事情に詳しいリクルートジョブズリサーチセンターの宇佐川邦子センター長が「70歳の自分を想像し、働き方を変える」をテーマに講師を務めた。キャリア形成について「子育てのために仕事をやめるなど、これまでの人生でいろいろな選
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熱海土石流の判読不能文書 濃度上げ白黒化「意図的」 記者立ち会い再現実験で静岡県認める
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡りカラー行政文書を静岡県が不適切に開示した問題で、判読できなくなっていた白黒の開示文書は複写機で濃度を引き上げて作成された可能性が高いことが27日までの県の再現実験で分かった。川勝平太知事はこれまで「(文書を複写した職員は)特殊な処理は行っていない」と説明し濃度設定に言及していなかったが、県の調査担当者は再現実験を踏まえ、職員が意図的に白黒化や濃度の引き上げをしたと認定した。 再現実験は24日に県熱海土木事務所で行われ、記者が立ち会った。複写機で元のカラー文書を1度白黒コピーした上で、スキャナーの「白黒・文字モード」に設定して濃度
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フリースクール、経営難や周知不足が課題 静岡県内の小中学校、不登校は1学級1~2人 重み増す受け皿
静岡県内で小中学生の「不登校」が増加する中、不登校の子の受け皿になっているフリースクールの経営難や周知不足が課題になっている。他県では行政が財政支援する動きも出てきているが、本県には補助制度はなく、保護者へのフリースクール情報の提供を拒む公立小中学校もあるという。フリースクール関係者からは行政支援を求める声が上がっている。 県教委によると、公立小中学校で年30日以上欠席(病気は除く)した「不登校」の児童生徒は、直近の統計がある2021年度で8030人(小学校2642人、中学校5388人)。単純化すると1学級に1、2人いる計算になる。また、約2千~3千人がフリースクールを含む関係機関とつな
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不登校でも「学校」に行かせるべき?① 広がる「受け皿」選択肢【賛否万論】
全国的に増加傾向にあり、ネガティブに捉えられがちな「不登校」ですが、従来の「学校」に無理に行かせない選択肢が広まりつつあるとも言えます。その受け皿になっているのが小中学校段階のフリースクールや高校段階の私立通信制高校。フリースクールや私立通信制高校の現状を紹介し、いわゆる「学校」以外の選択について考えます。 (社会部・大橋弘典) フリースクール 自己肯定感高める 小中学校段階で不登校の子どもの受け皿になっている「フリースクール」の定義は決まっていません。学校教育法で定める「学校」(1条校)ではなく私塾と同じ位置付けで法的な縛りはないため自由度が高く、教育方針や活動に幅があります。呼び方
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川勝知事、盛り土災害再発防止へ「検証漏れないよう指示」 熱海土石流の行政対応巡り
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り静岡県が行政文書を白黒化して検証が不十分になった問題で、川勝平太知事は9日の定例記者会見で、盛り土災害の再発防止を目的に進めている内部検証作業で、再度の検証漏れがないように事務方に指示していることを明らかにした。「検証漏れがあってはいけない。(記者から)問題提起されたものは一つ一つチェックしてもらっている」と強調した。 熱海土石流の行政文書を巡っては、文書開示の担当職員がカラーの行政文書を白黒化したことで、崩落地そばに設置された集水用の穴など分水嶺(れい)付近の乱開発の状況が分からなくなり、行政対応と技術的な発生原因の二つの第三
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熱海土石流 盛り土崩落地そばに集水用穴 判読不明文書に写真
熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、約20年前の無許可開発時、盛り土崩落地のそばに雨水を地下に浸透させる集水用の穴が設置されていたことが8日までの県や複数の専門家への取材で分かった。県が白黒化して判読できなくなっていた行政文書などに記載されていた。専門家は、分水嶺(れい)付近に穴を掘るなどの乱開発で逢初川源頭部は隣の流域から水が集まる場所になったとし、当時、源頭部で盛り土を強く規制しなかった県の対応を問題視した。 県や市の行政文書によると、穴は逢初川とその北側を流れる鳴沢川の分水嶺付近にあり、市の非公表文書の図面には2カ所記されていた。県が
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熱海土石流巡り判読不明だったカラー文書分析 土石流災害に詳しい技術士・坂本学さん 分水嶺開発で集水域拡大
熱海土石流を巡り、静岡新聞社の指摘を受けるまで判読不明だったカラーの県行政文書の開示によって、盛り土造成前の乱開発の実態が明らかになってきた。伊豆大島の土石流災害の調査に携わった技術士(森林土木)の坂本学さん(60)に文書の分析を依頼し、熱海土石流の原因や教訓を聞いた。 -カラー写真などから、土石流の起点付近に浸透枡とみられる集水用の穴が造られていたと分かった。 「驚いた。普通は、こんな崖っぷちに浸透枡を造らない。地中の水圧が上がって斜面が緩くなって崩れやすくなる可能性がある。地中に浸透した水がどこに流れたのか行き先が分からないのも気になる。標高の低い逢初(あいぞめ)川(源頭部左岸)に流
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熱海土石流 白黒化、黒塗り… 静岡県の不適切な文書開示 山積する疑問 十分な調査せず【ニュースを追う】
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、静岡県の行政対応を記録した文書の不適切開示問題を本欄「ニュースを追う」で取り上げて半年。カラーの行政文書が白黒化されて一部が判読できなくなったり、開示されるべき情報が黒塗りされていたり、不適切な対応の実態が取材を通じて明らかになった。県の不自然な説明に次々と疑問点が浮かぶ一方、関係職員へのヒアリングなど文書白黒化の経緯を県は十分調査しておらず、都合の悪い情報を出し渋る県の姿勢は変わっていない。 (社会部・大橋弘典) 「白黒問題は先ほど知事が一件落着にしたじゃないか。調査はおしまい。外部に対して(の説明)も
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砂防規制放置問題 再検討文書に静岡県職員「早急に編入必要」のメモ 熱海土石流
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、逢初(あいぞめ)川上流域で砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」の指定が放置された問題で、上流域で乱開発が始まる前の1998年の静岡県行政文書に「(流域を)早急に指定地に編入する必要がある」という職員のメモ書きがあることが8日までに分かった。開発の開始前に県が規制力の強い砂防法を適用する必要性を認識していた可能性がある。 ただ、県が県議会の要請で進めている内部検証の経過報告書でメモ書きの記載は抜け落ちていて、検証されるのかは不透明だ。 この文書は「砂防指定進達範囲の再検討について」のタイトルで、国から上流全域を盛り土規制区域に
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静岡県砂防条例罰則強化 懲役2年以下、罰金100万円以下
静岡市日向、杉尾地区の砂防指定地に造成された全国最大級の無許可盛り土問題を受けて、県は4日、砂防指定地管理条例を来年4月に改正し、条例としては最も厳しい「懲役2年以下または罰金100万円以下」に罰則を強化する方針を明らかにした。業者に対する行政処分の命令内容を公表する規定も明文化する。 県議会建設委員会で鍋田航平河川砂防管理課長が明らかにした。 同条例は砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」内の制限行為や行政手続きなどを定めているが、現行の罰則は「懲役1年以下または罰金2万円以下」。川勝平太知事は2月の記者会見で「(業者が)逮捕されるような案件になったので(罰則強化を)検討する余地はある」
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熱海土石流 静岡県、検証委員にも白黒文書 重要な情報判読できず
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、開発行為への対応を記したカラーの行政文書を静岡県職員が複写機で白黒化し不適切に開示していた問題で、静岡県が行政対応検証委員会(第三者委員会)の委員に送付した行政文書も白黒化されていたことが3日までの県などへの取材で分かった。元の文書で色分けされていた開発区域などが分からなくなっていた。 川勝平太知事は「(検証委は)独立した組織だから、私どもで何か判断して、資料に対していじくるとかは一切していない」と述べており、説明内容と実態が食い違っている。 県などによると、検証委の初会合が21年12月22日に開かれた際、委
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静岡・清水区34・9度 全国1位の暑さ 県内4地点で10月の最高更新
静岡県内は1日、高気圧に覆われて晴れ、南の海上から暖かい空気が流れ込んだ影響で、各地で軒並み30度を超えて季節外れの暑さになった。静岡市清水区の最高気温は34・9度と平年より9度高く、全国1位の暑さだった。同区を含め県内4地点の最高気温が10月の観測史上最高を更新した。 清水区は9月28日の最高気温が36・0度となり、観測史上最も遅い猛暑日を記録したばかり。10月に入っても記録的な高温が続いていることを印象付けた。 気象庁によると、1日の最高気温は熱海市網代31・9度、東伊豆町稲取31・6度、松崎町31・0度でいずれも10月で最も高く、平年を5~7度ほど上回った。このほか、静岡市駿河区で
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記者コラム「清流」 「ネットが現実」の幻想
対話形式で指示や質問を繰り返して文章を作る生成AI「チャットGPT」をテーマにした取材で、専門家に生成AIの仕組みを聞いた。生成する文章はインターネットの情報を基にしているので、ネットにない情報は「現実にないもの」と見なされるという。 ネットに掲載されていない重要情報は山ほどある。ネットの情報が全て正しいとも限らない。例えば、熱海土石流の原因解明につながる行政文書。数千ページがネットに掲載され、県や市は「情報を隠さない」と強調していた。しかし、取材してみると肝心な文書が掲載されなかったり、掲載した文書も肝心部分が判読できなくなったりしていた。 AI専門家からは「検証者としてのメディアの役
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熱海土石流「盛り土規制区域 砂防法以外で可」 静岡県、再検証せず出先機関に通知
盛り土規制区域の指定に当たり、静岡県が砂防法以外の規制力の弱い法令を優先しても構わないとする内容の通知を今年3月に各土木事務所に送っていたことが26日までの県への取材で分かった。盛り土崩落で28人が死亡した熱海土石流に関する県独自の区域指定の考え方に基づいて通知を出したと説明しているが、県に法的責任はないとしたこの考え方は県議会から再検証を求められ、妥当かどうかの結論が出ていない。 通知は3月9日付で、砂防課が作成した。砂防ダムの上流域が他の法令で規制区域になっている場合、砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」に指定しなくても構わないという内容。 砂防ダム下流域の人家を土石流から守る目的の
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「あなたの年齢では雇えない」 年齢不問とあるのに...有名無実の求人票、差別では? 静岡県内で不満絶えず
「年齢不問」の求人票を見て企業に問い合わせたら「あなたの年齢では雇えない」と言われた―。こうした事例が多発し、静岡県内のシニア求職者の不満が絶えない。背景にあるのは求人の年齢制限禁止が中途半端な「労働施策総合推進法」。労働者の多様な事情に応じて雇用の安定などをうたう法律だが、一方で“雇用側の事情”を容認する例外も幅広く適用され、実効性が伴っていない。ハローワークは企業に人物本位の採用を呼びかけるなど啓発に力を入れるが、シニアの「年齢差別」は続いている。 静岡県内のハローワークには「年齢不問」と書かれた求人票が数多く張り出されているが、仕事を探している男性(71)がぼ
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熱海土石流 担当者、カラー提出指示 判読不能の行政文書 川勝知事の説明と矛盾
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、静岡県のカラーの行政文書が白黒化され判読できなくなっていた問題で、県法務文書課(現法務課)の職員が2021年に開示文書を作成した際、文書を保管する関係各課にカラーでの文書提出を指示するメールを送っていたことが21日、複数の県関係者への取材で分かった。 職員が対象の文書にカラーが含まれると認識していたことを示すやりとりで、「職員がカラーだと気付かなかっただけで、隠す意図はなかった」としてきた川勝平太知事の説明と矛盾する。県がカラーではなく白黒で文書を開示する方針をどのように決めたのか、経緯の解明が焦点になる。 関係者によると、
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庁内調査ずさんさ露呈 職員聴取の記録なし「推論で報告」 静岡県の開示文書判読不能問題
28人が死亡した熱海市伊豆山の土石流災害を巡るカラーの行政文書が静岡県職員の複写機の設定変更によって白黒化されて判読できない状態で開示された問題で、経緯を調査した県法務課が、開示作業を担当した職員の聴取記録を作成していなかったことが18日までの県への取材などで分かった。同課は担当職員への聴取をしないまま、川勝平太知事に「推論」で文書問題の調査結果を報告したとも説明していて、県による庁内調査のずさんな実態が浮き彫りになっている。 知事は疑問視せず 静岡新聞社が職員の聴取内容を記録した資料を情報開示請求したところ、県は「不存在」と通知した。同課は取材に対し、詳細な記録を残していないことを認め
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オクシズショップ 静岡・浅間通りに開店 土産物店リニューアル
静岡市葵区の浅間通り商店街に15日、同市北部の中山間地「オクシズ」の素材で作られた食品や雑貨などを取り扱うコンセプトショップがオープンした。観光売店などを展開する静鉄リテイリング(同区)がオクシズへの訪問客増加を目指し、従来の土産物店「静岡いいとこ浅間通り店」をオクシズ商品に特化する形にリニューアルした。 オクシズ産のクルミや山桜などで作ったスプーンやフォーク、箸、ペンダントを並べたほか、DIY用にヒノキやクリなどの木片も格安で販売。若者向けに趣向を凝らした包装デザインのモッツァレラチーズやスモークナッツなどの商品も取りそろえた。 従来は市内産の銘菓やプラモデルを店頭に置いていたが、改装
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生成AIを学校現場で使うのはあり?④有識者インタビュー【賛否万論】
文章などを自動的に作成する生成人工知能(AI)の登場に対して学校現場はどう対応すべきなのかをテーマとして取り上げています。前回までは生成AIや情報モラルに詳しい専門家に意見を聞いたり、生成AIの使い方をイメージしてもらおうと記者がAIで作った記事を紹介したりしてきました。今回は県教委の教育方針を決めるキーマンの一人で教育監の塩崎克幸さんにインタビュー。県教委が作成した生成AIのガイドラインにも触れながら、生成AI活用の在り方や今後想定する教員の対応について聞きました。 (社会部・大橋弘典) 教員の校務省力化に有効 県教委教育監 塩崎克幸さん チャットGPTを実際に使ってみた感想があれば
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生成AIを学校現場で使うのはあり?③ チャットGPTに記事を書かせてみた【賛否万論】
近年急速に進化を遂げる生成AI。教育現場での新しいツールとして注目される一方、どのように使えば良いのか分からない教育者も多いでしょう。1、2回目は生成AIの基本的な仕組みや情報モラルについて有識者に聞きました。多くの学校関係者が未体験のこの技術ですが、学校の授業や活動に取り入れることができるのでしょうか。3回目は具体的な活用事例を紹介し、賛否を議論する材料にしてもらいます。 ※この記事の文章と見出しは、上のリード文も含めて、記者がチャットGPTを使って作成しました。 AI記者が紡ぐ教育の未来 ■生成AIでの読書感想文の挑戦 読書感想文は学校教育の一環として、多くの児童生徒が経験する課題
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静岡県職員、複写機設定変更認める 熱海土石流巡る開示文書の判読不能問題
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、静岡県が開示した行政文書の一部が読み取れなくなっていた問題で、発災直後に文書の開示作業を担当した法務文書課(現法務課)の職員2人が県の調査に対し、複写機の通常設定を白黒で濃度が濃くなる設定に意図的に変更し、元のカラー文書から白黒の開示文書を作成したと認めていることが4日までの県への取材で分かった。県法務課は「(職員2人の対応を)不適切だった」と認め、「被災者や開示請求者に申し訳ない」と陳謝した。職員の独断かは分かっておらず、組織的な関与の有無が今後の調査の焦点になる。 法務課「対応は不適切」 同課によると、2021年度の情報
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生成AIを学校現場で使うのはあり?有識者インタビュー②【賛否万論】
学校の夏休みが終わりましたが、読書感想文や自由研究など夏休みの宿題に生成人工知能(AI)が悪用されるのではないかと一時、全国的に物議を醸しました。県教委によると、授業での本格的な活用はこれからですが、学校生活に限らず、日常のさまざまな場面で生成AIが使われていく可能性があります。今後、私たちは生成AIとどのように向き合っていけばいいのでしょうか。情報モラル教育が専門の静岡大教育学部准教授の塩田真吾さんに考え方や留意点について聞きました。(社会部・大橋弘典) 学習目的を考えることが大切 静岡大教育学部准教授 塩田真吾さん 教育委員会や学校から生成AIの利用に関する問い合わせはありますか。
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生成AIを学校現場で使うのはあり?有識者インタビュー①【賛否万論】
情報技術が飛躍的に進化する中、人間と会話しているかのように応答できる対話型の生成人工知能(AI)が登場し、教育界にも衝撃を与えています。夏休みの宿題に利用されるのではないかとも話題になりました。文部科学省は夏休み前の7月、暫定的なガイドラインを各教育委員会に通知しましたが、生成AIを使ったことがなかったり、利点や欠点をよく知らなかったりする教員や保護者が多いのが実情です。学校現場でどのように活用すべきでしょうか。まずは、生成AIに詳しい静岡大情報学部の狩野芳伸准教授(情報理工学)にその仕組みや特性について聞きました。(社会部・大橋弘典) 仕組みは〝ものまねマシン〟 静岡大情報学部准教授 狩
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谷に倒木埋めた可能性 熱海土石流の崩落起点、20年前開発の業者 県指導記録なし
