教育文化部 岡本妙
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現代書家50人の秀作一堂に 県立美術館と静岡市民文化会館
静岡県内の現代書家約50人が一堂に会する「書の“今”を築く’24現代書作家展・しずおか」が16日、静岡市駿河区の県立美術館県民ギャラリーで始まった。17日からは同市葵区の市民文化会館でも始まる。両会場とも21日まで。 今回で20回目。県民ギャラリーでは漢字やかな、大字書、前衛書など同展実行委員が1人1点を出品した。躍動感ある書線、墨の濃淡や余白を生かした秀作に、榛葉寿鶴さん(島田市)は「それぞれが書で現代を読み解いた。書に込めた情熱が作品に表れている」と話した。 20日午後1時から、実行委員長の大石千世さん(静岡市葵区)が、ギャラリートークを行う。
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京都・細見美術館 静岡でコレクション展 細見良行館長に聞く 日本美術、3代続く審美眼
昭和の実業家・細見良さん(初代古香庵[ここうあん]、1901~79年)に始まる細見家3代が収集した京都・細見美術館の収蔵品は、日本美術史を総覧するコレクションとして知られる。3代それぞれの分野は異なるが、日本美術への情熱的なまなざしは「細見家の名品」という統一感となって人々を魅了する。静岡市美術館(同市葵区)で13日に開幕するコレクション展を前に、3代目の細見良行館長に収集の背景を聞いた。 初代古香庵は大阪・泉大津市を拠点に毛織物業で富を築き、30代から古美術に関心を寄せていった。「明治以降、原三渓や益田鈍翁[どんのう]ら実業家が仏教、神道美術などの海外流出を憂いて収集した。祖父はその最
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野外作品と一体のパフォーマンス 静岡県立美術館「天地耕作」展
浜松市の美術家村上誠さん、渡さん兄弟、山本裕司さんによる美術制作プロジェクト「天地耕作(あまつちこうさく)」をテーマにした企画展「天地耕作 初源への道行き」(県立美術館、静岡新聞社・静岡放送主催)の開催に合わせ、パフォーマンス「遊芸」が24日、静岡市駿河区の同館で披露された。 同プロジェクトは、伝統芸能や遺跡などを手がかりに、作品制作とパフォーマンスを一体的に位置づけ、生と死といった根源的なテーマを追求する。3人は企画展に合わせて同館の裏山で、木や縄、土など自然物を駆使し、祭壇や墳墓に見立てた野外作品を制作した。 中世の逸話や芸能を主題にした遊芸は、装束に身を包んだ白塗り姿の3人が笛や太
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歌声は日々の生活そのもの 合唱指揮者・戸崎文葉さん(静岡市葵区)【表現者たち】
月3回、土曜の朝。合唱指揮者の戸崎文葉[ふみよ]さん(53)=静岡市葵区=が、古今東西の合唱曲をNHKラジオから届ける。中世の教会音楽、バッハやフォーレの合唱曲、名合唱団―。曲調や歌詞、時代背景など幅広く解説する。「この春で丸2年。私自身こんなに聴いたことがなかった。世界中に合唱があると実感する」 番組作りを支えるのは幼い頃からの合唱経験だ。祖父舜裕さんが戦前の1943年に「音楽青葉会」を設立。母裕子さん(88)が56年から現在の静岡児童合唱団を引き継いだ。 裕子さんが長年、国内外で築いてきた環境は、合唱を通して世界を知る機会に。原曲で歌う合唱曲はラテン語をはじめ、10カ国語以上に及ぶ。
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行き交う色彩 「つながり」の物語 画家・岩科りかさん(静岡市駿河区)【表現者たち】
リボンや水の流れ、タコの足―。さまざまな色、模様を帯びた曲線が100号、130号のキャンバスを縦横無尽に行き交う。アザラシや鳥、人間の子どもなど登場する生き物は、現実のものではないような表情。画家岩科りかさん(30)=静岡市駿河区=が描く油彩は、不思議な物語を連想させる。 主題は「存在していること、つながっていること」。「私たちを取り巻くつながりは、気持ちのありようによってプラスにもマイナスにも働く」。縛られて裏目の行動に出てしまう時もあれば、支えられて前向きに、一緒に歩みたいと思う時も。「共存する気持ちを、混在した画面に表現したい」 創作の現場は、中学2年の時から通う静南美術研究所(同
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記者コラム「清流」 土への身勝手な思い
土はあくまで作品の土台。色や装飾が施されて完成形と期待してしまう。 「焼かない作品も陶芸と呼べるか。焼かなくてよければ焼きたくない」。陶芸家前田直紀さんの言葉に驚いた。形を作り、釉薬(うわぐすり)をかけて1000度以上の窯で焼成して―という一連の流れがない巨大なオブジェ。ひんやりとした粘土肌の感触が今も残る。 土や木など自然物で制作する野外美術プロジェクト「天地耕作」の1人、村上誠さんは「時間とともに朽ちて失われていく様も含めてアート」と語る。なだらかな土の曲面に、わらが混ざる。生き生きとした浜松の土の明るさは、いつでも思い出せる。 どちらの作品も3月中に見られなくなってしまう。記憶に
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土に触れる原始的な衝動 陶芸家・前田直紀さん(静岡市葵区)【表現者たち】
JR島田駅前の通りの空き店舗に、陶芸家前田直紀さん(46)=静岡市葵区=が、巨大なオブジェを複数据える。人けのない空間で、ひんやりとした粘土肌が静かに呼吸するかのよう。個展「土纏~tsuchi.matou」は、17日まで島田市や川根本町で開催中の「UNMANNED(アンマンド) 無人駅の芸術祭/大井川」の一画を成す。 「焼かない作品も陶芸と呼べるか。焼かなくてよければ焼きたくない」。器の意匠としての美しさ、使い勝手の良さを追求する一方で、「土に触れること自体が原始的な衝動だろう」。独自のアプローチを模索してきた。 一つのオブジェに信楽[しがらき]の粘土を200キロ使う。内部は空洞。重力に
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崋山や一念の代表作ずらり 常葉ギャラリー収蔵名品展、17日開幕 常葉大静岡瀬名キャンパスで展示作業
常葉大静岡瀬名キャンパス(静岡市葵区)内の「常葉ギャラリー」で17日、「トコハの名品―常葉ギャラリー収蔵名品展」(同大、静岡新聞社・静岡放送主催)が開幕する。15日、作品の展示作業が行われた。旧常葉美術館(菊川市)からの移転記念展。 旧美術館は1977年、当時の常葉短大菊川高(現常葉大菊川高)に併設され、50年近くにわたって美術品を収集してきた。 収蔵名品展では、江戸時代後期に活躍した渡辺崋山とその弟子たちの文人画や、富士宮市ゆかりの洋画家曽宮一念の初期作から晩年の代表作まで、前後期合わせて60点余りを展示する。大村智基学芸員は「静岡市に移って初の作品公開となる。堪能してほしい」と話す。
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東海道日坂宿(掛川市)舞台に文人の生き様 永井紗耶子さん直木賞受賞第1作
第169回直木賞を受賞した永井紗耶子さん(島田市生まれ)の受賞第1作「きらん風月」の主人公は江戸後期、東海道日坂宿(掛川市)を拠点に活躍した戯作[げさく]者栗杖亭鬼卵[りつじょうていきらん]。「寛政の改革」を主導し言論や表現を抑圧した元老中松平定信との邂逅[かいこう]から、時代に翻弄[ほんろう]されながらもしなやかに生きる自由人と、東海道を往来した文化の魅力を伝える。 定信のお忍び旅の道中、日坂宿でたばこ屋を営む鬼卵が昔語りを聞かせる。鬼卵は河内国(大阪府)に生まれ、詩文や書画の腕を磨いたが芽が出ず、三河吉田(豊橋市)、三嶋、駿府(静岡市)の下川原と居を移す。60歳を過ぎて日坂宿へ。東海道
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「天地耕作」展開幕 野外美術の軌跡たどる 静岡県立美術館
浜松市の美術家村上誠さん、渡さん兄弟と山本裕司さんが、旧引佐郡を拠点に行った野外美術制作プロジェクト「天地耕作(あまつちこうさく)」の軌跡をたどる「天地耕作 初源への道行き」(県立美術館、静岡新聞社・静岡放送主催)の開会式が9日、静岡市駿河区の同館で行われた。10日から一般公開される。 ▶「天地耕作」とは? 村上誠さんが語る【動画あり】 「天地耕作」は3人が1988年から2003年にかけて、文化の源流を追い求め、自然物を素材として大規模な野外作品を制作した。国内外の伝統芸能や遺跡などを巡るフィールドワークも続けてきた。 館内では写真を中心に、記録映像や資料など約180点でプロジェ
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「天地耕作 初源への道行き」 人間の創造行為探る 静岡県立美術館で10日から【動画あり】
浜松市在住の村上誠さん、渡さん兄弟と山本裕司さんが、旧引佐郡を拠点に1988年から2003年にかけて国内外で行った野外美術プロジェクト「天地耕作[あまつちこうさく]」の軌跡をたどる「天地耕作 初源への道行き」(静岡県立美術館、静岡新聞社・静岡放送主催)が10日、静岡市駿河区の同館で開幕する。16年間の活動を写真や映像で振り返るとともに、未完となっていた野外作品のプランを本展に合わせて同館裏山で実現した。谷田古墳群のそば、雑木が茂る斜面に木や縄、石や土などの自然物を素材にした複数の「耕作物」が連なる。20年越しの制作について誠さんに聞いた。 「天地耕作」は、村上兄弟と山本の2組に分かれて制
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夜桜、夜景… 走って楽しんで アメマナイトマラソンin沼津 間寛平
お笑い芸人・間寛平が発起人の「寛平アメマナイトマラソンin沼津2024」(静岡新聞社・静岡放送後援)が3月23日、沼津市内で開かれる。狩野川、千本浜海岸、沼津港など名所を巡る3コース。4回目の開催に「関連イベントが年々増え、盛り上がっている。参加者数の目標は1500人。香貫山の夜桜の下で走ってもらいたい」と呼びかける。 世界屈指の耐久レースを走り、国内外のマラソンコースの作成依頼も受けてきた間。「夜のマラソンは孤独。懐中電灯で足元だけを照らしながら走るのがいい。いろんなことを考える」と語る。 午後5時スタートの25キロコースは、終盤で標高193メートルの香貫山を上って下る。「走り始めじゃ
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都市風景の情緒 鉛筆で再生 美術家・鎌田和直さん(磐田市)【表現者たち】
ニューヨークの高層ビル、にぎやかなショーウインドー。美術家鎌田和直さん(56)=磐田市=は、100年前の欧米の街角を捉えた写真を基に、精緻な鉛筆画を創作する。ビルを見上げているような、ガラス越しに商品を眺めているような。鑑賞する側は、時間や空間を超えて大都市の光景に引き込まれる。 12Bから10Hまで、20種以上の鉛筆を使って質感や密度を描き分ける。B系は濃密さや温かさ、H系は硬さ。そして消しゴムは「単に黒を消すのではなく、光を与えることができる」。蒸気機関車(SL)の煙、シスターの物憂げな表情、空の雲行き。気配や空気感もモノクロで伝える。 鎌田さんは20代後半から、はままつ美術研究所(
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記者コラム「清流」 本を積み上げた先は
