読み応えありの記事一覧
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熊本に続々進出、台湾半導体 地元企業、TSMC供給網入りが鍵
半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本第1工場からの製品出荷が12月に迫る中、台湾の関連企業の熊本県進出が相次いでいる。同社のサプライチェーン(供給網)整備の一環で、日本企業との関係強化も狙う。一方、地元の九州企業はTSMCとの取引に食い込めるかどうかが鍵となる。(共同通信=石原聡美) 「TSMCに納める装置の立ち上げを契機に日本でのビジネスチャンスを見いだしたい」。半導体製造装置の保守点検を手がける漢民科技(かんみんかぎ)の日本法人の田口雄三(たぐち・ゆうぞう)社長は話す。「日本の装置、部品メーカーは世界でもトップクラス。魅力がある」
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「移植で助かる命ある」 肝臓手術、ポップに発信
大きく膨れたおなかで、カメラを見つめて笑顔でダンス―。奈良県在住の駆け出しのインフルエンサー、そらりんたろうさん(29)は、難病で余命2カ月を宣告され肝臓移植を受けた。「移植で助かる命があると知ってほしい」。自身の経験を動画投稿サイトTikTok(ティックトック)などで分かりやすく伝えている。 音楽や振り付けを交え、黄疸で目が黄色くなったり腹水がたまったりした様子を赤裸々に記録。移植後はユーチューブチャンネルを開設し、これまでの入院時の持ち物や傷痕の変化、拒絶反応の症状などを紹介した。 そらりんさんは小学3年のころ、体を守る免疫
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HPVワクチン 集団接種で後押し 機会逃した女性キャッチアップ 静岡県内病院や自治体
子宮頸(けい)がんなどを予防する「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」の定期接種を逃した女性に接種機会を提供する「キャッチアップ接種」について、静岡県内でも接種のハードルを下げる動きが広がっている。県内の医療機関の一部は職員を対象に勤務前後や休憩時間に職場で打てる集団接種を実施しているほか、買い物ついでの利便性を図って大型商業施設で市民を対象とした集団接種を行う自治体もある。 医療機関での集団接種は浜松医療センターや静岡市立清水病院、富士宮市立病院など少なくとも9施設で実施か準備をしている。全国では5月末時点で約200施設が実施したという。 県立総合病院では、未接種の対象職員約2
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アスリートも「職人気質」。用具提供のメーカーが驚いた、五輪選手のこだわりとは
アスリートと切っても切れない関係なのが、競技に使用する用具だ。バスケットであればマイケル・ジョーダンさんのシューズ、野球であればイチローさんのバットだろうか。 パリ五輪でも、さまざまなメーカーが選手に用具を提供している。選手を一番近くで支える「相棒」。その生産に関わる人々に話を聞くと、4年に一度の祭典にすべてをかけ、細部へのこだわりを追求するアスリートの姿が見えてきた。(共同通信=浅田佳奈子、河村紀子) ▽既製品に違和感 フェンシング男子エペ代表の見延和靖(37)は、既製品のウエアに違和感を覚えてい
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「サンド伊達のコロッケあがってます」 揚げ物ほおばるだけなのに【ワーオ!】
「いただきまーす…あつっ…うん、これはうまいわ!」。中年男性が揚げ物をほおばり、にこにこしている。「サンド伊達のコロッケあがってます」(BS―TBS、金曜夜)は言ってしまえば、それだけの番組だ。ひねりがあるコメントでもないのになぜか目が離せない。サンドウィッチマンの伊達みきおが生み出すこの吸引力の謎を探るべく、ロケに同行した。 真夏のような日差しが照りつける6月。伊達はピンクの番組Tシャツ姿で東京・西新井の駅前にいた。「ここサウナ?」。緩いオープニングトークが始まると、途端に人だかりができた。 日本一コロッケを愛している男を自称
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宙に浮いた供託金100億円、高額献金対策の新法は「何の影響もない」 旧統一教会会長、退任時期は明言せず【単独インタビュー後編】
安倍晋三元首相銃撃事件の発生から2年に合わせた、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長の単独インタビュー。後半では、国側の施策への対応、自身の進退などについて聞いた。(共同通信=深江友樹) ―安倍元首相銃撃事件で逮捕、起訴された山上徹也被告について、教団として新たに把握したことはあるか。 特に聞いていません。公判が開かれ、人物像が分かるまでは論評は控えた方が良いと思っている。 ―教団改革の状況や課題は。
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社会の排除に対抗「いっそのこと依存症当事者で映画を」 高知東生さんら演じる回復の物語、上映広がる
ギャンブル、薬物、アルコール、買い物、ゲーム。さまざまな依存症からの回復が題材の映画「アディクトを待ちながら」が、6月下旬から上映されている。主演は、俳優の高知東生さん。2016年に覚醒剤取締法違反(所持、使用)などの罪で執行猶予付き有罪判決を受け、その後は治療を受けてきた当事者だ。同様に逮捕歴のある出演者が名を連ねる。依存症者(アディクト)を排除してきた社会へ対抗するように、自ら回復への物語を演じる。 監督・脚本のナカムラサヤカさんは「悪人だから依存症になるのではなく、誰もが陥る可能性のある病気だ」と訴え、1人でも多くの回復と社会復帰を願う。作品上映は、東京
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【ふるさと納税1兆円】買い物感覚、被災地応援も 自治体間の格差解消課題
ふるさと納税の2023年度の寄付総額が1兆円を突破した。地域を応援するという趣旨で08年度に始まり、好みの返礼品を選べる仲介サイトの普及もあって寄付が急増。被災地を応援するといった使い方もある。ただネットショッピング感覚での利用により、人気の特産物などがある一部の自治体に寄付が集中。自治体間の格差解消が課題となっている。 ▽理念 「ここまで利用が広がるとは思っていなかった」。総務省幹部は1兆円突破に驚きを隠さない。 政府の理念は、納税者が故郷やお世話になった地域などを寄付先に選んでその使われ方に関
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【イスラエル首相の米議会演説】ガザ戦闘継続へ連帯誇示 強気に賛否、米の亀裂露呈
イスラエルのネタニヤフ首相が24日の米議会演説でパレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、軍事支援を受ける米国との連帯を誇示した。支持率が低迷する中、自身の政治生命をかけ戦闘継続を主張した。議場は再三の拍手に包まれたが、ガザの民間人犠牲にほぼ言及はなく、強気の主張に賛否が交錯。多くの議員が欠席し、一枚岩ではない米側の亀裂も露呈した。 ▽正当性 「義理堅い友人や忠実な仲間であり続ける」。54分間のネタニヤフ氏の演説中、上下両院合同会議の議場は拍手と歓声で満たされた。ガザ情勢や敵対するイランの封じ込めなど安全保障の目的を共有しているとし「
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【中国事業縮小】EV出遅れのつけ重く シェア低下止まらず
ホンダが中国で四輪車の生産能力を初めて減らす。価格競争力で勝る現地の電気自動車(EV)メーカーの攻勢を前に、日本車のシェア低下が止まらない。EV出遅れのつけは重く、日本企業が現地で築いた供給網も縮小の動きが出ている。 ▽安価 「どうやってあの値付けで収益を確保しているのか」。日系自動車大手の中国法人幹部は中国勢の価格競争力に舌を巻く。特にEV最大手、比亜迪(BYD)は外資のガソリン車が依然強い車種クラスであえて低価格商品をぶつけ、シェアを奪いにかかっている。 調査会社マークラインズによると、中国で
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【ロシアの凍結資産活用】迫る期限、そろわぬ足並み 協議成果見えず
ブラジル・リオデジャネイロで24日に開いた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、ウクライナ支援に向けたロシアの凍結資産活用で目に見える成果を示せなかった。年内に支援実施との目標に向け時間は限られるが、残る課題を乗り越えられるかは見通せない。資金難のウクライナはG7が想定する枠組みを超える支援を求めるなど、それぞれの足並みはそろわない。 ▽保証 「残る時間は少ない。10月にG7で取りまとめられることが望ましい」。日本財務省の神田真人財務官は24日のG7終了後、記者団に対し進展はあったとしたものの、具体的な工程表で合意はでき
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【コロナ禍から解放の五輪】にぎやかな本来の姿 3年前の東京から一変
パリ五輪は、新型コロナウイルス禍から解放されて迎える大会になる。感染対策で厳格な「バブル」に選手や関係者が閉じ込められ、観客もほぼいなかった2021年の東京五輪から一変。世界屈指の観光都市に競技会場が溶け込み、にぎやかな本来の姿を取り戻していよいよ開幕する。 街の景色は、3年前の東京とまるで違う。きらびやかなパリの中心部は住民や観光客、そして五輪関係者がせわしなく行き交う。世界中に我慢を強いた多くの制約はなくなった。緊張感ばかりが漂った前回と違い、選手も関係者も高揚感に包まれている。 大会組織委員会のトニー・エスタンゲ会長(46
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【バイデン米大統領】苦渋の「禅譲」に称賛拡大 世代交代奏功なら遺産に
バイデン米大統領(81)が大統領選撤退の苦渋の決断をし、ハリス副大統領(59)に「禅譲」したことへの称賛が民主党内で広がっている。ハリス氏と共和党のトランプ前大統領(78)の支持率は拮抗し、選挙戦は予断を許さないが、世代交代が奏功して民主党政権が継続できれば、バイデン氏の大きなレガシー(政治的遺産)となる。 ▽亀裂修復 「米国が偉大なのは、国王や独裁者ではなく人々に主権があるからだ」。24日、ホワイトハウスの執務室から国民に向けて撤退理由を説明したバイデン氏の表情は、吹っ切れたように穏やかだった。名指しはしなかったが念頭にあった
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【小林製薬紅こうじ問題】「食品」扱う責任自覚を 消費者も安全考えて 自治医科大名誉教授 中村好一
死者を含む健康被害が相次いだ紅こうじサプリメントの問題で、小林製薬が事実検証委員会による調査報告書を公表した。腎疾患の症例を把握した後も内向きの対応に終始し、消費者への周知や国への報告が遅れたことが事態を大きくした。 併せて公表した取締役会名の文書は「言い訳」と「責任逃れ」の羅列だ。「組織的に隠蔽しようとする意図や行為は確認されなかった」「いまだ原因究明が継続中」「特定の製品ロットに問題があった可能性が高いことを探知し得なかったこと自体、結果論として直ちに強く批判することはできない」などの言葉が並ぶ。 100人を超える死亡疑い例
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日本のミステリーに追い風 英ダガー賞相次ぎ候補入り 横溝作品扱う出版社に賞
純文学に比べ、英語圏での存在感が薄いと言われてきた日本のエンターテインメント小説の状況が変わりつつある。伊坂幸太郎さんの作品が、ミステリーの分野で最も権威があるとされるダガー賞(英国推理作家協会賞)に3年で2度もノミネート。加えて、横溝正史らの日本作品を多数刊行する英出版社が、同賞の出版社部門を受賞するなど追い風が吹いている。 5月、日本のミステリー愛好家が驚く事態が起きた。伊坂さんが「AX アックス」でダガー賞の2度目の最終候補に入ったからだ。2年前の「マリアビートル」は英語圏以外の作品を対象にした翻訳部門だったのに対し、今回はスリラー小説を対象にしたイアン
