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袴田さん差し戻し審 血痕変色巡り対立 弁護団と高検が最終意見書

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直し(再審)を訴えている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、弁護団と東京高検は2日、最終意見書を東京高裁に提出した。弁護団は速やかな再審開始を、高検は請求棄却と袴田さんを再収監するよう求めた。高裁は年度内にも再審開始の可否を決定する方針。

最終意見書を提出するため、東京高裁に向かう弁護団=2日午後、東京都内
最終意見書を提出するため、東京高裁に向かう弁護団=2日午後、東京都内

 事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕には赤みが残り、弁護団は不自然として捏造(ねつぞう)された証拠だと指摘してきた。2020年の最高裁決定は、みそに漬かった血痕の変色に影響を与える要因について専門的な知見を踏まえて検討を尽くすよう促し、審理を高裁に差し戻した。
 差し戻し審で弁護団は、みそ漬け血痕の赤みが失われるメカニズムを化学的に示した鑑定書などを新証拠として出した。最終意見書で、鑑定結果を「最高裁決定に応える内容」と自負。高検側の証人も異論を唱えていないとした上で、高検の実験でも1年以上みそに漬かると赤みが消えることが証明されたと主張した。「5点の衣類は発見直前に何者かが(タンクに)入れたことが明らかになった」とし、拘留中だった袴田さんに隠すことはできないことから「犯人性は否定された」と改めて強調した。
 一方、高検は最終意見書で、鑑定書を含め弁護団の新証拠について「明白性が認められない」と訴えた。鑑定書を「一定の知見」としつつ、「あくまで特定条件下での血液の化学変化、色調変化を検討しているに過ぎない」などと反論。さらに、高検側の実験では開始から約1年2カ月過ぎた試料で血痕の周辺部分などに「赤みを観察できた」として「赤みが残る可能性を十分に示せた」とした。

姉「再審開始ひたすら願う」
 袴田巌さんの弁護団は2日、最終意見書を東京高裁に提出した後、記者会見を開いた。小川秀世事務局長は「最高裁の要請に応え、最高の意見書を出すことができた」と述べ、再審開始へ自信を示した。
 オンラインで会見に参加した袴田さんの姉ひで子さん(89)は「再審開始になることをひたすら願っている。決着をつけていただきたい」と期待を込めた。
 5日には高裁で、弁護団が最終意見書の要点を口頭で説明する機会が設けられている。非公開だが、ひで子さんは同席が認められている。袴田さんが高裁に足を運ぶなど状況が整えば、裁判官が直接意見を聞き取る可能性もあるという。

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