年末、本棚を久々に整理した。ほこりとともに、1度もページを開かなかった本、「いつ買ったっけ?」という本が続々現れた。同じ文庫本も数冊出てきた。 10年ほど前に取材した詩人管啓次郎さんのエッセー「本は読めないものだから心配するな」に、手が止まる。「読んだ本の大部分が読まないのとまったくおなじ結果になっている」の一文に励まされたような…。 整理に取りかかった理由は、文庫本を次の読み手につなぐホテルのユニークな取り組みを取材したから。 宿泊者が1冊持ち帰れる形。旅の思い出に加えてもらえるなら提供したいと仕分けし始めると、いつか読むかも、と未練が残る。管さんの本にも「すべての文章
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やさしい言葉で命紡ぐ 詩人・井上尚美さん(島田市)【表現者たち】
島田市の詩人井上尚美さん(82)が第5詩集「蒲の穂わたに」を出版した。夫のがん闘病、幼い頃の出来事、亡き家族の姿―。10年ぶりの詩集に「幸せな詩は少ないかも。苦しみを伴わない生はないでしょ。その奥深くへやさしい言葉で降りていきたい」と思いを込める。 じっと薔薇を見つめている が 見ているのは薔薇ではないらしい 花がいつでも人の慰めになるとは限らない 心ここに在らずの状態で眺めれば 花の色香もここに在らずだ (「蒲の穂わたに」から) 入院中の夫と過ごせる2時間の外出許可。散歩に出かけた公園で、そっと夫の心中に寄り添う。 あの日 私は花をすでに脱ぎ捨てていたのだろう
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「おふろ文庫」旅のお供に持ち帰って 静岡市のホテル 浴場を改装
ホテルニューマスターチ(静岡市葵区駒形通)は、元浴場を改装した図書スペース「おふろ文庫」で文庫本の持ち帰りを実施している。売るのではなく、次の読み手につなぐ形式が人気を呼んでいる。 かつてのサウナ室に市民から寄贈された文庫本を置き、宿泊者が旅のお供として1冊持ち帰ることができる。ジャンルは小説やエッセーなどさまざま。コーナーに並べる際に、特製の帯を巻く。本を選んだ人が専用のメッセージカードに一筆寄せると、寄贈者へそのメッセージが届く。これまでに、200冊以上が新しい読み手に渡ったという。 「おふろ文庫」は、同区で喫茶店やゲストハウス、書店を運営する「ハヒフヘ舗」が2023年春に旧ビジネス
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ステンドグラス作家 かわもとみえさん(静岡市葵区) 甘美な曲線 夢の中に投影【表現者たち】
真夜中の木立の間を泳ぐ魚たち。赤く輝く月は間もなく入りの時刻を迎えそう。ステンドグラス作家かわもとみえさん(54)=静岡市葵区=は、御前崎市内のギャラリーで展示中の「可惜夜[あたらよ]」に、特別な思いを重ねる。 大和言葉で「夜が明けてしまうのが惜しいくらい美しい夜」。かわもとさん自身、依頼されたものではないオリジナルの作品づくりに没頭できるのはほとんど夜だけ。その喜びを、400ピース以上の色ガラスを組み合わせ、「夢の中の世界」に投影した。 工房は、両親の川本昭彦さん、佳恵さんが1987年に趣味が高じて静岡市内で開いた。かわもとさんは長男の出産を機に加わり、5年前に2代目となった。 「気
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私設図書館×土産店「しずおかのひみつ」プレオープン 静岡市葵区
静岡市でまちづくりや文化事業に取り組む「シズオカオーケストラ」=井上泉代表(41)=が14日、同市葵区駿府町の北街道沿いに、私設図書館と静岡土産の販売コーナーを組み合わせたコミュニティースペース「しずおかのひみつ」をプレオープンした。 市民が本棚のオーナーになり、蔵書を持ち寄って無料で貸し出す「一箱本棚オーナー制度」を市内で初めて取り入れた。店舗奥に54箱の本棚を設置し、現在、35箱が入る。絵本や写真集、数学にまつわる本、同市の中山間地域「オクシズ」を紹介する本など300冊が並んだ。企画者の一人で副館長を務める亀谷浩司さん(42)は「棚主のメッセージが感じられる魅力的な本がそろった。ゆっく
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心揺さぶる「直感」を写す 美術家・金原明音さん(静岡市清水区出身)【表現者たち】
静岡市清水区出身、ドイツに渡って25年になる美術家金原明音[きんばらあかね]さん(52)が、初の凱旋[がいせん]展を地元のアート本専門店で開いている。縫い針、靴、触覚、たくさんの目―。体の一部や日常の断片が、白い紙に象徴的に描かれ、余白との緊張感は絶妙だ。 「喜怒哀楽はもちろん、恥ずかしさ、みじめさなど、さまざまな直感をドローイングで表現したい」。心の奥底をくすぐられるような感情。その感情を表す小道具として物や動物を登場させるという。「見た人が1秒してフッと笑う」。同じ絵を見て怖いと思うか、面白いと感じるか。「作品は山の頂点に位置するイメージ。両義性を持つことが多い」 多摩美術大で油彩を
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静岡書店大賞に小説「成瀬は天下を取りにいく」 富士の宮島さんデビュー作 文庫部門は榛名さん(静岡)
静岡県内の書店員と図書館員が選ぶ「第11回静岡書店大賞」(実行委員会主催、静岡新聞社・静岡放送後援)が5日、発表された。小説部門は富士市出身の宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」(新潮社)、映像化したい文庫部門には、静岡市の榛名丼さんの「レプリカだって、恋をする。」(KADOKAWA)が選ばれた。静岡市内で開かれた授賞式は、新型コロナウイルス禍に伴う休止やウェブ発表を経て、4年ぶりに関係者や受賞者が一堂に集まる開催となった。 児童書新作部門は、1位が田中達也さんの「おすしがふくをかいにきた」(白泉社)、2位がヨシタケシンスケさんの「メメンとモリ」(KADOKAWA)、3位が柴田ケイコさ
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静岡・泉ケ谷で地域芸術祭 現代アートがつなぐ「境界」
静岡市駿河区の旧東海道丸子宿の一角、泉ケ谷地域で開催中の地域芸術祭「静岡アートビジョン」(同実行委員会主催)は、現代アート作品を通して今と昔、街と里山、自然と人間の営みなどさまざまな境界を緩やかにつなぎ、新たな魅力を提示している。 同地域の入り口には、伝統工芸体験施設「駿府の工房 匠宿」があり、古道沿いに寺社や、養蜂、酪農など自然と共生する住民の生活エリアが続く。監修したNPO法人クロスメディアしまだ(島田市)の児玉絵美事務局長は「住民と匠宿、職人たちとのつながりもここの魅力。潜在する地域像を掘り起こす視点が、現代アートの予測を超えた見方と重なった」と説明する。 大井川鉄道の無人駅を舞台
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静岡人インタビュー「この人」 第60回現代俳句全国大会賞を受賞した 伊藤孝一さん(清水町)
現代俳句協会が主催する全国大会で、応募1万2515句の中から最高賞に選ばれた。受賞句「暗がりを遠き夜汽車のやうに蛇」は、ことしの初夏、自宅の庭に迷い込んだ蛇を、夜汽車に重ねて詠んだ。俳句はJR東海を定年退職したの機に趣味として始めた。73歳。 ―受賞の喜びを。 「3度目の挑戦だった。俳句歴は浅く協会員でもないため、いただけるなんてと驚いた。長年、夜間に電気設備の検査や修理に携わることが多かった。夜汽車を見送るときもあり、蛇が遠ざかっていく姿が重なった」 ―大会を振り返って。 「選者による入賞句のディスカッションで、私の句の〈遠き〉という言葉について、『効いている』という評価があれば『
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江戸の平和外交、演劇に 「徳川家康公と朝鮮通信使」菊川で26日
徳川家康が交流再開に導いた朝鮮通信使とは―。ユネスコの記憶遺産にも登録されている朝鮮通信使の歴史をひもとく劇団静岡県史の舞台「徳川家康公と朝鮮通信使」が26日、菊川市の菊川文化会館アエルで上演される。脚本と演出を手がける主宰の松尾朋虎は「家康の外交手腕は、戦争が絶えない現代でも、学ぶべきことが多い」と語る。 駿府で大御所政治を行っていた晩年の家康は、豊臣秀吉の朝鮮出兵で断絶した朝鮮王朝との国交回復に尽力した。今回の舞台では、江戸幕府の平和外交の礎を築いた功績をたどる。2015年の初演作をリニューアルした。10月には韓国で開かれた「日韓交流おまつり2023in ソウル」で上演し、好評を博した
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「存在」追求した人物描写 画家・山城道也さん(島田市)【表現者たち】
油彩の大作がぐるりと囲んだ展示室。画家山城道也さん(47)=島田市=が御前崎市内で開催中の個展は、二紀展出品作を中心に、20代からの画業を振り返る構成になっている。 「写実が基本だが、リアリティーを追求するというより、『存在』が表現できたらいい」。強く影響を受けたのは常葉学園短大以来の恩師、佐々木信平さん(1936~2017年)。中央画壇で活躍し、東欧の大地にたくましく生きる人々を捉えた作品で知られる。「研究室をのぞいては、制作過程を間近で見てきた」。山城さんもおのずと人物、群像表現をまねることからスタートした。 屈強な西伊豆の漁師たち、少女の成長を10年間かけて追ったシリーズ。近年はわ
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「地元文化人巡り」楽しんで 静岡県中部3市4施設でスタンプラリー
日本の近代史に名を残す静岡県中部ゆかりの文化人の関連4施設を巡る「するが文化の散歩道スタンプラリー2023」(静岡市、焼津市、藤枝市主催)が、2024年1月14日まで開かれている。県立大国際関係学部の細川光洋教授とゼミ生が協力し、6回目となる今回は台紙を文庫本サイズに変えた。持ち運びやすく、愛らしいデザインで幅広い世代の来館を呼びかける。 静岡市の中勘助文学記念館(葵区)、市立芹沢銈介美術館(駿河区)、焼津小泉八雲記念館(焼津市)、小川国夫が執筆を続けた藤枝市の郷土博物館・文学館が参加している。 スタンプは、中や八雲らの肖像画。スタンプを押す台紙の枠部分は、小説に登場するモチーフや作家の
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悲しみも喜びも旋律に リコーダー奏者・海野文葉さん(静岡市葵区)【表現者たち】
アルトリコーダーの流れるような叙情的な旋律、時に軽やかなリズムが、イタリアンレストランに響く。リコーダーは小中学生の教育楽器の印象が強いが、17~18世紀の欧州では花形楽器だった。演奏家の海野文葉さん(52)=静岡市葵区=は複雑な指使いと息のコントロールで、音量と音程を慎重に調整していく。 後期バロック時代の楽譜には音符以外の細かな指定がなく、即興性を求められる。楽譜にない世界をいかに深めるか。「和声を踏まえて自分なりの装飾音符を付けていく。美しい響きに。奏者のセンスが問われる」 小学生の時に入団した音楽青葉会・静岡児童合唱団(静岡市葵区)の欧州演奏旅行で、伴奏がリコーダーのアンサンブ
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ブルターニュ展 入館者1万人 岩崎さん夫妻に記念品 静岡市美術館 22日まで
