社会部 佐藤章弘
さとう・あきひろ 2006年入社。整理部、東部総局、天竜支局、社会部、榛原支局を経て、現在は社会部勤務。
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再審格差への対応 最高裁「承知せず」 改正議連総会【最後の砦 刑事司法と再審】
冤罪(えんざい)被害者の救済につながっていないと指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)の早期改正を目指す超党派の国会議員連盟は25日、第3回総会を国会内で開き、最高裁に問題意識を尋ねた。「再審格差」が存在するとの批判がある中、その対応を最高裁内部でしているかどうかについて担当者は「今の時点で承知していない」と述べ、再審無罪事件の検証は「していない」とした。 最高裁事務総局刑事局の近藤和久第2課長が再審制度の概要などを説明し、質疑に移った。議連事務局長の井出庸生衆院議員(自民党)が現行法に規定のない証拠開示について「(裁判官として)条文があった方がやりやすいか」と質問したのに対し、近藤氏は
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袴田さん再審、立証終了 5月22日結審へ 弁護団「無罪判決に自信」
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第14回公判が24日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕と袴田さんのDNA型は「一致しない」と結論づけた鑑定を前回に引き続き主な審理テーマとした。「信頼性に疑問がある」とする検察側は、意見書や捜査報告書などの証拠を提示しながら説明。その後、弁護団が反証し、公判を通じた双方の立証はほぼ終了した。静岡地裁は、5月22日の次回公判で検察側の論告・求刑と弁護団の最終弁論などを実施するとした。 終了後の記者会見で弁護団は、立証活動を振り返り「
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袴田さん弁護団「DNA型鑑定結果は無罪の証明に」 検察は否定 再審第13回公判
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第13回公判が17日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。犯行着衣とされる「5点の衣類」のうち、白色半袖シャツに付着した血痕と袴田さんのDNA型は「一致しない」と結論づけた鑑定について、弁護団は高い信頼性があるとして「無罪を証明すると同時に、衣類が捏造(ねつぞう)されたことを強く示唆する」と主張。一方、検察側は「鑑定結果は信用できず、犯行着衣ではないことを示す証拠とはなり得ない」と対立した。 DNA型鑑定を手がけたのは、弁護団が推薦した本田克也筑波大教授(当時、現名誉教授)。再
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袴田さん弁護団「地裁は逃げずに判断を」 評価割れてきたDNA型鑑定【再審第13回公判】
「きちんと判断してほしい」ー。再審第13回公判終了後の記者会見で、弁護団の伊豆田悦義弁護士は、DNA型鑑定に関する冒頭陳述に込めた思いを語った。 第2次再審請求審で、再審開始を認めて袴田さんを釈放した2014年の静岡地裁決定は、弁護団が推薦した筑波大の本田克也教授(当時、現名誉教授)が手がけたDNA型鑑定について、手法や説明を「全てが全面的に信用できるとまでは判断していない」としつつ、批判的な検討を加味しても「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」と捉えた。 一方、地裁決定を取り消した18年の東京高裁決定は本田鑑定の証拠価値を否定した。審理を差し戻した20年の最高裁決定では、裁判官5人のうちの
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袴田さんへの処罰感情 遺族が書面で陳述へ 5月に静岡地裁【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の静岡地裁で続くやり直しの裁判(再審)で、専務の遺族が意見陳述を申し出たことが16日、関係者への取材で分かった。処罰感情などを伝える意向とみられる。 関係者によると、被害者遺族の意見陳述は5月22日の第15回公判で、検察側の論告・求刑に先立つ形で行うことを想定している。口頭での陳述ではなく、意見を記した書面の提出を望んでいるという。同公判では弁護団の最終弁論と袴田さんの姉ひで子さん(91)による最終意見陳述も予定され、結審する見通しだ。 袴田さんの再審は昨年10月に始まり、検察側は有
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袴田さん再審「判決公判の傍聴席拡大を」 支援団体が静岡地裁に要請
現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の支援団体は11日、再審公判の傍聴席を拡大するよう静岡地裁に要請した。判決を含めてあと4回の公判が見込まれる中、とりわけ判決公判では傍聴希望者の殺到が予想されると指摘。「予期せぬ混乱を防ぐためにも、傍聴席の拡大やモニターによる傍聴を可能に」と訴えた。 要請したのは、各地の支援団体でつくる「袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会」。これまでも同様の申し入れをしてきたが、実現には至っていない。また、司法行政文書の開示を申し立てたところ、地裁が傍聴席の拡大要請に対する意思決定の記録については存否を答えず、抽選
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再審法改正目指す国会議連 麻生氏が最高顧問に 加入議員拡大、法務省などに聞き取り