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【識者コラム】伝統的な家族主義脱却を 少子化と男女格差を考える 村上由美子
少子化が加速している。2023年の日本の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの推定人数)は1・20に低下し、過去最低を更新した。東京の出生率も最低となった。少子化の進行による労働人口の減少は、日本社会の至る所でゆがみを生み始めた。働き手の確保が困難な企業は事業縮小を、後継者不在の場合は廃業を強いられ、深刻な経済問題に発展している。 ▽解決のめど立たず 今のままだと日本社会は60年までに、働く人よりも支えられる人が多くなると予想される。高齢化で医療や介護の需要は高まるが、財源となる税金や社会保険料を納める年齢層が減るため、必
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【現在地】作家のカツセマサヒコさん 新刊「ブルーマリッジ」で「人の揺らぎ」描く
4年前、20代の若者の恋愛と青春の日々を描いた「明け方の若者たち」で鮮烈なデビューを果たした作家のカツセマサヒコさん。3作目となる新刊小説「ブルーマリッジ」では、恋愛の先にある結婚と離婚を見つめた。「自分が小説に書いてきたものは『人の揺らぎ』だという感覚が、今回の作品で強くなりました」と語る。 20代後半の雨宮が恋人にしたプロポーズと、50代の土方が妻に突きつけられた離婚届―。対照的な二つの場面から始まる物語について「登場人物が全員傷だらけになる話です」と苦笑いする。 世代も価値観もまるで異なる雨宮と土方の人生は、勤務先でのとあ
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旧統一教会トップは謝罪せず「被害」強調、2世あきれ 「解散請求、受け入れていない」岸田首相への不信感も【単独インタビュー前編】
安倍晋三元首相銃撃事件の発生から2年。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長が7月上旬、共同通信の単独インタビューに応じた。単独取材は昨年3月以来で2回目。なぜこのタイミングで、何を訴えたいのか。原稿を見ず、質問に答え続けた教団トップ。だが謝罪の言葉はなく、繰り返し訴えたのは教団の「被害」だった。「宗教2世」らからはあきれ声や批判が噴出。インタビューの様子を2回に分けて詳報する。(共同通信=深江友樹) ◇場所は東京・渋谷にある教団本部。青いスーツに身を包んだ田中会長が記者の前にゆっくりと現れた。小脇には質問項目に関連す
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【シネマ】「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」 史実に虚構、新鮮なスリル
初の有人月面着陸が中継された裏で、失敗した際に国の威信が失われるのを防ぐため、米政府は偽映像を流そうとしていた―。「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、偽映像の撮影を準備する女性と、事実の映像を届けたい男性のそれぞれの奮闘をコミカルに描く。史実に虚構を加え、新鮮なスリルを体感させる。 1960年代、米国はソ連との宇宙開発競争を進め、月面着陸で勝利を印象づけようとする。NASA職員のコール(チャニング・テイタム)が成功を託される中、政府は、商品価値を軽妙な宣伝手法で高めるマーケッターのケリー(スカーレット・ヨハンソン)に事業のPRを指示する。
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最大派閥の無責任体質はどこから来たのか 解体状態の安倍派、ちらつく森元首相の影【裏金政治の舞台裏(3)】
自民党派閥パーティー裏金事件の元凶となった安倍派(清和政策研究会)。既に所属議員は要職から一掃され、派閥の解散決定を経て、解体状態となっている。最近では安倍派議員から岸田文雄首相の退陣論も出た。一連の無責任体質はどこから生まれ、かつて栄華を誇った安倍派はどこへ向かうのか。取材を続ける記者が振り返った。(共同通信裏金問題取材班=高松亜也子) ▽あの一言から始まった 昨年11月30日夕刻、安倍派(清和政策研究会)の担当記者が急きょ、衆院第2議員会館の塩谷立座長(当時)の自室に集められた。ある発言を撤回するためだ。
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【米大統領選】元検事と被告人の対決へ ハリス氏、舌鋒鋭さ武器に
11月の米大統領選は、民主党のハリス副大統領(59)と共和党のトランプ前大統領(78)が対決する構図が固まった。元検事のハリス氏は被告人を追及してきた舌鋒の鋭さが武器だ。議会襲撃事件など四つの事件で起訴されたトランプ氏を「重罪人」と見立てる作戦で攻勢をかける。 ▽宣戦 23日、ハリス氏が候補指名を確実にしてから初の遊説場所となったのは先週、共和党が党大会を開いた中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーの近郊。「トランプ氏のような人間を私は知っている」。演説で不敵な笑みを浮かべると、会場に「あいつを収監しろ」との大合唱が響いた。
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【世界の街から】地域産業のけん引力
フランス南西部の中心都市トゥールーズはローマ帝国時代にワイン交易で栄えるなど古い歴史を持つ。市の観光名所では世界遺産の中世の教会や修道院などが有名だ。 ところが今春、国外記者向けの観光ツアーに参加した際、最初に案内されたのは中心部から少し離れた宇宙のテーマパーク「シテ・ド・レスパス(宇宙都市)」だった。 有人月探査計画が注目される中、宇宙飛行士の気分を味わえる新たなアトラクションが導入され、最新の話題としてメディアに紹介するのが目的だったのだろう。トゥールーズの今を象徴するものと感じた。 今日のト
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【旧優生保護法違憲判決】旧法廃止後も不妊手術強要 日弁連指摘、全国調査求め
最高裁は障害がある人に不妊手術を強いた旧優生保護法を違憲とし、国の賠償責任を認定した。強制不妊の規定を廃止した現行の母体保護法は本人および配偶者の同意を不妊手術の要件とするが、日弁連は「不妊手術の強要や勧奨が相当数存在する可能性が高い」として全国調査を求める意見書を昨年、国に提出。専門家も「旧法の検証と並行して母体保護法下の手術の実態を調べるべきだ」と指摘する。 ▽なすすべなく 「どうして私の意思に反して私の人生をむちゃくちゃにできるのでしょうか。理解ができません」。精神障害を理由に手術を事実上強制されたと訴えた岩手県北上市の片
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【木原防衛相の訪英】戦闘機開発、連携に火種 不祥事続出、揺らぐ足元
木原稔防衛相は日英、日英伊防衛相会談で、防衛協力促進や次期戦闘機の共同開発に向けた連携強化を確認した。だが戦闘機開発は英労働党新政権で防衛政策の見直し対象になる可能性が報じられ、連携は火種をはらむ。国内では相次ぐ防衛省・自衛隊の不祥事を受け、野党は追及を強める姿勢を示しており、木原氏の足元は揺らいでいる。 ▽不可欠 「次期戦闘機の共同開発を共に成功へと導いていきたい」。木原氏は23日、日英、日英伊防衛相会談後、記者団に3カ国による事業を推進していく考えを強調した。 日本政府は最新鋭の次期戦闘機を将
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【人口動態調査】地域外の人材受け入れ鍵 「にぎやかな過疎」成果も
総務省が24日公表した人口動態調査で、地方の人口減少の深刻さが改めて鮮明になった。少子高齢化が進行する中、外部との交流が活発な「にぎやかな過疎」を模索し、成果を上げる地域もある。識者は、住民の増減だけにとらわれず、地域外の人材を受け入れ、地道にまちづくりを進める「懐の深さ」が鍵だと指摘する。 ▽農繁期 ポン、ポン―。山口県北部、見渡す限り山の緑が広がる阿武町福賀地区のビニールハウスで、木村武和さん(73)が名産のスイカをたたく音が響いた。収穫できるかどうかを音で判断。「もう採っていいよ」と声をかけると、埼玉県ふじみ野市から訪れた
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【半導体新法】膨らむ期待、資金が鍵 技術の壁に民間及び腰
岸田文雄首相は24日、次世代半導体の量産を目指すラピダスの支援を念頭に置いた新法制定の意向を表明した。民間金融機関からの融資に政府保証を付ける案などが浮上している。同社が工場を建設中の北海道では地域活性化への期待が高いものの、技術的な課題克服への懐疑論は根強い。鍵を握る資金支援を巡っては政府内で賛否が分かれており、民間企業も投融資に及び腰だ。 ▽命運 経済波及効果は約18兆8千億円、創出される雇用は関連産業を含め約3600人。北海道経済界は、千歳市に進出したラピダスによる2036年度までの恩恵にそろばんをはじく。北海道電力の藤井
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【最低賃金】生活苦訴え、労働側主導 経営者、大幅増に懸念
最低賃金の改定論議が24日決着した。6月に始まった協議は、歴史的な物価高に伴う生活苦を訴えた労働者側が主導。経営者側は人件費急増が経営危機を招く懸念を示し反対の論陣を張った。賃上げを重視する岸田政権の思惑もちらつく中、厚生労働省の審議会が示した結論は、過去最大50円の引き上げだった。 「物価高が続いている。生活していけない」「全国一律で最低賃金を1500円以上へ」。24日、労働組合関係者ら約20人が集結し、審議会が行われる厚労省庁舎に向かい苦境を訴えた。 18日の審議会で、労働者側の委員は具体的な要求を提示。大都市部を除いた41
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【ウクライナ選手、パリ五輪へ】戦渦乗り越え、目指す金 やまぬ空襲、国に希望を
ロシアの侵攻を受けるウクライナが26日開幕のパリ五輪に参加する。2022年の侵攻開始以降、3千人を超す選手やコーチが従軍し、470人以上が死亡。派遣選手は140人と夏季五輪では同国最小規模となった。仲間や親族を失い、空襲警報が鳴る中で練習を続けてきた選手は、戦渦の祖国に希望を届けるため、金メダルを目指す。 ▽葛藤 「前線で戦うか、五輪を目標とするか真剣に考えた」。レスリング男子、ジャン・ベレニュク(33)は21年の東京五輪で、ウクライナ勢唯一の金メダルを獲得した。同大会を競技人生の集大成と捉え、世界大会からの引退を考えていた。 だが、侵攻後に考えは変わった。「パリ五輪でウクライナの強さ
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【小林製薬紅こうじ問題】企業統治機能せず 信頼回復へ変革必要 多摩大特別招聘教授 真壁昭夫
小林製薬の紅こうじサプリメントによる健康被害問題への対応には強い違和感を覚える。今年1月15日に同社は、医師からサプリを摂取した患者が急性腎不全で入院したとの連絡を受けていた。しかし、問題の公表と製品の自主回収を発表したのは3月22日だ。初動がいかにも遅い。 摂取と関連が疑われる死亡事例が新たに判明したにもかかわらず、6月末まで国に報告していなかった。小林製薬の経営陣は企業が負う製造物に対する責任をしっかり認識していたのか疑問符が付く。 しかも、製造現場では問題の発生を認識していながら放置したとの調査報告もある。その情報が経営陣
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【非核の現在地】やめない、核廃絶の日まで 長崎座り込み、500回に 平和願い開始から45年