静岡市美術館(同市葵区)で開催中の展覧会「カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風 フランス 神秘と伝統の地へ」(静岡新聞社・静岡放送など主催、清水銀行特別協賛)の来場者が11日、1万人に達した。 節目を飾ったのは、美術展巡りが趣味という静岡市葵区の岩崎完治さん(68)と弘子さん(67)夫妻。完治さんは「ご褒美をいただいたようでうれしい。細部まで描き込まれ、人々の日常が伝わってくるよう」、弘子さんは「落ち着いた色使いが安らぐ」と笑顔で語った。記念セレモニーが開かれ、清水銀行の平岩将常務らから図録など記念品が贈られた。 同展は、フランス北西部・ブルターニュ地方の自然や独自の文化を描いたク
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ブルターニュ料理いかが 静岡のホテル 展覧会とコラボ
静岡市美術館(同市葵区)で開催中の「カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風 フランス 神秘と伝統の地へ」(静岡新聞社・静岡放送など主催、清水銀行特別協賛)に合わせ、同区紺屋町の中島屋グランドホテルが特別メニューを提供している。 テラスレストランのランチコース(4000円)は、ガレットや魚介料理「コトリヤード」などブルターニュ地方の郷土料理を楽しめる。テラスラウンジのアフタヌーンティー(2500円)で、同地方の伝統菓子ファーブルトンやクイニーアマン、特産の「ゲランドの塩」を使ったキャラメルケーキなどを用意している。同ホテルの西洋料理を担当する佐野幸伸料理長は「ソース、スープまで一つ一つ丁
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直木賞「やっと受け取る覚悟できた」 永井紗耶子さん(島田生まれ)語る
江戸時代、芝居小屋の裏手で起きた復讐[ふくしゅう]劇の真相を描いた「木挽町[こびきちょう]のあだ討ち」で第169回直木賞を受賞した時代小説作家、永井紗耶子さん(島田市生まれ)。贈呈式も終え「やっと作家として受け取る覚悟ができた。これを機に新しいチャレンジをしたい」と意欲を語った。 過去と現在 通底する作品 舞台は、芝居町として知られる江戸の木挽町。若侍、菊之助が父親のあだ討ちを果たした顛末について芝居小屋で働く5人が語る。木戸芸者、立師、女形ら、語り手が背負ってきた人生行路も明らかになっていく。「芝居小屋は、身分の上下なく楽しめる娯楽であり、いろいろな階層の人がなだれ込む交差点。時代性をく
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9月5日開幕「ブルターニュ展」 静岡市美術館で展示作業
静岡市美術館(葵区)で5日に開幕する「カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風 フランス 神秘と伝統の地へ」(静岡市、静岡新聞社・静岡放送など主催、清水銀行特別協賛)の展示作業が3日、行われた。 フランス北西部に位置するブルターニュ半島は壮大な自然景観を有し、ケルト民族に由来する独自の文化が育まれた。同展は、ブルターニュ地方を代表するカンペール美術館のコレクションを中心に、その風土に魅了されたクロード・モネ、ポール・ゴーギャンら45作家の絵画作品約70点を展示する。 カンペール美術館のフロランス・リヨネ副館長は「ブルターニュ地方で19~20世紀にかけて生まれた芸術は、日本の浮世絵の影響
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凹凸から生まれる物語 アーティスト ふるさわともこさん(静岡市清水区)【表現者たち】
白い静かな紙の世界。凹凸で見せるのは、複数のコーヒーカップから立ち上る湯気と香り。自在に膨らんだ形が、穏やかな日常を連想させる。アーティストふるさわともこさん(55)=静岡市清水区=がエンボス版画で描くのは「陰影から感じられる少し不思議な物語。不規則な形を表現するのが好き」と話す。 先端を滑らかに削った割り箸1本で凹凸を作る。30年近く愛用してきた。型紙を重ねた木炭紙の裏に押し当て輪郭線を出していく。 凹凸が表現できる幅は、型紙の厚さ1ミリ。走る子どもたちの姿、生活の道具、植物の葉も、シンプルで存在感のある線を目指す。 武蔵野美術短期大で工芸デザインと金工を学び、卒業後は雑誌の挿絵など
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“家康治政”背景解説 徳川みらい学会 作家・安部龍太郎さん講演
徳川時代の歴史的意義を研究・発信する徳川みらい学会は18日、本年度第3回講演会を静岡市葵区の市民文化会館で開いた。本紙朝刊小説「家康」を執筆した直木賞作家の安部龍太郎さんが「徳川家康の生き方」と題して講演した。 安部さんは戦国時代の最大の特徴を「日本が初めてヨーロッパ諸国に出合い、国内の産業構造が大展開したこと」と指摘し、「ポルトガルやスペインが世界を席巻した大航海時代、鉄砲とキリスト教と南蛮貿易が一体だった。その背景から織田信長、豊臣秀吉、家康が目指した治政を捉え直すことが大切」との考えを示した。 戦国時代は幕末と同じく植民地化の危機状態であったとし、信長や秀吉の失政の理由、家康が関東
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指先が生み出す藍の模様 染色家 水口よお子さん(裾野市)【表現者たち】
古くから日本人の暮らしに根を下ろし、愛され続けてきた藍色。染色家水口[みなくち]よお子さん(75)=裾野市=は、「ジャパン・ブルー」とも呼ばれるこの豊かな色相に、20年以上前から魅せられている。「身にまとっても爽やか。天然藍そのものが持つ力に支えられてきた」と実感する。 水や光、雲、植物の花。自然界の事象にイメージを重ね、独特の絞り模様を生み出す。連続する藍と白の対比は、万華鏡のように見る人を奥深くへ誘う。 小学校教員をしていた50歳のころ、沼津市内の展覧会で藍染めを気に入り、教室に通うようになった。「もともと手仕事が好きだった」。程なく教職を辞し、藍染めの創作活動に打ち込んだ。 名産
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ダ・カーポ50周年 2人の生き方 そのまま歌に
榊原まさとし、広子の夫婦を核とした「ダ・カーポ」が8月、活動50周年を迎えた。フォーク調の爽やかなハーモニーは世代を超えた根強い人気を誇る。2人は「50年を経てお互いが空気以上の存在になった。私たちの生き方がそのまま歌になっている」と語る。 1973年の「夏の日の忘れもの」でデビュー。「結婚するって本当ですか」「野に咲く花のように」などヒット曲を生みだしてきた。2008年、長女麻理子がフルート担当として加わった。 50周年を記念して今年は新アルバムとベストアルバム、DVDを相次いでリリースした。最新曲「今日がいちばん若い日!」は、70歳を超え、年齢を重ねることへの前向きな思いを歌詞に込め
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SBSカップ国際ユースサッカー ベイビークレヨンがテーマ曲 努力の成果 発揮して
17日に開幕する「2023SBSカップ国際ユースサッカー」(日本サッカー協会、静岡県サッカー協会、静岡新聞社・静岡放送主催)の大会公式テーマソングが、女性アイドルグループ「BABY―CRAYON~1361~(ベイビークレヨン)」の「Todoke!(とどけ)」に決まった。メンバー4人は爽やかな青春応援ソングに乗せ、「夢や目標、勝利に向かって一歩一歩努力してきた成果を本番で発揮してほしい」とエールを送る。 ベイビークレヨンは21年デビュー。東京ドームのステージを立つことを目標に精力的にライブ活動を行ってきた。「Todoke!」はデビュー当初から大切に歌ってきたナンバーという。プロデューサー石綿
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命の記録 生き生きと 平間至さん写真展 20日まで静岡市で
タワーレコードの「NO MUSIC,NO LIFE.」キャンペーンのポスターをはじめ、音楽アーティストの躍動感あふれる写真で新スタイルを打ち出してきた写真家、平間至さん(60)。これまでの活動を回顧する「平間至写真展 写真は愛とタイミング!」が、静岡市駿河区のグランシップで開かれている。自身の娘の日常写真、写真館での家族写真などを含め230点が並び、「敷居は低く、写真表現の面白さ、奥深さを知ってもらえる」と手応えを語る。 平間さんは宮城県塩釜市で写真館の3代目として生まれた。両親はクラシック好き。幼少からバイオリンを習い、日常に写真と音楽があふれた環境で育った。中学ではパンクムーブメントに
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戦争と平和 伝える手がかりに 草谷さん(静岡市葵区) ガイド出版
子どもたちに戦争の愚かさ、平和の尊さをどう伝えたらよいか。その手がかりにしてもらいたいと、静岡市葵区の児童文学作家、草谷桂子さんが「戦争と平和 子どもと読みたい絵本ガイド」(子どもの未来社)を出版した。国内外から選んだ約200冊を通して、「当たり前の日常の尊さを伝えたい。それは、違いを楽しみ理解する、命を尊ぶことにつながる」と話す。 戦争関連の絵本はテーマが重く、手に取りづらい。一方、教育現場での平和学習、図書館の特集企画などで取り上げられる機会は多い。草谷さんは、ロシアのウクライナ侵攻以降、「子どもの心を傷つけないように」と選書に悩む関係者からの相談が増えたという。だが、「子どもたちは現
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劇団四季「ジョン万次郎の夢」静岡で公演 躍動感あるダンスと歌で魅了
劇団四季のファミリーミュージカル「ジョン万次郎の夢」の静岡県内公演(静岡新聞社・静岡放送など主催)が3日、静岡市葵区の市民文化会館で始まった。4日まで。 幕末、漁で遭難して日本人で初めて米国に渡ったとされるジョン万次郎こと中浜万次郎の半生を描いたミュージカル。 持ち前の好奇心と不屈の精神で、鎖国の扉を開こうと力を尽くす万次郎と、支える日米の人々の姿を俳優が熱演した。 ダイナミックな音楽に合わせた躍動感あふれるダンスと熱のこもった歌が、親子連れなど千人を魅了した。終演後のカーテンコールでは、俳優が会場からの喝采に手を振って応えた。 4日は午後1時半に開演。問い合わせは劇団四季静岡オ
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揺れ動く 一瞬の美しさ 日本画家 いのうえあいさん(静岡市清水区)【表現者たち】
目の前にあるものが、何であるかを知る前に触れる不思議さ。「草花をじっと見つめる、虫を捕まえようと手を伸ばすのに捕まえられない。幼子が『これは何? なぜ?』と抱く瞬間は尊い」。日本画家いのうえあいさん(35)=静岡市清水区=は、今月中旬に始まる個展の出品作「不思議」に、その思いを込める。 愛媛県に生まれ育ち、美術科の高校で初めて学んだ日本画が「しっくり来た」。白緑青、柳葉裏、岩緋[いわひ]-。「岩絵の具自体の美しさに加え、光を柔らかに吸収して反射する特性に引かれる」。筑波大大学院を経て24歳の時、常葉大短期大学部の保育科教員として静岡にやって来た。 写生、下絵、転写、着彩。段階を踏むごとに
