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混乱の沼津市議会 駐車場問題、現職市議相手に市が提訴案 週明け審議 深夜まで?【ニュースBOX】

 市が現職市議を訴えるという異例の議案審議に、沼津市議会が揺れている。市有地を駐車場として貸した利益の返還を求め、市から提訴案を出されたのは、山下富美子市議(70)=5期=。質疑中に同じ会派の議員の不適切発言を招き、懲罰動議が出される事態にもなった。最終日を迎える16日の市議会9月定例会本会議は、状況次第で深夜に及ぶことも予想され、波乱含みの展開となっている。

沼津市議会の懲罰の種類
沼津市議会の懲罰の種類
沼津市と山下氏で問題になっている周辺土地の所有図
沼津市と山下氏で問題になっている周辺土地の所有図
沼津市議会の懲罰の種類
沼津市と山下氏で問題になっている周辺土地の所有図

 発端は昨年8月、市議会に届いた「山下氏が自宅に隣接する黒瀬橋の下に私物を置いている」という匿名の投書だった。市が橋周辺を調査すると、山下氏が自身の土地と合わせ、市有地を有料駐車場として運営していることが判明した。市は今年6月に2台分、10年間の駐車場利益として202万円を請求。山下氏側が拒否したため、市は提訴案の提出に踏み切った。
 「問題の土地は私の土地」。山下氏は9月14日、支持者も招いた異例の形式の記者会見でこう強調した。この土地は、山下氏の父(故人)が1993年に黒瀬橋の拡幅工事で土地を市に譲った際に対償として払い下げられたと主張し、「証拠」とする契約書や確約書などを示した。ただ、契約書は山下氏の父が市に土地を譲り、第三者の別の土地などを対償として受け取る内容で問題の土地は含まれていない。確約書は問題の土地の払い下げ価格を市と山下氏側が合意したにとどまる。この2点は市側にも同様の書類が残る。また、山下氏の父が譲った土地と、問題の土地も含めた対償の土地や金額を計算したとみられるメモも提示したが、公印などはなく、メモは市に存在しなかった。
 一方、市側は「登記が一番の証拠」とする。問題の土地は山下氏親子とは別の第三者が所有し、市に売却。土地は橋の拡幅に使われた部分を市が分筆し、残りも登記上、市が所有する。市は山下氏の父と当時、払い下げ交渉をしたことは認めるが、「最終的に払い下げの申し出がなかった」とする。加えて昨年の発覚当初は山下氏が市の所有地と認め、払い下げを求めてきたと主張する。この点について山下氏は記者会見で「行政がやることは間違っていないという思いがあった」とし、一度は市の言い分を受け入れたとした。その上で「冷静になると(市への)疑念が払拭できなかった」と述べた。
 提訴案は山下氏が所属する会派「未来の風」(2人)を除き賛成に回り、16日の本会議で可決される見通し。
 (東部総局・尾藤旭)

 〝タケノコ発言〟 江本氏の懲罰は
 「私の農地の中に市の土地が存在する。毎年タケノコを掘って販売している」。9月27日、沼津市が山下富美子市議を訴える議案を市議会9月定例会で質疑中、山下氏と同じ会派の江本浩二市議(62)=5期=の発言に、本会議場の議員は耳を疑った。
 不適切行為を容認したとも取れる江本氏の発言は「議会の品位を汚した」として懲罰動議が出された。江本氏は後日、議場での弁明で「議員になってからタケノコは売っていない」と前言を翻し、動議を審査した懲罰特別委員会は「議場での陳謝」が相当とした。
 地方議会の懲罰は地方自治法の規定で重い順に除名、出席停止、陳謝、戒告の4段階。16日の本会議で懲罰が決まれば、江本氏は特別委が用意した陳謝文を当日の本会議で朗読する。ただ、理論上は処分を拒否することも可能。国会では3月、ガーシー参院議員(当時)が陳謝を拒否し、後の除名処分につながった。
 江本氏が拒否した場合、改めて懲罰を科すための動議提出も予想される。その場合は16日中に再び懲罰特別委が設置され、最優先で審議される。当日中に審議、懲罰の可否を決する見込みで本会議終了は深夜にずれ込みそう。懲罰がさらに重い出席停止となった場合は、定例会をまたいでの処分はできず、最長でも1日(当日)のみとなり、即議場からの退席を求められる。その場合、江本氏は本会議の最終議事となる山下氏への提訴議案の討論、採決に加われなくなる。

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