規定の不備によって冤罪(えんざい)被害者の救済につながりにくいと指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)を巡り、早期の改正を目指す超党派の国会議員連盟(柴山昌彦会長)は9日、第2回総会を国会内で開き、自民党の麻生太郎副総裁が最高顧問に就く役員案を承認した。入会議員は設立時点の134人から210人に拡大。日本弁護士連合会と法務省の双方への聞き取りも実施した。 日弁連は、再審法改正実現本部の鴨志田祐美本部長代行が現行法の問題点を指摘した。袴田巌さん(88)の再審が確定するまでの経緯を例に挙げ、①検察官の手元に眠る証拠を開示させるルールがない②再審開始決定に対する検察官の不服申し立てが許されてい
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戦後一度も改正されない再審制度 仕組みと課題
日本の再審制度は、裁判のやり直しを求める手続き(再審請求手続き)と、やり直しの裁判(再審公判手続き)の2段階の構造になっています。再審の開始が確定すると、再審公判に移る流れです。これら再審に関する規定は刑事訴訟法の第4編再審(435~453条)にあり、再審法とも呼ばれています。 国内で初めて再審制度が法で定められたのは、治罪法(1882年施行)によってです。明治刑訴法(1890年)に続く大正刑訴法(同1924年)は無罪を有罪にするといった被告側にとって不利益な再審も認めていましたが、現行刑訴法(1949年)は日本国憲法に照らして廃止しました。しかし、それ以外は大正刑訴法をほぼ引き継いだため
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最大の争点「5点の衣類」とは 犯行着衣かねつ造か
事件発生から1年2カ月後の1967年8月31日、現場近くのみそ工場で、タンク内から血痕が付着した白色半袖シャツ、ねずみ色スポーツシャツ、鉄紺色ズボン、白色ステテコ、緑色ブリーフが見つかりました。これらは「5点の衣類」と呼ばれています。 犯行着衣と認定も...「色」に疑問 すでに始まっていた袴田さんの公判で、検察側はパジャマを犯行着衣だと主張していました。しかし、衣類の発見後に冒頭陳述を変更し、衣類を犯行着衣に改めました。袴田さん自身は当初から、自分の衣類ではないと訴えていました。控訴審では三度、ズボンの着装実験が行われましたが、いずれもはくことができませんでした。ただ、裁判所は、ズボンの
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イチからわかる「袴田事件」 事件と裁判の経緯を担当記者が解説
1966年6月30日未明、旧清水市(現在の静岡市清水区)のみそ製造会社専務方から出火し、焼け跡から一家人の遺体が見つかりました。県警は強盗殺人事件として捜査を開始し、同8月、当時30歳だった住み込み従業員の袴田巌さんを逮捕しました。 「自白」 袴田さんは日本フェザー級6位にまで駆け上った元プロボクサーです。引退後、みそ会社で働いていました。逮捕後の取り調べは1日平均12時間、最大16時間20分に上り、起訴される直前に「自白」しましたが、裁判では一貫して無実を主張しました。 1968年の静岡地裁判決は「自白の獲得にきゅうきゅうとして物的証拠に関する捜査を怠った。厳しく批判され、反省されな
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【袴田さん再審公判】3日間の証人尋問終了 血痕黒褐色化「揺るがしようのない立証」 弁護団総括
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第12回公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であった。証人尋問の最終日を迎え、検察・弁護側双方の証人計5人全員に同時に尋ねる「対質」が行われた。1年以上みそに漬かった血痕の色調という争点を巡り、弁護側証人の3人は専門的知見を踏まえて赤みは失われて黒褐色化すると改めて証言。検察側証人からも弁護団の主張に沿うような見解が示され、弁護団は公判終了後の記者会見で「揺るがしようのない状況まで立証できた」と3日間を総括した。 対質は証言台の前に五つの椅子が並べられ、裁判官が証人5人に質問
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弁護側証人「赤みの保持あり得ない」改めて説明 【袴田さん再審公判】 釈放10年、日弁連は再審法改正訴え
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第12回公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれ、弁護側証人の石森浩一郎北海道大教授(物理化学)への反対尋問が行われた。袴田さんが釈放されて同日で10年。日本弁護士連合会は地裁前で、再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める街頭活動を展開した。 石森氏は尋問で、1年以上みそに漬かった血痕について「赤みを保つことはあり得ない」と改めて証言した。みそタンクで発見されて犯行着衣とされた「5点の衣類」は、みその仕込みが始まるまでの3週間で赤みを失っていたとの前提の下、蒸した大量
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血痕の赤み「残らない」弁護側証人3人が断言【袴田さん再審公判】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第11回公判が26日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であり、前日に続いて証人尋問が行われた。再審開始の大きな根拠となった鑑定を手がけた弁護側の証人3人は「1年以上みそに漬かった血痕に赤みが残ることはない」と断言。旭川医科大の清水恵子教授(法医学)は、検察側が反論の証拠として提出した共同鑑定書について「抽象的な可能性論を繰り返すだけで仮説の域を出ておらず、われわれの鑑定結果を左右しない」と強調した。 ▶関連記事 証人全員に質問27日実施 弁護団「色問題」立証に自信 5点の衣類は事件
