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テーマ : 芸能・音楽・舞台

アイドルの皮かぶって 静岡発2人組アーティスト「もにゅそで」 インタビュー

 静岡市駿河区用宗、焼津市を拠点に楽曲や動画を制作する女性2人組「もにゅそで」。メンバーのもにゅこ、ミナミムラソデコはそれぞれ、所属レーベル「LushMusic(ラッシュ・ミュージック)」を運営する会社の代表取締役社長、取締役でもある。2022年末にはJR焼津駅前に直営のライブハウスも開いた。活動の目的に「地方創生」を掲げる2人に、結成から2年3カ月を振り返ってもらった。

 

意識を韻に置き換えた時
塗り替えられた君の心とtalking
少年に希望を老年に後光を
韻は愛そうだろう?nomorewar

(才能と叡知よ命じよ)
韻踏みますそしてrebirth
(時代と歴史の定義を)
核心突きます韻で満たす
(「韻踏みます」より)



地球に生まれて幾星霜
リズムに合わせていくSayYo
理由:仕方なく=適当
気づく言うまでもなく低速
(中略)
まぐろぐろのどぐろ鰹しらす
桜えびウニイカ不味さ知らず
鱚鰺鰯出汁なら勝男屋
カマスますます
虜になるものタチウオ
(「焼津でお寿司」より)


 現代的なエレクトロビートにのせて、ネットスラングや古典からの引用、静岡の風物をありったけ詰め込んだリリック(歌詞)を切れ味鋭くラップする。同じ響きの言葉を重ねる脚韻を頻出させながら、歌詞全体で一つの物語を紡ぐ。一方で、おそろいの衣装をまとったライブは、熱狂的なファンの反応も含め、「アイドル」のそれに近い。このギャップが「もにゅそで」最大の特徴だ。
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 静岡市駿河区を拠点に事業家として活動を始めていた兵庫県出身のもにゅこが、ライブ配信を介して大阪市在住のミナミムラソデコを知ったのは、20年の夏だった。
 もにゅこ「特別なものを持っているとすぐ分かりました。ギターの弾き語りだったんですが、オリジナル曲に最初から共感できた。歌詞が分かりやすかったし、曲も、声も特徴があって」
 交流サイト(SNS)やビデオ会議システムで説得し、静岡に呼び寄せた。
 ソデコ「もにゅこさんの存在は知っていたけれど、音楽をされる方だと思っていなくて。初めて(配信に)来てくださった時の、最初の一言が『ソデちゃんの夢は何?』だったんですよ。『熱い人だな』という印象でした。その後にZoomで話をしたりして、熱心に静岡に呼んでくださった。二つ返事で『行く』と言いました」
 12月に「もにゅそで」結成。21年4月から音源リリースを開始し、夏頃から「白眼全開」「焼津でお寿司」「Withの踊り子」といった、エレクトロビートとラップを基調にした楽曲が主体になっていった。
 ユニークな楽曲群で動画サイトやSNSでの人気が急上昇。22年2月発表の「素っ裸」はTikTokで総再生1500万回を突破した。
 ソデコ「活動しながら楽曲のスタイルが回り続けている。最初は自分たちのやりたいことだけを発信していたけれど『これじゃ、あかんなあ』と気付いて今の感じになりました」
 もにゅこ「コンセプトが最初からあったわけじゃない。ただ、何か引っかかりを作らないと、という思いはありました。動画の世界では2人で歌っている人はいくらでもいる。でも、女の子2人でラップをやっているグループはほとんどいない。『珍しい』という所を突いていかないと、誰も引き寄せられません。聴いてもらう、知ってもらうことが大事なので」