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流の起点で、20年前に無許可開発していた業者が大量の倒木を谷に埋めた疑いがあることが26日までの取材で分かった。白黒化して判読できなくなっていた静岡県の行政文書に記されていた。20年前に土砂崩れが起きた箇所とみられるが、県が業者に木を除去させた記録は文書になく、そのまま盛り土が造成された可能性がある。専門家は「土の中から、木のような有機物を取り除くのは常識だ。腐って水が通りやすくなり、崩れやすくなる」と危険性を指摘している。 県が2003年3月に作成した行政文書(D55)の「無許可部現地状況」という項目に「谷状になっている箇所に倒木が
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熱海土石流 静岡県内部検証 訴訟部分を除外 委員会初会合、再発防止は強調
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、県所管法令の行政対応の検証が不十分だとして静岡県議会から再検証を求められた静岡県は19日、関係部署の課長らを集めて内部検証する庁内検証委員会の初会合を県庁で開いた。委員長の内藤信一総務局長は再検証の目的として再発防止を強調した一方で、遺族や被災者から起こされた訴訟に関係する部分を再検証の対象から除外する方針を明らかにした。 県に規制権限のあった開発行為などに関係する法令(砂防法、森林法、土砂災害防止法、都市計画法、廃棄物処理法、県土採取等規制条例)について、再検証を求めた県議会の報告書で指摘された論点とともに、その後の報道で
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静岡県53文書未提出 熱海土石流巡り裁判所に 逢初川無許可開発関連
2021年に盛り土崩落に伴い28人が死亡した熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り遺族や被災者が県などを相手に損害賠償請求した訴訟で、県が裁判所に提出していない逢初(あいぞめ)川源頭部の無許可開発に関連する文書が少なくとも53種類に上ることが18日までの取材で分かった。裁判所は盛り土造成の経緯が分かる文書の提出を県に求めたが、県による文書の分類が不正確だったため提出されなかったとみられる。 無許可開発に関連する53文書は03年2月から05年10月にかけて県が作成したり業者から受理したりし、20年前に逢初川源頭部で起きた土砂崩れも記録されていた。複数の専門家はこの土砂崩れと21年の大規模土石流の関
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高齢者の労災リスク最小限に ヒヤリ・ハット共有、改善 体調管理で事故防ぐ【70歳の壁 シニア雇用を考える】
シニアを雇用する上で企業が気にするのは、身体機能や認知能力の低下に伴う高齢者ならではの労災リスクだ。シニア雇用に力を入れる静岡県内の企業では、ヒヤリ・ハットの改善を徹底したり、従業員とのコミュニケーションを密にしたりして、労災リスクを最小限に抑える工夫をしている。シニアにとって働きやすい環境の整備は、年齢に関係なく誰もが働きやすい職場にもつながるという。 運送業の浜名梱包輸送(浜松市浜北区)は65歳定年だが、継続雇用を毎年更新すれば最長86歳まで働ける制度がある。60歳以上でも積極的に採用する一方で労災事故対策を徹底する。 倉庫で返品される荷物の整理作業を担当するパートの金指峰代さん(
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行政の検証逃れ 県庁守って人災防げず【再生 道半ば 熱海土石流2年㊦】
ちょうど1年前、熱海市の伊豆山小で行われた土石流災害の追悼式。28人の犠牲者の名前が読み上げられた後、川勝平太知事は参列した遺族を前に意気揚々と誓った。 「いたましい災害が二度と起こらないように、県を挙げて命を守る安全な地域づくりを推進していく」 ところが、トップの発言と裏腹に県の組織で、再発防止に必要な行政対応検証を避ける「検証逃れ」が繰り返されていたことがこの1年に明らかになった。 業者の悪質な開発行為に厳しい規制が可能な砂防法を適用しなかったことに関しては、行政対応検証委員会(第三者委員会)に関連情報が提供されず、ほとんど検証されなかったことが発覚。批判を受けた県は昨年7月末、「
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熱海土石流 静岡県、20年前の土砂崩れ箇所 不鮮明な白黒文書で開示
1日までの静岡県への取材で確認された、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で20年前に起きた土砂崩れ箇所やその写真は、不鮮明に加工された疑いのある県の行政文書(D55やD64)に掲載されていた。元の文書がカラーだったのに県は当初、白黒化して開示していた。D64の地図上に示された土砂崩れの範囲は元の文書に赤い枠線があったが、白黒文書では目立たず、「崩壊箇所」と書かれた文字も判読しにくくなっていた。 D55やD64の白黒文書に添付され、「雨水流出部」「崩壊箇所」などと説明が付いた無許可開発区域の写真は黒く塗りつぶされたような状態で何が写っているか分からなくなっていた。 県は行政対応検証委員会(第
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乱開発で20年前土砂崩れ 静岡県は説明せず未検証 熱海土石流起点
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、逢初(あいぞめ)川源頭部左岸の土石流起点で20年前に乱開発が理由とみられる土砂崩れが発生していたことが1日までの静岡県への取材で分かった。県はこれまで説明せず、土石流後に設置した二つの検証委員会や裁判所に情報提供していなかった。専門家は「1度崩落した場所で滑りやすくなっていた」と指摘。土砂崩れ箇所にはその後、崩落した盛り土が造成され、この部分の崩落が下流域の多くの住民を巻き込んだとみられる土石流最大波のきっかけになった可能性がある。 土砂崩れの範囲が記載されていたのは03年5月の県の文書(D64)。北側の鳴沢
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熱海土石流 他文書も不鮮明加工か 静岡県「白黒コピーの結果」
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した土石流を巡り、情報公開条例に基づき県が開示した行政対応文書が不鮮明に加工されていた問題で、これまでに加工が判明していた2007年4月の文書(A283)以外にも複数の開示文書が不鮮明に加工された疑いがあることが29日までの取材で分かった。土石流起点の分水嶺(れい)付近で03年に明らかになった無許可開発の写真を掲載した文書などで、黒く塗りつぶされて何が写っているか読み取れない状態の文書が21年10月に開示されていた。 県は白黒コピーした結果、判読できなくなったと主張しているが、再現して確認していないという。静岡新聞社が元のカラー文書を通常のコピー機
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熱海土石流 不鮮明加工の行政文書 川勝知事「注意不足が原因」
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、行政対応を記した静岡県の公文書(A283)が行政対応検証委員会(第三者委員会)で検証されず、不鮮明に加工された状態で開示されていた問題について、川勝平太知事は27日の定例記者会見で、現時点で判明した調査結果を踏まえて「(担当職員が)作業に追われていてこうなった。注意不足が原因だ」と述べた。ただ、問題の文書がどの時点で加工されたのかは示さず、調査を継続する方針を明らかにした。 川勝知事は、問題の文書が検証されなかった点に関しては「類似の事実が(検証委に提出された)別の文書で出ている」と説明し、検証結果に影響は与
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無許可開発、分水嶺改変か 逢初川上流域に及んだ疑い 熱海土石流
熱海市伊豆山で28人が死亡した盛り土崩落に伴う土石流を巡り、20年前に隣接流域で行われた都市計画法違反の無許可開発が分水嶺(れい)を改変し、土石流起点の逢初(あいぞめ)川上流域に及んでいた疑いがあることが26日までの取材で分かった。この無許可開発は、想定を上回る水が逢初川流域に流れ込む流域変更や、崩落した盛り土の造成につながった可能性があるが、当時行政対応した県は土石流後に設置した二つの検証委員会に情報を提供せず、行政対応面でも技術面でも検証されていない。 本紙の指摘を踏まえて県が4月、黒塗りを解除した文書(D27)に無許可開発の区域が記されていた。文書には、県の許可を受けず土地を造成した
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熱海土石流巡り、不鮮明な重要文書 第三者委に未提出で検証されず 静岡県「見落とし」主張
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土(残土処分場)が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、白黒化して一部判読できない状態で開示された静岡県の行政文書が、県の設置した行政対応検証委員会(第三者委員会)に提出されず、検証されていなかったことが24日までの県への取材で分かった。同文書内では、検証委が重点的に検証した県土採取等規制条例(権限は市)の規制の実効性を疑問視していたほか、より厳しい規制ができる砂防法(権限は県)の開発規制区域「砂防指定地」の標識を撮影した写真も掲載され、黒く塗りつぶすような加工がされていた。文書データを保有していた県の担当者は「(データを保管したパソコンの)フォルダー
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検証結果 文書提出で異なった可能性 熱海土石流【記者の目】
静岡県が行政対応検証委員会(第三者委員会)に提出しなかった文書(A283)は複数の重要な情報を含んでいた。重要情報が欠けたまま検証作業をした影響は大きく、必要な情報を提供されなかった委員、さらには原因究明や再発防止を願う被災者に対する背信行為と言っても過言ではない。 この文書でまず注目すべき点は、検証委が重点的に検証する法令として選んだ県土採取等規制条例に関する記載。規制力の弱い同条例の対応では決め手にならないという文言が繰り返され、当時、他の法令での対応を検討したことが分かる。委員が文書を読んでいれば重点検証の方針が変わっていたのではないか。 文書には、砂防法の開発規制区域「砂防指定地
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慢性的人手不足の建設業 風穴あけるか 静岡の企業、人間力見て積極採用【70歳の壁 シニア雇用を考える】
生産年齢人口の減少で空前の人手不足が続く中、その代表業種とされる建設業でシニアの活用や人材獲得の取り組みが進んでいる。「きつい」イメージがある業界だが、シニアを積極採用する企業は若手と異なる仕事を切り出し、高齢でも体力的に対応できるように配慮。求職するシニアに直接会って人となりを見極めるなど「年齢の壁」を取り払う工夫を重ねている。シニア雇用に積極的な静岡市の企業の事例を追った。 同市を拠点にする菅野工業は昨年10月以降、シニアを重視した雇用戦略に力を入れるようになった。菅野敬介社長(38)は「70歳以上の人を敬遠する企業もあるが、自分は年配の人の力も借りたい」と明かす。採用を判断する際は「
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シニア雇用 年齢で判断されるのはあり?③ 有識者インタビュー【賛否万論】
企業側は空前の人手不足なのにシニア世代が再就職を断られるケースが相次いでいます。年金が目減りして仕事探しを余儀なくされるシニアもいる中で、こうしたミスマッチの解消には何が必要なのでしょうか。全国のシニア雇用の事情に詳しいリクルートジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子さん(53)に聞きました。 企業も思い込みなくして リクルートジョブズリサーチセンター長 宇佐川邦子さん Q 年齢を理由に仕事が制約されると感じているシニアが多いですが、解決する上でのポイントを教えてください。 企業側の感覚としては定年を前後にどこまで働いてくれるかを考えた時、できるだけ長く働ける若い人がほしくなるので、今
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「想定外」少ない年金 仕事探す定年退職者 生活維持へ余儀なく【70歳の壁 シニア雇用を考える】
「年金が思ったほどもらえない。仕事をしないと」―。定年退職後にパート・アルバイトを掛け持ちしたり、探したりしている県内の60、70代が口をそろえる。全国調査でも、年金をもらえるはずの世代で多くの人が仕事をしたい理由に「生計維持」を挙げ、老後生活を支えるはずの年金に頼れず、働くことを余儀なくされる実態が浮かび上がっている。県内のシニアからも年金額への不満と生活不安の声が聞こえてくる。 リクルートが3月に実施した全国意識調査(複数回答可)によると、70代前半の約4割が「(できる仕事の)年齢幅が狭い」と回答する一方、約3割が仕事をしたい理由として「生計維持」を挙げた。60代後半も男性の42・2
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シニア雇用 年齢で判断されるのはあり?② 有識者インタビュー【賛否万論】
シニア雇用を考える上で、年金などの老後資金と働き方は切り離せない関係です。健康維持や社会とのつながりを持つという理由で仕事を探すシニアもいますが、年金が目減りする中で生計維持は仕事の大きな動機になっています。ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の小田切克子さん(53)=浜松市中区=に老後資金の観点から年金と働き方の在り方について聞きました。(社会部・大橋弘典) 年金繰り下げ上手に活用を 社会保険労務士 小田切克子さん Q 2019年に「老後資金2000万円問題」ってありましたよね。金融庁の報告書で老後は2000万円必要になるとされ、騒動になりました。あの問題は何だったのでしょうか。
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静岡県、熱海土石流の開示文書に不鮮明加工か コピーだけでは再現不可
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土(残土処分場)が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、2007年の行政対応を記したカラー文書を静岡県が白黒化して不鮮明な状態で開示していた問題で、元のカラーの行政文書を白黒コピーしただけでは判読できない状態にならないことが10日までの印刷技術の専門家への取材で分かった。専門家は「手を加えているのは明らかだ」と指摘していて、県が開示に際し文書を加工していた疑いが浮上した。 文書を保管していた県熱海土木事務所は取材に「白黒のコピーを複数回行い、画像処理は一切していないと開示当時の職員から聞いている」と説明した。 問題の文書は、土石流起点の逢初(あいぞ
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シニア雇用 年齢で判断されるのはあり?① 有識者インタビュー【賛否万論】
仕事を求める70代が増えています。物価高や現役世代減少の影響で年金が目減りし、老後資金が確保できるのか不安感が高まっているようです。しかし「高齢」を理由に再就職を断られるケースは多く、自信を喪失したシニアの「ひきこもり」も問題視されています。しずおかジョブステーション東部のベテラン就職相談員、野中和夫さん(70)にシニアの雇用状況の実態や課題を聞きました。 「経験こそ強み」と気付いて しずおかジョブステーション東部 ベテラン就職相談員 野中和夫さん 再就職できないシニアの中には「年齢差別ではないか」と受け止める人もいます。 差別か区別かは受ける側の問題なので難しいですね。年齢で切ら
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「差別では?」年齢で不採用後絶たず 求職者不満【70歳の壁 シニア雇用を考える】
年齢による差別では―。求職するシニア世代が年齢を理由に企業側から採用を拒否される事例が県内で後を絶たない。物価高や現役世代の減少に伴い年金が目減りする中、老後資金に不安を感じる70代から「年齢だけで判断されるのはおかしい」という声が上がっている。特に70代は健康状態の個人差が大きく、マッチングが難しいとされる。シニア雇用の実態を探った。 「実は弊社は70歳以上は採らない方針なんです」。県内に住む男性(70)はある企業の採用担当者と面談した際に打ち明けられた。表向きは「年齢不問」だった企業。その場では言えなかったが「年齢差別では。物価が上がっても年金はそんなに上がらない。働きたい人が働ける
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下多賀の不法盛り土 期限内に撤去せず 熱海土石流の旧所有者
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩落した盛り土を含む土地を2011年まで所有していた神奈川県小田原市の不動産管理会社が、熱海市下多賀の保安林に造成した不法盛り土に関して、静岡県の復旧命令に従わず、県の設定した今年3月末の期限内に盛り土を撤去していないことが、1日までの関係者への取材で分かった。県は行政指導や行政処分を繰り返しているが業者側が応じないため、担当者が5月31日に同社の代表に直接会い、早期の履行を改めて要請した。 この不法盛り土は森林法の盛り土規制区域「保安林」に造成された。県が17年1月に許可したが、許可範囲外にも土砂が搬入されていたため、同年4月には行政処分に当たる中止命令を出し
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盛り土規制法施行 危険渓流への適用必須に 熱海土石流教訓
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流災害をきっかけに制定された盛り土規制法が26日、施行された。集落の上流域に急勾配のある沢「土石流危険渓流」に造成された盛り土(残土処分場)が崩落して28人が死亡した大惨事を教訓に、従来は自治体の判断に任せていた土石流危険渓流の規制区域設定は必須となり、危険渓流の盛り土に厳しい規制が適用される。山間部以外でも規制区域内は「土砂の仮置き」に許可が必要になり、建設工事の元請け業者は土砂搬出先の許可確認が求められる。 規制区域は山間部を中心にした「特定盛土規制区域」と、平地や市街地が対象の「宅地造成工事規制区域」の2種類で、今後、都道府県や政令市が基礎調
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盛り土規制法 自治体へ指針 代執行手続き簡素化 国交省策定
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流災害を受けて新たに制定された盛り土規制法の運用方法を議論してきた国土交通省の有識者検討会は17日、都内で会合を開き、不法・危険な盛り土に対応する自治体向けの指針を取りまとめた。26日の法施行を前に、造成業者に対して強制的に是正を求める行政処分や業者に代わって是正する行政代執行を躊躇(ちゅうちょ)なく実施できるように通常の手続きを簡素化する方法を盛り込んだ。 熱海土石流では県や市が盛り土(残土処分場)の違法性や危険性を認識して業者を指導した時期もあったが、行政処分をせず、放置された盛り土が崩落して28人が死亡した。自治体が不適切な盛り土を把握しても
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2011年に違法性認識 熱海市と静岡県、「第三の盛り土」公文書記載 非公表説明と矛盾
熱海市伊豆山の大規模土石流起点近くに残されている「第三の盛り土」が「不適切盛り土」として公表されていなかった問題で、市と県が2011年に盛り土造成の違法性を認識し、行政処分を検討していたことが15日、市や県の当時の公文書の記載で分かった。違法性を認識していなかったために公表しなかったとする市や県の説明と矛盾が生じている。 公文書によると、「第三の盛り土」の造成地は、神奈川県小田原市の開発業者が都市計画法と森林法の許可を受けていたが、09年10月に工期が切れた。その後、切り土の計画地を盛り土したり、大量のダンプが廃棄物交じりの残土を運び込んだりして、市と県は計画通りに施工されていないことを認
