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テーマ : 芸能・音楽・舞台

前代未聞のダークヒーロー 映画「DOGMAN ドッグマン」

 フランス映画の奇才リュック・ベッソン監督がまた一人、前代未聞のダークヒーローを生み出した。その名をタイトルにした「DOGMAN ドッグマン」は、主人公を献身的に支える演技派犬らの活躍で、犬と人間が共に歩んできた歴史を昇華させたような物語が見どころだ。

「DOGMAN ドッグマン」
「DOGMAN ドッグマン」

 ある夜、警察に停止を命じられた1台のトラック。荷台には十数匹の犬が載っており、運転席にはけがをした女装姿の男(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)が座っていた。拘置所で、やがて彼が半生を語り始める。
 父親や兄の暴力で押さえつけられ、犬小屋で育てられた少年。共に暮らす犬の協力で救い出されるが、その際に負ったけがで自立歩行が不自由になる。幼少期の虐待で抱えたトラウマも大きく、社会に溶け込もうと努力はするものの人々になじめないまま成長する。絶望的な人生を受け入れ、多数の犬と生きていくため次第に犯罪に手を染める男。そしてギャングに目を付けられ、犬と共に最後の決戦に臨む-。
 荒唐無稽な話だが、そこは手だれのベッソン監督。見る者を飽きさせないテンポの良さでしっかりエンタメに昇華してみせ、その健在ぶりを印象づける作品となった。その支柱は、主演のジョーンズ。完全無欠のヒーローとはかけ離れた人間的で抑制が利いた演技は、複雑な背景を背負う男の悲劇性を際立たせる。
 多彩な犬種の、それぞれの特徴を生かした演技も必見だ。歴史的に人と長く暮らしてきた犬は、人が喜ぶと自身も幸福感を共有できるという。同様に犬たちによる信頼が、主人公の苦難の人生をどうにか支えていたのだと気付いて胸が熱くなった。

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