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 コンポーザーとしてのレベルの高さの一方で、アイドル然としたビジュアルイメージやライブを繰り広げてきた。22年8月には「韻踏みアイドル的なノリです」というタイトルの作品を発表し、自分たちのスタンスの一端をのぞかせた。
 もにゅこ「『アイドル』っていうのは、コスプレみたいなものですね。(楽曲名は)自分たちは境目を行くぞ、という意思表示でもある。常に変化する、変わっていくのが、私たちです」
 ソデコ「『アイドルの皮をかぶっている』と表現してもらったことがあって。それが一番合っていると思います。そう見えるように振る舞っています」
 楽曲は極めて簡潔で長さは2、3分にとどまる。短い時間に、おびただしい日本語が詰め込まれている。
 もにゅこ「SNSでまず知ってもらわないと。『これ、知ってる』というフレーズを、どれだけ聴く人の頭の中にすり込めるか。SNSにどんどん言葉を出して、それから曲にまとめる。これを戦略としてずっとやっています」
 もにゅこらが提示した、耳に残る「キーワード」をソデコが広げ、作品に昇華する。
 ソデコ「もともと日本語が好きで、詩を書くのも読むのも好きでした。小学校のころからワープロで詩集を作ったりもしていた。韻を踏むことも知っていて、音の響きに魅力を感じていました。ラップは正直、勉強中。歌い方を学んで、これまでの自分のやり方と組み合わせて『もにゅそで』の曲にしている。楽しく勉強できています」
 もにゅこ「難しい慣用句や4文字熟語を本当によく知っている。私にとってミナミムラソデコは〝武器〟なんです。こんなちっちゃい頭にどんだけ言葉が入ってるんやろ」
 ソデコ「小さい頃から、ノートにことわざを書いてそれを絵にする、みたいなことをめっちゃやっていたんです。昔の人はどんなことを考えてたんやろって」

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 当初から音楽による地方創生を掲げる。音楽ビデオでは用宗の堤防や海が頻出する。ウェブメディアや発信ツールの進化を踏まえ、「地方発」はむしろ有利だと話す。
 もにゅこ「10年前だったら難しかったかもしれない。でも今は、ソーシャルメディアの発達で、日本中どこにいても同じクオリティーで発信できます。それなら、地方を拠点にした方が絶対チャンスがある」
 ソデコ「自分たちはここに住んでいる、というのを強く主張できるんです。SNSで景色を背景にしたり、歌の中に入れたり」
 もにゅこ「SNSでは『こんなの見たことがない』というものを作らないと、見たり聴いたりしてもらえない。でも、海を背景に女の子2人がラップしている動画ってないじゃないですか。どれだけ人がやっていないことをするか」
 結成から2年が経過し、互いの強みについて理解も深まった。
 もにゅこ「ソデちゃんは、言葉の表現力がめっちゃすごい。アイドル的なかわいさもある。私の強みはいきおいと体の表現ですね」
 ソデコ「もにゅこさんは、自分を表現するのが上手。皆さんが(ウェブ上に)上げてくださるライブの映像を見ても、全身からテンプレートにはまっていない『もにゅこ』が出ている」

 22年秋は全国9会場を巡る初のライブツアーを敢行。全国各地のフェスティバルやファッションイベントからもお呼びがかかる。
 26日発表の新作EP「コラボしまーす。」は、ベイちゃん、Rimoママらレーベルメイト6組とのコラボレーションによる全6曲を収録した。ミクスチャーロックあり、滑らかなR&Bありと、曲調の幅も広い。
 もにゅこ「ラッシュ・ミュージックを立ち上げたばかりの頃、所属していたのは私たち以外に数人だった。それが、2年間の活動を通じて18組にまで増えた。このタイミングでもっとレーベルメイトの魅力を知ってもらいたいと思って、こういう形式にしました」

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 グループ結成、レーベル発足から2年。今後も変化を続ける気構えだ。
 もにゅこ「最初の頃は、行きたい場所はあるけれど、どうやってそこに行くのかが全然見えない状態でした。それでもとにかく進んでいったら、関西コレクションに呼んでもらえたり、いろいろな企業と仕事させてもらったり、アパレルのブランドが始まったり、いろんなことが起きた。これからもいいチームであり続け、お互いのいい所を生かし合いながら進みたいですね」
 ソデコ「2年間、ずっと夢みたいだったなと。一方で、気持ちの変化もありました。最初は自分のことだけを考えていたけれど、レーベルが立ち上がって取締役にしていただいてから、『もにゅそで』の一人として何ををしたらいいのか、という考え方になってきた。ライブハウスができて、飲食店ができて、会社にたくさんの方がいらっしゃる。全員が幸せになるために、『もにゅそで』のミナミムラソデコとしてなにができるのかという考えにたどり着きました。支えてくれる人、応援してくれる人に『付いてきて良かった』と思ってもらえる活動をしていきたい」

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