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熱海土石流起点付近 第三の盛り土「不適切」箇所に含まれず 擁壁崩壊、土砂流出後も放置
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流の起点近くに残されている「第三の盛り土」が、静岡県の公表した「不適切盛り土」163カ所に含まれていなかったことが12日までの市や県への取材で分かった。この盛り土は10年以上前に擁壁が崩れ、土砂流出も発生しながら放置されていたが、市は「不適切」に該当しないとして県に報告していなかった。 県は、許可を受けた際の開発計画と異なっていたり崩壊が発生していたりする盛り土を「不適切盛り土」とし、各市町の把握している情報を集約。4月下旬に地番などの位置情報や位置図をホームページで公表した。各市町は盛り土総点検などで把握した箇所を県に報告。熱海市は21年の
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がんなど治療・予防へデータ活用提唱 静岡済生会病院 臨床検査技師ら確認 50年保管検体でも遺伝子解析可能
静岡済生会総合病院(静岡市駿河区)臨床検査技師らの研究グループが、50年前から病院に保管されてきた検体で、病気の治療や予防に役立つ遺伝子解析ができることを確認した。研究を主導した斎藤彩香さん(43)は「経年劣化していたが、方法次第で50年前の検体からも遺伝子の情報を得られる。その意義は大きい」と、がんなどの治療や予防に向けて各病院での検体の保存方法改善やデータの活用を提唱している。 同病院はがんなどの患者から採取して病理検査に使った組織の塊(ブロック)をろうに固めて検体として保管してきた。約50年間に作成された検体は90万個以上と推定されるが、温度や湿度が管理されていない倉庫で保管されてい
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静岡・日向の盛り土 権限曖昧で行政処分見送り? 06年は「本庁」→10年は「土木事務所」 命令遅れ巨大化
静岡市葵区日向の盛り土規制区域「砂防指定地」に無許可で造成された巨大な盛り土を巡り、県が2006年に残土処分会社への行政処分を見送っていた問題で、行政処分の決裁権限が不明確になっていたことが9日までの取材で分かった。権限を定めた当時の決裁規程で県砂防指定地管理条例の行政処分の項目が抜けていて、本庁と出先機関のどちらが最終判断するのか曖昧になっていた。決裁規程の不備が処分の見送りに影響した可能性があり、県は経緯を調べている。 出先機関の静岡土木事務所の公文書によると、同事務所の職員は05年12月、本庁の担当者から「事務決裁上、行政処分の権限が事務所長にある」と説明を受けたが、06年1月、事
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記者コラム「清流」 「万機公論」はどこへ
「広く会議を興し、万機公論に決すべし」―。川勝平太知事は「五箇条の御誓文」を事あるごとに引用し、全国学力テスト結果公表、リニア中央新幹線工事の大井川水問題などを巡って情報公開とオープンな議論を重視してきた。その姿勢は県民の評価につながったと言えるのではないか。 しかし、未曽有の人災と言える熱海土石流災害ではどうだろうか。急斜面に造成された盛り土(残土処分場)が崩れて28人が犠牲になって2年近く。県は情報開示や検証を限定し、「万機公論」には程遠い。 ある識者は「検証の徹底は県にとって短期的に試練でも長期的にはプラスになる」と言う。川勝知事は県議会から要請された再検証に応じていないが、全容解
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熱海土石流 知事「判読不能なら問題」公表方法見直し 行政文書白黒化
熱海土石流で崩落した盛り土周辺の開発行為に関するカラーの行政対応文書を静岡県が白黒化して一部が判読できない状態で公表していたことについて、川勝平太知事は13日の定例記者会見で、白黒化する公表方法に関し「知らなかった。(公表した文書の内容が)何か分からないのであれば問題だ。分かるようになっていないといけない」と述べ、内容が分かるように公表方法を見直す考えを示した。白黒化の経緯を調査する方針も明らかにした。 行政対応文書は2021年7月の土石流発生直後に各報道機関などが県情報公開条例に基づき開示請求し、開示文書と同じ文書が約3カ月後に県ウェブサイトに掲載された。しかし、元々はカラーの文書も白黒
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シニア人材は「即戦力」 人手不足で活用注目 富士の企業、技能見える化し派遣
人手不足を背景に50~70歳代のシニア層の人材活用に注目が集まる中、富士市の人材派遣会社「アイ・ブロード」がシニア層に特化した人材派遣事業に取り組んでいる。シニア人材から経験を丁寧に聴き取って役立つ技能を引き出し、人手不足に悩む企業に即戦力として送り出している。担当者は「経験やスキルが明確になるとマッチングしやすい」と説明する。 配電盤を製造する「誠電機」(沼津市)に昨年7月から派遣されている長田淳さん(64)=裾野市=はパソコンで設計図を作る。電気関係の仕事が長く「体力的にも問題ない。60代のうちは働き続けたい」と意欲を燃やす。求人を出しても手応えがない状態が続くという誠電機の杉山周彌社
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静岡県の対応 再検証応じず 知事、県議会要求に 熱海土石流
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流を巡り、川勝平太知事は28日の定例記者会見で、県議会から求められていた行政対応の再検証に応じない方針を明らかにした。県が設置した検証委員会(第三者委員会)から県に再検証を直接要請されていないことを理由に挙げ、今後については「訴訟の場に委ねていい」と説明した。 検証委は県職員OBで構成される事務局の意向によって、検証対象を限定したり、議事録のない会合を開いたりしていて、県所管法令の検証が不十分だと県議会から指摘を受けていた。 川勝知事は、再検証が行われるべきだとした県議会の報告書の内容を確認したとした上で、「これまでの対応で十分だと考えている。検
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静岡・日向の盛り土 2006年に指導も 罰則弱く、是正応じず 県は厳罰化せず放置
静岡市葵区日向地区の開発規制区域「砂防指定地」内の無許可盛り土を巡り、造成した残土処分会社が2006年に県から是正指導を受けた際、県砂防指定地管理条例の罰則の弱さを理由に対応しなかったことが25日までの取材で分かった。県はその後、厳罰化せず、熱海土石流の原因とされる同時期の開発行為に砂防条例を適用していない。一方、14年に盛り土崩落事故が起きた大阪府は翌15年に条例を改正して罰則を強化していた。 県は06年1月、砂防条例に基づき「一刻も早い是正に向けて、話し合いに応じられたくお願い致します」と記した文書を同社に送付。危険状態を放置した場合の対応も「1年以下の懲役または2万円以下の罰金に処す
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土砂対策に一定評価 熱海土石流、警戒区域解除向け 静岡県検討委見解
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、有識者や国、市と構成する県災害対策検討委員会は23日、最終会合を県庁で開き、逢初(あいぞめ)川上流域の土石流起点付近で進む土砂崩落対策に関し「ハード面では十分な対策が取られつつある」との見解を示した。市が「今夏の終わりごろ」をめどとする警戒区域の解除に向けて一定の技術的評価を与えた。 上流域は盛り土(残土の投棄)や切り土(地盤の掘削)が行われ、盛り土崩落に伴う土石流発生後も不安定になった盛り土の一部が残る。このため、市は立ち入りを制限する警戒区域を下流域に設け、県が行政代執行で残った盛り土の一部を撤去している。 委員長の今泉文寿静岡大教授は「ハード、ソフ
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滞る残土処分 ゆがんだ静岡県条例、足かせに【統一地方選 地域課題を考える 記者からの提言㊤】
谷に不法投棄された残土(盛り土)が崩落し、28人が死亡した熱海土石流。その教訓として作られた静岡県盛り土規制条例が昨年7月に施行された後、皮肉にも県内で適正な残土処分が滞っている。熱海土石流の被害とは関係ない土壌汚染調査が条例で求められるようになり、各地の適正な業者が残土の受け入れを拒んでいる。このままでは残土の不法投棄を助長しかねない。 「出所の分からない土砂は怖くて受け入れられないよ」。県東部で残土処分場を運営する担当者がぼやく。広さは東京ドーム1・5倍の約7ヘクタール。周囲に人家のない採石場跡地に造成され、沈砂池を設けるなど管理を徹底し、土石流は発生しない構造だ。 しかし、条例で義
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熱海盛り土 所有権移転後も土砂搬入 掘削試料に放射性物質 静大教授ら分析
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流を巡り、静岡大などの研究グループは17日、11年3月の東京電力福島第1原発事故で飛散したとみられる放射性物質が、土石流起点付近にある盛り土の地下約2メートルで検出されたと発表した。現土地所有者に盛り土の所有権が移った11年2月以降も土砂が運び込まれ、盛り土が続いていたことが科学的に裏付けられたとしている。 同大の北村晃寿教授(古生物学)が記者会見して明らかにした。 研究グループは、崩落せずに残った盛り土の一部を静岡県が21年8月にボーリングした際の地質試料(コア)を分析。ボーリングした4カ所のうち2カ所で、放射性物質のセシウム134を検出した
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熱海土石流 静岡県検証の問題指摘 専門家有志、書籍出版へ
熱海土石流の発生原因を巡り、専門家有志が3月下旬、静岡県による技術面の検証の問題点を取り上げた書籍「熱海土石流の真実静岡県調査報告書の問題点」(白順社)を出版することになった。流域変更(他流域からの表流水の流入)の影響を否定した県の検証を問題視し土石流の引き金になった盛り土崩落の真相に迫った。 執筆するのは、県議会の検証作業でも参考人として証言した地質専門家の塩坂邦雄さんと土木設計エンジニアの清水浩さん。県は地盤工学などの学者と副知事(当時)による「発生原因調査検証委員会」を設置。盛り土内部に他流域から地下水が流入したとする報告書をまとめたが、書籍では土石流発生直後の現地調査を踏まえ、科学
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不適切盛り土の安定性 川勝静岡県知事、調査公表の方針
川勝平太知事は14日の定例記者会見で、静岡県内で確認された不適切盛り土の安定性を調べるためのボーリング(地質試料の掘削)調査結果を今後公表する方針を明らかにした。県は静岡市葵区杉尾、日向地区の無許可盛り土の対応を議論した8日の庁内対策会議の際には調査結果を公表していなかった。 川勝知事は「ボーリングして分かったことをなるべく早く公表するべきだ」と述べ、危険性のある盛り土に関しては情報の透明性を確保する考えを示した。会見に同席した杉本敏彦砂防課長は「公表用の資料は整っている。公表に向けて対応したい」と説明し、県が所管する砂防法関係の不適切盛り土は安定性の情報を明らかにするとした。 県は非公
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残土業者ら団体設立 静岡の16社 県内初、適正処理促進へ
急斜面の盛り土(積み上げた残土)が崩落して起きた熱海土石流を受けて残土処分の在り方が問題になる中、静岡市内の残土処分関連業者16社がこのほど、県内初となる残土処分の業界団体を設立した。業界全体での残土の適正処理や事業の健全経営を促すほか、土砂再利用の促進や関係法令の研修などに連携して取り組む。 名称は市建設発生土処理事業者協議会。土砂のリサイクル施設を持っていたり、土砂を仮置きするストックヤードを運営したりする市内の業者が参加した。定期的に意見交換し、持続可能な残土処理の実現に向けて行政などに働きかける。 熱海土石流をきっかけに制定された盛り土規制法が5月に施行されるほか、資源有効利用促
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砂防指定地のウェブ地図非表示問題 森林法の盛り土規制区域も 「修正めど立たず」
砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」が表示されず問題になっている静岡県のウェブサイト上の地図を巡り、森林法の盛り土規制区域「保安林」も表示されない状態が続いていることが1日、県への取材で分かった。熱海土石流後に実際の区域指定と異なる範囲がウェブの地図に掲載されていたことが判明し、約1年8カ月間、表示を取りやめているという。県によると、他の箇所も含めた修正作業に時間がかかり、表示できるめどは立っていない。 問題のウェブサイトは「県森林情報共有システム」。砂防指定地の場合は特殊な広域指定の安倍・藁科川上流域だけで非表示だが、保安林は県内全域で表示されていない。 県森林保全課によると、ウェブサ
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盛り土規制の範囲 安倍・藁科川表示せず 静岡県ウェブ地図「特殊な指定が理由」
静岡県が安倍・藁科川上流域で砂防法に基づく盛り土規制区域「砂防指定地」の範囲をインターネット上の範囲確認用の地図に表示していなかったことが20日までに分かった。広範囲におよぶ特殊な指定(面指定)であることが理由という。担当部署に問い合わせなければ範囲が分からない状態が藁科川流域の巨大盛り土造成問題を受けても数年間続く可能性がある。 安倍・藁科川上流域の砂防指定地が表示されない状態になっているのは静岡県のウェブサイト「県地理情報システム(GIS)」。砂防法や森林法などさまざまな規制区域を地図上に表示して範囲を確認できる仕組みで、熱海土石流で問題になっている逢初川など、特殊指定ではない県内各地
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不適切盛り土196カ所 静岡県、場所黒塗り非公表 所有者特定、訴訟懸念を理由に
熱海土石流後の盛り土総点検で判明した静岡県内の不適切な盛り土196カ所に関し、静岡新聞社が具体的な場所の情報を開示するよう県に求めたところ、県は16日までに、「土地所有者が特定される」ことを理由に非公表とした。所有者や開発業者から訴訟を起こされる恐れもあるとするが、熱海土石流では盛り土の存在が下流域の住民に事前に知らされず、逃げ遅れた27人と関連死1人の犠牲につながった。国土交通省は「自治体には公表をお願いしている」としている。 盛り土総点検は一昨年の土石流後に全国で実施。本県は排水施設の不備や届け出と異なる造成などの盛り土が196カ所あるとし、関係法令別と地域別(東中西部と伊豆)の箇所
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熱海土石流 静岡県の対応「再検証を」 県議会特別委、議長に報告書
熱海市伊豆山で一昨年、盛り土(積み上げた残土)が崩落して28人が死亡した土石流災害に関する県議会特別委員会(竹内良訓委員長)は14日、県が設置した行政対応検証委員会(第三者委員会)による県所管法令の行政対応検証が不十分だったとして「公正・中立な立場から改めて再検証が行われるべきだ」とする報告書を薮田宏行議長に提出した。 提言として「行政対応に関する再検証作業の実施」「復興に向けた被災者支援策」など5項目を盛り込み、再検証すべき県所管法令には砂防法、都市計画法、廃棄物処理法などを挙げた。地下水を発生原因と結論付けた県の技術検証に関しても「表流水が原因で、周辺の開発行為も検証すべきとする専門家
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記者コラム「清流」 行政が大嫌いなこと
トラブル、情報公開、住民参加―。自治体の事情に精通する大学教授から「行政が大嫌いなこと」を聞いた。 28人が死亡する大惨事になった2021年7月の熱海土石流では、悪質な開発業者を規制すべき行政が機能せず「人災」を招いた。背景の取材を進めると「大嫌いなこと」の弊害に次々と遭遇した。 規制に伴うトラブルを避けるためか土地所有者の不同意を理由に規制せず、危ない盛り土の場所は業者の訴訟リスクを恐れて公開せず、復興には住民の意見を反映せず…。 事なかれ主義がはびこり、職員が目的意識を失っていないか。住民の安全を第一に考えて業者とのトラブルを恐れず、リスク情報を公開し、地域の声に耳を
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熱海土石流 静岡県の技術検証結果に疑念 逢初川流域変更、議論不十分 国資料に「切り土」明記
静岡県議会特別委員会が砂防法などの県所管法令の行政対応を再検証すべきだとした一昨年の熱海土石流を巡り、県による技術面の検証結果にも疑念が生じている。静岡新聞社が入手した国土交通省の資料に、逢初(あいぞめ)川上流域の流域変更がうかがえる「切り土」の断面図などが見つかった。県による技術面の検証では、この切り土の土石流への影響についてはほとんど議論されておらず、複数の専門家は再検証するよう求めている。 国交省資料は昨年3月、逢初川の新砂防ダムを整備する際の設計資料として、委託を受けた建設コンサルタント会社が作成した。2008年と19年の地形変化を表す上流域の断面図に「切り土」と記載。この切り土に
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静岡・杉尾の盛り土 土石流発生の目安超す勾配 地盤23度、静岡県「安全と言えず」
藁科川上流の静岡市葵区杉尾地区にある土石流危険渓流に無許可で盛り土が造成されている問題で、盛り土の地盤の勾配が、国が土石流発生の目安としている「15度以上」の23度であることが1日までの県への取材で分かった。28人が死亡・行方不明になった一昨年の熱海土石流の崩落盛り土と同じ水準の傾斜角。県は「安全とは言えない」(砂防課)とし、土砂の全量撤去を基本に対策を検討している。 県によると、杉尾の盛り土は最上部と最下部を結んだ線で勾配を計算すると23度で、盛り土から約700メートル下流にある人家までは14度。盛り土の下流側1・5キロの地点で2度まで緩くなる。砂防課はこうした勾配を考慮すると途中の人家
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ひとり親1~2割、外国人3割 静岡県内コロナ特例貸し付け 社会的弱者困窮浮き彫り
昨年9月に終了した新型コロナウイルス禍の特例貸し付け制度で生活資金を借りた静岡県内の困窮世帯のうち、1~2割がひとり親世帯、約3割が外国人世帯と推定されることが31日までの県社会福祉協議会への取材で分かった。最終的な県内の貸付総額は130億円、貸し付けを受けた世帯数は約2万7千世帯に上ったことも判明した。コロナ禍に伴う社会的弱者の困窮ぶりが改めて浮き彫りになった。 県社協が特例貸し付けの始まった2020年以降に受け付けた書類を調べたところ、家族構成などから、ひとり親世帯とみられるのは10~20%で、外国人世帯は28・7%だった。貸付総額は、製造業を中心に失業者が急増したリーマン・ショック時
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シニアの就労支援 初の地域別面談会 通勤負担軽減を考慮 静岡市
静岡市のシニア就労支援窓口「ネクストワークしずおか」はこのほど、仕事を探すシニア層と人材を募集する事業所をマッチングさせる「お仕事面談会」を同市葵区の藁科生涯学習センターで開いた。高齢者の通勤の負担軽減を考えて、事業所の立地を藁科街道沿いに限定した地域別の面談会を初めて企画した。 介護福祉施設や製造業を中心に9事業所が相談ブースを出した。市内に住む50~70代の約50人が参加して各ブースを回り、採用担当者から仕事の内容や時間帯、待遇などの話を熱心に聞いた。長年勤務した職場を昨年退職した女性(69)は「今度は通勤時間のかからない場所で仕事したい。(面談会は)職種を広げて地域限定で開いてくれる
