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テーマ : 芸能・音楽・舞台

コラム窓辺 朝比奈隆氏と私(宮澤敏夫/富士山静岡交響楽団専務理事)

 音楽大学を卒業後、指揮者の朝比奈隆先生率いる大阪フィルハーモニー交響楽団に入団しました。東京の音大卒の私から見て、朝比奈音楽は常に「遅めのテンポ設定」で、東京の音楽界では好まれていませんでした。しかし遅い分、音の大きいオーケストラでした。

宮澤敏夫氏
宮澤敏夫氏

 朝比奈大阪フィルはドイツの名指揮者フルトヴェングラー風の音楽を演奏する個性の強いオーケストラで、日本中に多くのファンがいました。東京風のスマートな演奏に憧れている私はそれが不満で、しばしば先生のリハーサルをサボる、とてもやんちゃな楽員でした。
 私が首席奏者に就任する時。組合が結成され初代委員長になる時。演奏家から楽団事務局長になる時。民間のオーケストラで初めて練習場を建設する時。禁煙する時。大阪フィルを退団する時。全てに先生が関わっておられます。
 先生がドイツ・ハンブルクのオーケストラに客演される時にお供しました。リハーサルの最中にベルリンの壁崩壊のニュースが入り、突然「ベルリンに行こう」と空港へ。おかげで歴史的な瞬間に立ち会えました。私は壁によじ登り、現地の人たちと気勢を上げました。
 中国・天安門事件の1年後には、戦時中ハルビンで活躍していた先生の足跡を訪ねるテレビの取材で上海に渡りました。気を張った日々を含め、多くの時間を一緒に過ごしました。
 楽員は親しみを込めて「おっさん」と呼んでいました。楽団を辞した後も、「おっさん」はいつも私を気に留めてくれていたようです。
(宮澤敏夫=みやざわとしお/富士山静岡交響楽団専務理事)

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