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熱海土石流「盛り土規制区域 砂防法以外で可」 静岡県、再検証せず出先機関に通知

 盛り土規制区域の指定に当たり、静岡県が砂防法以外の規制力の弱い法令を優先しても構わないとする内容の通知を今年3月に各土木事務所に送っていたことが26日までの県への取材で分かった。盛り土崩落で28人が死亡した熱海土石流に関する県独自の区域指定の考え方に基づいて通知を出したと説明しているが、県に法的責任はないとしたこの考え方は県議会から再検証を求められ、妥当かどうかの結論が出ていない。

静岡県庁
静岡県庁

 通知は3月9日付で、砂防課が作成した。砂防ダムの上流域が他の法令で規制区域になっている場合、砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」に指定しなくても構わないという内容。
 砂防ダム下流域の人家を土石流から守る目的の砂防法の規制力は他の法令よりも強いが、熱海土石流で県は上流域の土地所有者に配慮して砂防法の盛り土規制区域に指定せず、急傾斜が続く地形に盛り土の造成を許した。通知について、砂防部門ではない複数の県関係者は「砂防は何もやらなくていいと読める文言だ」などと問題視している。
 杉本敏彦砂防課長は取材に、昨年7月に県が発表した考え方を根拠にしたと説明した上で「この考え方が県の現在の見解だ」と述べ、県議会の求める再検証が終わる前に通知を出しても問題はないと主張した。
 川勝平太知事は22日の記者会見で「大きな事故を起こさないために関係法令をどのように整理してやっていくかという流れの中で通知を出した」と述べる一方で、改めて通知の内容を確認する意向を示した。
 (社会部・大橋弘典)

 県独自の盛り土規制区域の考え方 砂防ダムの上流の区域は砂防法の規制区域に指定するのが国の通知では原則とされるが、県は森林法の規制区域なら砂防法の規制区域を設けなくてもいいと独自の解釈を示した。森林法との間で施設工事の調整が必要とした砂防法解説書の記載を基にしているが、この考え方は第三者検証されていない。専門家は、法令ごとに許可基準が違っていて規制の目的は異なるとし、下流域の人家を守る砂防法の代わりに森林法で対応したという県の主張を問題視している。

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