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熱海土石流 県所管法令の検証不十分 砂防法「下流域の安全考慮を」 静岡県議会特別委が報告書
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流に関する県議会特別委員会は26日、最終会合を開き、県が設置した行政対応検証委員会(第三者委員会)による県所管法令の検証が不十分だったとして再発防止のため再検証すべきだとする報告書をまとめた。第三者委で論点外とされた砂防法に関しては、規制による下流域の住民の安全を考慮した場合、土地所有者の私権を優先して上流域の規制を見送った県の判断が妥当だったのか、再検証するよう提言した。 報告書は第三者委の検証について「複数の法令に土石流災害防止の論点が存在するにもかかわらず(市に権限のある)県土採取等規制条例の運用に観点を絞った」と指摘。検証が不十分な県
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熱海土石流 第三者委の検証体制を問題視 委員への資料提供「不十分」 県議会特別委報告書
熱海土石流に関する県議会特別委員会が26日にまとめた報告書は、県が設置した行政対応検証委員会(第三者委員会)の検証体制を問題視した。第三者委の事務局から委員への資料提供が不十分だった点などを指摘し、「十分な検証が行われる環境が整っていたのか」と疑問視した。 第三者委は県職員OBで構成する事務局が委員に資料を提供し、その資料に基づいて2021年12月から22年5月まで検証が行われていた。ところが、県議会に参考人として招いた委員への聴取で、事務局からの提供資料が一部の法令や一定の期間に限定されていたことが判明した。 県議会特別委の報告書は、県所管法令が十分に検証されなかった背景として、こうし
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熱海土石流 盛り土造成前の砂防ダムに泥水 専門家は「表面浸食」指摘 砂防法基準に該当
2021年7月の大規模土石流の発生前から、熱海市の逢初(あいぞめ)川の砂防ダムに上流域の流出土砂がたまっていたとされる問題で、盛り土が造成される前の07年4月、砂防ダムに土砂交じりの泥水が流れる様子を撮影した写真が市の公文書に掲載されていたことが20日までに分かった。専門家はこの写真から、上流域で自然堆積土砂が崩れる「表面浸食」が起きていたと推定。砂防法適用の基準に該当していて、県が適切に適用していれば盛り土の造成そのものを防げていたとみられる。 市の公文書には、同年4月25日付の砂防ダム直下で撮影した5枚の写真が掲載され、濃い茶色の泥水や土砂が写っていた。泥水が流れた河口付近の写真もあっ
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静岡人インタビュー「この人」 「静岡どぼくらぶ」で建設業の魅力を発信する県職員 富田ひかるさん(静岡市駿河区)
社会インフラを守るため、土木工事の担い手づくりを目指す産学官連携組織の担当者。業界のイメージアップを図る取り組みの中心的な役割を担う。2018年に土木技術職として県に入庁し、島田土木事務所に勤務後、21年4月から交通基盤部建設政策課に所属する。静岡市出身。29歳。 ―なぜ、土木技術職なのか。 「小さい頃から工作好きで、ものづくりに興味があった。高校時代に新東名高速道の工事を見学し、大規模な構造物を作る技術者の誇りを感じ、大学で土木学科に進学するきっかけになった。学生時代には東日本大震災の被災地を訪れ、災害を防ぐインフラの大切さを実感した」 ―どぼくらぶの意義は。 「毎年のように大規模
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「スマホ使いこなしたい」 静岡市葵区で教室 高齢者がネット検索など
しずおか健康長寿財団は19日、高齢者を対象にしたスマートフォン(スマホ)講座を静岡市葵区の県総合社会福祉会館で開いた。「調べたいことを検索してみよう」をテーマに、70代以上の13人が携帯電話販売店の店員から操作方法の指南を受けた。 インターネットの便利な検索方法や通信アプリ「LINE(ライン)」の使い方などを学んだ。普段使っているスマホを手にしながら、店員に個別相談する場面もあった。受講した同市葵区の女性(80)は「スマホを使いこなしたいと考えて参加した。友人との交流でもっと活用したい」と笑顔で語った。 講座はシニア層の生きがいづくりを目指す同財団の事業の一環。
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他法令代用の静岡県主張否定、下流被害の責任問えず 熱海土石流・砂防法規制放置問題/北村喜宣上智大教授(行政法学)
熱海市の逢初(あいぞめ)川で2021年7月に起きた土石流の砂防法規制放置問題を巡り、不法盛り土対策の国土交通省作業部会委員を務める北村喜宣上智大教授(行政法学)が15日までにインタビューに応じた。下流域への土石流を防ぐ砂防法の代わりに県土採取等規制条例(手続きの権限は市)や森林法で上流域の開発に対応できたとする県の主張を否定し「法令ごとに目的は異なる。(県条例や森林法は)制度上、下流域の土石流防止まで具体的に想定していない」とする見解を示した。 土石流は最上流部の盛り土崩落が原因とされるが、大量の土砂は急勾配の逢初川を約2キロ流れ下り、途中の砂防ダムで止まらずに下流域の集落を襲った。 北
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介護助手にシニアの力 静岡県内施設、働きやすく業務細分化の動き 体力必要な仕事は専門職に/朝と夕方2時間ずつ勤務
人手不足感が強い介護施設で高齢者を「介護助手」として活用するため、勤務時間帯や仕事内容を細分化する動きが県内で広がっている。体力などに懸念のある高齢者でも、働きやすい環境をつくるのが狙い。80代で働くケースもあり、シニア層の雇用の受け皿としても期待されている。 「介護の仕事は大変だというイメージがあったが、仕事の仕方を工夫すれば問題ない」と話すのは、静岡市葵区の特別養護老人ホーム「竜爪園」に勤める滝浪陽子さん(72)。長年勤務した幼稚園や保育園を62歳で退職し、現在は介護助手として食事の配膳や食後の歯磨きの手伝いなどを担当する。食事の際に誤嚥(ごえん)防止のとろみをつけるなど個々の利用者に
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熱海土石流 静岡県対応、再検証必要 県議会特別委、提言に反映へ
熱海市伊豆山で昨年7月に起きた大規模土石流に関する静岡県議会特別委員会が20日、県庁で開かれ、砂防法や森林法、廃棄物処理法など県の行政手続きに関して再検証の必要があるとの見解で一致し、今後まとめる提言に盛り込むことになった。 県と市の行政手続きをチェックした県行政対応検証委員会を巡っては、事務局が委員に提供する情報を限定したり、報告書の調整段階で議事録を作らなかったりしたことなどを問題視し、検証が不十分だとする指摘が上がった。委員ではなく事務局に問題があったという意見も出された。 報告書の一部に当たる県土採取等規制条例の対応に関する部分を「妥当」とする県議もいたが、不十分な検証の報告書を
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流れ下る土砂、上流域で増加 砂防ダム1基分と推定 堆積土砂の撤去記録、県に残らず廃棄か 熱海土石流・崩落盛り土
昨年7月に土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川流域の地形データ分析資料で、源頭部の崩落した盛り土(残土処分場)から流れ下った土砂が上流域の途中で約4千立方メートル(砂防ダム1基分)増加したと推定されることが19日までに分かった。上流域に堆積した流出土砂の撤去記録が静岡県に残っていないことも判明。県は「記録文書を廃棄した可能性がある」と説明している。 地形データ分析は、土石流発生前の2019年12月と発生3日後の標高差から土砂量を計算した。測量会社が実施し、盛り土崩落の発生原因を調べる県の検証委員会の資料に掲載されていた。 分析によると、源頭部の崩落土砂は約5万8千立方メートル
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熱海土石流 静岡県の行政対応検証委「独立性なし」 出石委員、県議会で見解 「県の中に事務局」問題視
熱海市伊豆山の大規模土石流災害に関する静岡県議会特別委員会が13日開かれ、県行政対応検証委員会の委員を務めた出石稔関東学院大教授(行政法)が参考人として出席した。出石氏は、県と市の行政対応に関する報告書をまとめた検証委について「(県から)独立していなかった」との見解を示した。報告書の内容は「適正だった」としながらも、県が所管する法令などの追加検証を提案した。 検証委に関して「県の中に事務局が置かれ、知事から要請されて議論されていること自体、独立と言えるのか」と独立性を否定。県主導だったのかという質問には「われわれに分からない。(県職員OBで構成する)事務局主導とは言える」と答えた。 盛り
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逢初川の砂防ダム 2009年時点で機能不全か 盛り土造成時協議、職員「土砂で埋まっている」 熱海土石流
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流を巡り、静岡県熱海土木事務所の職員が2009年11月の盛り土造成時の協議で、逢初(あいぞめ)川の砂防ダムに関し「(土砂で)かなり埋まっている」と発言した記載が県の公文書に残されていることが12日までに分かった。少なくとも当時、下流域の人家を土砂から守る砂防ダムが機能不全に陥っていた疑いが浮上した。 職員が発言した09年11月4日の協議は、同年10月に河口の伊豆山港に泥水が流出したことを受けて関係する行政機関で対策を検討した。当時、上流域に大量の残土が搬入され始めていた。熱海土木の各担当者のほか、森林法を所管する県東部農林事務所や県土採取等規制条例
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物価高騰「年金だけでは生活できない」 高齢者の就労相談が増加
40年ぶりの物価高の影響が、生活を年金に頼る高齢者世帯の家計に重くのしかかり、将来不安が強まっている。年金の増額が見通せない中、55歳以上のシニア層の就労を支援する静岡県内の相談窓口では、新たに収入を得ようと仕事を探す高齢者の相談者が増えている。 「こんなに物価が高いと年金だけでは生活していけない」。11月、静岡市シニア就労支援窓口「ネクストワークしずおか」に仕事を探すために通う女性(63)がつぶやいた。電気代など光熱費の支払いに苦慮しているといい、「節約にも限界がある」と険しい表情を見せた。 同窓口の9、10月の各月相談件数は4~6月の1・5倍ほどに増加した。警備や清掃の業種に限定して
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熱海土石流 半壊以下住居「支援薄い」 被災者、公費負担制度訴え 静岡県議会特別委
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流に関する県議会の特別委員会が2日開かれ、被災者でつくる「警戒区域未来の会」の中島秀人代表が参考人として出席した。中島代表は半壊以下の住居に対する公的支援が手薄だとし、住居解体やリフォーム、壊れた電化製品購入などの費用を公費負担する制度の必要性を訴えた。 盛り土(積み上げた残土)の崩落が被害を招いた土石流について「天災ではない人災に対する強い憤りが被災者の共通した感情になっている」と説明。人災が前提になっている中で「自分のお金を使って壊れた住居を整備し、避難先から戻ろうと思わない」と災害の特殊性に触れ、全壊以外の住居に対する支援を要請した。
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熱海土石流行政検証 関係職員への県聴取 検証委に詳細提出せず 抜粋「概要」のみ
熱海市伊豆山の土石流災害の行政対応検証を巡り、静岡県が検証委員会に対し、危険の予見性などを記した関係職員への詳細なヒアリング資料を提出していなかったことが1日までの県への取材で分かった。県の判断で聴取内容を部分的に抜粋した「概要」に基づき、検証委は行政手続きを検証していた。 ヒアリングは委員ではなく県が昨年11月、退職者を含む関係職員39人を対象に実施。詳細なヒアリング資料も県が作成し、聴取内容を箇条書きにして「危険の予見」「業者の態度」「上司等への報告」にまとめ、職員の当時の役職名とともに記載した。検証委の検証作業が終わった後の今年5月に県が公表している。 ただ、県が検証委に提出したヒ
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警備や清掃、就業支援 シニア対象面談会 静岡市葵区
警備や清掃の業種を対象にシニア層の就業を支援する「お仕事面談会」がこのほど、静岡市葵区で開かれた。50~70代の70人が参加し、市内8業者の採用担当者が各ブースで面談に応じた。官民で高齢者の働きやすい環境づくりを進める同市の「生涯活躍のまち静岡推進協議会」が主催した。 シニア層向けのセミナーは、6月に開いた介護・福祉関係の仕事の相談会に続いて2回目。今回は定年退職後の仕事を探す60代を中心にシニア層の予約が殺到し、定員が早々に埋まったという。 参加者は各業者のブースを回り、仕事内容や勤務条件に関する話を担当者から聞き出した。80歳を雇用している清掃会社もあり、業者側は「高齢者でも負担のか
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浙江省と共同作品展 デジタル空間で観覧の書も
静岡県と友好提携している中国・浙江省でこのほど、提携40周年を記念した日中の芸術家による特別展覧会(同省、県、県日中友好協議会など主催)が開かれた。デジタル技術を駆使し、仮想空間上で観覧できる日中共同制作の書や、日本から送られたデータに基づいて中国で復元した絵画などが展示された。 同省杭州市の展示会場には、漢詩などを題材にした両県省の芸術家75人の作品約200点が並んだ。県内の書道家や画家ら11人が制作した書や水墨画は、スキャナーでデジタル化して中国にデータ送信。実物大にコピーして会場に展示した。 県書道連盟名誉顧問の桜井流翠さん(焼津市)の書は仮想空間で中国の芸術家の作品と組み合わせて
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島田 大雨のたびに前兆 「危険の芽」小さいうちに【絶えぬ残土崩落 熱海の教訓から㊦】
記録的豪雨により、静岡県内の中山間地で土砂崩れが相次いだ9月の台風15号。大井川中流の島田市福用でも、川沿いを通る国道473号と大井川鉄道の線路が土砂に埋まった。ただ、通常の土砂崩れとは状況が異なる。土砂の発生源をたどると、面積約17ヘクタール(東京ドーム3・6個分)の巨大な採石場跡地が広がっている。崩れ落ちたのは、採石用に切り崩した山腹にうずたかく積まれ、長年放置されていた残土の山だった。 「2年くらい前から大雨のたびに泥水や石が流れ出してきた。放っておくと危ないと思っていた」。近くに住む男性(74)は通行止めが続く国道に目を向けて当時を振り返った。今回の大崩落に至るまでに“
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函南 見えない盛り土「だまされていた」 官民監視へ早期公表を【絶えぬ残土崩落 熱海の教訓から㊥】
「盛り土はあの森の向こうにある。下からは見えないね」―。函南町の丹那盆地西側にある小高い山。丹那区の溝田正吾区長(60)が指をさした先には、地元で「危険な盛り土」と呼ばれる残土が急斜面に積まれている。雑木林に囲まれ、麓にある集落からはうかがい知れない。 住民が異変を感じ始めたのは昨年の春ごろだった。同区によると、業者は地元向け説明会を開き、2019年の台風で崩れた斜面を復旧すると伝えた。以後、朝から夕方まで作業音が集落に響いていたが、住民はその作業は災害復旧工事と信じていた。 ところが、集落と反対側にある搬入口には1日数十台のダンプカーが行き交っていた。「何かおかしい」。森林に囲まれた現
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ダム9倍の土砂搬入計画 静岡県はなぜ砂防法適用を見送ったか… 担当部署、積極関与せずか 熱海土石流
熱海市で昨年7月に発生した土石流で砂防法の規制区域「砂防指定地」が長年放置されていた問題。静岡県はなぜ、下流域の人家を守る目的のある砂防法の適用を見送り、規制力の弱い別の法令によって残土処分場を造成する開発業者に対応したのか。砂防法以外の法令で対応できたと主張する県だが、砂防ダムの容量を大幅に上回る残土が上流の急傾斜地に積み上げられる計画があったにもかかわらず、当時の砂防関連部署が積極的に関与していなかった可能性が浮き彫りになっている。 逢初(あいぞめ)川上流域を神奈川県小田原市の不動産管理会社が開発目的で取得したのは2006年9月。崩落した盛り土(残土処分場)が造成される前から上流域は土
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砂防法の検証不足認める 委員長「適用で防げた」 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県と熱海市の行政手続きを検証した「県行政対応検証委員会」の委員長を務めた青島伸雄弁護士が11日、県議会特別委員会に出席し、下流域の人家を土砂災害から守る目的がある砂防法の適用を県が見送っていたことに関し「(検証の)論点外だった。ちゃんと適用すれば事件(土石流災害)は起きるはずがない」と述べた。検証委は報告書で砂防法に関する県の対応を「妥当」としていたが、青島氏は検証不足を事実上認めた。 県議会特別委は検証委員や別の専門家に対する質疑を踏まえ、砂防法を含む関係法令の対応について再検証する方針で一致した。既存の検証委とは別の検証方法を検討する。 青島氏は
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熱海土石流 行政対応検証、独立性に疑問 議事録取らぬ会合/県任せのヒアリング…事務局主導の運営浮き彫り
残土の山が崩落して未曽有の「人災」となった熱海市伊豆山の大規模土石流に関する行政手続きの検証に独立性はあったのか。11日の県議会特別委員会では、関係した県職員へのヒアリングを県に任せたり、議事録を作成しない会合を開いたりした県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)に厳しい目が向けられた。質疑を通し、検証委が県職員OBで構成された事務局主導で運営されていたことが浮き彫りになった。 県議側がまず問題視したのは検証期間の短さだった。検証委は昨年12月に初会合を開いたが、県は今年3月に検証結果をまとめるよう委員に求めた。「(検証期間が)短かった。県から言われたのでやらざるを得ない」と参考人と
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時代に翻弄された神社 元県立中央図書館長の天野さん 事任八幡宮(掛川)古文書調査、資料集刊行 徳川抵抗、神主追放か
元県立中央図書館長で神主の天野忍さん(74)=静岡市葵区=が代表を務める研究グループが、掛川市の事任(ことのまま)八幡宮に残された古文書を8年がかりで調査、整理した結果を資料集「事任八幡宮資料集成」として刊行した。戦国時代に徳川家と今川家の抗争に関わり、神主が追放されたとみられる記録が見つかり、時代に翻弄(ほんろう)された神社の姿を浮かび上がらせた。 神主の系譜や検地の状況などを記録した約2千点の古文書を読み解き、考古、古代・中世、近世、近現代の4編に分けて計600ページにまとめた。資料ごとに解説も添えた。 徳川と今川が掛川で争った1568年、今川を擁護する同八幡宮で一揆が起こったが、
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国「山肌露出で規制区域に指定必要」見解 熱海・伊豆山の逢初川開発初期に該当 静岡県の砂防指定放置問題