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言葉で、余白で、すくう感情 詩人ゆずりはすみれさん(静岡市葵区)【表現者たち】
雨上がりの公園、帰り道に見上げた空、赤ちゃんの掌[てのひら]-。詩人ゆずりはすみれさん(36)=静岡市葵区=が紡ぐ詩は、日々の生活や目にした景色から抱く感情、感覚を言葉ですくい上げる。 神戸市で生まれ育ち、中学生のころ、日々の思いをSNSに書きつづっていた。「日記のつもりが『詩ですね』と言われ、私が書くものが詩だと気付かされた」。2011年、職を得て静岡へやって来た。20年、詩の月刊誌「ユリイカ」で、「ユリイカの新人」に選ばれた。 いつか 手向けられた花にも ひとしれず いのちがあった そのいのちのあとに続くものを いま と呼ぶなら (詩集「かんむりをのせる」新装版の「緒の詩」から)
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歌人・松浦彩美さん(掛川市) 日常の気付き、三十一文字に【表現者たち】
歌人松浦彩美[さいみ]さん(54)=掛川市=が第1歌集「タイムレター」を出版した。子育ての記録になればと始めた短歌。結社「国民文学」へ投稿を続けて27年になる。慌ただしい日常の一瞬、生まれ育った信州への望郷の念、老いを重ねる親の姿、そして子離れの心境―。松浦さんと家族が歩んだ道のりが522首に凝縮されている。 26歳で結婚し、夫の勤務地、神奈川県平塚市に暮らした。「妊娠で体調を崩し、仕事を辞めた」。自分自身を見失いかけた時、短歌の市民講座に参加した。「子どもの成長を残してみたい」。日記よりも、三十一文字[みそひともじ]の短詩型が自分には合う。程なく「国民文学」に入会した。 求められたのは
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「気配」追求、溶け込んだ形 ペインター・ながいいちほさん(伊豆市)【表現者たち】
油彩を中心に創作するペインターながいいちほさん(49)=伊豆市=の人物像には、羽や角を持つ人、たばこをくゆらす愛煙家が登場する。「目に見えない気配、たたずまいを追求してきた。動物の体の一部、たばことその煙から、その手がかりを探ることが多い」。喜怒哀楽といった感情とは異なる「日常から引っ張り出した非日常」に意識を向けるという。 フェルケール博物館(静岡市清水区)で展示中の作品「うわのそら」は、サーカスの演技を終えた天使役の女性が宙に横たわり、たばこを吸う。「彼女は気が抜けた真空状態」。背景の澄んだ白色が時間、空間の隙間へ誘う。 三島市出身。動物との関わりに影響を受けてきた。子どもの頃から犬
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記者コラム「清流」 青い松ぼっくり
「松ぼっくり」といえば、秋のイメージ。バラの花に似た形から“バラぼっくり”と呼ばれるヒマラヤスギの松ぼっくりを見つけた時のうれしさは格別だ。 県内の自生植物を科学面で連載する執筆者の植生研究家菅原久夫さん(長泉町)から、初夏のクロマツの松ぼっくりは青いと教わった。恥ずかしながら、茶色以前の姿を知らなかった。 早速、三保松原へ出かけた。受粉したばかりの赤ちゃんは赤くて愛らしい。2年目を迎え、緑色に成長した松ぼっくりは鱗片(りんぺん)がぎゅっと引き締まる。2年がかりで種子が熟して茶色になり、種子を飛ばして役割を終える。 被子植物の生えない痩せ地に生きる裸子植物。クロ
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「西郷の局」ダンス劇に 6月18日上演 掛川「ARTS C3 company」
掛川に生まれ、徳川家康に愛された側室「西郷の局」。その波乱の生涯を描いたダンス時代劇「西郷の局―家康を魅了した、お愛さま―」(かけがわ茶エンナーレ実行委主催、静岡新聞社・静岡放送後援)が6月18日、掛川市生涯学習センターで上演される。地元のダンス集団「ARTS C3 company」(山本真理子代表)が躍動的なダンスや迫力の殺陣で見せる新感覚の歴史エンターテインメントに仕上げた。 掛川、菊川両市内でダンススタジオを経営する山本と田端泰成が地元を盛り上げたいと昨年9月に上演。好評を得たため、来年開催されるアート祭「かけがわ茶エンナーレ」の舞台芸術プロジェクトの一環として再演が決まった。プロジ
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静岡人インタビュー「この人」 第69回全国展フォトコンテスト「日本の文化」部門で文部科学大臣賞を受賞した 松浦昭宏さん(島田市)
受賞作は、農機具用の刃を作る鍛冶職人を捉えた組み写真「野鍛冶ひとすじ」。昨年は全部門最高賞の内閣総理大臣賞を受賞し、歴史ある全国公募展で2年連続上位入賞した。発表展が6月4日まで、東京都美術館で開かれている。薬学博士号を持ち、新薬や医療機器の文書作成に従事する。キヤノンフォトクラブ静岡の代表。70歳。 ―受賞作への思いは。 「高温の鉄を鍛錬し、放射状に火花が飛び散る瞬間を狙った。職人歴70年の熟練した技や機械類がひしめく工場など4枚を組み合わせた。鍛冶と聞くと刀が有名だが、昔から人々の暮らしを支えてきた農機具にも日本伝統の美しさを感じる。それらを形作る手、工具一つ一つに説得力があった。こ
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書家 柿下木冠さん(静岡市駿河区) 極めた先の平和を希求【表現者たち】
現代書界の第一線で長年活躍する柿下木冠[ぼっかん]さん(83)=静岡市駿河区=。世界の今を問う造形書は鋭い。「80を超えてなお、心を揺さぶられたのがロシアのウクライナ侵攻。まさに戦争だ」と作意を語る。 平穏な日常を奪われた時の困難は計り知れない。その対極にある「自由」の2文字。墨の濃さ、筆線の勢いに思いを込めた。何度も見た映画「ひまわり」の「ウクライナの広い青空とひまわり畑は、自由の象徴だろう」。余白に、はるかなる情景も重ねる。 一方、独裁者の横暴さを「脅」の1文字で痛烈に批判する。「広場」には、街の中心に人々が集い、自由な言論やにぎやかな祝祭が戻ることを願う。師で昭和を代表する書家手島
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染色画家 松井妙子さん(島田市) 布に描く自然への敬愛【表現者たち】
ふっくらとした丸みが愛らしいフクロウ、どこまでも広がる菜の花畑。染色画家松井妙子さん(75)=島田市=が描く独自の世界は、風景と図案が一体化したよう。淡くも明瞭な描写が、布地の柔らかさと調和する。 高校時代、生物クラブで草花の色素を研究した。「研究者か、詩人になりたかった」。慶応大文学部を卒業後、会社勤めの傍らで始めたのが手描き更紗だった。 なぜ布か。「ツバキの絵が入ったつむぎの帯が欲しくて」。特別な師はいない。素材は木綿をはじめ、麻、くず布、しな布などさまざま。「真っすぐに描けないから、優しい線になる。鋭角ではなく鈍角ね」。防染のりも手作りする。個展は年1回と決め、静岡市内の百貨店で披
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「岡部おはなしの会」大石さん、宮崎さん 「朝比奈ちまき」絵本に 創作昔話の紙芝居を基に
藤枝市岡部地区で読み聞かせ活動を行う「岡部おはなしの会」の大石美代子さん(82)と宮崎清子さん(75)が地元の伝統食、朝比奈ちまきを題材に創作した昔話「あさひなちまき ものがたり」を絵本にした。これまで紙芝居で子どもたちに披露してきたが、より親しみやすい形となった。 朝比奈ちまきは戦国時代の携帯食で、戦勝を呼ぶ縁起物。徳川家康にも献上されたという古文書が残る。 大石さんは約15年前、古文書を基に昔話を創作した。少女が病身の母親の代わりに、村総出のちまきづくりに参加する物語。宮崎さんが紙芝居用に絵を描いた。ツバキのあくに漬けた淡黄色のもち米を使うことなど、朝比奈ちまきの特徴も伝えている。
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ROTH BART BARON/三船雅也 ステージは大きな楽器 FUJI&SUN’23
13、14日、富士山の麓でキャンプをしながら楽しめる野外音楽フェスティバル「FUJI&SUN’23」。2日間で20組が出演する。2日目は、シンガー・ソングライター三船雅也が率いるインディーロックバンド「ROTHBARTBARON(ロット・バルト・バロン)」で幕開け。昨年に続いて2度目の出演となる三船に、抱負を聞いた。 昨秋、最新アルバム「HOWL」を発表し、3月に全国ツアーを終えたばかり。フォーク音楽をルーツに、反復がもたらす高揚感と現代的なエレクトロニックサウンドが共鳴したアンサンブルが高評価を受ける。 「昨年の『FUJI&SUN』は霧に包まれた幻想的な雰囲気の中での演奏で
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歌うように 踊るように バイオリニスト/椙山久美さん(浜松市中区)【表現者たち】
バイオリニスト椙山[すぎやま]久美さん(59)=浜松市中区=が4月末、デュオリサイタルを静岡、浜松の両市で開く。ピアニストでパリ国立高等音楽院教授、上田晴子さんとの共演。当初は2020年春に予定していたが、新型コロナウイルス禍で延期が続き、3年越しとなる。フランクやラベルのバイオリンソナタをはじめ、フランス人作曲家を中心とした名曲プログラム。「歌うように、踊るように。色彩あふれる音色を届けたい」と臨む。 浜松市出身。5歳でバイオリンを始めた。東京芸大付属音楽高に進み、同大、同大大学院からウィーン国立音楽大に留学。帰国後はドイツ音楽を軸に国内外で演奏活動をしてきた。 上田さんとは02年、共
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俳誌1000号 節目に向けて 俳句結社「みづうみ」主宰/笹瀬節子さん(浜松市東区)
まっ青な空あるかぎり鳥帰る 浜松を拠点とする俳句結社「みづうみ」の5代目主宰、笹瀬節子さん(83)=浜松市東区=が詠んだ春の句。「雲一つ無い青空は、渡り鳥が北へ旅立つには最適。鳥たちは感覚を研ぎ澄ませ、この日と決めるのだろう。同時に、庭で楽しんでいたさえずりが消えてしまうということ。その寂寥[せきりょう]感も入り交じっている」と、春への思いを込めた。 俳誌「みづうみ」を1939年に創刊した原田濱人[ひんじん](1884~1972年)と、その後継者たちの足跡を紹介する浜松文芸館(同市中区)の特別収蔵展(6月18日まで)に、笹瀬さんのこの句の墨書も並ぶ。 入会したのは34歳のとき。幼稚園
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静岡人インタビュー「この人」 50周年記念誌を発行した「静岡子どもの本を読む会」代表 小泉亮子さん(静岡市葵区)
子どもたちに読書の喜びを伝えたいと初期から運営委員として、図書館と連携した講演会や勉強会を企画してきた。活動の中心「子どもの本を学ぶ講座」は、50年間で420回。講座から生まれた「静岡おはなしの会」でも中心的役割を担う。旧芝川町出身、81歳。 ―読む会との出合いは。 「子育て中だった30代、1972年の『読む会』発足後初めて開いた講座に参加したのが始まり。物語を覚えて語る『ストーリーテリング』も講座で教わり、『おはなしの会』を作る原動力になった」 ―講座の講師を選ぶ過程は。 「流行や人気の有無ではなく、登場人物がどう生きているか、物語の真理がしっかり伝わってくる本を探すことから始まる
