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テーマ : 芸能・音楽・舞台

地域満たす温かい笑い 住みます芸人 起業や伝統継承の道

 芸人が47都道府県に住み、事業で地域の活性化を目指す吉本興業の「あなたの街に住みますプロジェクト」が始まったのが2011年。地域に根付くという発想の転換が目を引いたが、10年以上経過し、起業する芸人も。各地に「温かい笑い」をもたらす、従来とは違う「芸人の道」を示すことにもつながっている。

関直太さん(左)から「利根沼田の座敷箒」の材料の特色を教わるチョッキGT5000
関直太さん(左)から「利根沼田の座敷箒」の材料の特色を教わるチョッキGT5000

 47組だった住みます芸人は100組超、県や市と包括連携協定は20ほどに。吉本興業ホールディングスの泉正隆副社長は「芸人が自分事でできることを実行し、信頼度が上がってきたのではないか」と捉える。
 住みます芸人には「優しく、温かい笑いを生みだす力」が絶対に必要だという。BSよしもとの「チーキーズaGoGo!」では住みます芸人が中継などで活動の一端を発信している。
 ユニークな事業の担い手を訪ねてみた。石見和牛や石見ポークといった特産品を活用して、食べるしょうゆ「おおなんの宝」を開発し、ヒットさせたのが調理師免許を持つ島根県の住みます芸人・奥村隼也。島根銀行(松江市)の支援を受ける形で、起業を決意した。
 5月上旬、同行との打ち合わせの後、奥村は山あいの邑南町にある垣崎醬油店へ。垣崎宏次社長と、地元食材を使ったレトルト食品の開発に向けて「もろみや甘酒を入れられないか」などとアイデアを出し合った。「ネタで笑ってもらうのと、事業を通じて笑顔にするのは結果的に一緒」と奥村。自分も周囲も楽しめることに取り組むやりがいを感じているようだ。
 群馬県の住みます芸人・チョッキGT5000は20年10月から川場村で、後継者不足の伝統工芸品「利根沼田の座敷箒[ぼうき]」の継承に励んでいる。
 今年5月には東京都世田谷区からの年配の男女に、身の回りの掃除に適した小ぼうき作りを指導。その足で大先輩の職人、95歳の関直太さんを訪ねた。「ほうきの姿が消えるのは寂しい」と話した関さん。子どもらにも教えるチョッキの活動に触れて「その中から、やってくれる人が出てくれば」と期待を込めていた。
 「次の世代に残したい」。さらに「伝統工芸品全般の普及にもつなげられたら」。かつて、芸事では売れないと思っていたチョッキの夢は広がる。
 奥村の起業に「そこまで本気なのか」と、周囲の反応は変わった。泉も手応えを感じる。「本気でやれば賛同者が集まり、ブレークポイントはあると思う。雇用も生んで、地域の魅力の花が咲き乱れるような日本列島にするお手伝いをしたい」

 静岡県 沼津拠点に3組
 本県では、沼津市の沼津ラクーンよしもと劇場を拠点に、富士彦、さこリッチ、原いい日(同市出身)とうえたけからなる「ぬまんづ」の3組が、2014年から同市に住んで活動している。
 富士彦は県内各地のイベントで活躍し、16年には本紙コラム「窓辺」も担当した。さこリッチは県の動画サイト「ふじのくにメディアチャンネル」の公式サポーターを務める。精力的にライブを行うぬまんづは、定番フレーズ「沼津サイコー!」で広く知られる。

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