熱海市の逢初(あいぞめ)川で昨年7月に発生した土石流の起点で残土投棄を制限する砂防法の規制が放置されていた問題で、国土交通省の砂防担当者が27日までに静岡新聞社の取材に応じ、同法の規制区域「砂防指定地」の指定方法に関し、一般論としては砂防ダム上流域で山肌がむき出しになった段階で上流全域を規制区域に指定する必要があるとする見解を明らかにした。 砂防指定地は県が規制区域を国に申請し、国が指定する。土石流危険渓流の逢初川は上流全域を申請するよう国に促されていた上、盛り土(積み上げた残土)造成前の開発初期に上流域の山肌が露出し、国の示す見解に該当していた。県が規制区域を申請していれば、崩落した盛り
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記者コラム「清流」 モノは言いよう
昨年の熱海土石流に続き、今年9月の台風15号でも捨てられた土砂(残土)の山が各地で崩落した。崩落したのは「盛り土」とよく言われるが、盛り土は宅地造成などを前提に斜面を平らにする開発を指す。実態は造成目的ではなく、処分された「捨て土」だった。急斜面への「捨て土」は土砂災害を招きかねず規制が厳しい。行政は「盛り土」という言葉で問題の本質をゆがめていないだろうか。 台風では静岡市清水区で断水も問題になった。解消時期は当初、市の担当者が「10月初旬」と説明する一方で、田辺信宏市長は「(取水口に)重機が入れば4日程度で何とかできる。最大1週間で何とかしたい」と曖昧だった。 「モノは言いよう」だが、
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熱海・逢初川上流域 盛り土前に大規模崩落 市の公文書開示で判明
熱海市伊豆山の大規模土石流で起点になった逢初(あいぞめ)川上流域の開発を巡り、市は26日までに、静岡新聞社の情報開示請求に応じて昨年10月の一斉公表に含めていなかった行政手続きに関する公文書を開示した。盛り土(積み上げた残土)が造成される前の開発初期の文書には、土石流起点付近の斜面で地山が大規模崩落した状況を捉えた写真が掲載されていた。 開示されたのは2004~18年に市に権限のあった県風致地区条例や市まちづくり条例などに基づく開発業者との協議や対応状況を職員が記録した文書。隣の鳴沢川流域と一体的に行われた開発状況の写真も多数含まれる。市は「(土石流起点の)崩落地に関する届け出と直接関係な
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知事「細かなこと」 熱海土石流、砂防規制放置問題で見解
川勝平太知事は25日の定例記者会見で、熱海市の逢初(あいぞめ)川で昨年7月に発生した土石流の起点で残土投棄を制限する砂防法の規制が放置されていた問題について、当時の砂防担当者が開発状況を確認しなかったとみられる対応について「細かなことだ」と述べた。 砂防法適用見送りの経緯について県は関係職員に詳細なヒアリングを実施していないが、知事は「特段、間違ったことをしたとは思っていない」と強調。砂防担当者がその後、上流域の開発状況を確認した記録がないことに関し「その時までさかのぼってしっかり検証していない」と釈明した。 川勝知事はこれまで砂防法で規制をかける際に土地所有者の同意が必要だと主張してき
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砂防規制放置問題 静岡県担当者の確認記録なし 開発初期の2007年頃 上流域では伐採、山肌露出
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、残土投棄を制限する砂防法の規制が長年放置されていた問題で、砂防ダム上流域で開発が始まった2007年頃、静岡県の砂防担当者がダム上流域の状況を確認した記録がないことが21日までの県への取材で分かった。 国はダム上流域に開発が及ぶ場合、規制区域「砂防指定地」の早急な追加申請を求めている。県は山腹の状況を勘案して上流全体の規制を進めると国に説明していたが、説明通りの対応をしていなかった疑いが強まった。 県は1998年、砂防ダムの設置に当たり、土石流危険渓流の逢初川は基準に該当するとして国から上流全体の指定を求められた。ただ、土地所有者の同意が得られず、当面の指
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委員や市の意見書、公表しないまま廃棄 「全て公開」知事説明と矛盾 熱海土石流・静岡県検証委
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県が設置した行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が報告書を取りまとめた際、複数の委員や市から送られてきた意見書を事務局が公文書として保管せず、公表しないまま廃棄していたことが9日までの県などへの取材で分かった。報告書作成の経緯が不透明になり、議論した全ての内容を事後に公開すると約束していた川勝平太知事の説明と矛盾する対応になっている。 複数の関係者によると、意見書は、検証委の事務局によって4月末に作成された報告書の原案に対し、各委員や市が修正を求める点を記載した内容で、事務局にメール送信されていた。県の行政対応に関して批判的な意見が含まれていた
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熱海土石流「県の対応、検証不十分」 出石稔氏に聞く
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県行政対応検証委員会の委員を務めた出石稔関東学院大法学部長(行政法)が17日までにインタビューに応じ、検証委の報告書に関し「結果的に市の対応に焦点が当たり過ぎ、県への検証が不十分だった。十分な対応ができず個人的には悔いが残っている」との認識を明らかにした。 ■委員主導のヒアリングできず 検証委は昨年12月から今年5月にかけて非公開で4回開催。行政法に詳しい出石氏は、担当職員へのヒアリングを当事者の県や市が行ったことについて「県から早期に報告書をまとめるように求められ、検証期間が限られた」と委員主導でヒアリングを実施できなかった理由を釈明した。 県
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熱海土石流 盛り土に水通す隙間四層発見 崩落何度も誘発か 静大教授分析
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流の発生原因を調べている静岡大の北村晃寿教授(古生物学)が16日、土石流起点付近に残った土砂のボーリング調査の分析で、水を通す隙間になる四つの層が見つかったと発表した。崩落した盛り土がミルフィーユ状の重層的な構造だったという根拠になるとし、時間差で何度も流れ下った土石流を誘発したと結論付けた。同様に発生原因を調べた県の検証委員会の見解を補足する内容だと位置付けた。 分析したのは、逢初(あいぞめ)川上流の盛り土崩落現場西側の縁で県がボーリングした地質試料。土砂の粒がそろい、水を通しやすい層が4~19センチの厚さで4層確認された。 北村教授のこれま
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熱海土石流 崩落現場20度超の傾斜「発生条件満たしていた」
熱海市伊豆山の大規模土石流を招いた盛り土崩落の発生原因を調べる静岡県の検証委員会は8日に提示された報告書案で、逢初(あいぞめ)川上流域の地形が急傾斜だったことを盛り込んだ。土石流に詳しい今泉文寿委員(静岡大教授)は会合後の記者会見で、上流域に造成された盛り土の地盤は勾配が20度を超えていたとし、「土石流の発生条件を満たしていた」と説明した。 土石流の主な発生要因は、①勾配②堆積した土砂量③降水量(湧水を含む)―とされている。報告書は盛り土造成前の1967年の地形に基づいて傾斜の度合いを色分けした地図を掲載し、崩落現場付近の大半は20~30度の区分とした。 今泉委員によると、土石流は一般的
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知事「再検証しない」 熱海土石流、砂防規制放置問題で見解
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、逢初(あいぞめ)川上流域で砂防規制が放置されていた問題で、川勝平太知事は8日の定例記者会見で、県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が報告書をまとめた後に新たに分かった事実を踏まえても、砂防規制を放置した行政対応を再検証する必要はないとする考えを示した。 砂防規制の県の対応に関しては、検証委が「妥当」と判断した報告書をまとめた後に、検証委で県側の説明が不十分だったことや砂防担当職員へのヒアリング結果が判明した。 川勝知事は砂防規制について「検証委で一段落した。新たに検証する動きはない」と述べた。砂防規制しなかった理由に関しては「砂防法を導入するに
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記者コラム「清流」 疑問だらけの「検証」
27人の尊い命が犠牲になった昨年7月の熱海市伊豆山の大規模土石流で、県や市の行政手続きを検証した県行政対応検証委員会の対応に驚いている。砂防ダム上流の砂防規制放置の経緯など、肝心な部分は「手が回らなかった」として十分検証しなかった。 砂防規制を担当した歴代職員への事情聴取は検証終了後で、検証結果に反映されていない。検証対象は崩落した盛り土(積み上げた残土)に限り、周辺の開発行為との関係も不透明。本紙は改めて委員長の青島伸雄弁護士に経緯説明を求めたが応じなかった。 盛り土の現旧所有者や関係業者、行政(国、県、市)の対応次第で防げた未曽有の「人災」。その検証は訴訟や再発防止の材料になる。同委
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森林法の解釈「信頼」 伊豆山砂防規制放置で川勝氏、認識示す
熱海市伊豆山の砂防規制の検証を巡り、森林法の解釈を県が林野庁に照会せず発表したことについて、川勝平太知事は9日の定例記者会見で「(県の)担当部署を全面的に信頼している」との認識を示した。森林法の解釈は静岡県が逢初(あいぞめ)川上流域で砂防規制の必要がなかったと主張する根拠の一つ。 上流域に関し、県は森林法の効力が及ぶため砂防規制の必要はないと主張しているが、同法を所管する林野庁の担当者は取材に「砂防規制との重複を避けるように求める規定はない」と答え、県の主張を否定している。 川勝知事は国の見解を紹介した森林法に関する静岡新聞報道に関して「かなり解釈の違いがあるというか、事実の認識が違うと
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熱海土木、歴代担当を県聴取 地権者交渉「記憶ない」多数 砂防規制放置問題
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡る砂防規制放置問題で、静岡県は4日までに、熱海土木事務所で逢初(あいぞめ)川の砂防規制を担当していた歴代職員12人へのヒアリング結果を明らかにした。国が規制に必要とする同意取得のために地権者と接触したかという問いに10人が「記憶にない」と答え、2人は接触していないとした。県の調査では地権者との交渉記録も残されておらず、県が地権者の意向を確認しないまま規制を放置していた疑いが強まった。 ヒアリング結果によると、上流全体の規制に向けて地権者と接触していたかという質問に対し、過去約20年間に担当した大半の職員が「記憶にない」「引き継ぎもない」と答えた。県は具体的なヒ
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土砂採取地「有力」 神奈川・中村川下流 熱海土石流起点盛り土
北村晃寿静岡大教授(古生物学)らの研究グループは29日、熱海市伊豆山の大規模土石流で崩れた盛り土(積み上げた残土)の土砂採取地の一つとして、神奈川県小田原市と二宮町の境付近を流れる中村川下流域が有力になったと発表した。土石流で落ち残った黒色の土砂を分析したところ、中村川下流域に分布する軟らかい岩石と一致したという。 北村教授は昨年11月、盛り土付近の残土に含まれた貝殻を調べた結果、中村川下流域に広がる7千年前の地層「下原層」の貝殻と一致したと発表済み。今回分析した軟らかい岩石については「分布が限られるため、採取地の可能性を絞り込める」としている。 軟らかい岩石は「軟質泥岩礫(れき)」と呼
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森林法「開発規制できず」 林野庁、静岡県の主張否定
熱海市伊豆山の大規模土石流の砂防規制に関する行政対応を巡り、林野庁は27日までに、森林法に基づき面積1ヘクタール以下の場合に提出される伐採届では、残土投棄や盛り土造成などの開発行為を規制できないとする見解を静岡新聞社の取材に対して明らかにした。静岡県の「森林法で規制されていたため、砂防法で規制する必要がなかった」とする主張が否定された形になる。 県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)で林野庁の見解は説明されておらず、一部の関係法令に検証を重点化した報告書の内容に影響を与えた可能性がある。 逢初川上流域は森林法に基づく「5条森林」という規制区域で、1ヘクタール以下の開発をする場合に
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盛り土の規制条例 静岡県内一律は「過剰」 行政書士会が改正要望
静岡県行政書士会は26日、1日に施行された県盛り土規制条例の改正を求める要望書を県議会最大会派の自民改革会議に提出した。県内一律ではなく、盛り土を造成する場所の傾斜などを考慮した規制に改めるよう求めた。 同条例は昨年7月に発生した熱海市伊豆山の大規模土石流で逢初(あいぞめ)川上流域の盛り土(積み上げた残土)崩落が被害を拡大させたとして制定された。盛り土は急斜面に造成されていた。 要望書は「県下一律の過剰とも言える規制が善良な県民に大きな負担となる」とし、傾斜角度や立地に応じた適用除外の設定、規制対象になる面積・土量などの見直しを要請した。 同会の内山亮常任理事は「条例は行き過ぎ感がある
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熱海土石流 県検証委の対応、知事容認「優先順位付けた」
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩落した盛り土(積み上げた残土)を巡り、川勝平太知事は26日の定例記者会見で、一部の関係法令以外の検証に「手が回らなかった」としている県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)の対応について「(関係法令の)優先順位を付けながら検証した」と評価し、報告内容を尊重する方針を堅持した。 川勝知事は、検証委の対応について「検証すべき法令を第三者の目で見た」と述べた上で、青島委員長が一部法令に検証を重点化した理由を手が回らなかったと説明したことについては「一つの言い方だが、一応、最終報告だ」として検証委の対応を容認した。 検証委は、川勝知事が議事内容を公開すると表明
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リモート副業、経営に新戦力 大都市大手社員が静岡県内中小支援
新型コロナウイルス禍でテレワークが普及したことで、大都市圏の在住者が大手企業に勤めながら県内の中小企業にオンラインで経営支援する「リモート副業」に注目が集まっている。事業者側は雇用や外注よりも安価で支援を受けられる利点があり、50代の副業人材の中には「第二の人生(セカンドキャリア)」の入り口と位置付ける人も。シニア層の働き方改革につなげようとする動きも出てきた。 びょうぶなどの製造を手掛ける「人形の宝照」(静岡市葵区)の岩科慎吾さん(32)は4月から毎月2回、パソコンを使ってオンラインの打ち合わせをし、今後の経営方針を検討している。相手は兵庫県在住の百貨店バイヤー伊藤栄さん(58)。岩科さ
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堆積土砂の上に盛り土 研究グループ「湧水が崩落引き金」【熱海土石流】
熱海市伊豆山で昨年7月に起きた大規模土石流を巡り、千木良雅弘京都大名誉教授(深田地質研究所理事長)や静岡大などの研究グループは15日、発生源になった逢初(あいぞめ)川上流域の地質などを調べたところ、上流側にある岩戸山(標高734メートル)で過去に発生した土石流の堆積土砂の上に盛り土が造成されていたと発表した。堆積土砂から湧き出た水が引き金になり、盛り土が崩壊したと推定した。 発生原因を究明するため、国土地理院が1962年に撮影した上流域の航空写真を分析したほか、盛り土付近の地質調査や地形観察などを実施した。 千木良名誉教授によると、約1万年以上前から岩戸山の斜面が崩れて土石流が繰り返し発
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議事録ない「検討会」開催 県検証委、周知せず2回【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、県と市の行政手続きを検証した行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が正式な会合とは別に議事録を残さない「検討会」を2回開催していたことが14日までの県関係者への取材で分かった。川勝平太知事は検証の過程を全面的に明らかにすると表明していたが、検証委は「検討会」の存在や議事内容を説明していない。 県関係者によると、「検討会」と称した会合は4月28日と5月11日に開催。4人の委員全員と県職員OBの事務局員が対面やリモートで参加し、委員同士が意見交換して最終報告案の文面を調整したという。青島委員長と事務局が相談して開催を決めたとされるが、青島委員長は5月の最
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98年「今後規制」方針、検証委で説明なし 逢初川の砂防規制放置【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流で逢初(あいぞめ)川上流域の砂防法に基づく規制が放置されていた問題で、上流全体の規制について1998年に県が「今後進めていきたい」と国に方針を示していた経緯が、県の行政対応検証委員会で説明されていなかったことが、11日までに公表された議事録で分かった。重要な情報が行政対応の検証の俎上(そじょう)に載っておらず、検証委の報告書の信ぴょう性が問われそうだ。 検証委は砂防法以外の関係法令に検証を重点化した。砂防法に関しては「問題意識を持たなかった。手が回らなかった」(委員長の青島伸雄弁護士)としてほとんど議論していないが、上流全体を規制しなかった県の対応を「妥当」と判断
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逢初川上流の砂防規制見送り 静岡県、地権者と交渉記録なし
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り逢初(あいぞめ)川上流域で砂防法に基づく規制が放置されていた問題で、砂防ダム設置後の1999年以降に上流の地権者と交渉した県の記録文書が存在しないことが、7日までの県への取材で分かった。県は地権者の不同意を規制見送りの理由だと説明しているが、地権者の意向を確認しないまま、規制を放置していた疑いが出てきた。 国は都道府県に砂防ダムの上流全体を規制するよう促し、規制の際は地権者の同意を得るよう求めている。 県によると、逢初川上流の砂防ダムの管理を担当している県熱海土木事務所内に当時の文書が残されていないか探したが、見つからなかったという。 上流の地権者は99
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上流域砂防規制「地権者の同意必要」 土石流で露呈「開発優先」残る矛盾【参院選しずおか】
昨年7月に起きた熱海市伊豆山の大規模土石流で、崩落した盛り土(積み上げた残土)のあった逢初(あいぞめ)川上流域の現旧土地所有者はともに開発に意欲的だった。国や静岡県は残土搬入前の1999年、上流の地権者の「私権」を優先して砂防法に基づく残土搬入や盛り土の規制を見送り、放置していた。国は発災後も地権者の意向を重視する方針を変えていない。「開発が優先される規制」という国政の矛盾は残ったままだが、参院選で取り上げられていない。 「法的要件としていないが、(上流域の地権者の)同意を得ることが望ましい」。斉藤鉄夫国土交通相は6月下旬の記者会見で、砂防規制しようとする場所の地権者同意取得の考えを問われ
