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ダム9倍の土砂搬入計画 静岡県はなぜ砂防法適用を見送ったか… 担当部署、積極関与せずか 熱海土石流

 熱海市で昨年7月に発生した土石流で砂防法の規制区域「砂防指定地」が長年放置されていた問題。静岡県はなぜ、下流域の人家を守る目的のある砂防法の適用を見送り、規制力の弱い別の法令によって残土処分場を造成する開発業者に対応したのか。砂防法以外の法令で対応できたと主張する県だが、砂防ダムの容量を大幅に上回る残土が上流の急傾斜地に積み上げられる計画があったにもかかわらず、当時の砂防関連部署が積極的に関与していなかった可能性が浮き彫りになっている。

土石流の起点(上)になった逢初川上流域。砂防ダム(下)容量9倍の搬入土砂量が届け出書に記されていた=昨年7月、熱海市伊豆山(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
土石流の起点(上)になった逢初川上流域。砂防ダム(下)容量9倍の搬入土砂量が届け出書に記されていた=昨年7月、熱海市伊豆山(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
逢初川上流域の残土投棄や盛り土を規制できた主な法律や条令
逢初川上流域の残土投棄や盛り土を規制できた主な法律や条令
土石流の起点(上)になった逢初川上流域。砂防ダム(下)容量9倍の搬入土砂量が届け出書に記されていた=昨年7月、熱海市伊豆山(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
逢初川上流域の残土投棄や盛り土を規制できた主な法律や条令

 逢初(あいぞめ)川上流域を神奈川県小田原市の不動産管理会社が開発目的で取得したのは2006年9月。崩落した盛り土(残土処分場)が造成される前から上流域は土石流危険渓流に定められ、元々、崩れやすい急斜面だった。そのため、数百メートル下流には約4千立方メートルの土砂を止められる設計の砂防ダムが設置されていた。

 ■下流人家守る法律
 07年3月、同社から市に出された県土採取等規制条例の届け出書には砂防ダムの容量の9倍に当たる約3万6千立方メートルの土砂を搬入する計画が記されていた。県砂防課は「(市に手続き権限がある)県土採取等規制条例や(県の別の部署が担当する)森林法で対応できたはずだ」と砂防法を巡る当時の判断の妥当性を強調するが、砂防ダムは機能せず土石流は防げなかった。
 そもそも残土投棄を規制できる関係法令のうち、下流域の人家を守る目的が明確なのは砂防法だけ。本紙が当時の対応を記録した4千ページを超える公文書を精査しても、砂防担当者が規制力の強い砂防法の代わりに他法令を適用できるか検討したり他法令の対応状況を確認したりした記載はなかった。複数の県関係者は「砂防担当者は他の部署と協議していなかったのではないか」との見方を示す。

 ■「記憶ないだろう」
 また、県熱海土木事務所によると、上流全体の指定を進める県の方針を記した1998年の砂防法関係文書は同事務所内の指定範囲を判断する部署には存在せず、維持管理を担当する別の部署に保管されていた。理由は不明だが、県は「昔のことなので聞いても記憶がないだろう」(砂防課)として当時の関係職員に詳細にヒアリングする予定はないとしている。
 「砂防法を適用する必要はないと当時の職員は見ていた」。川勝平太知事も10月の記者会見で当時の対応をそう説明したが、明確な経緯は示していない。

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