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どうする?離婚後の子育て④ しずしんニュースキュレーター/読者の意見【賛否万論】

 夫婦が離婚した後、父母双方が親権者となる共同親権を導入すべきか、それとも単独親権を維持するべきか。法制審議会(法相の諮問機関)の話し合いはヤマ場を迎えていますが、家庭によって事情はさまざまで、当事者の方々の主張は平行線をたどっています。しずしんニュースキュレーターや読者からも多くの体験談や意見が届いています。
 

キュレーター 江口裕司さん(三島市)
製造会社で米国勤務後、設計、製造、調達、翻訳、社内教育など多様な業務に携わり定年退職。現在、求職活動中。63歳

 親権をどちらにすべきか、ステレオタイプの二元論で離婚後の子育ては最適化されません。子の最善の利益は子の数だけ正解があるはずですから。
 ただ、親の背中を見て育つのが家庭教育。その背中は一つより二つがいいに決まってます。異なる背中を見せる日常が子育てってもんでしょう。日本の親権制度はその機会を否定してませんか?
 私は親権を失い、子どもと離ればなれです。知らぬ間に私より大きくなり、たまに将来の夢を話しかけてくるわが子ともっと時間を共有したい。その思いはかないません。権利ないんですから。
 裁判所で教わりました。「平たく言うなら親権とは、子どもが親を選ぶ権利なんです」と。どちらに養育・教育されたいか。子の意思を尊重するというわけです。でも15歳に満たない子にその判断は難しい。だから客観的な判断を介入させる。その法的観点にはうなずけます。
 それ以上の年の子への対応が難しい。どちらの親を選ぶか。合理的な判断を促すには離婚の原因を伝えることも必要でしょう。酷です。ずっと信じてきた親なんですから。だから事実を棚上げする調停ケースも少なくないようです。
 でも大人の階段を上る途中で真実に気づいたらどうなる? 過去に戻って判断し直すなんてできません。後悔への不安は癒えることなく続くことでしょう。日本の親権制度に子のメンタルと過去を損なうリスクはありませんか? 親には、その責任を引き受ける覚悟が求められています。正解は、当事者にも司法にも言い当てることなんてできません。だって子どもが将来判断することなんですから。
 現行の親権制度には、子どもの意思を反映しない懸念があるのです。よんどころない事情で離婚したって父は父、母は母なんだ。どちらかが親権者でなくなる制度なんておかしい。子どもの教育的利益を最優先に、共同親権法制化に1票!

キュレーター 内川麻衣子さん(静岡市)
NPO法人ピュアスポーツクラブ理事長、ダンス教室MJC指導者・振付家、静岡市スポーツ推進審議会委員、2008年全国JDAダンスコンクールソロ準優勝、11年IDO世界選手権大会(ポーランド)日本代表など

 「子どもに幸せな人生を送ってほしい」。多くの親はこう思っていると思います。しかし、子どもが思う「幸せ」と大人が思う「幸せ」は同じなのだろうかと疑問に思うこともあります。
 私の家庭でも子どものしつけ、教育などに関して時々意見が割れます。それぞれが違う環境や教育理念のもとに育ってきたのだから当然です。その時大切にしているのは、感情的になるのではなく、冷静にお互いが感じている子どもの状況や気持ちを出し合って整理することです。ただ、少しでも相手の気持ちを感じ取って子どものために前進していこうと努めてはいますが、「これは大人が感じている意見をまとめているだけであり、子どもの本心はどうなのだろうか」と感じる時があるのです。
 私は、昔おばあちゃんに「親に言えない悩み事はおばあちゃんが全部聞いてあげるからね」と言われ、とても心が落ち着いた記憶があります。私の気持ちを受け止めてくれる人がいると思うだけで、とても安心して生活することができました。
 親も子どもも一人一人考えや感じ方は違います。単独親権、共同親権の議論の前に、自分の心を受け止めてくれる周りの人や地域、機関が充実しているのかも考えるべきではないかと思います。共同親権導入で選択肢が増えたとしても、離婚の理由や状況はさまざまなので、支援する親族関係者やサポートする機関は今一層の支援が求められます。
 大人は「これが子どもの幸せだ」と決めつけるのではなく、子どもの本心をうまく聞き出して子どもの感じる「幸せ」を見つけ出すことも大切だと思います。それをうまく引き出すことができるのは「法律」ではなく、「人」だと思います。