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熱海盛り土、地下水圧で軟化 静岡県検証委「解析で一定の裏付け」
静岡県は29日、熱海市伊豆山の大規模土石流の発生原因を技術的に調べる検証委員会の第4回会合を県庁で開き、逢初川源頭部に造成された盛り土内部に周辺から地下水が集まり、盛り土(積み上げた残土)が軟らかくなって崩落した可能性を最終報告案として示した。委員はその可能性が解析(シミュレーション)で一定程度裏付けられたとする見解で一致した。 県の調査によると、源頭部には元々、水を通しやすい自然の土砂がたまっていて、地下水が湧き出る場所だった。その上に盛り土(残土処分場)が造成され、水を通しにくい残土が外部から持ち込まれて積み上げられた。 県は会合で、大雨の影響で残土の下部に地下水がたまって水圧が高ま
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逢初川砂防 国「上流全体の規制を」 98年申請時、静岡県放置
熱海市伊豆山の大規模土石流の発生源となった逢初(あいぞめ)川上流域で残土投棄などを制限する砂防規制が見送られていた問題で、県が1998年に上流の一部に規制範囲を限定して国に申請した際、国が上流全体を規制範囲に含めるよう再検討を求めていたことが、24日までの静岡県への取材で分かった。県は上流域の地権者の反対を理由に規制範囲を限定する方針を変えず、上流全体の規制は「今後進める」と国に回答していた。 しかし、県はその後、規制範囲を砂防ダム付近に限定したまま放置した。国の要請に応じて上流全体を規制していれば、昨年7月の土石流で崩落した盛り土(残土処分場)が規制対象に含まれ、搬入の初期段階で残土投棄
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静岡県盛り土規制、周知期間短く混乱 7月1日施行、相談殺到
盛り土(積み上げた残土)の崩落が被害を拡大させたとされる熱海市伊豆山の大規模土石流を受け、7月1日に施行される県盛り土規制条例。3月の県議会で制定されたが、周知期間が短いことや制度の複雑さから県に相談が殺到し、関係業者から事業の遅れを懸念する声が上がっている。県は他県にも同様の規制があるとして粘り強く協力を求める方針。混乱の中での“船出”となる新条例は、野放図な残土投棄の歯止めになるのか。=関連記事26面へ 「工事が新条例の対象かはっきりしない」「他の法令との関係は」―。施行まで1カ月を切った6月上旬。静岡市葵区で開かれた新条例の説明会の終了後、会場に残った建設業
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わが子の出会い支援 親同士が交流 静岡で「代理婚活」イベント
子どもの結婚を支援するため、子どもに代わって親同士が交流してお見合いのきっかけ作りをする代理婚活イベント(静岡市主催)が19日、同市駿河区で開かれた。30代で独身の息子や娘がいる同市内の7人の父母が参加し、わが子に紹介できそうな相手を探した。 それぞれの父母が組み合わせを替えて10分間ずつ対話。子どものプロフィルや写真を示しながら性格や価値観、趣味などの情報を交換し、子ども同士の共通点や相性を探った。 娘の相手を探そうと参加した親は取材に「子どもの将来が心配で、すがるような思いで参加した。(婚活で主流になっている)マッチングアプリは相手がよく分からず不安。行政が主催するイベントなら安心で
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記者コラム「清流」 大都市住民の「人ごと」
「結局はみんな、人ごとだったのではないか」 熱海市伊豆山の大規模土石流の起点にあった残土処分場(盛り土)の関連取材で千葉県を訪ねた際、人災はなぜ繰り返すのかという問いに返ってきた答えだ。残土問題に詳しい女子栄養大名誉教授の佐久間充さん(85)は「神奈川の土砂を他県に持ち出し、神奈川の人は何の関心も示さない」と嘆いていた。残土崩落事故は全国で相次いでいたのに大惨事を防げなかった。 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題もしかり。対策を十分に議論しないまま、県内区間の早期着工を促すJR東海の社長や他県の知事の発言を聞くたびに、大都市の住民にとって、流域の懸念は「人ごと」なのだろうと感じる。
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逢初川上流域の砂防規制見送り 県の説明、信ぴょう性疑念【熱海土石流】
昨年7月、盛り土崩落に伴い土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川上流域で盛り土などの砂防規制が約20年間見送られていた問題で、静岡県が地権者の同意取得が必要だと判断した根拠と説明していた行政手続きの解説書に、同意取得が必要だとする文言が記されていなかったことが、14日までの取材で分かった。地権者の不同意を理由に砂防規制を見送ったと主張してきた県の説明の信ぴょう性が揺らいでいる。 県が根拠としてきた解説書は、国土交通省砂防部が監修した「砂防指定地実務ハンドブック」。地権者の同意について「得られるよう努める必要がある」と記述している。県はこの解説書を引用し、同意が取れないから規制を見
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静岡県の主張迷走 砂防規制放置問題 「他の法令と重複」に疑問の声【熱海土石流】
昨年7月に土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川の上流域で砂防法に基づく規制区域を砂防ダム付近に限定し、上流域全体の「面指定」をしないまま約20年間放置していた問題を巡り、県の主張が迷走している。県は放置した理由に「他の法令との規制重複」を挙げるが、砂防法以外の法令は土砂投棄や盛り土造成が一定の面積を超えるまで規制の対象にならず、重複しない。面積に関係なくこれらの行為を制限できる砂防規制が適用されていれば、土砂搬入の早い段階から強い規制力をもって対応できていた可能性がある。 ■「管理された植林」 県は砂防ダムを設置した1999年に「渓流の荒廃は進んでいるものの流域上部は管理さ
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落ち残り東側「崩れやすい」 神奈川東部から搬入か 静大教授が土砂分析【熱海土石流】
静岡大とふじのくに地球環境史ミュージアムの研究グループは3日、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近で落ち残った盛り土のうち、東側の土砂を分析した結果を発表した。県庁で記者会見した同大の北村晃寿教授(古生物学)は、西側で落ち残った盛り土と比べて粒子が細かいため、比較的崩れやすい土砂の可能性があると指摘した。搬入元はこれまで分析した土砂と異なり、神奈川県東部が有力という。 北村教授は3月30日と5月2日、崩れずに残った盛り土の一番東側に当たる斜面で土砂を採取し、残った盛り土の西側部分の土砂と比較した。共に県外から持ち込まれたとされる黒色の土砂。 分析の結果、土砂に含まれる貝殻の種類や鉱物など
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熱海土石流 砂防規制放置、県「地権者の同意得にくいと判断」
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、土石流危険渓流の逢初(あいぞめ)川上流域で盛り土を規制する区域「砂防指定地」の拡大を見送り、約20年間放置していた問題で、静岡県は2日、規制拡大を見送った理由に関し「(地権者の)同意を得にくいと判断した」と推測する見解を発表した。ただ、当時の関係職員にヒアリングは実施しておらず、地権者との交渉記録など具体的な根拠は示さなかった。 関係職員に聴取していない理由について、県庁で記者会見した難波喬司理事は「当時の担当者の判断というよりも、われわれが一般的にどのような事務をやっているかを考えれば、なぜ、このように指定(申請)したか分かる。ヒアリングするまでもない事
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熱海土石流 搬入県外土砂、崩落発端か 砂防ダム堆積物を分析
静岡大の北村晃寿教授と矢永誠人准教授は27日、昨年7月に発生した熱海市伊豆山の大規模土石流の際に逢初(あいぞめ)川上流域の砂防ダムにたまった土砂を分析した結果、関東方面の県外から搬入されたとみられる黒色の土砂が多く堆積していたと発表した。北村教授は「(土石流起点付近の)盛り土崩落の始まりは黒色の土砂だった可能性が極めて高い」としている。 盛り土崩落に伴う土石流は、複数回にわたって下流域を流れ下ったことが住民の証言などで確認されている。特に大規模崩落に至る直前に最初に流れ始めた土石流は「第0波」とされ、盛り土の約400メートル下流側にあった砂防ダムでせき止められた可能性が高い。そのため、ダム
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静岡人インタビュー「この人」 窪野茂さん(袋井市)静岡県SDGsビジネスアワード最高賞を受賞した
専務を務める袋井市の商社「TSK」で開発した高効率の磁石加熱装置「マグヒート」が脱炭素化技術として評価され、初めて開催された「県SDGs(持続可能な開発目標)ビジネスアワード」の最高賞に選ばれた。私立大学の事務職から転職し、2007年に父・忠さんの経営する商社に入った。49歳。 ―マグヒートの開発経緯は。 「マグヒートは磁石を高速回転させ、発生する熱を使う仕組み。磁石に詳しかった技術部長から、扇風機に磁石を付けて10円玉を近づけると温まると言われたのがきっかけ。実際にやってみたら、本当に温まった。配列を工夫するうちに、より早く温まるようになった」 ―アワードで評価されたが。 「これま
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復帰50年 沖縄の矛盾、静岡県も関心を 「語る会」が写真展
沖縄の実情を静岡県内の人にも知ってもらいたい―。県内の沖縄関係者でつくる団体「静岡・沖縄を語る会」は、そんな思いを抱きながら10年前の発足以来、地道な活動を続けている。15日の日本復帰50年の節目に合わせ、静岡市内で写真展を企画した。復帰後に発展した沖縄の歩みを振り返りながら、「在日米軍の状況は今も変わっていない」と日米地位協定や基地負担の課題を指摘する。 団体メンバーは350人程で沖縄と何らかの接点のある県内在住者が大半。定期的な会報発行や講演会、街頭活動などを通じ、沖縄の現状を伝え続けてきた。 写真展の名称は「沖縄復帰?50年」とした。米国の施政下だった沖縄を旅行した際、米軍の関係車
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コロナ困窮特例貸し付け リーマン時の4倍超 静岡県内
新型コロナウイルス禍で収入が減った世帯に無利子で生活費を特例貸し付けする国の制度で、静岡県内の貸付総額が3月末時点の累計で123億4000万円と、リーマン・ショック時の4.2倍に達したことが6日までの県社会福祉協議会への取材で分かった。コロナ禍に伴う経済的困窮の深刻さを浮き彫りにする一方で、支援する現場や識者からは生活再建に向けて制度の見直しを求める声が上がっている。 業務を担う県社協によると、制度が始まった2020年3月から今年3月までの貸付件数は4万2337件。20年度は2万3551件、総額59億9153万円で、金額が膨らんだ21年度は1万8693件、63億3487万円だった。繰り返し
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熱海市伊豆山 残った盛り土の排水対策 静岡県が前倒し着工へ
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近で崩れずに残っている盛り土の一部について、県は28日から排水対策工事に着手する方針を固めた。27日までの県関係者への取材で分かった。当初は5月の大型連休明けの着工予定だったが、梅雨入り前の早期完成に向けて前倒しし、同月中の完成にめどが立ったとしている。 排水対策は崩落部分の西側に残った盛り土に施工する。深さ2、3メートルの地中に、小さな穴の開いた排水管を南北40メートル、東西30メートルの丁字形に埋設し、地下に浸透した水を排水管に集める。集まった水は既設の水路を使って源頭部の南側にある別の沢に流し、残った盛り土に水が流入するのを抑制する。 集まった水を
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田代ダム取水抑制案、JR初提示 専門部会、少雨時水量ただす【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題の対策を議論する県有識者会議の地質構造・水資源専門部会が26日、県庁で開かれ、JR東海は大井川最上流部から富士川に水を流している東京電力田代ダムの取水を抑制する方策案を説明した。県側が求める減水対策「トンネル湧水の全量戻し」の方法としてJRが提示したのは初めて。委員からは少雨時に水量が確保されるのかを十分に検討すべきだとする意見が相次いだ。 田代ダムの取水抑制案は、トンネル掘削時に山梨県に流出する湧水量と同じ水量の取水を抑えて流出量を相殺する案。JRの担当者は会議で「関係者の理解を得ながら東京電力と具体的な話をしていきたい」と説明した。 ただ、田代
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過去にこだわらず 再就職は視野を広げて 静岡市シニア就労支援窓口マネージャー/一ノ宮由美氏【本音インタビュー】
少子高齢化が進み、働く意欲のある高齢者の就業機会の確保が課題になっている。静岡市のシニア向け就労支援窓口「ネクストワークしずおか」は開設から3年。生涯現役を掲げる厚生労働省のモデル事業に取り組んだ経験も踏まえ、高齢者雇用の実情や今後の展望について聞いた。 ―支援窓口の状況は。 「高齢者は久々の就職活動に抵抗感があったり『受け入れてもらえるか』と不安に思ったりする。窓口を訪れる一人一人の状況を聞き、ハローワークやシルバー人材センター、行政の生活支援など、その人に合った支援先を案内している。この3年間の相談件数は延べ3500件を超えて目標を上回り、約500人の就職につながった」 ―高齢者の
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静岡県、結論まで非開示 行政対応検証の職員聴取録【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩落した盛り土の行政対応検証を巡り、県は22日までに、関係職員への聴取結果について「断片的な情報を開示すると誤解を招く恐れがある」として検証の結論が出るまで開示しないと判断した。静岡新聞社の情報開示請求への対応で明らかにした。ただ、検証作業を進める県の行政対応検証委員会は3月、参考資料として聴取結果の一部を公表していて、検証に関わる部署によって開示の判断が異なる状況になっている。 職員らによる内部検証チームは昨年11月、崩落した盛り土の行政手続きに関わった関係職員39人(退職者を含む)に対し、非公開で聴き取りを実施。県によると、担当者が手書きでメモを作り、録音は
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処分型盛り土想定なく 熱海土石流、崩落現場に適用の条例 静岡産大・小泉教授が論文
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩落した盛り土に適用された県の条例は別の目的で作られていた―。静岡産業大の小泉祐一郎教授(公共政策学)がこのほどまとめた研究論文で、1975年の県土採取等規制条例制定時に“土砂処分型”の盛り土の規制を想定していなかったことを明らかにした。残土処分が社会問題化した後も条例を見直さず、不十分な行政対応を招く一因になったと分析した。 小泉教授は、当時の関係者への聴取や過去の資料の精査によって条例制定の経緯をたどった。 論文によると、条例は74年に就任した山本敬三郎知事の意向で、当時問題になっていたゴルフ場や分譲地などの乱開発を防ぐ目的で制定さ
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ルートの水環境への影響、「名水百選」など文化的な湧水で比較 国交省の委員会【大井川とリニア】
南アルプス(大井川上流域)をトンネルで貫通するリニア中央新幹線のルートを採択した国土交通省交通政策審議会小委員会が2010年に各ルートの水環境に与える影響を議論した際、名水百選などの文化的な湧水の数で比較していたことが16日までの同省などへの取材で分かった。大井川の水源に当たる上流域に関して同省は、議論に使った調査資料に「代表的な湧水は存在しない」と記していた。 南アルプスに詳しい狩野謙一静岡大客員教授(構造地質学)は「トンネルを掘るルートの検討に文化的な名水を使うのは不適切だ」と指摘している。 小委員会は10年12月、長野県の諏訪盆地を回る伊那谷ルートと南アルプスルートを比較し、JR東
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静岡県、措置命令見送り確認せず 副知事「市に働き掛け必要だった」【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、難波喬司副知事は11日、静岡県庁で記者会見し、県の行政対応検証委員会の中間報告を踏まえた県の見解と今後の対応について説明した。盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社に対し措置命令を熱海市が見送ったことに関し、県が確認していなかったとした上で「確認して、後任者に引き継ぐべきだった」と職員間の引き継ぎが不十分だったとの認識を示した。 市は2011年6月、県土採取等規制条例に基づく措置命令を視野に対応することを決めたが、それ以降、同条例を所管する県の担当部署は市と協議せず、市は措置命令を出さなかった。難波副知事は「(県は)少なくとも市が措置命令の発出を
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「超高圧大量湧水の可能性」 JR、資料記載も説明せず【大井川とリニア】
リニア中央新幹線ルート選定時にJR東海が委託した地質調査の資料で、トンネルが貫通する大井川上流域部分に「超高圧大量湧水の発生する可能性が高い」と記載されていたにもかかわらず、水問題を議論した国土交通省専門家会議(2020年4月~21年12月)では同社が説明していなかったことが、6日までの取材で分かった。県が「消極的」と指摘する情報開示の姿勢によって具体的な減水対策の道筋がついておらず、同社の説明姿勢が改めて問われそうだ。=関連記事4面へ 調査資料は、詳細ルートが示される半年前の13年3月にJRが委託した調査会社が作成した。利水者や県の公表要請を踏まえ、JRは20年10月の同省専門家会議で本
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三保内浜を民間委託、海岸にぎわい創出へ 静岡県、本年度公募
静岡県は、静岡市清水区の清水港海岸三保地区(三保内浜)で民間事業者に管理運営を委託するエリアマネジメントの導入に向け、2022年度に事業者を公募する方針を固めた。民間の資金やノウハウを活用することで海岸のにぎわい創出を狙っていて、23年度からの開始を目指す。 県によると、エリアマネジメントを海岸に導入するのは全国的にも珍しい。 対象となるのは三保半島先端部の海岸や防潮堤背後地の一部で、面積は約4万3千平方メートル。これまでも夏季には海水浴場として使われるなど、短期間で必要最小限の面積での占用を許可してきたが、イベントが単発開催で通年利用につながらない課題があった。 三保内浜は年間を通
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ルート選定時 上流「大量湧水」JR東海認識 環境配慮書に明記せず 山梨では迂回【大井川とリニア】
リニア中央新幹線のルート選定を巡り、事業主体のJR東海が環境影響評価(アセスメント)の配慮書を公表した2011年の段階で、大井川上流域で大量湧水が発生する恐れがあると認識していたことが26日までの同社への取材で分かった。同じ配慮書で山梨県内の区間には、高圧湧水の恐れが記載され、湧水の可能性を理由にルートを回避したことが記されていた。 JRは両県の湧水の恐れを把握しながら、ルート選定への反映が異なったといえる。対応の整合性が問われそうだ。 配慮書は幅約25キロのルート帯を幅3キロの概略ルートに絞り込む段階で作成された。山梨県内のルートは甲府盆地西側にある巨摩山地付近で大きく南側に迂回(うか
