音楽の都ウィーンから「ワクワク」を バイオリニスト中村真紀子さん(富士出身)
音楽の都、オーストリア・ウィーンで、現地オーケストラの一員として劇場文化を支えている日本人女性がいる。富士市出身のバイオリニスト中村真紀子さん。夏季帰省に合わせて、ウィーンでの暮らしや演奏活動などについて聞いた。
中村さんが所属するのは、世界屈指の劇場とされる「ウィーン・フォルクスオーパー」の専属管弦楽団。「国民劇場」と訳され、代名詞となっているオペレッタ、オペラのほかに、バレエやミュージカルの公演などを行っている。国立歌劇場と並ぶ、ウィーンを代表する劇場だ。
静岡県学生音楽コンクールで第1位を獲得し、東京芸術大付属高を経て同大を卒業。ウィーン国立音大留学中だった2005年に同管弦楽団に入った。12年からは、音楽的なリーダーである第1バイオリンの副首席奏者を務めている。
同管弦楽団の団員は約100人。シーズンとなる9月~翌年6月は、ほぼ毎日、違うプログラムで公演を行う。指揮者とオーケストラを意思疎通するコンサートマスターを補佐し、さらに団員との橋渡しをするのが、中村さんの役目。「1カ月のうち、3分の2は本番」というハードスケジュールをこなしつつ、オーストリア人の夫とともに、8歳の娘を育てている。
そんな中村さんも「入団1年目は大変だった」と振り返る。ヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」や、モーツァルトの歌劇「魔笛」などの定番レパートリーは、全団員が熟知していて、いつでも本番を迎えられる前提。「プレミエ」と呼ばれる新演出の場合を除き、基本的には特別な練習がなく、ぶっつけ本番の状態だ。「冷や汗をかきながら弾いたこともあった」と話す。
年末年始は、団員で構成するオーケストラによる日本ツアーが恒例となっている。ヨハン・シュトラウスのウィンナ・ワルツなどを披露する。新型コロナウイルス禍で来日公演は2年間中断したものの、昨年末のジルベスターコンサート、今年のニューイヤーコンサートから再開。次の年末年始も東京などで公演を予定している。
既に地元富士市で過ごした期間より、県外・海外での生活が長くなったが、根っからの“静岡っ子”。「オーストリアは海がないので、日本ほど魚介類が身近ではない。新鮮な魚やシラスが恋しくなる」。帰国するたびに楽しみなのが食事だ。ウィーンに戻る際は、乾物や調味料をトランクに詰め込む。
華やかなウィーンの文化を象徴するオペレッタやワルツ、ポルカなどを「本当にワクワクする音楽」と表現する。「クラシック音楽がもっと身近になればいい。劇場が近くにあって、気軽に行けるからこそ文化になっていくのだと思う」。かつて、富士市のアマチュアオーケストラとも共演した。「地元静岡での演奏機会が増えればうれしい」と期待している。
(紙面編集部・遠藤竜哉)
なかむら・まきこ 1977年生まれ。富士市立広見小、岳陽中の卒業生。日本フィルハーモニー交響楽団などと共演。入賞歴多数。
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