テーマ : 熱海土石流災害

「おかえり、寒かったね」 熱海土石流最後の不明者 遺骨、家族の元に

 熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流で行方不明になり、今年1月に市内の土砂仮置き場で発見された女性=発生当時(80)=の骨が20日、女性の長男(57)の元に帰った。「おかえり、寒かったね。出てきてくれてありがとう」。市内で記者会見した長男は涙をこらえながら、風呂敷に包まれた遺骨と優しくほほえむ女性の遺影に語り掛けた。
 女性の骨は20日午後、熱海署から引き渡された。家族らと会見した長男は県警をはじめ消防、自衛隊、土木関係者など多くの関係者に感謝し、伊豆山の住民にも「ご心配をおかけしました。本当にありがとうございました」と深々と頭を下げた。
 同席した女性の幼なじみの女性(82)は、「毎日『早く帰ってきて』と祈っていた。本当にお疲れさま。ありがとう」と天国の女性に話しかけた。
 土石流から1年7カ月余り。被災地の復旧工事が始まっているものの、奪われた家族や破壊された古里の景色は元には戻らない。長男は「あの日で止まったままだった時計を今に合わせ、前を向いて少しずつでも歩んでいければ」と気丈に語った。
 長男は、崩落した盛り土を含む土地の現旧所有者、県、市などを相手取った損害賠償請求訴訟の原告でもある。責任をなすり付け合うような発言が目立つ被告らに、「一言でも謝ってほしい。誰にどんな責任があったのかはっきりさせてほしい」と訴えた。
 女性の骨は今年1月、熱海港芝生広場の土砂仮置き場で県警が発見した。DNA鑑定などを経て、市は今月10日、女性を災害死認定した。土石流の死者は関連死1人を含め28人になった。

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