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袴田さん再審で証人尋問開始 血痕の赤み「否定できず」 検察側・法医学者指摘【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第10回公判が25日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれ、3日間にわたる証人尋問が始まった。犯行着衣とされる「5点の衣類」に付着した血痕の色調変化を巡り、検察側証人で法医学者の神田芳郎久留米大教授は血痕に赤みが残る可能性について「いろんな状況を考えれば否定できない」と述べた。 弁護団はこれまでの再審公判で、再審請求審と異なり立証責任は検察にあるとして「血痕の赤みが残ることが間違いないと立証できなければ反証としては不十分だ」とけん制している。 神田氏は尋問で、再審開始を認めた20
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再審法の改正求め 静岡県議会 意見書可決 「公平性損なう」【最後の砦 刑事司法と再審】
静岡県議会は18日、戦後一度も改正されていない再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を国に求める意見書案を全会一致で可決した。冤罪(えんざい)被害者の人権救済について、国はもちろん「地方自治体にとっても重要課題」と受け止めた上で、わずか19カ条しかない現行法では再審請求審の適正さが「制度的に担保されず、公平性も損なわれている」と指摘している。 意見書では、捜査機関の手元に残された証拠が再審段階で明らかになり、冤罪被害者を救済する大きな原動力になった事例が多いと説明。だが、証拠を開示させる規定がないため、裁判官や検察官の対応によって差が生じているとした。再審開始決定に対して検察官が不服を申し立
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再審公判「警備過剰」 袴田さん支援団体、地裁に是正求め要請書
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審開始を認めた2023年の東京高裁決定から13日で1年を迎えた。その後、再審開始が確定し、同年10月に静岡地裁で再審が始まった。審理は終盤に入り、5月にも結審する見通し。一方、支援者は公判開廷日の警備が過剰で傍聴機会も制限されているとして地裁の対応を疑問視してきた。同日、是正を求める要請書を改めて提出。「あしき前例にしてはいけない」と訴えた。 要請したのは、各地の支援団体で構成する「袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会」。申し入れは今回が5度目で、これまでと同様、再審公判開廷日の地裁庁舎内への立ち
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再審法改正へ「立法府の英知結集を」 日弁連が院内集会 袴田さん姉「一歩ずつ」
日本弁護士連合会(小林元治会長)は12日、不備があると指摘してきた再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める集会を都内の参院議員会館で開いた。改正実現を目指す超党派の国会議員連盟が前日に誕生したことを受け、小林会長は「不合理な状況が続き、冤罪(えんざい)に苦しむ人を見続けている。もはや看過できず、立法関係者には英知を出してほしい」と期待。与野党の議員が法改正への決意を表明した。 静岡地裁で再審公判が続く袴田巌さん(88)の姉ひで子さん(91)も浜松市から駆けつけ、議連の立ち上げを「本当にうれしい。全部いっぺんに変えるのは難しいだろうから、一つずつでも進んでくれれば良いと思っている」と喜ん
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再審法改正へ国会議連設立 超党派134人で始動「成し遂げる」
規定が乏しく、冤罪(えんざい)を訴えている人の救済につながっていないと指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)の早期改正実現を目指す超党派の国会議員連盟が11日、設立された。134人が入会し、会長には元文部科学相の柴山昌彦衆院議員が就いた。柴山氏は「(法改正は)大変困難な道だが、必ず成し遂げなくてはいけない。さまざまな当事者、関係団体の話を聞きながら成果に結びつけていく」と述べた。 議連の呼びかけ人は自民党の麻生太郎副総裁のほか、公明党の山口那津男代表、立憲民主党の泉健太代表、日本維新の会の馬場伸幸代表、国民民主党の玉木雄一郎代表ら与野党の幹部がそろい踏みとなった。衆院第1議員会館で開かれ
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【再審法改正・国会議連設立】「高き山」越えられるか 静岡県内議員ら、超党派集結の意義強調
再審法(刑事訴訟法の再審規定)改正実現の難しさは、戦後一度も改正されてこなかった歴史そのものが物語る。11日に誕生した早期改正実現を目指す超党派の国会議員連盟。議員たちは困難さを認識しているからこそ、議連が立ち上がったことの意義を強調した。県内からも与野党の議員が複数参加。「必ず法改正につなげていく」と誓った。 越えるべき山は「相当高い」|。議連の幹事長に就いた逢坂誠二衆院議員(立憲民主党)はその理由に、再審法が改正されずに「塩漬け状態」であること、法務・検察が「法的安定性」を理由に法改正に否定的であることなどを挙げた。事務局長の井出庸生衆院議員(自民党)も当初は「島の見えない海に船をこぎ
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再審法改正へ「静岡県 先頭に」 日弁連会長 知事と27日面会【最後の砦 刑事司法と再審】
日本弁護士連合会の小林元治会長は6日、静岡新聞社の取材に対し、川勝平太知事と27日に面会することを明らかにした。不備が指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)について、改正への賛同を求める。小林会長は「県民の代表として先頭に立っていただけるとありがたい」と述べた。 27日は、2014年に静岡地裁が袴田巌さん(87)の再審開始と死刑・拘置の執行停止を認める決定を出し、袴田さんが釈放されてから10年の節目を迎える。また、終盤に入った袴田さんの再審公判で法医学者らの証人尋問が予定される。 これに合わせ、日弁連の再審法改正実現本部のメンバーが本県を訪れる。街頭活動などに参加し、袴田さんの地元から