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特集 : 熱海土石流災害

函南 見えない盛り土「だまされていた」 官民監視へ早期公表を【絶えぬ残土崩落 熱海の教訓から㊥】

 「盛り土はあの森の向こうにある。下からは見えないね」―。函南町の丹那盆地西側にある小高い山。丹那区の溝田正吾区長(60)が指をさした先には、地元で「危険な盛り土」と呼ばれる残土が急斜面に積まれている。雑木林に囲まれ、麓にある集落からはうかがい知れない。

ソーラーパネル脇の急斜面に造成された盛り土(赤い囲み)。住民は集落(左上)への崩落を懸念する=10月、函南町丹那(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
ソーラーパネル脇の急斜面に造成された盛り土(赤い囲み)。住民は集落(左上)への崩落を懸念する=10月、函南町丹那(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
盛り土が造成された山を見上げる地元住民(右)。森林が視界を遮り、集落から盛り土は見えない=13日、函南町丹那
盛り土が造成された山を見上げる地元住民(右)。森林が視界を遮り、集落から盛り土は見えない=13日、函南町丹那
ソーラーパネル脇の急斜面に造成された盛り土(赤い囲み)。住民は集落(左上)への崩落を懸念する=10月、函南町丹那(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
盛り土が造成された山を見上げる地元住民(右)。森林が視界を遮り、集落から盛り土は見えない=13日、函南町丹那

 住民が異変を感じ始めたのは昨年の春ごろだった。同区によると、業者は地元向け説明会を開き、2019年の台風で崩れた斜面を復旧すると伝えた。以後、朝から夕方まで作業音が集落に響いていたが、住民はその作業は災害復旧工事と信じていた。
 ところが、集落と反対側にある搬入口には1日数十台のダンプカーが行き交っていた。「何かおかしい」。森林に囲まれた現場をチェックしようとした住民もいたが、業者に阻止されたという。
 住民の通報を受けた町職員が昨年4月に現場を確認した際は、既に町土砂条例の許可を得ずに相当量の土砂が急斜面に運び込まれていた。溝田区長は「あっという間に土砂が入れられた。説明会の話と違う。だまされていた」と振り返る。
 「見えない盛り土」の把握に向け、県は航空写真や3次元の地形データを活用して異変を探るが、それでも監視の要は住民の目という。丹那の事例では住民の通報後、町と地元が連携し業者に対応している。県は「普段と違う状況があれば『盛り土110番』に通報してほしい」と県民に呼びかける。
 一方、熱海土石流後の全国一斉調査で県内の「不適切な盛り土」は丹那を含め196カ所見つかったが、県は具体的な場所を公表していない。「詳細な調査で危険性を確かめ、業者の言い分を聞かないと公表できない。開発地の風評につながる」のが理由だ。地元への情報提供は業者による説明や市町の判断に任せているという。
 ただ、元県危機管理監で静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は県職員時代に地震対策として県内の土地改変箇所を公表していた。「『危険箇所』と言うと語弊がある。『人の手が入った土地』を知ってもらうのが入り口だろう」とし「周辺住民にきちんと監視してもらうためにも、一定の基準を示し、その基準を上回る盛り土は公表した方が良い」と指摘する。
 丹那では別の場所でも不適切な盛り土が問題になっている。住民の一人は「悪質な業者が他でも同じ手口で残土を入れるかもしれない」と業者名を含めた公表の仕組みづくりを求める。気付きにくい盛り土の把握に向け、官民の連携の在り方が問われている。

伊豆山の悲劇 生かせるか 上流の開発、周知されず
 熱海市伊豆山の大規模土石流で起点になった残土処分場が造成された逢初(あいぞめ)川上流域は標高350~400メートル。下流の集落からは約1キロ離れた造成地が見えない。
 ただ、上流から下流まで10度ほどの傾斜が続き、上流域は「土石流危険渓流」、下流域は「土砂災害警戒区域」だった。砂防法に詳しい行政関係者は「傾斜が10度以上の場合は崩落した土砂が止まらなくなり、土石流化する」と指摘する。
 隣接する鳴沢川流域で宅地造成が先行したが、開発範囲は逢初川上流域に広がっていった。行政指導が繰り返されたり、盛り土(積み上げた残土)が放置されていたりしたことを行政は公表せず、下流の住民に十分周知されていなかった。

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