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テーマ : 芸能・音楽・舞台

時代が生んだ指揮者 「世界のオザワ」後継者は? 沖澤のどか(京都市交響楽団) 山田和樹(英バーミンガム市交響楽団)

 指揮者・小澤征爾が亡くなって約1カ月。故人をしのびつつ、どうしても“後継者”のことを考えてしまう。

2002年のニューイヤーコンサートでウィーン・フィルを指揮する小澤征爾(AFP=時事)
2002年のニューイヤーコンサートでウィーン・フィルを指揮する小澤征爾(AFP=時事)
沖澤のどか(京都市交響楽団)(C)京都市交響楽団
沖澤のどか(京都市交響楽団)(C)京都市交響楽団
山田和樹(英バーミンガム市交響楽団)
山田和樹(英バーミンガム市交響楽団)
2002年のニューイヤーコンサートでウィーン・フィルを指揮する小澤征爾(AFP=時事)
沖澤のどか(京都市交響楽団)(C)京都市交響楽団
山田和樹(英バーミンガム市交響楽団)

 「世界のオザワ」の経歴は華麗だった。1965年に就任したカナダのトロント交響楽団から始まり、米国のサンフランシスコ交響楽団やボストン交響楽団、そしてウィーン国立歌劇場の音楽監督。その間にニューヨーク・フィル、パリ管弦楽団、シカゴ交響楽団、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルの定期公演(そのオーケストラにとって最も重要な演奏会)で指揮台に立った。日本では新日本フィルの創設、セイジ・オザワ松本フェスの総監督といった足跡を残した。このような経歴を持つ日本人指揮者は他に全くいない。
 なぜなのか。それについては専門(誌)の議論に任せて、ここでは後継者となる「可能性のある人」を紹介してみよう。
 生前の小澤が松本フェスの首席客演指揮者として後継指名していたとされ、今年8、9月の公演で指揮を執るのが沖澤のどか。2022年3月にベルリン・フィルを指揮した経験を持つ若き女性指揮者で、今や国内外で人気。昨年4月から京都市交響楽団の常任指揮者を務める。
 「音楽の友」誌24年3月号の表紙になっている山田和樹は昨年4月から英バーミンガム市交響楽団の首席指揮者で、パリ管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団の指揮台にも数多く登場、今年5~6月にはモナコのモンテカルロ・フィルを率いて日本公演を行う。79年生まれは指揮者としては若い部類で、かつての小澤を思わせるキャリアを積み重ねている。
 「日本人」という枠を外し「東洋人指揮者」ということならば、韓国のチョン・ミョンフン。71歳で、今や小澤征爾を思わせる存在だ。経歴は華麗で、パリ、ウィーン、日本、韓国に熱烈なファンを持つ。東京フィルの名誉音楽監督でもあり、2月後半に行われた3回連続の「田園」「春の祭典」はどれも超満員。「春の祭典」は壮絶な演奏だった。
 とはいえ小澤征爾的な知名度と経歴を持つ東洋人指揮者は今後しばらく現れないかもしれない。能力うんぬんよりも、指揮者を取り巻く環境の激変がある。背後で支えた巨大レコード会社はもう存在せず、マネジメントの力も弱まった。「世界のオザワ」は時代が生み出した人でもあった。
 (渡辺和彦・音楽評論家)

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