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テーマ : 芸能・音楽・舞台

悲しみも喜びも旋律に リコーダー奏者・海野文葉さん(静岡市葵区)【表現者たち】

 アルトリコーダーの流れるような叙情的な旋律、時に軽やかなリズムが、イタリアンレストランに響く。リコーダーは小中学生の教育楽器の印象が強いが、17~18世紀の欧州では花形楽器だった。演奏家の海野文葉さん(52)=静岡市葵区=は複雑な指使いと息のコントロールで、音量と音程を慎重に調整していく。
恩師の山岡(平尾)重治さんが制作したアルトリコーダーを奏でる海野文葉さん=静岡市葵区のラッツァ・ロッサ(写真部・宮崎隆男)
 後期バロック時代の楽譜には音符以外の細かな指定がなく、即興性を求められる。楽譜にない世界をいかに深めるか。「和声を踏まえて自分なりの装飾音符を付けていく。美しい響きに。奏者のセンスが問われる」
 小学生の時に入団した音楽青葉会・静岡児童合唱団(静岡市葵区)の欧州演奏旅行で、伴奏がリコーダーのアンサンブルだった。「とても楽しくて夢中になった」。国内トップ奏者山岡重治さんに師事し、古楽の名門、上野音楽大へ進んだ。
 イタリアは西洋音楽が飛躍的に発展した中心地。海野さんは静岡を拠点にイタリアや東京を行き来していた2006年、「イタリアの風」と題してコンサートを始めた。
 「ヨーロッパでは街のあちこちで演奏され、人々がワイン片手に楽しむ。気軽な場所で本格的なプログラムを届けたい」。静岡市内のイタリアンレストランを会場に選んだ。国内外の古楽器奏者を招き、13年の第16回からは会場をホールに移す。
所有するリコーダーは長さ14センチから2メートルまで30本以上
 その店主で後に夫となった柴田真弥さんがことし8月、急逝した。10月21日に第27回を迎えるコンサートの最終曲に、コレッリの「ラ・フォリア」を薦めたのが柴田さんだった。
 フォリアの意味は「狂気」。「舞曲のリズムと音の激しさに誰もが魅了される難曲。大学の卒業試験での苦い経験もある。でも、『そろそろいいんじゃない』と」。背中を押されて再挑戦を決めた。
 「古楽といっても、その時代の最先端の音楽。悲しみも喜びも豊かに奏でる調べを堪能してもらいたい」。慣れ親しんだ店内で、仕上げに臨む。
 (教育文化部・岡本妙)

 第27回「イタリアの風コンサート」は21日、札の辻クロスホールで午後2時に開演。バロック・チェロ、チェンバロとのトリオを中心に演奏する。

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