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国交省、議事録公表せず ルート選定時議論【大井川とリニア】
国土交通省が、リニア中央新幹線のルートを議論した2010年の交通政策審議会中央新幹線小委員会の議事録を公表していなかったことが25日、同省への取材で分かった。同省は要点をまとめた「議事要旨」を公表しているが、会合は非公開で、誰がどのような発言をしたかは分からず、ルートの選定過程や議論の検証に支障を来す事態となっている。 同小委員会は同年10月の第10回会合を非公開とし、ルートや環境、中央新幹線の意義と必要性、走行方式などを議論した。公開された直前の第9回会合の議事録によると、事務局の同省担当課長が「議事録については後日公開するという形での公開性を担保した形での開催を」と説明し、次回会合の非
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生物多様性部会 JRの平均値試算問題視 沢ごとの減水予測提示【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題で、県は24日、上流域の動植物に関する影響を検討する生物多様性専門部会を昨年10月以来、5カ月ぶりに開いた。JR東海は影響が生じる恐れがある沢ごとの減水予測と対策を記した「沢カルテ」を新たに示した。委員側は減水予測が年間や月間の平均値で試算された点を問題視し、少雨時を前提にした対策をJRに求めた。 JRが今回提示した沢カルテは五つの支流(蛇抜沢、悪沢、スリバチ沢、蛇沢、奥西河内)が対象で、静岡市が環境影響評価時にルートの回避を求めた西俣川との合流点付近など本流部は作成していない。三宅隆委員(NPO法人県自然史博物館ネットワーク副理事長)は本流の沢カル
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ルート決定過程開示を 知事、国とJRに要望【大井川とリニア】
静岡県の川勝平太知事は22日の定例記者会見で、南アルプス(大井川上流域)をトンネルで貫通するリニア中央新幹線のルート選定について「詳細な決定過程を県民としては正確に知る必要がある」と述べ、ルートを決めた国土交通省やJR東海に対し、調査情報の開示を求める考えを示した。ルート選定の際、水資源や生態系に与える影響の調査がずさんだったと問題視した。 JRが水資源への影響を具体的に説明したのはルート決定後の国交省専門家会議だったと指摘し、「(ルート選定時に)きちんとした調査や説明がなされていないとすれば、(選定は)基本的に間違っている。いかに調査がずさんだったか、ルートが急に決められたのかを示してい
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JR、合流点回避せず ルート選定時、静岡市は下流側へ設定要求【大井川とリニア】
リニア中央新幹線の計画段階で南アルプス(大井川上流域)をトンネルで貫通するルートを選定した際、トンネル工事による水環境への影響を懸念して支流との合流点を避けるルート設定を求めた静岡市の意見に対し、JR東海が「影響は小さい」として対応していなかったことが、18日までの市などへの取材で分かった。JRは合流点を通るルートを決めた後になって、水環境への具体的な影響を公表していた。 JRはルートを絞り込む段階の2011年6月、支流の西俣川との合流点付近を通る幅3キロの概略ルートを示した。この直後、市はJRに提出した意見書で「東俣、西俣の合流点付近で大井川を越えるように見えるが、この計画では大井川の東
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大井川上流域 堆砂対策計画の策定着手 静岡河川事務所
国土交通省静岡河川事務所はこのほど、静岡市葵区の同事務所で有識者による会合を開き、大井川の長島ダムより上流を対象にした総合土砂管理計画(第2版)の策定作業に本格的に着手した。第一段階として最上流の田代ダムから畑薙第一ダムまでの土砂の流れを把握するモデルを構築する。2025年度の策定を目指し、具体的対策の検討を進める。 大規模なダムは土砂が下流に流れるのを阻害する。畑薙第一ダムは年約90万立方メートルの土砂が入り込んで容量の47%(19年度末)が埋まり、井川ダムは年約80万立方メートルの土砂流入で容量の33%(同)が埋まっている。 土砂の堆積でダムに水をためられる量が減少し、下流に水を供給
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水量、水質維持を要望 大井川2漁協、知事に【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、中下流域を管轄する大井川漁協(鈴木敏夫組合長)と新大井川漁協(鈴木捷博組合長)の役員が11日、県庁に川勝平太知事を訪ね、水量と水質の現状維持を要望した。 要望書には「近年は気象の変化も加わって冬期の表流水が国の定めた維持流量(河川の機能を維持するために必要な水量)を割り込み、今以上の表流水の減少は魚類への致命的なダメージになる。流量保全は喫緊の課題だ」と明記した。 大井川漁協によると、昨年のアユ漁獲量は渇水の影響で例年の半分に減った。川根本町の町長を昨年まで務めた同漁協の鈴木組合長は「リニア工事が始まると水環境が大変厳しくなる。水量も当然だ
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JRは継続対応を/予測できないこともある 国交省専門家会議・第13回議事概要【大井川とリニア】
国土交通省はこのほど、リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を議論する専門家会議第13回会合(昨年12月19日)の議事録を公表した。中間報告案について意見交換し、最終的な取りまとめを行った。静岡新聞社は匿名の議事録と傍聴取材を元に発言内容をチェックし、実名化して概要をまとめた。 リスクへの対応 徳永朋祥東京大教授「突発湧水の議論もあるし、地下のトンネル掘削では予測できないことが起こり得る。その時にはどのような対処をする必要があるか準備する観点で、リスク(減水や水質悪化の可能性)対応やモニタリング(継続的な計測)計画を評価し、確認した段階。リスク要因に対して準備や対処ができたので『全て
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川勝知事「ルート選定時、説明なし」 選定経緯に疑問呈す【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、川勝平太知事は7日の定例記者会見で、国土交通省やJR東海が南アルプス(大井川上流域)をトンネルで貫通するルートを選定した際、水資源や生態系への影響に関する説明を受けていなかったとし、選定の経緯に関し「正確に知りたい」と述べた。 南アルートは、2010年10月に国交省交通政策審議会の小委員会が長野県の諏訪盆地を経由するルートと比較した上で採択した。その後、JRが幅25キロのルート幅から絞り込んで13年9月に詳細ルートを示した。 川勝知事はルート選定時、水資源や生態系に関する国交省やJRの説明は「皆無だった」とし、「水について問題意識を持つきっ
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副知事「関連した開発行為」 熱海土石流、「第二の盛り土」巡り答弁
静岡県議会2月定例会は3日、自民改革会議の藤曲敬宏氏(熱海市)、佐地茂人氏(静岡市駿河区)、鳥沢由克氏(裾野市)、ふじのくに県民クラブの林芳久仁氏(静岡市清水区)が一般質問を行った。熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、難波喬司副知事は「第二の盛り土」と呼ばれるエリア付近で複数の開発行為の関連性を指摘した上で、「森林法に照らして問題がある」とする見解を示した。藤曲氏への答弁。 指摘の箇所は土石流の起点となった逢初(あいぞめ)川源頭部の南側にある尾根の斜面にあり、土砂が投棄されている。尾根にある太陽光発電施設や森林を伐採して造成した更地が近接している。 難波副知事は、太陽光発電施設と森林伐採、
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黄瀬川大橋、架け替えへ 昨年豪雨被害【静岡県議会一般質問】
静岡県議会2月定例会は2日、自民改革会議の西原明美氏(藤枝市)、坪内秀樹氏(清水町・長泉町)、中沢公彦氏(浜松市東区)、ふじのくに県民クラブの杉山淳氏(静岡市駿河区)が一般質問を行った。難波喬司副知事は昨年7月の豪雨被害を受けた、沼津市と清水町の境を流れる黄瀬川の黄瀬川大橋について、災害対応への強化などを理由に全面的に架け替える方針を表明した。坪内氏への答弁。 架け替えの理由に関し「水の流れを妨げている橋脚の数を減らし、災害リスクを低減することが必須。(橋の)道路幅が狭い問題があり、快適性を向上させる必要がある」と説明した。 架け替え工事期間中の交通を確保し、周辺への影響を抑えるために、
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静岡県知事、空港新駅「取引材料にならず」 トンネル工事の水問題で認識【大井川とリニア】
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の水問題を巡り、川勝平太知事は22日の定例記者会見で、県がJR東海に要望していた東海道新幹線の静岡空港新駅の設置について「(水問題の)取引材料とは到底言えない」とする認識を示した。 静岡空港を含めた牧之原台地の水利用が大井川に依存していることを挙げ「トンネルを掘って結果的に水が枯渇したり、流量が不安定になったり、水質が悪化したりして、周りの人が生きていけなくなったら、空港としての機能を持てない」と説明。「トンネル工事の安全性、(南アルプスの)生態系の保全、(大井川の)命の水の確保が確実にできるという見通しが立った時に初めて話題になる」と述べ
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南アルプス学会設立 静岡県、若手研究者育成支援へ
静岡県は15日、ユネスコエコパークに登録されている南アルプスの環境保全に向けて南アルプス学会を設立した。オンラインを交えた設立総会で、県の環境保全基金を活用して若手研究者を資金面で支援する制度を2022年度中につくり、調査研究で明らかになった実態や特性を踏まえて解決すべき課題を整理する方針を確認した。 同学会は生態学や地質学、環境社会学など幅広い分野の県内外の若手研究者で構成され、静岡市や川根本町の行政関係者や団体も加わった。会長には、南アの環境保全と利活用を目指す官民組織「南アルプスを未来につなぐ会」副会長の佐藤洋一郎・ふじのくに地球環境史ミュージアム館長が就いた。 川勝平太知事は「南
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「津波警戒区域」一斉指定へ 未指定の沿岸15市町に 静岡県、22年度
静岡県は2022年度、津波対策の強化を促す「津波災害警戒区域」が未指定の沿岸15市町で、同区域の一斉指定を目指す方針を固めた。指定に伴い、区域内の社会福祉施設などの避難確保計画作成を進めることで国の財政支援を得やすくなり、ソフト、ハード両面で防災対策を加速できると判断した。沿岸部で避難施設の空白域が解消されつつあるため、「津波避難安全確保エリア」などの呼び名を付けて安全性をアピールすることも検討する。 津波災害警戒区域は海に面した21市町のうち伊豆半島の6市町で県が指定済み。ただ、県が20年度に未指定15市町に意見聴取したところ、湖西市を除く14市町が「指定を必要としない」と回答。「メリッ
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静岡県知事「国交省会議に県会議委員を」 生物多様性部会の2人要望へ【大井川とリニア】
川勝平太知事は8日の定例記者会見で、リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、生物多様性への影響を議論する今後の国土交通省専門家会議の委員に関し、県有識者会議の生物多様性専門部会から2人の委員を入れるように同省に要望する意向を明らかにした。 国交省会議は2020年4月から21年12月まで約1年8カ月間かけて水資源への影響を議論した。7人の専門家が委員を務め、県会議の地質構造・水資源専門部会の委員2人が含まれた。 リニア工事がもたらす生物多様性への影響については、県会議の生物多様性専門部会の議論が先行している。斉藤鉄夫国交相は「国交省の会議でも議論する」と1月末に表明した。 川勝知
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記者コラム「清流」 JRはアセスの重み理解を
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、JR東海が環境影響評価(アセスメント)で、どのように対応したのか調べている。JRに取材を申し込んでも、工事担当者は応じず、広報担当者に質問文を送って10日以上たっても回答がない。 斉藤鉄夫国土交通相は昨年末、金子慎社長を同省に呼び「地域の理解と協力が何にも増して不可欠だ」と異例の指導を行った。7年前、アセス時の大臣意見もほぼ同じ内容。当時、JRは大臣意見に答える形で「質問に対し迅速に回答し、理解を深めるよう努める」と文書に記していた。 依然として地域の理解を得ているとは言い難い。アセスや大臣指導の重みをどこまで理解しているのだろうか。
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「工事考え直す段階」川勝知事が見解 流域市町の意見受け【大井川とリニア】
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の水問題を巡り、川勝平太知事は26日の定例記者会見で、現時点で着工は認められないと流域10市町や11の利水団体と認識が一致したことを踏まえ、同トンネルの工事計画に関して「一度考え直す段階に入った」との考えを示した。流域の市町や団体から提出された意見の概要も公表した。 川勝知事は、国土交通省専門家会議中間報告について「(報告内容を)理解した関係者が着工を受け入れることができないと言ったので、JR東海は(流域の理解を得なければ着工しないとした)約束を守らなくてはならない」と指摘。JRの対応に関しては「このままだと前に進めないことが示された。私が
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「着工容認できず」流域一致 静岡県、JRと国に見解送付【大井川とリニア】
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の水問題を巡り、静岡県は26日、国土交通省専門家会議の中間報告を踏まえて流域10市町(島田、焼津、掛川、藤枝、袋井、御前崎、菊川、牧之原、吉田、川根本)と土地改良区など11の利水団体の見解を取りまとめた結果、「現状では工事は認めることのできる状況ではない」とする認識で一致したと明らかにした。この認識を記した書面をJR東海と国土交通省に同日送付した。 書面では、工事中のトンネル湧水全量戻しの方法が示されておらず、水質への影響、トンネル残土の処理方法などの議論が不十分だと理由を説明。生態系への影響についても国交省会議や県有識者会議専門部会で適切
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流域「影響回避策 議論を」 自治体首長ら訴え 静岡県、JRに見解送付へ【大井川とリニア】
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の水問題を巡り、国土交通省専門家会議の中間報告を踏まえて20日に開かれた大井川利水関係協議会。流域自治体の首長からは、県有識者会議の専門部会で具体的な影響回避策の協議を継続するよう求める意見が相次いだ。利水団体からは、水源を貫く南アルプスルートの変更を求める声もあった。 協議会には流域10市町(島田、焼津、掛川、藤枝、袋井、御前崎、菊川、牧之原、吉田、川根本)の首長らと11の利水団体がオンラインなどで出席。「現状では工事を認められる状況にない」という県の認識に対し、協議会終了後の記者会見で流域市町や利水団体の代表者が賛同の意向を表明した。
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「地質データ不十分」 静岡県、国交省中間報告に意見書【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、静岡県は14日、国土交通省専門家会議の中間報告を踏まえ、県有識者会議の地質構造・水資源専門部会としての意見書を同省に送った。水量予測の精度を高めるため、地質データを追加して取得する必要性を指摘した。工事による上流部の表流水枯渇は、東京電力田代ダムにも影響するとし、枯渇を回避する提案も求めた。 同省は昨年12月末、中間報告に関する意見交換と情報共有を目的に、県専門部会としての意見や質問をまとめるよう県に依頼した。これを受けて県は各委員の意見をまとめた。 意見書は、国交省会議が流況のデータを整理したとする一方で「地質に関する新規データはほとんど
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リニア着工「利水関係者の総意必要」 水量、生態系…分野別見解示す方針 国交相中間報告踏まえ 知事会見
川勝平太知事は11日の定例記者会見で、リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、静岡県内区間の着工を認めるかどうかの判断について「水量に関わるものは関係者全てで意見集約する必要がある」と述べ、着工には利水関係者の総意が必要になるとの認識を明らかにした。国土交通省専門家会議が水量に関する中間報告をまとめたことを踏まえ県として分野別に意思表示する必要性にも言及した。 専門家会議は中間報告で、工事をしても水量が維持されるとしたJR東海の予測は「不確実性を伴う」と指摘し、JRの提示した減水対策は県や利水者の求める「工事期間中を含めたタイミングでのトンネル湧水の全量戻し」に該当しないと判断した
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南アルプス認知度向上を 調査研究組織設立へ つなぐ会初理事会【大井川とリニア】
南アルプスの自然環境保全と利活用を目指す官民組織「南アルプスを未来につなぐ会」(会長・山極寿一総合地球環境学研究所長)が7日、県庁で初の理事会を開き、活動方針の作成に向けた課題を整理した。富士山や北アルプスに比べて認知度が低いという意見が相次ぎ、現地での学術的な調査研究などを通じて南アルプスの特性や実態を明確にする方向性を決めた。 松井孝典千葉工業大学長は「ほとんどの人が南アをよく知らない」と問題提起し、秋道智弥山梨県立富士山世界遺産センター所長は「南アに何があるのか。特異的な現象やおかしいと思うことをもう少し調べないと」と注文を付けた。 会では調査研究の中核組織として学術フォーラムを
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湧水県外流出「期間拡大も」「長野側多くなる」 反映されない意見、他にも 国交省中間報告【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、国土交通省専門家会議が昨年12月に取りまとめた中間報告が会議内容を十分に反映していなかったとみられる問題は、静岡新聞社が同30日付朝刊で報じた他にも、複数箇所で議論を反映したとは言えない記述があった。南アルプストンネル工事に伴う湧水の県外流出期間がJR東海の想定より延びる可能性に触れた議論など、流域の利水者の関心が高い論点も含まれている。 静岡新聞社が作成した「実名化議事録」との照合で、5日までに判明した。 トンネル工事中の山梨、長野への湧水流出に関する部分については、第12回会議(昨年9月)で沖大幹委員(東京大教授)が「(JR東海が)10
