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熱海土石流 警戒区域9月1日解除 順次帰還開始 復興は道半ば

 災害関連死を含め28人の犠牲者を出した熱海市伊豆山の大規模土石流で、市は9月1日、土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川流域の被災地に設けていた立ち入り禁止の「警戒区域」を約2年ぶりに解除する。避難生活を送る被災者が順次帰還を開始するが、河川、道路整備を中心とした復旧復興事業は途上の段階で、大部分の被災者が引き続き避難生活を余儀なくされる。

立ち入りが禁止解除される警戒区域
立ち入りが禁止解除される警戒区域

 大規模土石流は2021年7月3日に発生。二次災害の恐れがあるとして、市は同年8月16日、土石流の起点となった逢初川源頭部から伊豆山港脇の河口にかけての延長2キロを災害対策基本法に基づく警戒区域に指定した。今年3月に国が砂防ダムを完成させ、今月26日には県が源頭部の不安定土砂を撤去する行政代執行を終えたことで、警戒区域解除の条件が整った。
 市によると、今月18日現在で避難生活を送るのは112世帯(帰還希望41世帯、警戒区域外への再建希望51世帯、未定20世帯)。帰還を希望する世帯のうち、9月中に帰還できるのはわずか7世帯13人となる。電気や道路などの生活基盤が整わないため、23年度中の帰還は19世帯39人にとどまる見通し。
 市の復興まちづくり計画によると、逢初川の中流域で県が河川拡幅を行い、市が両岸に市道を整備する。いずれも24年度末の事業完了を目標にする。ただ、用地買収は県が3割、市が4割と停滞し、事業の本格化に向けた被災地住民との合意形成が求められる。
 宅地復旧を巡っては、市が宅地を買収・分譲する方式から、被災者自らが行う宅地復旧の費用の9割を補助する制度に変更。十分な説明がなく唐突だと被災者や議会から異論が相次ぎ、制度の関連予算案を削除した経緯がある。市は被災者らの意見を聴取し、制度の実施可否について9月中に結論を出すとしている。
 (熱海支局・鈴木文之)

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