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テーマ : 芸能・音楽・舞台

「宇宙戦艦ヤマト」の真田志郎 「科学は敵」社会の世相反映【アニメ脇役列伝 1970年代編①】

 脇役にも脇役の人生がある。そんな脇役の存在にスポットが当たる回をアニメ業界では“お当番回”と呼んだりする。「宇宙戦艦ヤマト」第18話「浮かぶ要塞島‼たった二人の決死隊‼」は、ヤマトの技師長、真田志郎のお当番回だ。

藤津亮太
藤津亮太

 「宇宙戦艦ヤマト」は1974年10月放送開始。異星人の攻撃で滅亡寸前の地球を救うため、ヤマトとそのクルーが、片道14万8千光年という前人未到の冒険航海に挑む物語だ。敵の異星人ガミラスは、さまざまな手段でヤマトを攻撃してくる。
 第18話はコンピューター制御の無人宇宙要塞[ようさい]が登場。真田と主人公の古代進は、内部からこの要塞を破壊しようとする。この作戦の過程で、真田の過去が語られる。
 真田は小学生の頃、遊園地のロケットカーの事故で姉を亡くし、自らも義手義足となっていた。真田は「機械が人を殺す、そんなことがあってよいものか」という。真田が科学の道に進んだのも、科学は人間を幸福にするものであり、人間は科学を超えた存在であることを確かめるためだった。「俺にとって科学は屈服さすべき敵なのだ」
 1960年代、日本の各地は公害に苦しんでいた。その〝反省〟は、70年代に入り、大阪万博の「人類の進歩と調和」というコピーや、ベストセラー「ノストラダムスの大予言」に代表される「終末ブーム」といった形をとって現れる。
 科学文明を無邪気に謳歌[おうか]しているだけでは、われわれは自分の身を滅ぼすことになるのではないか。優れた科学者・技術者として作中で描かれる真田が、科学を敵と呼ぶのは、こうした時代の風景が、キャラクター造形に影響を与えているからだ。 
   ◇
 アニメ旧作から、重要な脇役をアニメ評論家の藤津亮太さんが取り上げます。

 ふじつ・りょうた 藤枝市出身。2000年より雑誌・ウェブなどでアニメに関する記事を執筆。主な著書に「アニメと戦争」(日本評論社)、「増補改訂版 『アニメ評論家』宣言」(ちくま文庫)など。

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