長崎の被爆者らが平和公園の平和祈念像前で毎月9日に座り込み、核兵器廃絶や戦争反対を訴える集会が500回を超えた。1979年の開始から45年たった今もなお、核は存在するばかりか使用の脅威が高まっている。「なくなるまでやめない」。憤りを示しながら、平和への思いを込め座り込みを続ける。 「大勢のけが人がぞろぞろと歩き、祖母に言わせると、幽霊の行列のようだった。核をなくさなければ人類は滅んでしまう」。500回目となった今年6月9日。日曜日と重なり、被爆者や労働組合員、高校生ら普段の約4倍となる参加者約420人に向けて、長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議
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【五輪時想】「争」より「競」の祭典に 平和と戦争、人間の表裏
美術館に行くのが好きだ。気持ちを落ち着けたいとき、絵の前にたたずむ。何か吸い込まれる感じを抱くときもある。パリならルーブルより印象派のオルセーが好みだ。 けれど、今回の五輪期間中は行けないだろう。世界陸連理事として競技場にいなければならないし、治安面の不安も伝えられているから。 五輪は「平和の祭典」と言われる。だがロシアのウクライナ侵攻がやまない。五輪休戦が実現しない状況下で安全が守られるか、懸念している。単なるお祭りではない、いろんなことを考えさせられる五輪になる
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「超少子化」の韓国、運動部のある学校が10年間で3割近く減った パリ五輪選手団は1976年以降で最小、スポーツ弱体化が憂慮される現場で何が
7月26日開幕のパリ五輪に韓国が派遣する選手団が、1976年のモントリオール大会後で最小規模となった。サッカーなど団体競技で出場権を逃したことが直接の理由で、人数が少なくても好成績となる可能性はあるが、韓国内ではスポーツの弱体化への憂慮が出ている。世界最低水準の「超少子化」で、スポーツをする子どもの絶対数が減り、小・中・高校の運動部は10年間で3割近くなくなった。スポーツをする環境にどんな変化が起きているのか。(共同通信ソウル支局 富樫顕大) ▽球技ほぼ全滅 4月、サッカー男子のパリ五輪アジア最終予選で韓国はインドネシアに敗れ、
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【特捜検察】今なお見立てにこだわり、証拠の適正な評価を 弁護士の喜田村洋一さん
自民党派閥の裏金事件や東京五輪を巡る汚職・談合事件など、東京地検特捜部が社会的な影響がある事件を次々と手がけ、存在感を高めている。2010年の大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽(いんぺい)事件で特捜検察はダメージを受けた。約14年がたち復活の様相を呈しているが、取り調べの問題は相次ぐ。数多くの特捜事件で弁護人を務めた喜田村洋一(きたむら・よういち)弁護士に、最近の事件や組織の課題について聞いた。(共同通信編集委員 松竹維) ―裏金事件で自民党は厳しい逆風下にある。 「特捜
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【特捜検察】信頼得られる説明を、広報の在り方は組織のテーマ 元最高検次長検事の伊藤鉄男さん
自民党派閥の裏金事件や東京五輪を巡る汚職・談合事件など、東京地検特捜部が社会的な影響がある事件を次々と手がけ、存在感を高めている。2010年の大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽(いんぺい)事件で特捜検察はダメージを受けた。約14年がたち復活の様相を呈しているが、取り調べの問題は相次ぐ。元最高検次長検事の伊藤鉄男(いとう・てつお)弁護士に最近の事件や組織の課題について聞いた。(共同通信編集委員 松竹維) ―自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件をどう見ているか。 「政治資金
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「旅」「成瀬」の痕跡そこここに 小説世界、リアルに存在 大津市
大津市を舞台にした青春小説「成瀬は天下を取りにいく」の勢いが止まらない。春に2024年の本屋大賞を受賞し、続編「成瀬は信じた道をいく」と合わせ累計75万部。作中には実在の場所が頻出し、読めば大津に行ってみたくなる。そんな「成瀬―」に登場するスポットを訪ね歩いた。 著者は同市在住の作家宮島未奈さん。「成瀬―」は大津市で暮らす成瀬あかりの中学と高校時代をコミカルに描く。成績優秀で生真面目だが、漫才コンクールに挑んだり、髪が伸びる速さを検証するために突然坊主頭にしたり。わが道をゆくマイペースさが持ち味だ。 「成瀬―」を体感しようと、ま
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【堀井学議員】裏金使途、再び焦点 自民調査に疑問符
公選法違反容疑で東京地検特捜部の強制捜査を受けた堀井学衆院議員(52)=自民離党=に、安倍派から還流された「裏金」を私的流用したとの新たな疑惑が浮上した。堀井氏も対象だった党内調査は「還流金を違法に使った例はない」と総括しており、調査の信ぴょう性に疑いの目が向く。再び注目される裏金の使途。野党などから全容解明を求める声が上がる。 ▽慣例 「本人は地元に来ないし、説明も全然ない。信頼がなくなった」。北海道登別市にある堀井氏の地元事務所の近くに住む80代男性が不満を口にする。 今月上旬、秘書らを通じた
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【パリ五輪とメダリスト】五輪「金」に賞金、批判も IOC会長選の政争絡む?
パリ五輪で国際競技団体が初めて選手に賞金を出す決定が波紋を広げている。各国・地域の政府やオリンピック委員会の報奨金とは別に、世界陸連(WA)が優勝者に賞金を出すと表明し、ボクシングも続いた。主な理由に選手の待遇改善を掲げるが、賞金目的ではない五輪メダルの価値と独自性を損なう懸念が指摘される。国際オリンピック委員会(IOC)会長選に絡む政争の側面もあるとみられ、批判的な声が目立つ。 ▽タブーに切り込む 4月に行われたWAの記者会見。金メダリストに賞金5万ドル(約780万円)を贈ると発表したセバスチャン・コー会長(英国)は「五輪で選
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【五輪談合の博報堂有罪判決】なぜ反競争的か不明だ 違反認定続けるとカオスに 上智大教授 楠茂樹
東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件で広告大手博報堂とその幹部に対する有罪判決が7月11日、東京地裁(安永健次裁判長)で下された。 舞台となったのは、20を超える競技種目のテスト大会の計画立案業務である。大会組織委員会大会運営局の元次長(有罪確定)は、大会の確実な実施という最優先の課題に対処するため、契約の可能性、蓋然性を高めようと、各事業者の受注意欲を探り、受注の声がけをするといった行為をした。この行為が、元次長を調整役とした事業者間での反競争的な「業務の割り振り」とされ、独禁法違反に問われた。 こうした声がけ行為は、確実な
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【アマゾン処方薬販売】巨大IT、普及を加速か 「門前薬局」受難も
アマゾンジャパンがオンラインでの処方薬販売を始める。異業種からも大手が相次いで参入する一大市場にITの「巨人」が加わることで、処方薬のインターネット販売が一気に加速する可能性がある。ただ、経営体力に乏しい薬局は新たな設備投資が負担となり苦境に立たされそうだ。 ▽自宅完結 「使い慣れたアプリからシームレスに(切れ目なく)ご利用いただける」。アマゾンジャパン幹部は23日、サービス発表の記者会見で自信を見せた。調剤薬局への移動時間や待ち時間を省く。提携するオンライン診療サービスを使えば、受診から薬の購入まで自宅で全てが完結する。時間に
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【日鉄、宝山鋼鉄と合弁解消】日中経済転機に USスチール買収思惑も
日本製鉄が中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄との合弁事業を解消する。主要な顧客である日系自動車メーカー各社が中国でシェアを落とし、中国市場の魅力が薄れていることに加え、米鉄鋼大手USスチールの買収を進めやすくする思惑が働いた可能性もある。1970年代に始まった日中経済協力は転機を迎えそうだ。 ▽恩師 「ぜひこれと同じ工場を中国に造ってもらいたい」。78年10月、当時の中国の最高指導者だった故トウ小平氏は千葉県君津市にある新日本製鉄(現日鉄)の製鉄所を訪れ、こう要求した。日鉄と宝山鋼鉄との連携は、中国が78年に改革・開放路線にかじを切って以降
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【米民主党副大統領候補選び】弱点補完へ激戦州知事有力 バランス重視で白人男性か
11月の米大統領選で民主党のハリス副大統領(59)が候補指名を確実にし、副大統領候補選びが次の焦点となる。白人労働者の支持不足という「弱点」を補い、女性で非白人のハリス氏とのバランスを取るため、激戦州の知事を務める白人男性が有力との見方も。共和党のトランプ前大統領(78)を倒すのに最適な伴走者は誰か。短期間での選択を迫られる。 「ハリス氏が自身と一緒に選挙戦を戦い、一緒に執務するのに適した人物を選ぶだろう」。副大統領候補に名前が挙がる東部ペンシルベニア州のシャピロ知事(51)は22日、地元のイベントで質問をけむに巻いた。 歴代の
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【韓国の北朝鮮スパイ捏造】在日「スパイ」再審勧告 新たに4人、苦しみ消えず
韓国が軍事独裁政権だった1970~80年代、在日韓国人らが相次いで「北朝鮮のスパイ」として韓国で長期拘束された。多くは事件の捏造だったことが判明する中、政府調査機関は今年5月、新たに4人(いずれも故人)について拷問による虚偽自白を強いられたなどと認定し、再審を勧告した。残された家族の苦しみは今も消えない。 ▽14年ぶり 調査機関は2005年に発足した「真実・和解のための過去事整理委員会」。軍事政権期などの軍や公安機関による国家暴力を調査してきた。 被害者らでつくる「在日韓国良心囚同友会」の李哲代表
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【小林製薬紅こうじ問題】異例被害、警鐘届かず 消費者置き去り、改革急務
小林製薬の創業家2人の引責辞任に発展した異例の健康被害は、拡大を未然に防げた可能性がありながら、医師からの警鐘が届かなかった裏側が明らかになった。事実検証委員会はトップの無責任体質を指摘。消費者が置き去りにされ、経営の重大局面で説明責任を果たさない企業風土は、抜本的な改革が急務だ。 ▽摘まれた芽 紅こうじサプリメントを摂取した患者が急性腎不全で入院し、透析治療中―。一連の問題の発端となった問い合わせは1月15日、九州地方の医師から小林製薬のお客様相談室に寄せられた。 相談室には2月1日、関東地方の
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「放任上司」自治体が対策 対等関係、研修で注意喚起 職場環境悪化を未然防止
部下とのコミュニケーションに自信はありますか―。組織の管理職がパワハラの指摘を恐れるあまり、部下との必要な意思疎通を避けて「放任上司」となる課題が指摘されている。コンプライアンス意識の高まりに伴い顕在化。職場環境の悪化につながりかねず、自治体が注意喚起の内容を職員研修に取り入れ始めた。専門家は防止へ「対等な関係」が鍵だと語る。 「コミュニケーション不足も離職につながる」。6月上旬。同志社大の太田肇教授(経営学)が大阪府茨木市で、消防士40人に語りかけた。市消防本部でパワハラがあったのを受けて2020年に始まった「コンプライアンス研修」の一こまだ。
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全国の三セク鉄道9割経常赤字、苦境続く 燃料、維持管理費が重荷、災害復旧費も
