テーマ : 熱海土石流災害

熱海・伊豆山「山の上のさかなや」が営業再開 客の応援受け、サイト立ち上げ地方発送

 熱海市の大規模土石流により臨時休業していた同市伊豆山の魚屋「魚久(うおきゅう)」がこのほど、通常営業を再開した。干物などの一部冷凍商品を扱う通販サイトを新しく立ち上げ地方配送にも取り組むなど、日常を取り戻すため一歩ずつ前に進んでいる。

地方発送にも取り組む魚久のホームページを紹介する高橋さん=熱海市伊豆山
地方発送にも取り組む魚久のホームページを紹介する高橋さん=熱海市伊豆山

 店は土砂が流れた現場から約200メートル。発生直後は通常営業再開の見通しが立たなかったが、常連客の声に押され営業を始めた。店主の高橋照幸さん(65)は「じっとしてはいられない。手探りだができることから少しずつ進めたい」と前を向く。
 1959年創業で、仕入れから仕込みまで高橋さんや息子夫婦らで切り盛りする家族経営。災害前は、鮮魚や刺し身、干物のほか総菜を販売。熱海や小田原の魚市場から仕入れた新鮮な魚を低価格で売り、地元の人や別荘で暮らす人から「山の上のさかなや」として親しまれている。
 休日は県内外から多くの予約が寄せられ、土石流の発生した7月3日は、せわしなく準備をしていた。しかし、突然の災害により停電が発生。注文客にはキャンセルをお願いし、刺し身などは避難所に運んで地域住民に食べてもらった。
 その後も家族は避難生活を余儀なくされ、高橋さんは仲道町内会の副会長として地元住民の生活確保にも奔走した。「亡くなった人は知っている人ばかりで心が痛む。当時はお店のことを考える状態では到底なかった」と振り返る。そんな時、店に届いたのは常連客から応援の声だった。「時間がかかっても良いからお中元で発送してほしい」「お店のために貢献したい」という声が寄せられた。
 店の電気や水道は復旧したが、店舗前の道路は依然として復旧車両が行き交う。そんな中、店頭で鮮魚や惣菜を少しずつ販売し始め、注文によってアジやエボダイ、サバの干物などを梱包(こんぽう)し順次発送するようになった。高橋さんは「家族で話し合って小さなことから始めると決めた。地域の人たちのためにも力を合わせ店を続けていきたい」と力を込めた。
 詳細は同店のホームページへ。

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