あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 芸能・音楽・舞台

少年マンガ 絵の力で改革 鳥山明さんを悼む

 日本の少年マンガの絵を改革したのは、鳥山明である。それまでの平面的で、ときに肉体構造や遠近法を無視したような少年マンガの絵は、鳥山の登場でがらりと変わった。登場人物やメカといった3次元の世界を2次元で再現し、紙の上で躍動させる鳥山の絵が読者の心をつかみ、時代を変えたのだ。
 鳥山の出世作「Dr.スランプ」の連載が「週刊少年ジャンプ」で始まったのは1980年。これ以降、鳥山の絵は、若いマンガ家たちや、マンガ家のたまごたちのモデルになった。
 鳥山がいなければいまのマンガブームは起きなかった、と言ってもいい。それは、人気マンガ「ONE PIECE」の作者尾田栄一郎や、「HUNTER×HUNTER」の作者冨樫義博といった現代の少年マンガのスターたちが異口同音に鳥山への憧れと、鳥山からの影響を語っていることからも分かるはずだ。
 84年に連載が始まった「ドラゴンボール」は、「週刊少年ジャンプ」が、マンガ雑誌の最高発行部数653万部(94年)へと至る快進撃の立役者だった。単行本とアニメは世界中の子どもたちから迎え入れられ、日本のマンガ・アニメの魅力を広く認知させる原動力になった。
 ゲームのキャラクターデザインにも加わり、RPG「ドラゴンクエスト」シリーズを空前の大ヒットに導いた。子どもたちは初期のゲームの簡単なドット絵に、鳥山がパッケージに描いたキャラクターたちを脳内変換で重ねてゲームに熱中した。
 マンガとアニメとゲームが日本のコンテンツ戦略の3本柱なら、その柱を支えながら大きくしたのが鳥山明だった。
 その鳥山はもういない。もう少し長生きして「ドラゴンボール」を超える最新作を世に出してほしかった。
(中野晴行/マンガ研究家、敬称略)
      ◇
 鳥山明さんは1日死去、68歳。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

芸能・音楽・舞台の記事一覧

他の追っかけを読む