全国41社の第三セクターの鉄道会社が加盟する第三セクター鉄道等協議会(東京)がまとめた2023年度決算は、通常の事業活動で発生した損益を示す経常損益が9割の37社で赤字だった。利用客は3年連続で回復したものの新型コロナウイルス禍前に及ばず、燃料費高騰と施設の老朽化に伴う維持管理費の負担が大きい。土砂崩れなどの災害復旧費も重なり、経営の苦境が続く。(共同通信=相沢一朗) 全体の経常赤字額は前年度比39・3%減の86億269万円。輸送実績がある中で最大赤字は、熊本県八代市と鹿児島県薩摩川内市を結ぶ「肥薩おれんじ鉄道」(熊本)の8億7913万円だった。九州新幹線開業
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エイジテックで高齢者の課題解消、市場拡大 新しい技術アイディア競う【経済トレンド】
高齢者が生活していく上で直面する課題を新しい技術で解消する「エイジテック」に注目が集まっている。少子高齢化が進む日本では市場が拡大しており、他の先進国への輸出も期待できる。転倒に伴う骨折を防ぐ特殊な床材、ITを使った見守り、ハンディキャップを補うオフィスの備品など各社がアイデアを競っている。(共同通信=出井隆裕記者) ▽衝撃半分に 「寝たきりにつながる骨折のリスクを軽減できる」。2019年設立のマジックシールズ(浜松市)は転倒で床に衝撃が加わった瞬間だけへこむ特殊な
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子どもの食欲不振、熱中症対策にゼリー飲料 手軽に栄養補給【経済トレンド】
暑い日が続くと、子どもの食欲不振や熱中症が心配だ。パウチ容器のゼリー飲料なら手軽に栄養補給ができる。子どもが好むラムネ風味や乳酸菌飲料味の商品が登場。大人も楽しめて疲労回復につながるアミノ酸入りのタイプも人気だ。(共同通信=出井隆裕記者) 大正製薬は2024年4月、「リポビタンキッズゼリー」シリーズから「ラムネ風味」を発売した。成長期の子どもに必要なビタミンB1、B2、B6やカルシウムなどを配合。口の中に爽やかな酸味がほのかに感じられる味わいに仕上げた。「熱中症対策におすすめで、凍らせてもおいしい」と広報担当者。希望小売価格は1
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新ヘアケアブランド「プラストゥモロー」 主成分に着目、強い髪に【経済トレンド】
ファイントゥデイ(東京)の新しいヘアケアブランド「+tmr(プラストゥモロー)」が好評だ。担当した堀内明子(ほりうち・めいこ)さんに開発の狙いを聞いた。(共同通信=出井隆裕記者) 2024年2月の全国発売から2カ月で累計出荷数が195万本を突破。「消費者が重視する『潤い』を単に与えるという発想ではなく、髪の主成分のタンパク質に着目し、潤いをしっかり保てるように髪そのものを強くするとの考えで開発しました」 傷んだ髪をタンパク質のもととなる成分で補修し、しなやかな状態に
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障がいある人のためにもIT資格自宅受験を 沖ワークウェル社長 堀口明子【経済トレンド】
当社では通勤が難しい障がいのある社員が在宅勤務で働いています。ホームページ制作やシステム開発、デザイン制作、データ処理、教育訓練等の業務を行っているため、IT資格の取得を奨励しています。目指す資格を個人目標に設定し、合格に向けて取り組んでいます。 IT資格は名称を聞くだけである程度スキルレベルが分かります。エンジニアとして保有するITスキルの客観的な証明になるため、お客さまからの信頼が得やすくなります。一人一人のスキルや知識を磨くことは、お客さまへの提供価値や品質向上につながります。また、試験に合格するための学習は、業務で身につ
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子供指挟み事故防止対策を専門家に聞く 内装ドアの認定基準【経済トレンド】
Q 先日、子供がドアに指を挟まれてけがをしました。予防する方法はないでしょうか? A 東京消防庁の「日常生活における事故情報」によると、子供の手や足が挟まれる事故の原因で一番多いものは、自宅などの手動ドアとなっています。過去の救急搬送データでは、5年間に手動ドアに挟まれた事故で900人を超える子供が救急搬送され、そのうち45人の子供が指を切断しています。 ただ、挟まれ事故に関して手動ドアそのものに寄せられた相談は5件とわずかでした。ドアによる挟まれ事故は消費者自身の
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おやつカンパニー、社員のおやつが代表商品 ベビースターラーメン【経済トレンド】
おやつカンパニーは「ベビースターラーメン」で知られる食品メーカー。1948年に創業者松田由雄が、現在の津市で松田産業を設立。乾麺「広東麺」の製造が始まり。(共同通信=増井杏菜記者) 1959年、スナック菓子「ベビーラーメン」を1袋10円で発売。即席麺の天日干し過程で出てしまう麺のかけらをアレンジし、おやつとして社員に配ったことがきっかけで誕生した。1973年に今の商品名「ベビースターラーメン」に変更し、価格も20円に。その後、ミニカップ即席麺も売り出した。 1980
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「放任上司」自治体が対策 管理職向けハラスメント研修 部下と対等な関係「防止の鍵」【スクランブル】
部下とのコミュニケーションに自信はありますか-。組織の管理職がパワハラの指摘を恐れるあまり、部下との必要な意思疎通を避けて「放任上司」となる課題が指摘されている。コンプライアンス意識の高まりに伴い顕在化。職場環境の悪化につながりかねず、自治体が注意喚起の内容を職員研修に取り入れ始めた。専門家は防止へ「対等な関係」が鍵だと語る。 「コミュニケーション不足も離職につながる」。6月上旬。同志社大の太田肇教授(経営学)が大阪府茨木市で、消防士40人に語りかけた。市消防本部でパワハラがあったのを受けて2020年に始まった「コンプライアンス研修」の一こまだ。 参加した40代の男性管理職は取材に「消防
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【ロの核威嚇】止まらぬエスカレーション 核保有国の侵略に米欧慎重対抗
ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領が、ウクライナを支援する米欧に対し「核の威嚇」を強めている。侵略当初から「核兵器使用」をちらつかせてけん制してきたが、米欧は慎重にウクライナへの軍事支援を増強して対抗。ロシアは威嚇を言葉から実際の行動に移してエスカレーション(緊張の高まり)をあおっている。 ウクライナ戦争は、核保有国が核使用の威嚇を前面に出して他国を侵略した史上初のケースだ。ロシアの「核抑止力」が戦争にどう影響しているのか検証した。 ▽核抑止の効果
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被災地で願う、五輪アスリートの活躍。能登、福島から、ゆかりの選手に届けエール
パリ五輪が26日に開幕し、17日間の熱戦が始まる。「五輪で頑張ってくれれば、苦しんでいる被災者も嫌なことを忘れることができる」。そうエールを送るのは、バスケットボール女子の赤穂ひまわり(25)が家族と通う石川県七尾市のすし店の大将だ。店は元日の能登半島地震で損害を受けた。地域はまだ、日常を取り戻せていない。 五輪でのアスリートの活躍は、これまで多くの被災者を勇気づけてきた。能登半島や福島といったゆかりの地から、アスリートに思いを託す人々に話を聞いた。(共同通信=帯向琢磨、浅田佳奈子、黒田隆太) ▽【
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ベンゲル効果で外国人監督が主流に、飲酒文化をなくしプロ意識を向上 【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生(4)】
大物外国人選手の流入により時代遅れと揶揄された「キックアンドラッシュ」のスタイルから徐々に脱却していったイングランドのサッカーに、さらなる改革をもたらしたのが外国人監督だった。その代表的な存在が1996年10月にアーセナルがJリーグの名古屋から引き抜いたアーセン・ベンゲル監督。日本からやって来た知名度の低いフランス人に当初ファンやメディアは懐疑的な視線を注いだが、それまで「1―0のアーセナル」というフレーズが定着するほど手堅さを売りとしていたチームに攻撃的なスタイルを植え付けて進化させた。(共同通信=田丸英生) ▽「革新者」ベンゲル
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【猛暑】梅雨明け、熱中症の危険大 上旬の暑さ慣れ、リセット
梅雨明けした地域が増えて夏本番を迎える日本列島で、注意したいのが熱中症だ。一気に暑さが厳しくなる梅雨明けは、体が暑さに慣れておらず、搬送者数が最も多くなる傾向がある。今年は7月上旬に記録的な猛暑があり、いったんは体が慣れたはずだが、その後の梅雨空で涼しい日が続いた。このため、専門家は「暑さ慣れの効果は薄れ、リセットされた。熱中症のリスクが再び高まっている」と警告する。 全国有数の暑さで知られる埼玉県熊谷市で25年以上、熱中症の患者を診察してきた埼玉慈恵病院の藤永剛副院長(内科)によると、体が暑さに慣れる「暑熱順化」は数日~2週間程度かかる。
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【IHI燃費改ざん】顧客の面前で不正行為 エンジン老舗、風通し悪く
船舶用エンジンの老舗として知られるIHI原動機で発覚した燃費データ改ざん問題。不正行為はエンジンの運転試験の様子を見守る顧客の面前でも行われていた。不正を認識しながら誰もが口をつぐむ風通しの悪い職場環境も浮き彫りになった。 ▽80年代後半から IHI原動機の源流は、1919年に日本初の船舶用ディーゼルエンジンを開発した新潟鉄工所だ。経営破綻や再編を経験したが、現在の姿になるまで技術への評価は一貫して高かったという。元社員の70代男性は「同業他社からもほめられたほどだ」と胸を張る。 運転試験にはほと
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仮放免者、支援乏しく困窮 民間、自治体に重い負担 医療や教育肩代わり
入管施設への収容を一時的に解かれ「仮放免」となった外国人の生活が困窮している。国の支援が乏しく、代わりに医療や教育を提供する民間団体や自治体の負担が重くなっているのが現状だ。6月施行の改正入管難民法には、仮放免者への支援策が十分に盛り込まれず、専門家は「人権問題が置き去りになっている」と指摘する。 「医療費が数百倍になり、支払う見通しがたたない」。6月に群馬県太田市で開かれた無料の健康診断で、埼玉県から来たパキスタン国籍の50代男性はため息をついた。 昨年11月、難民申請が不許可となり家族全員が仮放免に。在留資格がないため就労は
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【パリ五輪開幕へ】聖火は分断を映す あるべき姿問われる祭典
パリ五輪が26日に開幕する。創始者、クーベルタン誕生の地に100年ぶりに帰る五輪である。参加選手の男女同数が初めて実現し、観客が2大会ぶりにスタンドに戻る。セーヌ川での開会式もある。フランスらしい文化のセンスあふれる大会になるだろう。 だが、この五輪は光ばかりではない。大会は開幕1週間前から国連が決議した「五輪休戦」期間に入った。しかし、ロシアが侵攻したウクライナの戦火も、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザでの戦闘もやむ兆しはない。「平和の象徴」五輪の聖火が映し出すのは、世界の分断、戦争と平和のせめぎ合いである。 古代ギリシャ
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【バイデン氏、大統領選撤退】決断促した二重の危機 トランプ独裁阻止の民主
「バイデン氏はとても善良で品行方正な人物であり、大統領として素晴らしい仕事をしてきた。だから難しい判断なのだ。一方、私たちはトランプ氏のこれまでの責任を問うことに一生懸命になりすぎて、トランプ氏を選挙で打ち破る努力を怠ってきた」 バイデン米大統領が選挙戦撤退を表明する3日前、「バイデン降ろし」に動いた民主党の大物議員が、筆者の取材先の同党有力者にこんなメールを送ってきた。この議員はバイデン氏に強い影響力を持つペロシ元下院議長に非常に近い。 どうやらこの頃から、撤退へ向けて潮目が変わっていたようだ。