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記者コラム「清流」 隣の人は左利きと思えば
「左利き」について取材していて、あるエピソードが気になった。30年ほど前、左利きの女性が、高校家庭科の授業で棒編みの課題を提出できなかったという。 教える側も左右を逆にしてなんて、頭が混乱しそう。現役の先生に聞くと、今はスマートフォンで動画を反転させて教えているとのこと。 便利になったと安堵(あんど)する一方、道具類も本の中のお手本も、まだ右利き中心。右利きの自分が左利き用のはさみを使うと、うまく切れない。左利きの人は、この違和感と折り合いを付け、時にひと手間を加えながら生活しているのだと実感する。 左利きは、10人に1人の割合。意外と多い。もしかしたら、隣の人は左利き、と想像すれば、
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張り子 想像広がる物語 野村梨奈さん(浜松市中区)【ものづくりびと 静岡県内作家の小さな工房】
釣り糸を垂れるクマ、座り込んでくつろぐ鹿や羊。張り子作家、野村梨奈さん(28)=浜松市中区=の作品は、胡粉[ごふん]の白さが作品の丸みを引き出し、その周りには、ゆったりとした時間が流れる。 静岡文化芸術大でプロダクトデザインを学び、卒業後はデザイン事務所に勤めた。文房具や家具のデザインなどを担当する中、「直接お客さんに手渡すものづくりをしたいと考えるようになった」。2年前、知人から張り子を作ってほしいと依頼されたのがきっかけ。独学で始めた。 型は粘土で成形するだけでなく、3Dプリンターも使う。「張り子は、型を作って工業製品のように量産できる。一方で、和紙を1枚ずつ貼り合わせていく手仕事の
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静岡の読書環境充実に尽力50年 「静岡子どもの本を読む会」 活動の歩み、記念誌に
子どもの本を学ぶ講座の開催や、地域の図書館づくりに取り組んできた「静岡子どもの本を読む会」が、50周年記念誌を発行した。公立図書館が少なかった半世紀前から、読書環境の充実に向け活動してきた足跡をまとめた。運営委員は「10人前後で世代交代をしながら、子どもたちに読書の喜びを伝えるバトンをつないできた。その歩みを知ってもらえたら」と期待する。 1960年代後半、自宅を開放して子どもに本を貸し出す家庭文庫が、静岡市内に続々とつくられた。同会はその連絡会として72年に発足。初年度から、市立図書館(現・市立中央図書館)と共催で「子どもの本を学ぶ講座」をスタートさせた。 絵本、児童文学、科学読み物、
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崔如琢美術館【美と快と-収蔵品物語(55)】
2013年、中国を代表する現代水墨画家、崔如琢[さいじょたく]さん(79)=中国・北京市=の作品を展示する「崔如琢美術館」が、伊東市にオープンした。山水画は遠近法を駆使したダイナミックな構図、動植物の描写は緻密さを極める。墨の自在な濃淡が、東洋芸術の粋を印象付ける。 濃淡用いて花と葉対比 「蓮の花」 2011年 ハスは、崔さんが得意とする題材で、同館で人気のある作品の一つ。花弁などの細かい部分は筆で描いているが、大きな葉は紙を丸めたものに墨を含ませて押し当て、茎は指やヘチマの綿を使って表現した。 葉の部分は、水墨画ならではの濃淡とにじみを用いた大胆な配置。凜[りん]とした花の部分と
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島田市博物館分館 海野光弘版画記念館【美と快と-収蔵品物語(53)】
1939年、静岡市の染物屋に生まれた版画家、海野光弘(~79年)。日本各地を旅し、自然風景とそこに生きる人々の素朴な営みを独自の陰刻技法によって描き出した。国内外で評価を受けながらも39歳で早世。残された作品群は2000年、島田市博物館分館開館へと導いた。海野版画は郷愁にとどまらず、日本の豊かな風土を今に伝えている。 人の営み 自然と調和 「湖岸の民家」は春の代表作。信州・諏訪湖のほとり、民家脇に菜の花の道が続く。花茎の細部はなく、咲きそろう様を黄一色で圧倒する。漆黒の家屋との明瞭な対比について、「黄色は描き手にとって難しい色。大胆な構図は、染色の家に生まれたバランス感覚の良さ」と島田
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感情と身体感覚を紡ぐ 画家・菅沢薫さん 浜松市鴨江アートセンター、木下恵介記念館で個展 28日まで
浜松市鴨江アートセンター(中区)のアーティスト・イン・レジデンス(AIR)で昨年11月から滞在制作してきた画家菅沢薫さん(33)=同区=。旧警察署庁舎の一室がアトリエ、そして個展会場となった。 高い天井から、自らが染めたストッキングが無数に垂れる。カラフルな透け素材に「性のイメージ」を内包させる。 原点は学生時代に遭った下着泥棒という。「複雑な感情、そこから派生する身体感覚を象徴する表現素材」として描いてきた。束ねたり、引っかけたり。形状の自由度も大きい。画廊とは異なる表現を求め、今展覧会で初めてインスタレーションに登場させた。 埼玉県出身。美術教師を目指して地元の大学に進んだが、相次
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左利きにも優しい社会へ 誰もが暮らしやすい生活は【NEXTラボ】
箸にペン、はさみなど、「左利き」の人にとっては、日常生活に不自由なことが多いのではないだろうか。記者は右利きだが、娘は左利き。手先で直せることではないと知ったが、将来への不安もよぎる。昔、右利きに直されたという話はよく耳にする。「利き手」をキーワードに、誰もが暮らしやすい生活について考えてみたい。 不便は日常のあちこちに 牧之原市内でクラフトビール醸造会社を経営する月居麻水[つきおりまみ]さん(48)と、その商品ラベルを描くイラストレーター岩本陽子さん(46)。2人は2年前、新商品を作る中でお互いが「左利き」だと知り、“左利きあるある話”で盛り上がったという。あら
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三木卓さん童話 半世紀経て新版「お月さまになりたい」 頑張る姿や失敗 人生に重ね
静岡市出身の作家三木卓さんが半世紀前に創作した児童書「お月さまになりたい」が、オールカラーの新版として偕成社から刊行された。三木さんは「30代半ばにドキドキしながら書いた初期の童話。大変ありがたい」と喜ぶ。 同書は1972年に三木さんが書き、「100万回生きたねこ」などを描いた絵本作家、佐野洋子さん=同市出身=が絵を担当。あかね書房から出版された。版を重ねてロングセラーとなっていたが、しばらく品切れになっていた。 物語は、男の子が学校からの帰り、1匹の犬と出会うところから始まる。犬はおしゃべりができるし、恐竜や風見鶏、気球にも変身できる。ユーモラスな会話のやりとりから、意外なストーリー
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MOE絵本屋さん大賞1位に「大ピンチずかん」 鈴木さん(浜松出身)栄誉、「静岡書店大賞」に続き
全国の書店の児童書担当者が最も支持する絵本を選ぶ「第15回MOE(モエ)絵本屋さん大賞2022」の1位に、浜松市出身の鈴木のりたけさん(47)の「大ピンチずかん」(小学館)が選ばれた。鈴木さんの1位受賞は初めて。 同作は、牛乳がこぼれた、トイレの紙がないなど、子どもが日常で突如襲われるさまざまな大ピンチを、レベル数と5段階の「なりやすさ」で解説する。男の子の必死な姿をコミカルに描き、ユーモアあふれる打開策も紹介している。 オンラインの受賞会見で、鈴木さんは「大人から見れば小さなミスも、子どもにとっては大事件。緊張したり気持ちが萎縮したりしがちだが、ピンチは誰にもたくさんあるよと伝えたい。
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三島の松浦さん 最優秀会員賞 静岡で県工芸美術展
第48回静岡県工芸美術展(県工芸家協会主催、静岡新聞社・静岡放送後援)が7日、静岡市駿河区の県立美術館県民ギャラリーで始まった。11日まで。美術部門、実用部門に、会員、準会員、一般の陶芸、染織、木工、漆などの応募作品と、招待作品の計152点を展示している。 最優秀会員賞は、松浦峰里さん(三島市)の金工「fragment」。小ぶりながら、1枚の金属板から表現した精度の高い造形が評価された。準会員と一般の最高賞となる県知事賞には鷲巣恭一郎さん(静岡市葵区)の染織「茶園俯瞰(ふかん)図壁掛け(三種)」が選ばれた。 その他の受賞者は次の通り。 【美術部門】会員賞 藁科剛一(静岡新聞社賞、焼津市
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記者コラム「清流」 冷蔵庫に優しい生活を
自宅の冷蔵庫を購入して15年になる。プラスチックの引き出しがひび割れても持ちこたえ、後に買ったエアコンや電子レンジより長持ちしている。24時間365日働き続ける冷蔵庫は、消費電力量が多い家電。家庭でできる温室効果ガス削減策を取材した時、あらためて気付かされた。 最新の冷蔵庫は、10年前のものと比べて約40%も省エネという。電気代の高騰を実感する折だが、買い替えるのも大きな出費。「壊れていないのに、もったいない」という思いが先行してしまう。 使い方の工夫もある。冷凍室は食品を隙間なく、冷蔵室は詰め込みすぎないのが省エネのこつ。あれもこれもと取り出しては「ピーピー」と鳴らしてしまうのを反省し
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弁当通し育む親子の絆 志茂田景樹さん(伊東出身)が絵本
子どもの弁当作りで悩ましいのが、メニューを考えること―。伊東市出身の作家、志茂田景樹さん(82)が、ツイッターに多く寄せられた子育てに関する相談を基に、絵本「ぼくんちのおべんとう」(絵・平田景)を刊行した。志茂田さんは「頑張らなくていい。子どもに気持ちは伝わっている。親子が絆を育む姿を、絵本を通して感じ取ってもらえたら」と期待する。 主人公は、お母さんと2人暮らしの小学生タクマ君。ある日、校外学習に出かけ、弁当の時間がやってきた。「新しいおかずが入っていますように」と呪文を唱えるが、入っていたのは、いつもと同じ、しょうが焼きだけ…。お母さんは家で本を作る仕事をしていて、とても
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読書が楽しくなる「しおり展」 20日まで、静岡の古書店で開催
静岡県内外のイラストレーターやグラフィックデザイナーら8人による「栞[しおり]展」が20日まで、静岡市葵区駿河町の古書店「本とおくりもの ヒガクレ荘」で開かれている。 紙製だけでなく、染めや刺しゅうの作品など、約20種100点が並び、しおりの原画も展示している。 深沢みなみさん(同市)は街で見かけた寄せ植えを描き、その花々の形に切り抜いた大判のしおりで、本に華やかさを添えている。「mash[マシュ]、」さん(藤枝市)はダイヤル式の電話機や牛乳瓶などレトロなモチーフを温かみのある配色で刺しゅうした。一輪の花や女の子など愛らしい絵柄が本から飛び出す趣向のしおりもある。 同店は開店2周年を前
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静岡人インタビュー「この人」 原泉アートプロジェクト代表・ディレクター 羽鳥祐子(はとりゆうこ)さん(掛川市)
