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テーマ : 芸能・音楽・舞台

福祉施設利用者、等身大の姿 ドキュメンタリー映画「フジヤマコットントン」 青柳拓監督の思い

 障害福祉サービス事業所の利用者の仕事ぶりや友情を描くドキュメンタリー映画「フジヤマコットントン」。制作のきっかけは2016年に相模原市の知的障害者施設で起こった殺傷事件だった。青柳拓監督は障害者への否定的な発言が飛び交う当時の言説を目のあたりにし、映画の制作を決めた。「人の価値は『ある』『なし』では表現できない」と訴える。
「施設利用者それぞれの喜怒哀楽にじっと目と耳を向けて撮影することを意識した」と話す青柳拓監督=26日、静岡市葵区
 甲府盆地にある「みらいファーム」が舞台。綿花を栽培する人、それを織物に仕立てる人、細かな絵を描く人、2人ペアで花を育てる人―。利用者それぞれがゆったりとしたペースで過ごす1年を追う。
 母親の勤務先だった障害者施設は、青柳監督にとってなじみの場所だった。それだけに相模原市の「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件には人一倍衝撃を受けた。「『生きる意味がない命は価値がない』と発言した犯人の言葉。それがSNSなどで社会全体に広がっていくことに危機感を覚えた」。幼少期から身近な存在だった“友人”たちへの否定的な言葉に「反論するのではなく、彼らの等身大の姿を丁寧に伝えることがアンサーになるのではないか」と確信する。
「フジヤマコットントン」の一場面
 本作には甲府盆地越しの富士山が幾度となく登場する。青柳監督は「いつも変わらず存在する富士山が、小さな施設の日々の営みに対する安心感につながっている」と述懐する。揺るぎない富士山と柔らかく包み込む綿のような、全てを肯定する世界観をタイトルに託した。
 「どんな人にもそれぞれ個性があり魅力があって、仕事をして悩み、楽しんで生きている。事業所の利用者たちの豊かさや関係性を知ってほしい」
 (教育文化部・森田美咲)
         ◇
 静岡県内では静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーで3月8日から上映。9日午前11時40分の上映後、青柳監督が同館で舞台あいさつする。

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