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テーマ : 芸能・音楽・舞台

静岡生まれの歌声合成ソフト 試行錯誤重ね音質向上【音楽革新 ボカロ20年㊤】

 「何の目的で、どうやって活用するのか」。2003年2月、浜松商工会議所で開かれた記者会見。ロボットのような音声を発する歌声合成ソフト「ボーカロイド(ボカロ)」をヤマハが初お披露目した際、記者たちの反応は鈍かった。ただ、開発者の剣持秀紀(57)=現研究開発統括部=は「いろいろな質問を繰り返したテレビ局の番組が、一番長く放送で取り上げてくれた」と手応えを感じていた。

開発者の剣持秀紀(右)らヤマハの担当者らが「ボカロ」を初めて発表した記者会見=2003年2月、浜松市内
開発者の剣持秀紀(右)らヤマハの担当者らが「ボカロ」を初めて発表した記者会見=2003年2月、浜松市内

 「歌声の電子楽器」をつくる-。そんな目的で始まった研究は00年ごろから本格的に始まり、発表までに約3年を要した。パソコンに歌詞と音符を打ち込むだけで歌声を出せる技術は当時、斬新で奇抜だった。
 開発チームが直面したのは、歌詞があるからこその難しさ。「人間に例えれば、喉の振動が始まり、口を開けるまでの時間的な処理を保ちながら、伸ばし音で調整する」と剣持は説明する。スムーズに「声」をつなぎ合わせるために試行錯誤を繰り返し、音質を向上させた。
 発表から1年後の04年3月に発売も、ほとんど話題になることはなかった。4人だった専属の研究者は剣持を含む2人に削減された。苦境に立たされる日々の中、同じ静岡市清水区生まれで中学から大学までの先輩でもあった上司の「細く、長くやろうじゃないか」との言葉や、開発に取りかかった直後に心臓病の手術を受けた長女優季さんの回復や成長が励みとなった。
 合成エンジンを入れ替え、息の成分の再現や発音の明瞭度を高めるなど改良した07年1月に発売したボカロ2で転機が訪れる。その直後にボカロ関連製品を手がける札幌市のメーカーが開発したバーチャルシンガーソフト「初音ミク」の登場だ。アニメキャラクターの女の子の歌声が、ボカロに乗って世の中に響き渡った。
 (敬称略)
     ◇
 04年3月に発売し、現在は6代目が開発されるなどヒット作となった「ボーカロイド」。誰でも簡単に楽曲制作ができ、多くのヒット曲を生み出してきたボカロの20年を振り返る。

 <メモ>ボーカロイドは「vocal(ボーカル)」とロボットの「android(アンドロイド)」の二つの英語を組み合わせた造語。当初の名称は「SYN(シン)ボーカル」が最有力だったが、欧州企業のソフトウエアが類似名で登録商標を取得していたことが判明。開発拠点のある磐田市の名産品エビイモから取った「EBEAMO(エビーモ)」も候補に挙がっていた。

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