掛川市北部、原泉地区でアーティスト・イン・レジデンス(AIR)を企画し、作家が旧茶工場や寺社などで作品を発表するアートイベント「原泉アートデイズ!」(27日まで)を率いる。2018年の初回から5年間の足跡を振り返る書籍も刊行する。群馬県出身。38歳。 ―山間地で1カ月以上、AIRを実施する理由は。 「都市部で制作していると、作品も世界観も小さくなる。ここには自然に囲まれた空間の広さと、ゆったりと流れる時間がある。その中で、作家自身が自分の新たな可能性に気付き、挑戦する姿が見られる」 ―AIRを始めた経緯は。 「学生時代、農学部で生物多様性について学び、人と自然との共生を考えるようにな
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文芸同人誌を展示即売 静岡文学マルシェ 焼津で30日まで
アマチュア作家の文芸同人誌を展示即売する「静岡文学マルシェ」が28日、焼津市の焼津駅前通り商店街内、「PLAY BALL! CAFE」で始まった。30日まで。「ブックフェスタしずおか」の連携イベントの一つ。 通算6回目となる今年は、昨年に続いて対面でなく委託販売の形を取った。県内外から55組240点が寄せられ、昨年の2倍の出品数という。ファンタジー小説や詩集、写真集、絵本など多ジャンルが並ぶ。 今年は、料理やお菓子にまつわる小説が増え、本の作り方の指南書や読書記録を付ける「読書手帳」など、創作文芸の魅力を幅広く伝えている。 同マルシェの添嶋譲代表(51)=同市=は「新型コロナウイルス禍
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3日開幕「みる誕生 鴻池朋子展」 静岡県立美術館で展示準備
静岡市駿河区の県立美術館で11月3日に開幕する「みる誕生 鴻池朋子展」(同館、静岡新聞社・静岡放送主催)の展示準備が27日、同館で行われた。 鴻池さんはアニメーションや絵画、絵本、彫刻など、幅広い領域で作品を発表してきた現代アーティスト。美術館の裏山にある散策路には4点を設置した。牛革にトンビを描いた縦6メートル横12メートルの大作は、雑木に囲まれ、日の光や木々の紅葉によって見え方が変わっていくという。 鴻池さんは「緩やかに上っていく美術館の立地、背後にある森の深さが展覧会のコンセプトの一部になっていった。鑑賞者と作品がやりとりを重ねる中で、新たな視点が生まれることを期待している」と話し
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田雑さん原画個展 小説挿絵など40点 30日まで静岡市葵区
イラストレーターで、小説の装画や挿絵を多数手がける田雑芳一さん(42)=静岡市清水区=の原画展「『物語』が、できるまで」が30日まで、同市葵区鷹匠の書店、ひばりブックスで開かれている。 朝倉かすみさんの山本周五郎賞受賞作「平場の月」、週刊誌連載から単行本化された林真理子さんの「小説8050」、柴崎友香さんとの共著「いつか、僕らの途中で」の表紙原画など約40点を展示している。田雑さん初の個展という。 窓際にたたずむ女性、街角に立つ男女など、鉛筆ドローイングによる情景描写は、モノトーンの中に光を感じさせる。田雑さんは「映像を学んでいた学生時代、フィルムの代用品としてイラストを描いたのが出発点
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この本がすごい! 衝撃、感動…富士高生が情熱ポップ 書店に常設コーナー
富士高生が手作りした本紹介のポップが、富士市の書店、谷島屋富士店で活用されている。「富士高校おすすめの1冊」とプレートを掲げた書棚には、最新の話題作をはじめ、古典、物理の解説本など幅広いジャンルが並ぶ。心を動かされた本への熱いメッセージとカラフルなデザインで、来店客を引き付けている。 同校は10年以上前から、読書や校内の図書館に親しむクラス活動の一環で、2年生がポップを作成してきた。校内に掲示した後、店舗に提供してきたという。 富士店として現在の場所に移転した2020年、レジ横の書棚に同校のコーナーを常設した。今年は8月、2年生が新たに作成した200枚を中心に、本のラインアップを刷新した
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切り絵で命の力表現 福井さん(静岡出身)絵本原画展 駿府博物館
静岡市出身の切り絵アーティスト福井利佐さんの絵本原画を紹介する企画展「福井利佐 生命の力を描く切り絵の世界 からまつ―ふじさんに もりを つくる き―」(駿府博物館、静岡新聞社・静岡放送主催)が15日、同市駿河区の同館で開幕した。12月11日まで。 福井さんの同館での個展は3年ぶり3回目。絵を制作した福音館書店の月刊絵本「かがくのとも」の「からまつ」(2022年11月号)、「むしたちのおとのせかい」(19年7月号)の原画63点が展示されている。 「からまつ」の原画は、富士山の森林限界で風雪と闘いながら自生するカラマツを繊細なラインと大胆な構図で表現した。富士山での取材や制作風景も写真で紹
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福井さん(静岡出身)切り絵展 霊峰のカラマツ壮大に 駿府博物館
静岡市駿河区の駿府博物館で15日に開幕する企画展「福井利佐 生命の力を描く切り絵の世界 からまつ―ふじさんに もりを つくる き―」(同館、静岡新聞社・静岡放送主催)の作品展示が13日、行われた。 福井さんは静岡市出身の切り絵アーティストで、同館での展示は3年ぶり3回目となる。福井さんが絵を手がけた福音館書店の月刊絵本「かがくのとも」の「からまつ」(2022年11月号)と、「むしたちのおとのせかい」(19年7月号)の原画63点を展示する。富士山の森林限界に自生するカラマツの壮大な物語を、細密な美しい線と大胆な構図で表現した。絵本のラフ案や下絵も紹介する。 作品の配置を確認した福井さんは「
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風景や草花 秀作日本画 静岡で県連盟展示会
第44回県日本画展(県日本画連盟主催、静岡新聞社・静岡放送後援)が5日、静岡市駿河区の県立美術館県民ギャラリーで始まった。10日まで。 会員と一般の部に計90点が寄せられた。岩絵の具の落ち着いた色調を生かし、自然風景や季節の草花を描いた秀作が多く並んだ。 最高賞の県日本画連盟賞は、山本梢さん(浜松市)の「深山」が選ばれた。「森の深さ、山の深さを感じさせ、茶色と緑色の対立を上下にうまく配した」と評価された。 その他の主な入賞者は次の通り。 県知事賞 山内奈津美(富士市)▽県文化協会長賞 佐藤末美(三島市)▽県教委教育長賞 後藤幸子(静岡市)▽静岡新聞社・静岡放送賞 岡田知子(藤枝市)大
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旧茶工場で楽しむ短編アニメ 掛川「原泉アートデイズ!」
掛川市原泉地区でアーティストが滞在制作した作品を展示する「原泉アートデイズ!」を前に、同地区の旧茶工場でアニメーション上映会「KEBLUJARA NIGHT(ケブルジャラ・ナイト)」が開かれた。滞在アーティストの1人、野々上聡人[ののうえあきひと]さん(38)=千葉県=が監督を務める製作チーム「ケブルジャラ・プロダクション」が、アートアニメの短編作品を披露した。 同チームは2013年に結成し、翌年のデビュー作「ケブルジャラ」が新千歳空港国際アニメーション映画祭で審査員特別賞に選ばれた。国内外の映画祭で発表を続けている。 これまでに製作した11作品全てを上映した。原泉地区で撮影したドローン
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風景や静物、写実絵画追求 静岡県立美術館で白日会静岡支部展
写実絵画を追求する美術団体「白日会」の静岡支部展が21日、静岡市駿河区の県立美術館県民ギャラリーで始まった。25日まで。 3月に都内で開かれた全国展の出品作をはじめ、県内の会員、準会員、会友、一般会員の油彩、水彩の大作約50点を展示している。水辺や木立などの風景画は自然の柔らかな陰影を捉え、静物画や人物画は対象の魅力を丹念に引き出した。 西谷之男支部長(吉田町)は「対象と向き合った時間経過も作品の深みとして表れている。ゆったり鑑賞してもらいたい」と話す。
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戦争テーマに絵本原画展 下田の鈴木さん 静岡・ひばりブックス
下田市の絵本作家、鈴木まもるさんの絵本「戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦」の原画展が25日まで、静岡市葵区鷹匠の書店、ひばりブックスで開かれている。 第1次世界大戦中のクリスマスイブ、交戦中のイギリス兵とドイツ兵が「きよしこの夜」をきっかけに心を通わせた実話を基にした。鈴木さんが制作中の2月下旬、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったという。 色鉛筆で描いた原画12点を展示している。戦場シーンはセピア色を中心に描くが、兵士たちが互いを知るにつれて、色彩が豊かになっていく。鈴木さんは「人が生きていく上で何が大切かを、原画を通して考えてもらえたら」と話す。
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のらネコシリーズ最新作出版 幻の鳥がすむ島で冒険 大原興三郎さん(静岡)
のらネコたちの冒険を描く「空飛ぶのらネコ探険隊」シリーズで知られる大原興三郎さん(81)=静岡市葵区、日本児童文学者協会評議員=が、最新作の第9巻「まぼろしの島のドードー」を出版した。「ファンタジーの魅力は過去、未来へも行けること。物語に興味を持ったその先に一歩踏み込んで思いをはせると想像力が広がり、深まる」と、子どもたちに期待する。 同シリーズは、子ども向け新聞の連載小説を2013年に単行本化したのを皮切りに、年1作刊行してきた。8匹の猫が古代エジプトやインド、南極など時空を超えた旅に出て、マンモスやサーベルタイガーなど絶滅した生き物と出合う。 第9巻は、いつも旅を先導する風船の気球「
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記者コラム「清流」 「嫌い」と口にする前に
自宅でテレビを見ていたとき、娘たちが「このCM、きらーい」「この歌手、きらーい」と言い始めた。「嫌い」のオンパレードに気付いて注意しつつ、日頃の自分の口まねだろうと思い当たった。 8月の子育て面「親子の本棚」で、富士市内の学校司書さんに「きらい」をテーマに絵本4冊を紹介してもらった。嫌われていたのは、焼き魚やカエルたち。ユニークな物語に魅せられて焼き魚が食べたくなり、カエルの不思議な生態を知って、彼らが愛らしく思えてきた。 「苦手」という程度でも、安易に「嫌い」と言えば、強い否定に聞こえてしまう。後々、何かのきっかけで好印象に変わることもある。「好きの反対は無関心」。気になったからには、
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静岡市東海道広重美術館「東海道五拾三次之内 由井 薩埵嶺」 1833年頃 歌川広重作【美と快と-収蔵品物語㊲】