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【自民党総裁選】森山氏、陰のキーマン 仕事師の動向、党内が注視
自民党派閥裏金事件で岸田文雄首相の政権基盤が揺らぐ中、党三役を担う森山裕総務会長の存在感が高まっている。政治資金規正法改正のように党内をきしませる難題で「仕事師」として首相を支えた。非主流派で影響力が強い菅義偉前首相や二階俊博元幹事長にも近い。9月の総裁選を左右する陰のキーマンとして党内が動向を注視する。 ▽重要人物 「最も厚い熱意で森山先生の来訪を歓迎する。再会できてうれしい」。22日、中国・北京。中国共産党幹部の劉建超中央対外連絡部長は森山氏を笑顔で出迎えた。中国側は森山氏を「日本政界の重要人物」(外務省筋)とみているようだ
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【体操宮田選手問題】開幕迫り「辞退」で着地 パリ五輪代表、処分は別途
体操女子のエースで19歳の宮田笙子選手(順天堂大)が飲酒と喫煙を認めた問題は、パリ五輪代表の「辞退」という形で着地した。発覚から緊急記者会見まで4日。26日に五輪開幕が迫る中、日本体操協会はスピード決着を迫られた。 ▽短期間 19日の東京都内での会見。日本協会の藤田直志会長は、事実確認とともに「短期間に決断しなければいけない」と対応を急いだことを明かした。内部通報を受けたのが15日。16日に事前合宿地のモナコで所属先の監督が本人に確認したことを踏まえ、翌日には帰国を指示した。18日に都内で改めて弁護士同席で事情を聴き、19日に発
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【バイデン氏が米大統領選撤退】仕切り直し、混迷の民主党 政権「死に体」余儀なく
バイデン米大統領が大統領選撤退を決断した。後継最有力候補のハリス副大統領が挙党態勢の構築を目指すが人気は低く、仕切り直しに民主党の混迷は極まる。バイデン氏が再選を断念したことで政権はレームダック(死に体)化を余儀なくされ、国際社会への影響力低下も避けられない。 ▽克服不能 「はっとさせられるような数字だった」。バイデン氏が精彩を欠いた6月27日の討論会以降、悪化を続けた内部の世論調査の結果を知る関係者は明かす。公然と反旗を翻す民主党議員は増加の一途だったが、バイデン氏は強気を崩さなかった。共和党のトランプ前大統領を破った2020
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【東海道新幹線見合わせ】列島の大動脈、もろさ露呈 長時間乱れ、検証急務
22日未明に起きた保守用車衝突で、東海道新幹線が終日ストップし、列島の「大動脈」はもろさを露呈した。終電から始発までの限られた時間で点検や補修をこなす保守作業は、高度な技量が求められる。JR東海は保守用車のブレーキが「結果的にかからなかった」と説明。長時間のダイヤ混乱に加えて安全面への懸念も引き起こし、専門家は「原因を速やかに検証すべきだ」と訴える。 ▽窓口に列 愛知県蒲郡市の現場は日中に猛暑となり、炎天下で100人ほどが脱線した保守用車をジャッキで持ち上げ、台車に載せる作業を続けた。 JR東海は
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沖縄の新名所へ破格条件で採用本格化 テーマパーク「JUNGLIA」、千人超
沖縄本島北部で2025年夏の開業を計画するテーマパーク「JUNGLIA(ジャングリア)」が採用活動を本格化させている。千人を超える人材の獲得へ県内外で説明会を開催。沖縄の新たな観光スポットを目指した投資額は約700億円で、雇用の規模、条件とも破格だ。地域振興の期待は大きい。(共同通信=吉岡駿) 「沖縄から日本の未来をつくる思いで入ってきてほしい」。沖縄県名護市で7月2日に開いた契約社員やアルバイト向けの初めての採用説明会で、運営するジャパンエンターテイメント(同市)の人事責任者の岩崎司(いわさき・つかさ)氏は呼びかけた。約100人の参加者のまなざしは真剣だ。
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「愛と多様性がこの国を作っていると、世界に示したい」 五輪モード、緊張と高揚に包まれた開幕直前のパリを歩いた
100年ぶりの夏季五輪が目前に迫るパリは、「五輪モード」へと姿を変えている。開会式が行われるセーヌ川や、競技会場となる世界的観光名所には観客席や特設ステージが設置され、普段の街並みは姿を消した。すでに厳戒態勢で、楽しげな観光客でにぎわう傍らをフランス軍兵士や警察が集団で警備に当たる。開幕直前の緊張と高揚が包む街を、五輪取材のため日本から出張中のカメラマン二人で歩き回った。(共同通信=坂野一郎、金子卓渡) ▽封鎖 「シャルル・ド・ゴール空港とパリ市内とを結ぶ高速道路上で強盗被害が多く発生しています。
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生活支える「共同売店」 住民がオーナー、沖縄 地域のよりどころにも
近くに商店がなく、買い物が困難な地域が問題となる中、沖縄で100年以上続く独自の商店形態「共同売店」が注目を集めている。地域住民たちが共同でオーナーとなって経営する商店で、かつては沖縄や鹿児島の離島に約200店あったという。現在は60店ほどが人々の生活を支える。 最初の共同売店は1906年、沖縄本島北端に近い沖縄県国頭村の奥集落に誕生した。那覇市から車で約2時間半。緑に囲まれた人口100人ほどの集落の中心部に、その「奥共同店」はある。 平屋の店舗の棚には食料品や日用品が並び、来客がゆんたく(おしゃべり)する喫茶スペースも。郵便局
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【記者書評】上尾信也著「国歌」 感情の喚起と価値観の表明
スポーツによる世界平和の実現を掲げて開催されるオリンピック。アスリートが競技に励む姿は私たちに勇気を与えてくれるし、各国がどれだけメダルを獲得するかを予想するのも楽しい。だが、今年のパリ五輪では、さまざまな場面で耳にする各国の国歌に注目してみるのはいかがだろう。 本書は、音楽歴史学を専門とする著者が約100曲の国歌を分析し、国歌そのものの役割や意義、それを生み出した近代社会の姿について考えを巡らせた一冊だ。 王と国民の団結を祈念して歌われた英国の「ゴッド・セーブ・ザ・キング」に、革命によって国家を成立させた歴史を象徴するフランス
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【ポスター問題】最低限の公選法見直し必要 選挙運動の自由化議論を 一橋大大学院教授 只野雅人さん
先の東京都知事選では、選挙ポスター掲示板に宣伝まがいのポスターが張られたり、掲示スペースが「売買」されたりした。政見放送でも選挙とは無関係な言動を繰り返す場面が数多く見受けられた。選挙運動は候補者の良識に委ねられているだけに、選挙自体の信頼を損なったという意味で問題は大きい。有権者の関心が選挙戦に向かず、本来の争点が十分に議論されずに終わった点でも課題が残った。 公職選挙法は首長や議員などに立候補する人を想定した法律であり、公職への立候補者には一定の良識があることを前提とした制度設計になっている。今回の事態はまさに想定外のことで
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【中国経済の課題】輸出主導の成長続かず 消費けん引型へ移行を
中国の実質経済成長率は今年4~6月期に前年同期比で4・7%と1~3月期から減速したが、上半期では5・0%となり、通年の政府目標と同水準を確保した。不動産不況に伴う内需不振を、安値による輸出拡大で補ったためだ。中国の輸出攻勢は諸外国との間で摩擦を引き起こしており、成長モデルの転換が今後大きな課題となる。 輸出攻勢は今に始まったわけではない。習近平国家主席が2013年に提唱した広域経済圏構想「一帯一路」の実現に向け、中国が鉄鋼やセメントといったインフラ整備に必要な素材を沿線の新興国に振り向けていたのは記憶に新しい。
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ブリットポップに乗ってイメージアップ、選手はセレブ化。転換点は1990年ワールドカップ 【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生(3)】
プレミアリーグが誕生する数年前まで深刻なフーリガン問題で威信が失墜していたイングランドのサッカーは、ピッチ内のプレースタイルも一面的な「キックアンドラッシュ(蹴って、走る)」というレッテルが貼られていた。荒れて泥だらけのピッチが当たり前で、技術よりパワーとスピードを前面に出す戦術が全盛だった。入場者数も減少の一途を辿るなど閉塞感に包まれた時代から、1990年代に入ると希望の光が差し込んできた。(共同通信=田丸英生) ▽専用練習場がなかった1980年代のチェルシー サッカー界が暗いイメージに覆われていた時代に、プロとしての第一歩を
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五輪契機に裾野広がる スケボー、マナー問題も
26日開幕のパリ五輪で日本勢のメダル量産が期待されるスケートボードは、2021年東京五輪を契機に競技の裾野を一気に広げた。日本スケートパーク協会によると、東京大会での初採用が決定後、この7年間で全国の公共パークは約5倍の475施設(24年5月末時点)に急増。普及と強化に追い風が吹く一方、マナー問題で対応を迫られる自治体も目立つ。 ▽市民の要望 7月初旬の新潟県スポーツ公園(新潟市)。1年前にオープンした「AIRMANスケートパーク」には、熱心に練習に励む若者の姿があった。「階段や段差などで跳ぶのが楽しい」と村山壮さん(13)。本
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【黒潮大蛇行】観測史上、異例の状況 瀬戸内海流域への影響懸念
2017年8月から始まり、観測史上最長となった黒潮大蛇行の変調が、東日本側だけでなく、瀬戸内海流域の循環にも大きな影響を与えていることが分かった。大蛇行は1965年以降、今回を含め6回起きているが、黒潮の流れが四国沿岸から離れたまま長期化するのは異例の状況だ。海洋環境や生態系への影響も懸念されている。 瀬戸内海の入り口である豊後水道に面する愛媛県宇和島市は2022年、海洋資源保全の観点から市環境基本計画を策定。その中で、周辺海域で潮流に変化が起き、養殖アコヤ貝が大量死したり、海洋ごみの滞留場所が変化したりする影響が出たと訴える地元の養殖業者の声を紹介している。
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【内閣支持率長期低迷】定額減税実らず、続く苦境 残り2カ月、再選不透明
岸田政権の内閣支持率が長期低迷から抜け出せない。物価高対策の定額減税をてこに、自民党派閥裏金事件で失墜した信頼の回復を図った岸田文雄首相の狙いは実らなかった。「政治とカネ」を巡る新たな疑惑や防衛省・自衛隊の不祥事も発覚。党総裁選まで残り約2カ月となり、党内では「ポスト岸田」を巡る動きが活発化する。苦境が続く首相はシナリオを描けず、総裁再選への道筋は不透明なままだ。 ▽淡い期待 「特効薬はない。国民のためになすべきことをしっかり行っていくことに尽きる」。自民の森山裕総務会長は21日、共同通信の世論調査で9回連続20%台となった内閣
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【知的障害者の臓器提供】患者と向き合う現場困惑 認識の齟齬、長年放置
療育手帳を持つ知的障害者の臓器提供可否判断を巡り、現場の移植コーディネーターに困惑が広がっている。厚生労働省の見解だと思って手帳所持者の提供を一律に見合わせてきたのに、現場に伝わる同省の見解が二転三転するためだ。双方の認識の齟齬が長年放置されていた形で、移植医療への信頼を揺るがしかねない事態となっている。 ▽解釈変更 「過去にこんな指示を受けた認識はない。厚労省が解釈を変更し、運用が変わったと感じた」 岩手県の森田里香コーディネーターは、2月に開かれた都道府県コーディネーターの全国会議で、療育手帳
