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テーマ : 芸能・音楽・舞台

映画「渇きと偽り」(2020年、日本公開22年) 乾いた大地に一つの救い【名画の歳時記】

 5月末、平年よりかなり早く梅雨に入りました。夏の水不足を防ぐためにも、農作物の育成のためにも、必要なものだと頭では分かっていても、やはり雨が続くのと、何よりもジメジメとした湿気のことを思うとうんざりしてしまいます。

「渇きと偽り」の一場面 (c)2020 The Dry Film Holdings Pty Ltd and Screen Australia
「渇きと偽り」の一場面 (c)2020 The Dry Film Holdings Pty Ltd and Screen Australia

 「雨の訪問者」(1970年)、「シェルブールの雨傘」(64年)などタイトルに「雨」と付く作品、「七人の侍」(54年)、「ショーシャンクの空に」(94年、日本公開95年)など、雨の場面が印象的な作品もありますが、今回はあえてカラッカラに乾燥した作品をご紹介します。映画で湿気に対抗してみるのもありでは?
 というわけで世界的ベストセラーとなったミステリー小説の映画化「渇きと偽り」(2020年、日本公開22年)です。なにせ原題が「The Dry」ですからね。
 オーストラリア、メルボルンで働く連邦警察官フォークは、家族を手にかけた後、自らの命を絶ったとされる親友ルークの葬儀に出席するため、故郷の町に20年ぶりに帰郷します。実はフォークは過去に起こった少女殺人事件の犯人であると疑われたために町を出たという事情を抱えていました。
 ルークの両親に懇願され、町に滞在して事件の真相を調査することとなったフォークですが、過去の事件を忘れていない街の人々はことあるごとにフォークの捜査を妨害します。それでも彼は少しずつ真相に迫っていき…。
 大旱魃の真っただ中で乾き切ったオーストラリアの大地、そして惨[むご]たらしい事件で干からびた人々の心。ですが、ラストには一つの救済がもたらされるのです。
 (鬼塚大輔・映画評論家、静岡英和学院大・常葉大非常勤講師)

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