「ブギウギ」作曲家 再び脚光 「世紀のうた・心のうた-服部良一トリビュート-」(輪島裕介/大衆音楽研究者)
NHK連続テレビ小説「ブギウギ」で再び注目が高まっている作曲家・服部良一の代表曲を現代の音楽家がカバーしたアルバム「世紀のうた・心のうた-服部良一トリビュート-」(日本コロムビア)。ポップ系の音楽家とミュージカル系の音楽家が違和感なく並び、服部のセミ・クラシック的な音楽性をうまく表している。
「ブルースの女王」となる以前の淡谷のり子が歌った軽快なジャズ調楽曲「おしゃれ娘」をサンプリングしたスチャダラパー「おしゃれミドル」と、NHK「名曲アルバム」でも取り上げられた「大阪ブギウギ」(矢井田瞳)以外はどれも超のつく有名曲。
「青い山脈」(石丸幹二)「東京ブギウギ」(望海風斗)など、元の録音に近い編曲の楽曲と、クールなレゲエ調の「買物ブギー」(曽我部恵一と井の頭レンジャーズ)や甲田益也子のささやくようなボーカルが印象的な「東京の屋根の下」(小西康陽feat.甲田益也子)のように大胆な編曲を施した曲が同居しているのも面白い。
「ヘイヘイブギー」(真心ブラザーズ)や「別れのブルース」(T字路s)などは、原曲にかなり忠実な編曲ながら、各楽器の音量バランスと歌い方を変えるだけで新鮮に聞こえる。メロディーメーカーというだけではなく、編曲家としての服部の腕のさえに改めて感じ入った。特に力強くソウルフルに歌われる「別れのブルース」は、服部良一が発明したと言える流行歌の一種としての日本調ブルースと、1970年代以降、日本でも知られるようになる米国黒人音楽としてのブルースの間の溝を埋める試みとしても興味深い。
(輪島裕介・大衆音楽研究者)