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巨大な湖をボートで渡ってきた妊婦 アフリカの出産事情、「境界から」☆()ガーナ
深緑色の水が見渡す限り広がる。西アフリカのガーナは2月は乾期だが、巨大な湖はまるで海のようだ。木製のボートの先端が岸に乗り上げると、大きなおなかを鮮やかな衣装に包んだ女性が降りてきた。 39歳のテイエ・リジャイナは妊娠8カ月。十数キロ先の向こう岸から出産前の健診を受けるために湖を渡ってきた。ガーナ南東部には川をせき止めて造ったボルタ湖が位置する。漁業や電力供給などの恩恵もあるが、人の往来を隔てる障壁でもある。ボートの上で出産したこともあるリジャイナは、おなかに手をやって「この子は安全な環境で産みたい」と話した。 ▽遠い道のり
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「パンデミック条約」反対集会に1万人超、拡散する陰謀論 強制接種、その情報はどこから?「光の戦士」発言も
世界保健機関(WHO)で議論されている感染症の世界的大流行(パンデミック)の予防や対応を定めた「パンデミック条約」案を巡り、「ワクチンの強制接種を可能にさせる」といった情報が、インターネットの交流サイト(SNS)を中心に拡大している。賛同する国会議員によって条約反対の議員連盟が結成されているほか、大規模な集会も開かれている。だが、主張の内容は事実に基づかず、WHOが「超国家主体として国家主権の上位に君臨する」といった、陰謀論の影響が色濃い批判も目立つ。(共同通信=佐藤大介) ▽厚生労働省は「悪魔」、メディアはYouTube中心
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【森田真生さん】未来に届ける「センス・オブ・ワンダー」 今生きていること自体が、生命の表現
化学物質による環境汚染にいち早く警鐘を鳴らした「沈黙の春」を1962年に刊行し、環境保護運動が世界的に広がる大きなきっかけとなったアメリカの水産生物学者レイチェル・カーソン。彼女の遺作で、今も多くの人に読み継がれているエッセー「センス・オブ・ワンダー」の新訳を、独立研究者の森田真生さんが手がけた。 「センス・オブ・ワンダー」は1956年に雑誌で発表され、1964年のカーソンの死後、未完のまま単行本化された。幼い大おい(めいの息子)のロジャーと共に海辺や森を探索し、自然の美と神秘に触れる喜びをつづり、「センス・オブ・ワンダー(驚きと不思議に開かれた感受性)」を保
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未曽有の事態、断たれた絆を新たに紡ぐ 望郷の民と共に【生き抜く】「原発事故被災の医師」
「病院に残る者は死を覚悟せよという意味だと思いました」。2019年4月25日午後、福島県の医師、遠藤清次(67)は東京高裁にいた。同県南相馬市小高区の住民らが原発事故で「故郷を奪われた」として、東京電力に損害賠償を求めた控訴審で証言するためだ。 「3号機の爆発の映像がテレビで流れ(南相馬市立)総合病院の院長が職員全員を集めて『どういう状況か分からないが、とんでもないことが起こっている。これから先は避難するも病院に残るも、各自の判断で決めていい』と話しました」。遠藤は己の死を覚悟した。 ▽生と死の境界線
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ホームレスへの偏見回避を 「無視される人々」配信 米、人間としての尊厳求め
米国の男性が15年以上、各地のホームレスを取材し、撮影した動画を「無視される人々」の物語としてインターネットで配信している。ホームレスが急増する危機的状況の中、当事者への風当たりは強い。男性は動画の公開で偏見をなくし「人間として尊厳を持って扱われる社会」の実現を求めている。 「靴下いりますか」。6月下旬、多くの人が行き交うニューヨークの街角。うつろな表情で路上に座る女性にマーク・ホーバスさん(63)が声をかけた。女性は靴下を受け取り「路上生活はもう4年。つらいね…」とこぼす。口調は暗いが、会話の最中は目に光が戻ったように見えた。
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講談師・神田愛山 芸歴50年の“古希ドル”がCDデビュー【ワーオ!】
講談界の人気者神田伯山が高座で「腕は一流だけど、飛び抜けて暗い!」といじり続けたあの人が、満を持して芸歴50年、御年70歳でCDデビューした。遅れてきた“新人”の名は講談師神田愛山。自称「古希ドル(古希のアイドル)」を推すなら今しかない! 1974年に二代目神田山陽に入門。アルコール依存症で一時休養していた間に、弟弟子に真打ち昇進を抜かれた。「今に見ていろ、復讐してやる」というマイナスのエネルギーで断酒に成功し、芸にまい進。経験は独自の断酒講談としてプラスに昇華された。 古典でも自作でも確かな滑舌、豊かな抑揚による臨場感、そして
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【シネマ】「大いなる不在」 巧みな構成で愛と喪失描く
藤竜也がスペインのサンセバスチャン国際映画祭で最優秀主演俳優賞に輝くなど、各地の映画祭で高く評価された「大いなる不在」(近浦啓監督)は、巧みな構成でスリリングに観客を物語に引き込む。 冒頭は不穏だ。武装した警察の特殊部隊が怪しげなアンテナの立つ民家に近づく。配置を終え踏み込もうとした瞬間、玄関からスーツ姿の老人(藤)が現れ、手にしたかばんを大事そうに抱える。 連絡を受けた俳優の卓(森山未来)が、東京から九州の施設に妻(真木よう子)と駆け付けると、認知症だという元大学教授の父(藤)が拉致されたと不可解なことを口にし、父の再婚相手も
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【五輪評論】パリからパリ 五輪130年の回帰(5)の上 平和も戦争も生み出さない、外交と影響力のゲームの舞台
6月23日、五輪と国際オリンピック委員会(IOC)は1894年にパリで産声を上げてから130年の歴史を刻んだ。二つの世界大戦、東西冷戦とボイコット、国際政治の波、民族対立に揺れた五輪は7月26日、ロシアによるウクライナ侵攻、ガザ紛争の戦禍がやまぬ中、パリで開幕する。「聖火」は平和をともすのか、ローザンヌ大教授のパトリック・クラストルさんが論じた。 国際オリンピック委員会(IOC)とフランスのマクロン大統領が呼びかけて国連で決議された五輪休戦は、ロシアのウクライナ戦争とイスラエルとハマスの紛争の長期化と暴力性を考えると、実現しそう
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【米共和党大会】米国第一主義継承へ布石 バイデン氏は負の連鎖
暗殺未遂事件を切り抜けて勢いに乗る米共和党のトランプ前大統領(78)が「ミレニアル世代」の若手、バンス上院議員(39)を副大統領候補に起用し、米国第一主義の継承へ布石を打った。一方、民主党のバイデン大統領(81)は新型コロナウイルスに感染。撤退論は党指導部にも拡大し、負の連鎖が続く。 ▽けん引役 「トランプ氏は暴君と呼ばれたが、暗殺未遂事件の後、国民の結束を呼びかけた」。17日、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーでの共和党大会3日目。登壇したバンス氏は演説で、トランプ氏を絶賛した。 トランプ氏が
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【中国3中総会】「改革」変質、深まる統制 難局打開へ挙国体制
中国の習近平指導部は共産党第20期中央委員会第3回総会(3中総会)で米欧と一線を画す発展モデルの推進を重ねて宣言した。米国との技術覇権争いや不動産不況といった難局に挙国体制で挑む。改革・開放の看板は下ろしていないが、外資との結び付きを強めて高成長を遂げた故トウ小平氏の開放路線は変質し、統制色が一段と深まりそうだ。 ▽ほぼ空室 北京中心部から車で約2時間。「千年の大計」として雄安新区の建設が進む。河北省の農村部に人口200万人のスマート都市を誕生させる習国家主席が主導するプロジェクトだ。2017年の構想発表以来、6700億元(約1
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【識者コラム】経済の公的意義訴えた渋沢 新1万円札に思う 佐伯啓思
20年ぶりに紙幣の肖像が刷新され、1万円札は福沢諭吉から渋沢栄一に変わった。1835年生まれの福沢に対して、渋沢は少し下の40年生まれである。ともに日本近代化の立役者であるが、もっぱら言論活動で著名な福沢に対して、渋沢は名実ともに実業界の中心人物であった。 渋沢の功績はいくらでもあるが、そのうちのひとつは、第一国立銀行(旧第一勧業銀行、現在のみずほ銀行)の設立から始まり、近代日本の銀行システムを整備した点にある。要するに、お金の流れを整えることで日本の産業基盤を確実なものとしたわけである。 今日、われわれは、銀行制度が不備なく機
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【巨大IT課税】共通の危機感、G20動かす トランプ氏復活でご破算も
20カ国・地域(G20)が巨大IT企業を念頭に置いた国際的なデジタル課税の実現に向け動いた。背景には、今年秋の米大統領選でトランプ前大統領が返り咲けば交渉がご破算になるとの共通の危機感がある。 ▽利益流出 国際的な課税のルール作りが動き出したのは2012年にさかのぼる。経済協力開発機構(OECD)で法人税改革を話し合うプロジェクトが始まった。国境をまたぎ活動する多国籍企業が税率の低い国に利益を移し、税負担を軽減する手法が横行して批判が集中していた。 巨大IT企業の台頭も背景にある。従来の法人課税は
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【パリ五輪開幕まで1週間】クーベルタンの母国へ回帰 転機迎え、原点探る祭典に
近代五輪の創始者、ピエール・ド・クーベルタン男爵の母国に戻る1世紀ぶりのパリ大会開幕まで19日で1週間。地元は華やかなイベントで盛り上がる一方、近年の五輪は過度な商業主義やメダル至上主義、開催地のコスト負担なども指摘される。歴史とともにひずみが生まれたスポーツの祭典は転機を迎え、男爵の原点を探る大会となる。 ▽パリ大会の精神 7月5日、フランス北西部ノルマンディー地方で行われた聖火リレー。男爵が幼少期を過ごしたミルビルの城館周辺には人だかりができた。トーチを掲げた子孫のチボー・ドナバセル氏は「パリ五輪は相互扶助、喜び、平和を分か
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【太平洋・島サミット閉幕】日本、「絆」維持に苦慮 中国浸透、消えた看板政策
日本での「太平洋・島サミット」は3日間の日程を終えて閉幕した。日本は約30年にわたる島しょ国との友好関係を踏まえ「絆」をアピール。支援策を次々と発表し、寄り添う姿勢を示した。だが、近年は中国が巨額の援助を通じ、太平洋地域に浸透。首脳宣言からは、中国をにらんだ日本の看板政策「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の文言が消えた。焦りを募らせる日本は、結束維持に苦慮した。 ▽おもてなし 「日本と島しょ国の信頼、協力関係をさらなる高みに引き上げ、未来に向けて具体的な道のりを示すことができた」。岸田文雄首相は18日、閉幕後の共同記者発
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【訪日客数最多】観光公害深刻化 旅行先、都市圏に偏り
訪日客が上半期の過去最多を更新した。本格的な夏休みシーズンには多くの客足が見込まれ、年間累計も過去最多を更新する勢いだ。ただ都市部などの一部観光地では、混雑で住民生活の質を低下させるオーバーツーリズム(観光公害)が深刻化。三大都市圏に偏る旅行先の地方分散も課題となっている。 ▽模索 「東京から日帰りで来られて写真映えするのが魅力だ」。7月上旬、蔵造りの古い町並みで有名な埼玉県川越市。台湾から来た女性はこう話し、写真を撮り続けた。撮影や店舗に並ぶ人が車道にはみ出て、地元の路線バスは何度も停車した。
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【英政権交代と日本】労働党の安定感に負託 誰を落選させるかも基準 早稲田大教授 高安健将