江戸時代を代表する浮世絵師歌川広重(1797~1858年)が37歳の頃に描いた「東海道五拾三次之内(保永堂版東海道)」。宿場とその周辺を叙情豊かに表現し、「名所絵師」の名声を得た。静岡市東海道広重美術館(清水区)が所蔵する全55点の中でも、 「由井 薩埵嶺」は往時の旅人たちが眺めた絶景を鮮やかに伝える。 緻密な対比 構図の技 広重が由比宿の名所として選んだのは、険しい薩埵峠と駿河湾越しに富士山を望む景色。明治以降、近代化で多くの宿場が様変わりしていく中、現在もその姿をとどめる。 旧由比町は1980年代後半から、旧東海道の本陣跡を公園に整備する計画を進めた。中核に据えたのが、全国初の広重
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まるで浮世絵 保護猫トリオ 熱海のバー店主が書籍出版
浮世絵に描かれる猫と遜色ない跳躍、長い手足を生かしたくねくねポーズ―。熱海市のバー「熱海MuddyCat」の店主山村由香さん(40)が、保護猫3匹との日々を写真で紹介する「浮世絵猫、おどる! バーにいる保護猫トリオの日常」(KADOKAWA)を出版した。 山村さんは2018年、東京から猫の「てんてん」とともに移住してバーを開いた。表紙を飾る個性的な顔の「ミチル」は函南町で保護され、熱海生まれの人懐こい「タビ子」は接待係という。 「ミチルと猫じゃらしで遊んでいたら、河鍋暁斎[かわなべきょうさい]が描く『猫又[また]』のようなポーズが撮れた」。その写真がツイッターでたちまち人気となり現在、同
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新作「へび ながすぎる」 何も考えず楽しんで ふくながじゅんぺいさん(藤枝市出身)
藤枝市出身の絵本作家ふくながじゅんぺいさん(37)=東京都=が、自身6作目の「へび ながすぎる」(こぐま社)を出版した。同郷の作家小川国夫さん(1927~2008年)の書画「蛇長過ぎる」から着想を得たユニークな作品。ふくながさんは「頭を空っぽにして楽しんでもらいたい」と語る。 ふくながさんは3年前、藤枝市郷土博物館・文学館の依頼を受け、小川さんの顔を切り絵で表現したグッズを制作した。小川さんの書画に出合ったのはその時期だ。「確かに蛇は、手も足もなく長い。へんてこな生き物と気付かされた。このタイトルで絵本を描こうと決めた」と振り返る。 絵本には、25ページにわたって長い蛇1匹が描かれる。そ
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小川三知の生涯 ステンドグラス作品を通し紹介 静岡
日本のステンドグラス作家の草分けとされる小川三知(1867~1928年)=静岡市出身=の作品と生涯を紹介するイベント「時を超え静岡に集う小川三知作品」が24日、同市役所市民ギャラリーで始まった。「小川三知を讃(たた)える会」(村上淑人会長)主催。28日まで。 北海道小樽市内の旧宅に飾られ、2018年に静岡市内の工房で修復された「旧野口家ステンドグラス」は日本画を思わせる絵柄。障子戸にはめていたステンドグラスや、ランプシェードなども並び、展示室の窓から差し込む太陽光の光彩を楽しめる。 親族が事業に関わっていた村上開明堂(静岡市葵区)とのつながりもパネルで紹介している。「讃える会」の村上会長
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銅版画40点 須藤萌子さん「鍵」題材のシリーズなど展示 静岡
静岡市葵区の版画家、須藤萌子(ほうこ)さん(40)の銅版画展が18日、同区の亀山画廊で始まった。29日まで。「大切なものを守る、しまっておく」思いを込め、鍵を題材にしたシリーズを中心に、約40点を展示している。 須藤さんは、これまで細密な線描を特徴にした抽象表現を創作の中心に据えてきたが、昨年から目に映る日常から着想し、「抽象と具象が共存する」表現に取り組んできた。 鍵のシリーズは大きさや色味が異なる作品が並び、「自分のお気に入り、大切にしているものは何か、もう一度思い起こしてもらう手掛かりになれば」と話した。草花や種など身近な自然物を深い青色のインクで刷り上げた小品も、銅版画の繊細な筆
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消しゴムはんこ 淡い色、季節感醸す 小島有加さん(静岡市葵区)【ものづくりびと 県内作家の小さな工房】
ホオズキの葉脈から透ける朱色の実。8月のカレンダーには、ラムネや水風船が涼をもたらす。静岡市葵区の小島有加さん(30)が消しゴムはんこで彫り上げる絵は、シンプルな線と淡い色彩が、季節感をいっそう引き立てる。 武蔵野美術大で空間演出デザインを学んだ。都内で映画セットを作る会社に勤めていたが、4年前、大学時代の友人と静岡市内の繁華街に、喫茶店を兼ねたゲストハウスを開いた。「パソコンの操作が苦手で、メニュー表を手作りしていたら、中学生のときに夢中になった消しゴムはんこを思い出して」。素朴さがレトロモダンな店のたたずまいにも合い、チラシや包装デザインも手掛けるようになった。 店を切り盛りしながら
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特別支援学校生の作品並ぶ 静岡市葵区、8月14日まで
静岡県内の特別支援学校の生徒、卒業生のアート作品を展示する「しぞーかのこどもっち」が5日、静岡市葵区両替町の三保原屋LOFTで始まった。14日まで。 富士特別支援学校富士宮分校の生徒や卒業生と、藤枝特別支援学校の卒業生らでつくる「waC*(ワック)」の花や動物の具象、抽象画がショーウインドーや店内を飾る。静岡市内を拠点に活動する団体は、子どもたちが日頃から親しむ絵や手縫い作品を基に、バッグやポーチ、アクセサリーなど、おしゃれな雑貨に仕立てた。パンやティーバッグの包装デザインも、鮮やかな色彩が来店者を楽しませている。 参加団体の一つ「62muni(ムニ)」(駿河区)の土橋由佳子さんは「特別
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自閉症青年の絵を本に 静岡県立こども病院の医師がCF
静岡県立こども病院発達小児科の医師、小林繁一さん(73)=静岡市=が、長年診察してきた佐藤那旺(なお)さん(25)=三島市=の描いた絵を絵本にするための資金をクラウドファンディング(CF)で募っている。愛らしい動物たちの絵にほれ込んだ小林さんが文を作り、今秋の出版に向けて準備を進めている。 自閉症と知的障害のある那旺さんは、小さいころからタコやゾウなどの動物を電話帳や新聞にクレヨンや色鉛筆で描いてきた。9歳からは月1回、小林さんの診察室へ通う。那旺さんが受診時にいつも手にしている動物の絵に、小林さんは「心が穏やかになる」という。「多くの人に見てもらいたい」と2年ほど前、絵本化を父親の清さん
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静岡の将棋教室 羽生九段、菅井八段と交流 30日、JT杯対局
静岡市駿河区のツインメッセ静岡で30日に開かれる「将棋日本シリーズJTプロ公式戦/テーブルマークこども大会」静岡大会(日本将棋連盟、静岡新聞社・静岡放送主催)を前に29日、対局する羽生善治九段と菅井竜也八段が市内の将棋教室生と交流した。 新型コロナウイルスの感染流行により、静岡大会は3年ぶりの開催。1回戦第4局を公開形式で行う。羽生九段は同シリーズに33年連続出場、優勝5回、準優勝5回を誇る。菅井八段は2年ぶり4回目で準優勝1回。対戦成績は菅井八段の8勝5敗。 両棋士は、高木将棋教室(高木秀彰代表・同市葵区)の小中高生11人を激励。日々の勉強法について、菅井八段は「実戦を重ねることが自分
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皿の上 カレーアーティストがつくる「著名人のキーマ」 静岡
よく知られたアインシュタインやバッハの肖像だが、ヘアアレンジはキーマカレーでパーマ風に。アインシュタインのおどけた表情にぴったり合う。「カレー美術館tiam(ティアム)」(静岡市清水区)が創作する「著名人のキーマカレー」は、ベートーベン、ゴッホの皿も加わる。 店主でカレーアーティストを名乗る楢木英理さん(41)は「食を通し、五感を刺激するカレーを提供したい」と3年前から間借りでの販売を始め、翌年には自店を構えた。店名のティアムはペルシャ語で「初めて出会った時の目の輝き」という意味。額縁のトレーに乗せる趣向も“鑑賞”の一助になっている。 バッハは、スライスしたゆで卵
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静岡県版画協会展 土屋さん知事賞、7月31日まで静岡
第86回県版画協会展(静岡新聞社・静岡放送後援)が27日、静岡市駿河区の県立美術館県民ギャラリーで始まった。31日まで。 最高賞の県知事賞に選ばれた土屋敏明さん(静岡市駿河区)の作品「Dueto―2」をはじめ、会員や一般の138点を展示している。土屋さんの作品は、表情の異なる2画面で構成した木版で、ダイナミックさと繊細さの対比が際立つ。一般の部、小品の部の出品数が増え、幅広い作風を伝える力作が並ぶ。 そのほかの主な受賞者は次の通り。 県教育長賞 片岡啓子(浜松市東区)▽静岡新聞社・静岡放送賞 永田寿治(浜松市中区)▽山口源の会賞 大久保勇(焼津市)▽県文化協会賞 鈴木宏明(浜松市北区)
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元気で明るい「怪談」 稲川淳二、9月に静岡公演
毎夏恒例の「稲川淳二の怪談ナイト」全国ツアー。9月3日には静岡公演(静岡新聞社・静岡放送など主催)を開催する。1993年の開始以来、連続公演30年の節目を迎えた稲川さんは「人への好奇心が原動力。実話をひもとき、怖さの中に思いやりを伝えたい」と意欲を見せる。 毎年新作を発表し、その数480話に及ぶ。今年のテーマは元気で明るい、そしてミステリアスな怪談。「明るさがあってこそ、影が濃い。楽しさとは裏腹に妙な不安がある。その正体が何か知りたくなる」。新作は5話程度用意している。 8月に「後期交霊者の75歳となる」と笑う。「何げないことが懐かしく、『今、その時が大事』との思いを強くする。その会場に
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静岡人インタビュー「この人」 久保田翠さん 静岡県文化奨励賞を受賞したアートプロデューサー
浜松市中心部で運営する福祉施設を拠点に2016年から、障害の有無にかかわらず自己表現を文化創造の軸とした「表現未満、」プロジェクトを推進する。17年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ理事長。静岡市出身。59歳。 ―受賞の感想は。 「福祉施設の受賞で、アートが介在する福祉の一つのモデルとして認められた。美術館や展示スペースの設置、芸術家支援だけがアートではない。福祉施設から、社会の規範を揺らし、新しい価値観を導き出す文化の力が波及していったらいい」 ―活動の原点は。 「重度知的障害のある長男を育てる中、どこにも預かってもらえない苦しみから『自
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涼誘う夏の金魚、競り熱く 浜松生まれ「浜錦」の魅力は
夏の風物詩といえば、金魚。金魚すくいは夜店の定番で、赤い小さな和金、愛らしいデメキンなど水槽の中を泳ぎ回る姿が涼を感じさせる。全国から専門業者が集まる競り、浜松生まれの「浜錦」、常設の金魚水族館などで魅力を探った。 40種ずらり 全国から業者「清水金魚」 観賞魚の卸を専門とする「清水金魚」(浜松市東区)は、おおむね毎週木曜日に競売会を開く。県内では唯一、国内でも約10カ所しかない金魚の競りの一つで、東海や関東地方を中心に卸売り、小売業者が集まってくる。 6月中旬の競売会は、背びれのないランチュウ、こぶのある頭が特徴のオランダ獅子頭[ししがしら]、長い尾が優雅な琉金など、4