 ■読者 もとさん(浜松市)40代
 離婚した後も、共同親権は当然継続されるべきです。離婚時に自動的に単独親権に変更される、同時に親子関係まで必ず変えるという、今の日本はおかしいと思います。
 私はまだ離婚前ですが、月に1度しか子どもに会えません。相手からもドメスティックバイオレンス(DV)などは一切言われていませんし、最初から欠かさず20万円払っています。もう少し会わせてくれと話しても聞く耳を持ちません。
 先日、子どものうちの一人がコロナに感染したことを、後から「子どもから」聞きました。今後は入院や自宅療養が必要な状態になったら教えてくれと頼みましたが、それは調停で決めることだと言われています。子どもが入院しても、もしかしたら亡くなっても、実の親が知ることさえできない。そんな国を日本が目指しているのなら、今のままで良いと思いますが、私はそんな国だとは知らなかった。変わるべきだと思っています。

 ■読者 祖母さん、67歳
 私の娘は3年前、子どもが1歳8カ月の時に協議離婚し、現在まで全く子に会えなくなりました。離婚時まで娘一人で育児を担っていて、虐待や育児放棄はしておりません。2年半に及ぶ調停の結果、2カ月に1度2時間だけ会えることが決まりましたが、元夫の意思により現在に至るまで一度も実現していません。
 調停中は別居親と子どもは一切接触を許されません。家裁に調停を申し込んだ時点で別居親はわが子に会えなくなります。幼い子どもの場合、2年、3年、4年と引き離されてしまえば、別居親を忘れてしまいます。こんな法制度ではこれからも、実の親から引き離され、生きてゆかねばならない子どもたちが増えるばかりです。
 もっと悲惨なことは、両親が仲たがいしたのは自分が生まれたからで、自分が悪いのだと子ども自身が思い込むことです。別居親が自分を捨てたと信じて生きてゆかねばならない子どもたちに、別居親はあなたを愛している、捨てたんじゃないと伝えたいです。

 ■読者 2児の母さん(富士市)40代
 元夫はとても強く、外での愛想もよく、周りからは良いお父さんに見えていましたが、実際には酒を飲んで私へのモラハラと子どもへの虐待がありました。自分の意に沿わないことがあると、人格否定の罵倒を始め、赤ちゃんが夜泣きしたらうるせえと頭をたたく。冬のある夜、泥酔して3歳の息子にプロレス技をかけて、「ママ、痛い!」と泣いているのを、私は助けられませんでした。
 その夜中に、何の覚悟もできていないまま、リュック一つ持って子どもたちを抱いて家を出ました。実家の支援もなく、一人で働きながら子どもを育てていますが、今でも夫の名前を見るだけでも恐怖が湧いてパニックになります。
 共同親権が導入されて子どもの養育の話し合いをする。そんな日がきたら、顔も怖くて見られない。電話でも会話できません。子どもたちは、たたかれた記憶だけが残っています。会いたいと言ったことはありません。元夫は(9月9日付朝刊に掲載された「共同親権導入賛成派」の)男性のように「妻が子どもを連れて勝手に出ていった」「子どもに会えなくて寂しい」と周囲に話しているそうです。そんな家庭があることを、知っていただけたらと思います。

 次回も引き続きキュレーターと読者の意見特集
 共同親権の導入議論について、あなたはどう考えますか。さまざまな立場からの投稿をお待ちしています。お住まいの市町名、氏名(ペンネーム可)、年齢(年代)、連絡先を明記し、〒422―8670(住所不要)静岡新聞社編集局「賛否万論」係<ファクス054(284)9348>、<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>にお送りください(最大400字程度)。紙幅の都合上、編集させてもらう場合があります。

 ◇しずしんニュースキュレーター〈キュレーター)
 新聞記事や時事問題の“ご意見番”として、静岡新聞の記者が推薦した地域のインフルエンサーです。毎回それぞれの立場や背景を生かしたユニークな視点から多様な意見を寄せてもらいます。

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