英国で14年ぶりの政権交代が起きた。日本でもその必要性は語られるが、現実は遠そうに感じられる。英国の経験は日本に何を示唆するだろうか。まず政権を奪取した労働党について指摘したい。今回の総選挙は保守党の歴史的な敗北だった。半面、労働党が有権者に許容されていなければ、交代は実現しなかった。 野党それも左派の政党が政権交代を実現するには、有権者に聞く耳を持ってもらう必要がある。政権を担いうる存在として相手にされない限り、いかに個々の政策に賛成を得たとしても、政権与党にはなれない。その上で、いま国にとって何が問題か、どうすればよいか、自分たちにそれができるか。政党はこ
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【大リーグ大谷】夢の三冠王へ、前半戦出色 技術向上、移籍も奏功
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平は19日(日本時間20日)からの後半戦で夢の三冠王に挑む。前半戦はナショナル・リーグトップの29本塁打に加え、打率3割1分6厘は2位、69打点は3位と出色の好成績。16日のオールスター戦でも初本塁打を放ち、メジャーで12年ぶりの偉業へ期待が膨らむ。 ▽進化 「技術は年を重ねるごとに上がっている」。30歳を迎えて初めて取材対応した12日、大谷は言い切った。前半戦の打率はメジャー7年目で自己最高。もともと速球系には強かったが、今季は変化球に対する打率が大幅に向上し、三振の確率も過去最低だ。
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【年金納付5年延長】「負担増」誤解重なり撤回 税財源確保、調整に至らず
国民年金(基礎年金)の保険料納付期間を5年延長する制度改革案について、厚生労働省は来年の次期制度改正では見送ると決めた。改正の焦点と目されていただけに、方針転換に驚いた人も少なくないのではないか。 現行の納付期間は60歳になるまでの40年間。これを65歳到達までの45年間に見直す案は、最近になって浮上してきたものではない。厚労省は約10年前から構想をあたためてきた。基礎年金の目減りが将来的に深刻になる見通しが顕在化したことから、給付底上げの切り札と考えられてきた。 厚労省が撤回に追い込まれるまでの経緯を振り返ると、改革案への誤解
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静岡・愛知・愛媛 子育て支援団体 静岡県境越え連携 災害時に相互協力、平時も
静岡、愛知、愛媛各県の子育て支援団体が18日、災害時の相互協力に関する協定を結んだ。大規模災害が起きた際に子育て家庭の支援ニーズを共有したり、必要な物資を調達したりする。平時から防災活動などで協力し、県境を越えたネットワークを強化する。 協定を結んだのは、静岡県内34の子育て支援団体でつくる「しずおか子育て防災ネットワーク」、名古屋市に拠点を置く「こども女性ネット東海」、愛媛県宇和島市の「NPO法人うわじまグランマ」の3団体。能登半島地震の被災地支援などを通じ、子育て世代特有のニーズを知る団体同士の連携の機運が高まったという。 静岡県庁で締結式を行い、3団体の代表者が協定書に署名した。
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【現在地】小説紹介クリエーターのけんごさん 読書に「今更」なんてない
TikTok(ティックトック)などの動画投稿サイトで紹介した本が軒並み重版―。小説紹介クリエーターのけんごさんの発信力に、出版界の注目が集まっている。「『こんな名著を今更?』と言う人もいるかもしれませんが、有名な作品でも実際は読んでいない人が多い。本との出合いに『今更』なんて言葉はいらないと伝えたいです」 本になじみがない人も「読書の沼」へ引きずり込む、古今東西の88冊を薦める新著「けんごの小説紹介」(KADOKAWA)を刊行。アガサ・クリスティのミステリーの魅力から、東野圭吾さんへの一問一答まで「好きな一冊が見つかるきっかけ」を詰め込んだ。
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性的虐待を繰り返す義父との地獄の10年間、成人後も消えなかった「自分は汚れた体」 同じ被害に遭った人に伝えたい「あなたは何も悪くない」
神奈川県で暮らす鈴木絵里子さん(53)は4歳から10年間、義父からの性的虐待に耐え続けた。両親の性行為も日常的に目にしていた。成人後も「自分は汚れた体。男性の性のはけ口だ」という思いは消えず、自身を大事にできないまま、何度も流産や中絶を経験したという。仕事で子どもと関わる人に性犯罪歴がないか確認する制度「日本版DBS」の導入を機に、「性的虐待の経験者が、どんな人生を送ることになるのか、聞いてほしい」と体験を語り始めた。(共同通信=武田惇志) ▽「ママには言うなよ」 鈴木さんは1970年、20代の両親の長女として東京都で生まれた。
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【米共和党大会】かつての敵、完全に白旗 トランプ氏支持一色に
米大統領選の共和党候補指名争いでトランプ前大統領と敵対した有力者らが16日の党大会に集結し、トランプ氏の応援演説に臨んだ。最後まで反トランプ票の受け皿となり、深いしこりを残したヘイリー元国連大使も完全に白旗を揚げ、党はトランプ氏支持一色に。民主党のバイデン大統領は暗殺未遂に遭ったトランプ氏への批判が鈍り、勢いを止められなくなっている。 ▽タブー 党大会2日目。中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーの会場でヘイリー氏が壇上に立つと、歓声とブーイングが交錯した。「意見が常に一致するわけではなかったが、米国を強くすることでは一致していた
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【特定秘密漏えいで改善勧告】保全意識欠如「組織的」 くすぶる防衛相責任論
海上自衛隊を中心とした特定秘密の漏えい問題を受け、衆院情報監視審査会が木原稔防衛相に抜本的改善を勧告した。保全意識の欠如を「組織的問題」と断じ、幹部を含む防衛省・自衛隊全体に規範意識の徹底を要求。有事には武力行使を担う実力組織である自衛隊の法運用を管理できていない実態に、与野党内では防衛相の責任を問う声がくすぶる。 「私自身が強いリーダーシップを発揮して再発防止策を徹底し、防衛省・自衛隊一丸となって信頼回復に努めたい」。17日昼、木原氏は勧告について記者団に強調した。同時に「まだ受領していないので内容は承知していない」と説明。そのまま視察のため鹿児島県へ向かい
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【世界の街から】800円の価値
「いくら払ってでも訪れるよ」。イタリア北部ベネチアで入場料5ユーロ(約860円)が一時的に導入されると、観光客からこんな反応があった。世界遺産の「水の都」で日帰り客への入場料が4~7月に試験導入された。増え過ぎた観光客の抑制が目的だが、物価が高いベネチアでの効果は疑問視されている。 入場料が適用された4月25日、中心部にあるサンマルコ広場は大勢の人で混雑していた。休憩を取ろうとカフェに立ち寄ると、コーヒー1杯が約10ユーロと他都市に比べて高額。それでも客が次々と訪れ、店内は常に満席だった。 干潟の上に築かれたベネチアには、道路の
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【旧優生保護法で首相謝罪】検証足りず、遠い差別根絶 共生社会へ新たな一歩に
岸田文雄首相が、旧優生保護法下で不妊手術を強いられた原告らに謝罪した。解決への意思を表明したことで、今後は継続中の訴訟の和解や新たな補償の枠組みに焦点が移る。一方で被害の解明や実態検証はなお足りず、旧法の根拠となった障害者を差別する「優生思想」は根強く残る。謝罪をパフォーマンスに終わらせず、偏見を一掃し、共に生きる社会に向けた新たな一歩にできるのか。官民での取り組みが早急に求められている。 ▽猶予なし 「幅広い方を含めて補償したい」。岸田首相は17日の原告団との面会で、訴訟の和解を目指すとともに、訴訟外の被害者や配偶者も含めた補
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【中古品販売急拡大】節約志向で電子市場急成長 トラブルも後絶たず
中古品販売の拡大の背景には、インターネット上で売り手と買い手を直接結び付ける「eマーケットプレイス(電子市場)」の台頭がある。消費者の節約志向とも合致し急成長した一方、トラブルは後を絶たず、犯罪の温床化を指摘する声もある。 ▽重宝 「1万5千円の新品が6980円で出品されていた。安くてありがたい」。証券会社に勤める東京都内の女性(46)は7月、夏祭りで着る浴衣をメルカリで購入した。「(ネット通販の)アマゾンや楽天よりも商品点数が多い」と普段からメルカリを重宝する。 メルカリの2023年の流通取引総
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【ビザ独禁法違反疑い】国際ブランド、監視強まる 決済市場で存在感増す
公正取引委員会は17日、クレジットカードの国際ブランド最大手ビザの日本法人に立ち入り検査に入った。キャッシュレス決済の普及に伴い、世界の決済市場で存在感を増す国際ブランド。手数料水準を設定できるといった強い立場を利用し競争を制限している恐れがあるとして、海外では当局による監視が強まり、日本も本格的な実態解明に乗り出した形だ。 ▽動機 公取委の調査対象となったのは、異なるカード会社間で決済する際の、不正利用防止や限度額の確認を目的とする「信用照会」システム。ビザやNTTデータなど複数の企業が提供している。
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【米共和党大会】脱悪魔化するトランプ氏 消毒された共和党綱領
2020年と比べて変化したのは、高齢不安が膨らむ民主党のバイデン米大統領(81)だけではない。共和党大統領候補に指名されたトランプ前大統領(78)も4年前と違う。党大会で採択された綱領は「変化」の象徴と言えるだろう。 「これは党の文書ではない。紛れもなく、トランプ氏の(個人)綱領だ」。前政権当局者は取材に対し、トランプ氏が内容や表現ぶりを「100%コントロールしている」と打ち明けた。 トランプ氏が大統領選に勝利した16年の党綱領と比べ、大きく変わったのが人工妊娠中絶に関するくだりだ。「胎児には生きる基本的権利がある」との文言を削
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騒音深刻「住居移転を」 F35戦闘機配備が拍車 青森・三沢基地周辺地区
米軍と航空自衛隊が共用する三沢基地(青森県三沢市)のすぐ近くに、戦闘機の騒音に悩んで国の補償による住居移転を求め続けている地区がある。滑走路までの距離は約650メートル。空自はエンジン音が大きいとされるF35Aステルス戦闘機の配備を進めており、米軍も今月、F35の配備計画を発表したことが不安に拍車をかけた。高齢化が進む住民は「一刻も早く認めて」と訴える。 約260世帯が住む三沢市岡三沢5、6丁目は滑走路の南側に位置し、間に遮音の役割を果たしそうな大きな建物は少ない。6丁目町内会の小泉愃司会長(81)は「戦闘機が飛び立つと電話もテレビの音も聞こえなくなる。人が住
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【境界から】水の上で牛を飼う「フローティングファーム」 都市の食料自給へ
そこは港だが、潮の香りではなく牧草と家畜のにおいが漂う。「牛がいるよ!」。米国から訪れた高校生たちから驚きの声が上がる。オランダ・ロッテルダムの港に浮かぶ体育館ほどの大きさの「フローティングファーム」(水上牧場)。3階建ての最上階で牛が飼われており、下には乳製品工場がある。 太陽光パネルで電力も自給。30頭の牛で1日600リットルの生乳を生産し、牛乳やチーズなどに加工して近隣の学校やスーパーに販売する。創業者のピーター・ファン・ウィンゲルデン(63)が興奮する見学者らをうれしそうに見守る。 ▽都市の弱点 きっかけは2012年に米東部を襲ったハリケーン「サンディ」だった。ニューヨーク中心