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島田市博物館「田植の連句」 1694年、松尾芭蕉作【美と快と-収蔵品物語㉚】
「越すに越されぬ大井川」とうたわれるほど、大井川は流れが急で橋がなく、雨で増水すれば、川留めとなった。東海道を行き交う文人墨客も例外ではなかった。俳人松尾芭蕉(1644~94年)もその1人。川留めによって繁栄した島田宿で、地元の有力者と親交を深めた。芭蕉の人柄を物語る最晩年の連句が、島田市博物館に収蔵されている。 弟子に宛てた書簡によると、芭蕉は元禄7(1694)年5月15日夕方、島田宿に到着した。対岸の金谷宿に空きがあるか心もとなく、地元の有力者で俳人の塚本孫兵衛(如舟)の勧めで塚本家へ。その夜の大雨で川留めとなり、19日まで滞在した。 連句は、如舟の「今年出来の麦ですから、軟らかく炊
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「ノラネコぐんだん」藤枝で原画展 絵本の世界 にぎやかに
8匹の野良猫が持ち前の好奇心と行動力でドタバタ劇を繰り広げる工藤ノリコさんの絵本シリーズ「ノラネコぐんだん」。2012年の第1作発刊以降、累計250万部を超える人気シリーズの原画展が7月31日まで、藤枝市郷土博物館・文学館で開かれている。 同シリーズは毎回、育児雑誌「kodomoe(コドモエ)」(白泉社)の付録絵本として発表後、書籍化されてきた。編集長で、絵本の編集を担当した森綾子さんは人気の理由について「子どもたちも軍団の“一員”になった気分で、物語の世界に入っていける」と語った。 野良猫たちは当初、工藤さんの別作品の脇役だった。絵本化を提案した森さんは「すでに
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動物になりきって 静岡で参加型の個展【とんがりエンタ】
芝生の広場に、動物のオブジェが横一列に並ぶ。14体をよく見ると、ワニやキツネはしっぽ部分だけ、キリンやシマウマは胴体だけ。造形作家柴田美千里さん(藤枝市出身)が19日まで、静岡市葵区の東静岡アート&スポーツ/ヒロバで開いている個展「みんなで横一列」は、鑑賞者が作品の前に立ったり、顔を寄せたりして動物になりきれる参加型アートだ。 柴田さんは「向かい合うより、横一列の方が隣に誰かがいる心強さがあり、前を向ける」とし、動物に顔がない理由を「見る人にイメージを無限に広げてもらいたい」と話す。 触れてはいけない作品にだけ「乗馬禁止」などの看板が付く。ウレタン製のワニのしっぽは柔らかな“
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鈴木まもるさん(下田)「平和」描く新作絵本発刊
下田市の絵本作家、鈴木まもるさん(69)が、新作「戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦」を発刊した。原画を描き終える直前の2月下旬、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。鈴木さんは「人の優しさ、いとおしさを感じられる世界であってほしい。あらためてその思いを強くする」と語る。 絵本は第1次世界大戦中にあった実話を基にした。銃撃戦が続く戦地で、疲れ果てたイギリス兵が休んでいると、ドイツ軍の塹壕[ざんごう]から歌が聞こえてきた。「きよしこの夜」の旋律。敵同士が言葉を超えて歌声を交わし、心を通わせていく。 これまで鳥の巣や親子の触れ合いを描いた絵本を、数多く世に送り出してきた鈴木さん。
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俳人石寒太さん 季語、俳句の魅力説く 韮山高が講座
伊豆の国市の韮山高は27日、第一線で活躍する専門家を招く講座「志龍塾」を同校で開いた。同校出身の俳人石寒太さん(埼玉県在住、本紙読者文芸選者)が「うつくしい日本の季節のことば」と題して講演した。 石さんは、日本の四季や風土、人々の暮らしの中から生まれた季語の魅力を解説し、「季語と、十七音で作るリズムが俳句の大切な要素」と説明した。 季語を収録した歳時記も紹介し、「俳句は難しそうと思われがちだが、相手に季節のあいさつをすること。ふと思ったことを言葉にすれば、そのまま七五調、俳句になる」と語った。「季語や日本の美しい言葉が人生の糧になる。俳句の良さを心に留めてもらえたら」と呼び掛けた。
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洋服、雑貨…集まれ水玉 富士宮でイベント、次回は6月4日
水玉模様の洋服や雑貨を展示、販売するイベント「水玉のきぶん」(nicoli主催)が富士宮市のあさぎりフードパークで開かれた。“ドレスコード”も水玉模様。親子連れらが洋服や靴下、バッグなど、思い思いにコーディネートして買い物を楽しんだ。 nicoliの中村めぐみ代表(富士市)が「子どもの頃から水玉が好きだった。大人になっても好きな人は多いのでは」と3年前に企画し、今回が3回目となった。 県内外から30店舗が出店し、ブースを水玉模様の敷布やガーランドで装飾。中村さんは、水玉模様の端切れでてるてる坊主を作るコーナーを設け、人気を集めた。飲食ブースにはマフィン、ドーナツな
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全国展フォトコンテスト 松浦昭宏さん(島田)総理大臣賞 「アート」作品追求
第68回全国展フォトコンテスト(日本写真文化協会主催)で島田市の写真家松浦昭宏さん(69)の「石 円空、彫る」が、最高賞の内閣総理大臣賞を受賞した。全4部門2千点の中から選ばれ、松浦さんは「5度目の挑戦だった。アートとして評価されたことがうれしい」と喜びを語った。 受賞作は人物部門に出品し、地元の彫刻家土屋誠一さんが創作に打ち込む姿を、江戸時代の修験僧で仏師の円空になぞらえて、3枚の組み写真で表現した。「隆起する筋肉、立ち上がる石粉、虚空を見つめる静けさなど、白黒写真によって現代版・円空の世界観を示す」と評価され、満場一致の選出となった。 松浦さんは新薬や医療機器などの関連文書を作成、翻
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横溝正史ミステリ&ホラー大賞 読者賞に書店員の荒川さん(富士)
第42回横溝正史ミステリ&ホラー大賞の読者賞に、富士市の書店「谷島屋富士店」勤務の荒川悠衛門(本名大塚竜太)さん(35)=同市=が書いた「めいとりず」が選ばれた。職場の支援に感謝し「大好きな本に囲まれ、創作に打ち込めた」と喜びを語った。 荒川さんが執筆を始めたのは29歳。「元々物語を作ることに興味があり、クリエーティブな分野に挑戦したかった」と、金融機関を退職した。執筆しながら働ける仕事を探していた1年半前、同店の求人を見つけた。 荒川さんの「創作活動を優先して働きたい」という希望に、柴田昌紀店長(41)は「応援したいと思った。地元作家を支えるのも書店の役目」と判断。荒川さんの担当業務
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チョウの成長を点描 昆虫画家・桃山さん 静岡で絵本の原画展
卵から生まれたイモムシが皮を脱いで、さなぎになって背中が割れて―。チョウの成長を観察する昆虫画家、桃山鈴子さん(三重県)の「へんしん―すがたをかえるイモムシ」(福音館書店)は、命の息吹を写し取ったかのような繊細な点描画が特徴。桃山さんは「子どものときに一番驚いたのが、イモムシの変身。その神秘を子どもたちに伝えられたら」と語る。原画展が29日まで、静岡市葵区鷹匠のひばりブックスで開かれている。 鮮やかな緑色に黒や白のまだら模様を付けたモンシロチョウのイモムシ。羽化したての羽は柔らかそう。ナミアゲハのさなぎが緑色から黄色と黒へ変わる様子の描写は、目の前で観察しているように錯覚する。 チョウの
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バッグ類、写真を生地に転写 沢井健二さん(静岡市)【ものづくりびと 県内作家の小さな工房】
庭先に植わるイモの葉に落ちた水滴、竜爪山で見たツバキ、タンザニアのシマウマ、マダガスカルのバオバブの木―。ポーチを彩るのは静岡市葵区でセレクトショップを経営する沢井健二さん(71)=同市清水区=が長年撮影してきた写真だ。 野生の草花や生き物が見せる美しい瞬間を捉えたショット。沢井さんは「バッグのために撮っているわけではない。当てはめてみたらうまく収まったものが大半」と話す。 実家の洋品店は同市の中心市街地に位置し、ファッションの最先端を見て育った。中学校の部活動で写真に夢中になった。大学卒業後に家業を担うも、休日は海へ山へ。「自然の色をたくさん目にしてきた。1羽の鳥を見ても白色の入り方、
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失敗糧に答え探し続けて 透明標本作家・冨田伊織さんインタビュー
硬骨を赤紫色、軟骨を青色に染色し、肉質は透明に―。特殊な手法で制作した魚類や両生類などの標本を、幻想的なアートとして発表する透明標本作家、冨田伊織さん(38)=神奈川県葉山町=。作品は小中学校の理科教科書で、生き物の骨格など体の構造を示す標本例として紹介され、現在は静岡市清水区の清水文化会館マリナートで「新世界『透明標本』展」を開催中。子ども時代、制作への思いを聞いた。 ―どんな子どもだったか。 「生まれ育ったのは埼玉県。釣り好きの父とよく近所の川へ、時々海にも連れて行ってもらいました。魚や昆虫を捕って来ては飼い、ずーっと観察していた。少年野球チームにも入っていましたが、ボールを取りに
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記者コラム「清流」 まとまりきらないほど
毎年この時期、楽しみにしている卓上カレンダーがある。静岡市内の特別支援学校の卒業生らによるアートグループ「ハハハノラボ」が7年前から制作している。手書きの数字は動物が隠れていたり、水玉模様だったり。個性が光り、カラフルな色と相まってインテリアとしてもおしゃれだ。 新たに1カ月分の日めくりカレンダーも加わった。代表でグラフィックデザイナーの二宮奈緒子さん、幹さん親子の日々の会話から生まれた一言が添えられ、笑いを誘う。 月始めの1日は「かんで考える」。中旬の16日は「反抗期半ば」。追い込まれそうな月末31日は「まとまりきらないほど人生はいい」。奈緒子さんが並べた言葉の順序も絶妙。新年を待たずに飾
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妊娠SOS相談 適切な支援、社会全体で【解説・主張しずおか】
思いがけない妊娠に悩んだり、出産に迷ったりしている女性が匿名で電話やメールで相談できる「妊娠SOS相談」。静岡県内は10年前から、県と浜松市が妊娠SOSの看板を前面に出す。命に関わるデリケートな悩みを一人で抱える女性は絶えない。適切な支援にどうつなげるか、関係者の模索が続く。 窓口開設のきっかけは、厚生労働省が2011年にまとめた児童虐待に関する通知。生後間もない虐待死事例は、妊娠が計画外だったために周囲に相談できないまま妊娠を継続してしまったケースが多い。最悪の事態を防ぐには妊娠期からのケアが重要と同年に浜松市、12年に県が窓口を開設した。 県の窓口は県助産師会が業務を受託し、週2回実