富士山静岡交響楽団、リハ一般公開 音づくりの舞台裏をファンも間近で
富士山静岡交響楽団は、第123回定期演奏会のリハーサルを一般公開した。プロオーケストラがゲネプロを公開することはあるが、3日間の全体練習のうち細かな調整を行う2日目の様子を市民が見る機会はほとんどない。指揮者と楽員のコミュニケーションを基に曲を組み立てていく“舞台裏”を音楽ファンが楽しんだ。
曲目はアントン・ブルックナー作曲「交響曲第8番」。首席指揮者を務める高関健さんがピンマイクを付け、楽員との会話や息遣いまでも会場と共有した。高関さんがブルックナーの創作過程にも言及しながら、最終の第4楽章をメインにパート間のバランス、クライマックスに向けての音量調整を繰り返した。演奏を短く区切って楽譜に忠実に指示を出している際「うるさいのはブルックナーであって、私ではないですよ」と和ませる場面もあった。
ブルックナーは今年生誕200年を迎え、さまざまなオーケストラが演奏会を開いている。ブルックナーの作品は、同じ曲でも、弟子や学者が解釈を加えた「版」や作曲家自身が手を入れた「稿」が違う複数の楽譜があるため、聴き比べを楽しむファンが多い。中でも交響曲第8番は、必要とされる楽器が多いだけでなく、演奏時間も1時間を超える大作で、同楽団も「実力が問われる作品」としてメモリアルイヤーに挑んだ。
リハーサル後の質疑応答で、高関さんは小学生の時に初めて交響曲第8番を聴き、魅了されたことなどを紹介。来場者には譜面を追いながらリハーサルを聴く人も多く、細かな指示の意味や曲の解釈への質問もあった。
公開リハーサルは静岡新聞社・静岡放送の無料アプリ「@S+(アットエスプラス)」との共同企画。アプリ会員や同楽団定期会員ら県内外から約110人が見学した。静岡大管弦楽団に所属する同大3年の近藤奏さんは「高関さんの細かな指示や体の動きがどう音に表れるのか、興味深く見た」と話した。定期演奏会は6日までに3カ所で行われた。
(教育文化部・鈴木明芽)