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川勝知事「着工判断、県側に委ねられた」 国土交通省専門家会議・中間報告【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、静岡県の川勝平太知事は22日の定例記者会見で、国土交通省専門家会議の中間報告を受けて「(着工を)受け入れるのか、受け入れないのか判断は県側に委ねられている」と述べ、斉藤鉄夫国土交通相から21日に指導を受けたJR東海に対しては「丁寧に分かりやすく説明すること」を要請した。 県有識者会議で中間報告の中身を精査する方針を明らかにし、減水対策として求める「トンネル湧水の全量戻し」の具体的な方法を含めて「詰めるべき内容がたくさんある」との認識を示した。 中間報告で「極めて小さい」と表現された中下流域の地下水量への影響は、「トンネル湧水の全量を戻せば」
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データ開示に成果も、根本的課題踏み込まず JR指導役・国交省会議【大井川とリニア】
JR東海の指導役として大井川中下流域の水利用に関する中間報告を19日にまとめた国土交通省専門家会議は、データ開示が不十分だった同社からデータを引き出し、水が減るリスクを認めさせて対策を促すなど一定の成果を挙げた。ただ、大井川直下など重要箇所の地質調査や影響回避の具体的な対策など根本的な課題に踏み込まず、指導不足の面は否めない。 全13回の傍聴取材を振り返ると委員同士の会議内での意見は的を射た指摘が多かった。問題は事務局を担った同省鉄道局による会議運営だ。会議の傍聴を一部関係者に限定するなど、透明性や中立性を巡り流域に不信感も生んだ。鉄道局は南アルプスルートを含むリニアを事業認可した立場にあ
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浜松の新野球場「ドーム」「半ドーム」選択肢 静岡県が構造案
静岡県は14日の県議会建設委員会で、浜松市西区の遠州灘海浜公園篠原地区に整備する新野球場の構造に関し、ドームではない2パターンを示した従来案に加えて、全て屋根で覆う「ドーム型」と部分的に屋根で覆う「半ドーム型」の二つの選択肢を追加した資料を公表した。ドーム型は建設費を「大きい」とする一方で経済波及効果や防風、光害の対策効果も「高い」とする現時点の評価を記した。 公園緑地課によると、アカウミガメの生態に与える影響を考慮して選択肢を追加したという。各項目の評価内容は基本計画策定を通じて今後、具体化、数値化していく。 資料によると、「半ドーム型」は「ドーム型」に比べて経済波及効果や防風、光害の
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年1億トンは「影響小」か/中間報告、客観的事実を 国交省専門家会議・第12回議事概要【大井川とリニア】
国土交通省は13日までに、リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を議論する専門家会議第12回会合(9月26日)の議事録を公表した。同省が作った中間報告案について意見交換し、オブザーバーの難波喬司副知事も発言した。静岡新聞社は匿名の議事録と傍聴取材を元に発言内容をチェックし、実名化して概要をまとめた。 【予測と現実の違い】 森下祐一静岡大客員教授「(流量予測について)シミュレーションはあくまでも計算なので、実際の現実と違うということを書き込んでおく必要がある」 徳永朋祥東京大教授「20年後か何年後か知らないけれども、この計算では、ある時期がたつと、降雨と(地質の)透水性、トンネル位置
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脱炭素化へ 田子の浦と御前崎の2港追加【静岡県議会知事答弁】
川勝知事は、脱炭素化に向けて港湾機能を高度化する「カーボンニュートラルポート(CNP)」に関し、先行して議論を始めている清水港(静岡市)に加えて田子の浦港(富士市)と御前崎港(御前崎市)でも、今後の取り組みや工程をまとめた形成計画を策定する方針を明らかにした。小長井氏への答弁。 CNPは産業拠点になる港湾で温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすることを目指す取り組みで、国は形成計画を策定した全国の約20港で先行して取り組みを支援する。 川勝知事は「各港の特性を踏まえたカーボンニュートラルポート形成計画を策定し、その実現に取り組む」と述べた。 県港湾企画課によると、清水港の形成計画は2
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リニア水問題、JR環境アセス不十分 静岡県議会で副知事
静岡県議会12月定例会は6日、自民改革会議の木内満氏(富士宮市)と、ふじのくに県民クラブの伴卓氏(富士市)が代表質問を行った。リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、難波喬司副知事はJR東海の環境影響評価(アセスメント)に関し「当初の評価が不十分だった」と指摘した上で、現在のJRの姿勢では流域の理解を得られないとする見解を明らかにした。伴氏への答弁。 JRは2011年に環境影響評価法に基づく手続きを始め、14年に評価書をまとめた。難波副知事は当時のJRの評価について「環境影響を回避、低減する努力を十分に行っていない」とする認識を示した。その根拠として、JRが評価書をまとめた後にな
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盛り土崩落部、湧水80カ所 熱海土石流検証委、工法妥当性確認へ
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、県は26日、技術的な発生原因を調べる検証委員会の第2回会合を県庁で開いた。土石流の起点になった盛り土崩落部に地下水の出る湧水点が約80カ所あり、一定量の地下水が盛り土内に流入していた可能性が高いとする調査結果を報告した。ただ、同検証委は施工状況などの情報が不足して発生メカニズムの特定は困難と判断し、今後は盛り土工法の妥当性に重点を置いて検証を進める方針を確認した。 県は赤外線を使って地下水が湧き出ている湧水点を調べ、崩落部の西寄りに多かったことを確認した。地質を調べるボーリング調査によって、北側の鳴沢川流域から逢初(あいぞめ)川に地下水の一部が流入してい
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逢初川整備方針策定へ 静岡県、復旧加速へ考慮 熱海土石流
静岡県は19日までに、熱海市伊豆山で7月に大規模土石流が発生した逢初(あいぞめ)川の河川整備基本方針を策定する方針を固めた。基本方針の策定は県内の中小河川で順次進めているが、逢初川は土石流災害の復旧を考慮して優先度を高める必要があると判断した。年内に開催する県河川審議会に諮問する。 河川整備基本方針は長期的な視点に立ち、過去の水害発生状況や河川環境、文化などを踏まえ、将来の河川や流域をどのようにするのかを定める。策定時は同審議会の意見を聴かなければならない。 基本方針ができれば、今後20~30年の河川改修の規模や箇所などを具体的に盛り込んだ河川整備計画の策定にもつながる。河川改修に国費を
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県職員の聴取開始 盛り土行政手続きを担当 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で崩落した盛り土の行政手続きを巡り、県は15日、手続きを担当していた職員らに対する聴取を開始した。今後1カ月間をめどに退職者を含めて聞き取り、公表済みの公文書に残っていない業者とのやりとりなどを確認し、行政手続きの検証作業に生かす。 難波喬司副知事をトップとする検証チームが、県の出先機関などで行政手続きを担当していた職員から非公開の場で事情を聴く。まずは職員約30人を対象とし、必要に応じて対象者を追加していく。聴取の結果は12月に設置する第三者委員会に報告するという。 県によると、職員への聴取を通じて、情報の共有状況や盛り土崩落の危険性の認識、盛り土の崩落
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盛り土新条例案 土地所有者に“監視”義務 静岡県方針
熱海市伊豆山の大規模土石流で被害を拡大させたとされる盛り土の規制強化を巡り、県の上原啓克土地対策課長は8日の県議会建設委員会で、新たに制定を目指す条例で土地所有者の義務を定める方針を明らかにした。土地所有者に不適切な盛り土を造成させない監視の役割を課すのが狙い。定期的な施工状況の確認と、許可内容と異なる施工を確認した場合の県への報告などを義務化する。 現行の県土採取等規制条例には土地所有者の義務が明示されていない。新条例案では、許可申請する業者に土地所有者の同意書の提出を求め、土地所有者に義務付ける事項を確認させる。上原課長は「(施工業者に)土地を貸す土地所有者にも責任を持って盛り土を監
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大井川湧水の全量戻し、工事中も含む 知事、流量問題で見解
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、川勝平太知事は6日の定例記者会見で、静岡県や利水者が求める減水対策「トンネル湧水の全量戻し」について、減水の影響が大きくなる貫通前の工事期間中も湧水を大井川に戻さない限り着工は認めず、JR東海が山梨、長野側から進めている同トンネル工事を中止すべきとする見解を示した。 同トンネルは大井川の下を掘削するため、国土交通省専門家会議は地質や降水量などの状況次第で、中下流域の水量が減る可能性を指摘している。 「全量戻し」の意味について同社の宇野護副社長は9月、「(全量戻しの表明時は)極端に言うと工事後の話をしていた。(工事後と
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記者コラム「清流」 事後報道のむなしさ
6月末、盛り土や残土投棄の規制を巡る県と全35市町の会議が県庁で開かれていた。取材した記者は自分一人。翌日朝刊の県内政治面トップで記事を載せたが、その4日後、盛り土が大惨事の大きな要因になった。 熱海市の土石流発生後、この問題をこぞって取り上げる報道を見て、もっと早く、そして深く切り込んで報じられなかったのか、むなしさが込み上げた。取材で「行政は死者が出ないと動かない」と聞いたが、報道も同じだと自戒する。 事前の警鐘報道は難しい。「別の考えもある」「危険を過大評価するな」と批判される。それでも、リニア大井川水問題、太陽光発電施設の乱開発問題など、未然に被害を防ぐことこそ報道のあるべき姿と
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崩落地北西に新たな盛り土 熱海土石流 谷埋め、水の流れ影響か
熱海市伊豆山の大規模土石流の被害を拡大させたとされる盛り土の崩落を巡り、静岡県が13日までに過去の航空写真や地形データを分析した結果、崩落箇所の北西側にも谷を埋める形で盛り土が広がっていたことが新たに確認された。本来は谷を流れるはずの水が盛り土の崩落に影響した可能性も視野に入れ、引き続き調査を進める。 1967年に撮影された航空写真と2009年6月の地形データを比べて標高が高くなった部分を照合したところ、盛り土部分が当初の想定よりも谷の奥側に広がっていたことが判明した。別の航空写真などを踏まえると、06年9月から09年6月までの間に造成されたとみられる。造成が進むに連れて盛り土上部を通る道
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ずさんな実態明らか 熱海土石流、静岡県公表写真から読み解く
盛り土の崩落が被害を拡大させたとされる熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県が発生原因を調べる検証委員会で10日までに公表した過去の写真から、造成の経緯が明らかになってきた。土地所有者が変わった2011年2月より前に造成はほぼ完了。排水不良なども確認され、ずさんな工事の実態が浮き彫りになっている。 06年9月の航空写真を見ると、盛り土部分は森林のままで造成が始まっていない。07年5月になると森林が伐採され、09年10月には谷に残土(工事で出る不要な土砂)が運び込まれていた様子が分かる。10年10月にはその残土が盛り土として整えられ、表面に段差が造られていた。11年3月に盛り土は数十メート
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盛り土規制に最も重い罰則 「懲役2年、罰金100万以下」 静岡県議会委員会、条例改正へ
熱海市の土石流災害で被害を拡大させたとされる盛り土の規制強化に向けて、県の上原啓克土地対策課長は10日、改正する県土採取等規制条例の罰則について「2年以下の懲役、100万円以下の罰金」とする方向で作業を進める考えを示した。県議会建設委員会での答弁。地方自治法が条例で認める最も重い罰則を適用する。 同様の罰則は近隣の神奈川県や山梨県の条例に盛り込まれている。厳罰化によって罰則の軽い自治体に土砂が持ち込まれ、不正な盛り土が造られるのを避ける狙いがあり、上原課長は「実効性の高い条例になるように検討する」と述べた。 行政指導に応じない場合の事業者への対応については、厳罰化しても是正されない事例が
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熱海土石流 盛り土の検証に半年 副知事が会見、学会に評価依頼
熱海市伊豆山で発生した大規模土石流で盛り土崩落が被害を拡大させたとする問題を巡り、難波喬司副知事は27日の記者会見で、崩落の発生原因究明や行政手続き検証の作業が終わるまでに半年ほどかかるとする見通しを示した。静岡県が作成した調査報告書を学会などの学術機関に依頼する方向で調整していることも明らかにした。 県は難波副知事を中心に、盛り土崩落の物理的なメカニズムを究明するチームと、関係法令の許認可権限を持つ熱海市や県の行政手続きに関する資料を調べるチームを設置。調査結果を公表した上で第三者に評価を委ねる方針を示している。 メカニズム究明の第三者評価について、難波副知事は「調査報告書は県が作り、
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「流域の理解得られず」難波副知事、JR社長発言問題視 島田で研究協議会【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題でJR東海との協議を担当する難波喬司副知事は26日、流域10市町の首長と議長で構成する「大井川の清流を守る研究協議会」が島田市内で開いた会合で講演した。現状のJRの対応のままでは「流域住民の理解は得られない」と述べ、同社は説明内容や姿勢を改める必要があると強調した。講演後、記者団の取材に応じ、同社の経営陣と流域住民が直接対話する必要性に言及した。 難波副知事が問題視したのは、JR東海の金子慎社長が記者会見で、トンネル湧水が県外に流出しても中下流域の水利用に支障がないなどと発言した点。「(同社の)トップが科学的根拠を分かっていないのに『影響がない
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二次災害防止へ 静岡県が応急対策委員会設置 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流災害で、静岡県は6日、二次災害の発生を防ぐため、応急安全対策を検討する逢初(あいぞめ)川土石流災害対策検討委員会(仮称)を設置すると発表した。初会合を7日に県庁で開き、数回の会合を重ねて1カ月以内に結論を示す。 委員長は砂防工学が専門の今泉文寿静岡大教授とし、国土交通省の中部地方整備局と国土技術政策総合研究所、熱海市、県の担当者で構成する。 土石流によって逢初川の最上流部に設置された砂防ダムはほぼ土砂で埋まり、不安定な土砂が上流部に堆積している可能性がある。今後、大雨が降れば二次災害を発生させかねないため、検討委員会では、短期間で整備できる土砂流出防止策を検討す
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リニア国交省専門家会議 第10回議事概要を公表【大井川とリニア】
国土交通省は1日までに、リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を議論する専門家会議の第10回会合(3月22日)の議事録を公表した。データ公表の在り方や長野県境付近の地質、県外流出するトンネル湧水量を中心に議論した。 【データ公表の在り方】 沖大幹東京大教授「生データを出すのは怖いかと思うが、できる限り、モニタリング(観測)で、まずは生の値で今何が起こっているかを住民や市町村が見られるようにすることが相互理解につながるのではないか」 大東憲二大同大教授「北陸新幹線深山トンネルは1カ月おきに、掘削の進み方が早くなってからは2週間ごとに公表している。リアルタイムで情報はオープンにし
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水環境の維持、自信ない 名古屋大名誉教授 浅岡顕氏【大井川とリニア 私の視点】
地盤工学の第一人者で名古屋大名誉教授の浅岡顕さん(74)。研究グループ「ジオアジア研究会」の会長として昨年8月、リニア中央新幹線事業についてコメントを公表し、現在の技術水準で、大井川水系の水を減らさずにトンネルを掘削することには「全く自信がない」と言及した。 ―南アルプストンネルの掘削を工学的な観点でどう考えるか。 「風呂に水が張られているのを考えてみる。浴槽の上は水圧が低いが、下は深い所ほど水圧が大きい。しかし、浴槽内は『水圧プラス高さ』(水頭)が同じだから水は動かない。ところが、浴槽の壁に穴を空けると、穴の断面の水圧は大気中と同じゼロになるから水頭は急激に低下し、浴槽の水は穴から一気
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「渇水年」説明問題 JR東海社長「本質的でない」【大井川とリニア】
27日の定例記者会見でリニア事業遂行の姿勢を改めて表したJR東海の金子慎社長は、工事に伴う大井川の流量減少問題を議論する国土交通省専門家会議で、気象庁の設定した平年値を上回る降水量があり、取水制限が行われなかった2012年を同社の担当者が「渇水年」と説明していたことについて「本質的ではない話だ」と述べ、問題があるとの指摘は当たらないとの認識を示した。 JRは専門家会議で、12年の降水量データを用いて工事の影響を予測し「渇水期に流量は維持される」と結論付けた。利水者は12年のデータではなく、雨が長期間降らない厳しい条件で予測するように求めている。 金子社長は「言葉遣いは不適切だったかもしれ
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水量の大切さ理解して 森林組合おおいがわ組合長・杉山嘉英さん【大井川とリニア 私の視点】
大井川中流域で林業を営み、自然と水の大切さを熟知する森林組合おおいがわ組合長の杉山嘉英さん(66)。2005年に旧中川根町長、合併後の川根本町長として、大井川水系から富士川水系に水が流れる東京電力田代ダムの水利権更新で交渉に携わった経験から、大井川の歴史と水の重みをJR東海に理解してほしいと語る。 ―林業家にとって大井川の存在とは。 「森と海は一体で、両者をつなぐ大井川の水量は非常に大事だ。森の恵みの栄養素が駿河湾に届くように、河川に近い所での森づくりは丁寧に慎重に扱っている。経済性重視で杉やひのきを植えていた林業も、今は広葉樹を含めた自然の多様性を重視している。川に水が流れても意味がな
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記者コラム「清流」 よみがえる「想定外」
東日本大震災から10年。当時、東京電力福島第1原発事故を巡って繰り返し聞かされた「想定外」という言葉が再びよみがえってきた。リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を議論する国土交通省の専門家会議。対策の本格的な議論はこれからなのに、座長は議論の取りまとめに入るという。 全ての会議を傍聴したが、大井川直下の大量湧水や渇水時の減水対策など議論が不十分な点を挙げれば切りがなく、とても「理解」できる内容ではない。リニア開業を急ぐ国交省は会議を流域住民に公開しないまま、水資源の議論を終えようとしている。10年前の教訓は省庁を超えて生かされていないようだ。流域10市町の首長が「理解」を示すのか