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実は多い?男性の更年期障害。気分の落ち込みやイライラ、加齢のせいと思った症状は更年期が原因かも 仕事との両立、動き出した環境整備
2023年夏ごろのこと。関西地方に住む会社員の男性(39)は「日常生活もままならないほどの疲労感」に襲われた。起床するのがつらい。体が重い。会社に遅刻しそうになったり、気分が沈んで仕事に身が入らなかったりした。 以前から心療内科に通院しており、抑うつ傾向が強く出ているのかと思った。インターネットで症状を調べる中で男性の更年期障害を知った。「これかな」と思い当たり、病院を探して検査を受けた。すると、男性ホルモンの値が基準よりはるかに低く、やはり更年期障害の疑いを指摘された。 更年期障害は女性の健康課題だと思われがちだが、男性の間で
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【自民党総裁選で首相】強まる遠心力、撤退論も 成果訴え、支持回復狙う
9月の自民党総裁選で再選に意欲を示す岸田文雄首相は、賃上げ実現や株価の最高値更新といった政権の「成果」をアピールする戦略だ。「結果を出していると理解されれば、支持は回復する」(周辺)と踏む。ただ自民党派閥の裏金事件や東京都議補欠選挙での大敗など失点の矢面に立ち、遠心力が強まるばかり。党内では不出馬を自ら判断する「名誉ある撤退論」もささやかれる。 ▽頼みの綱 「世論の状況を考えた方がいいんじゃないか」。6月25日、都内ホテルの鉄板焼き店。麻生太郎副総裁は首相にこう指摘した。7日前の会食同様、首相が期待した総裁選で支援するとの言質は
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【クロマグロ漁獲枠拡大】日本、辛くも合意取り付け 影落とした不正漁獲問題
太平洋クロマグロの資源管理を話し合う国際会議で16日、日本はクロマグロ漁獲枠の大幅引き上げに合意を取り付けた。増枠は3年ぶり。日本は個体数の回復を背景に漁獲枠の拡大を主張したが、参加国・地域には慎重論もあり、要求通りの増枠とはならなかった。2021年の青森県での不正漁獲問題も影を落とした。 ▽跳ねる魚 クロマグロは乱獲で資源が減り、漁業者は厳しい漁獲管理を求められている。千葉県沿岸小型漁船漁協の酒井光弘組合長は「最近はマグロが海を跳ねている」と話す。クロマグロが釣れて、割り当てられた漁獲可能量にすぐに達してしまうという。 超過分は釣れても逃がさなければならない。酒井さんは取れ過ぎないよ
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【旅客機燃料不足】宿泊キャンセル、地方打撃 物流24年問題で長期化も
各地の空港で起きている旅客機の燃料不足は、地方経済に打撃を与えている。国際線の新規就航や増便が予定通りに進まず、訪日客の宿泊キャンセルなどが相次いでいるためだ。政府は輸送力強化を打ち出したが、運転手に時間外労働規制を適用する「物流の2024年問題」などが立ちはだかり、事態の解決まで長期化する恐れがある。 ▽ブレーキ 日本旅館協会の北海道支部連合会が6月中旬に加盟ホテル・旅館に行った調査では、9施設で200団体、延べ4700人分の宿泊キャンセルが発生していた。訪れるはずだったのは韓国や台湾などアジアの訪日客ばかり。理由は燃料不足に
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【米共和党大会】「不屈」演出、偶像化も 若手起用で挙党態勢加速
米共和党大会が開幕し、トランプ前米大統領(78)が大統領選候補に正式指名された。暗殺未遂事件から2日後にもかかわらず「不屈」の姿勢を演出し、党内では理想の指導者として偶像化が進む。政権奪還へ向けた伴走者となる副大統領候補にはバンス上院議員(39)を選び、若手起用で挙党態勢づくりを加速させた。高齢不安が再燃する民主党のバイデン大統領(81)は、トランプ陣営の勢いに圧倒されつつある。 ▽化身 15日夜、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーでの党大会。負傷した右耳をガーゼで覆ったトランプ氏が姿を現すと、会場には「ファイト(戦え)」コー
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【中国経済改革の行方】長いトンネル、消費停滞 成長モデルの転換焦点
中国経済が不動産不況の長いトンネルから抜け出せずにいる。2024年4~6月期の実質成長率は4・7%に失速。多額の住宅ローンを抱えた家計は財布のひもを固くし、消費が停滞する悪循環に陥っている。習近平指導部は開催中の共産党第20期中央委員会第3回総会(3中総会)で、不動産依存の成長モデルから転換する処方箋を示せるかどうかが焦点だ。 ▽中国医学 「伝統的な中国医学では『体の基礎を固めて気を養う』という。大病が癒え始めた時期には強烈な薬を打つべきではない」。6月下旬、遼寧省大連市で開かれたスイスのシンクタンク主催の「夏季ダボス会議」で、
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【パリ五輪開幕まで10日】ロシア勢参加拒否で混迷 柔道やレス以外に波及も
ロシアによるウクライナ侵攻が影を落とすパリ五輪は、個人の中立選手(AIN)として参加を容認されたロシア勢を巡って混迷が深まっている。16日で開幕まで10日。国際オリンピック委員会(IOC)は独自の資格審査委員会で出場可否を判断するが、柔道やレスリングのロシア連盟が複数の有力選手を除外されたことに反発して相次いで参加を拒否。テニスなど他競技に波及する可能性もあり、波乱含みの展開だ。 ▽理由は不明 「スポーツマンシップに反するIOCの決定を受け入れることはできない」。6日、不参加の意思を示したロシア・レスリング連盟は声明で不満をあら
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【中国経済】成長は引き続き鈍化 事態打開へ家計心理回復を 丸紅中国会社経済研究チーム長 鈴木貴元
中国の4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比で4・7%となり、1~3月期の5・3%から減速した。内需は消費、投資ともに鈍化した。厳格なコロナ対策終了に伴って消費は前年同期に加速しており、その反動が出た形となった。都市住民の所得の伸びが名目成長率見通しを下回ったことも減速につながった。 投資は製造業が盛り上がったものの、不動産不況の長期化で不動産の落ち込みが全体を押し下げる結果となった。 輸出は昨年からの下支え役である電気自動車(EV)、リチウム電池、太陽光電池の「新御三家」の寄与度は低下したが、スマートフォンや半
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AI、不登校の判断手助け 児童や生徒の早期支援へ 埼玉・戸田が実証研究
人工知能(AI)で不登校の可能性を予測し児童や生徒の早期支援につなげようと、埼玉県戸田市が2023年度に実証研究を行った。AIに欠席日数や健康診断記録などのデータを学習させ、一人一人の予測結果を数値で提示。校長や担任教諭の判断を手助けする。専門家は「子どもの不利益や差別につながらないよう十分配慮しなければならない」と指摘している。 戸田市教育委員会のパソコンの画面に、児童や生徒の氏名の一覧表が並ぶ。AIは不登校の可能性を数値化して表示し、数値を高い順に「赤」「ピンク」「オレンジ」「黄」で色分けする。 戸田市はこども家庭庁の事業と
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高品質のファスナー製造の「YKK」 70カ国で事業展開【経済トレンド】
YKKは高品質のファスナーを製造し、70の国や地域で事業を展開している。(共同通信=川村剛史記者) 1934年、創業者の吉田忠雄が東京でファスナー加工販売の会社を設立した。早くから高品質の商品を目指し、戦後、故郷の富山県で工場を開いた。機械化を進め、商品を一貫して自社で生産する体制を確立。当時の経済成長をけん引した繊維業と服飾業にファスナーが浸透し、生産量を大幅に増やした。 社名は1945年に「吉田工業株式会社」とし、頭文字から取ったYKKを商標とした。1994年に
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もしもの時のペット対策を今から整えよう ケージ、手帳、非常食【経済トレンド】
自然災害や飼い主の急病。緊急時におけるペットへの備えが注目されている。ケージになるリュックや非常食、他者に世話を託すための手帳も登場。“ペットは家族”という意識が広がるなか、ペットの防災対策を考えるきっかけになりそうだ。(共同通信=増井杏菜記者) ▽背負って避難 かばん生地を手がける朝日加工(大阪市)は、2022年春に防災とアウトドアがコンセプトのペット用品ブランドを立ち上げた。 「PFIキャリーバッグ
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洗い流し不要のドライシャンプーに注目 汗や皮脂汚れ、臭いケア【経済トレンド】
洗い流し不要のドライシャンプーが注目されている。汗や皮脂汚れ、臭いなどをケアできる。髪や頭皮、全身に使えるタイプも登場。レジャーの後や入浴できない災害時にも活用できそうだ。(共同通信=増井杏菜記者) スキューズミー(東京)の「ドライシャンプー クラシックコットン」は、2種類のパウダーで髪や頭皮のべたつきを抑えるスプレー。髪にかけて30秒放置後、もみ込んで全体になじませる。ユーカリ葉油などのトリートメント成分のほか、かゆみ抑制や静電気防止成分も。メントールを従来品より約20%増量。お風呂上がりのような清潔感のある香り。販売価格は8
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手間なしでヒット「アタック」開発者に聞く 粉末の利点生かす独自技術【経済トレンド】
花王の「アタック ZERO パーフェクトスティック」は、水に溶けるフィルムに包んで棒状にした粉末洗剤をそのまま洗濯機に入れる簡単さと、高い洗浄効果の両方を実現した。部屋干しタイプもある。参考価格は7本入りが250円前後(2024年7月時点)。(共同通信=川村剛史記者) 2023年8月に発売。出荷本数は2024年6月末時点で累計2億5千万本以上に。企画開発を担当する花王の服部裕紀(はっとり・ひろき)さんにヒットの秘密を聞いた。 花王の調査では、9割の人が洗濯の手間の軽
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コメ価格高騰の要因を経済評論家に聞いた 岩本沙弓さん【経済トレンド】
コメの価格が上昇している。小売店や飲食店では品薄感が広がる。コメ高騰の要因として、昨年の猛暑やインバウンド(訪日客)需要を挙げる報道が目立った。 現在は廃止されているが、政府の長年の生産調整(減反)を軸とした農業政策に批判の矛先を向けるものもあった。次元の違う話を一緒くたに語ると、原因の所在や分析・検証が曖昧となりがちだ。問題解決のためにもここは分けて考えるべきだろう。 コメ価格高騰の背景に異常気象はあるとしても、インバウンド需要を持ち出すのはいかがなものか。確かに
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変わりつつある株主総会事情を専門家に聞く 緊張感ある議論の場に【経済トレンド】
Q 株主総会が話題になる機会が増えています。 A 投資家にとって重要な恒例行事と言えば、株主総会です。 かつての株主総会は株主と経営陣との質疑応答や建設的な議論が活発に行われることなく、短時間であっさり終わることが多かったことから「シャンシャン総会」とも言われていました。友好関係にある取引先や取引銀行などの金融機関が上位株主であったことが一因とされます。 予定調和的なセレモニーだった株主総会が変わりつつ
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「旅」いにしえへと旅人いざなう 中世の風情残す学園都市 フランス・モンペリエ
フランス南部のモンペリエは、中世の風情を残す学園都市だ。モンペリエ大の医学部はヨーロッパで最古の歴史を誇り、迷路のような旧市街が旅人をいにしえへといざなう。近郊には開放的なビーチもあり、ゆっくりとした時間が流れていた。 フランス最大の港湾都市マルセイユから電車で西へ約1時間半。モンペリエのサン・ロック駅で、記者の旧友で地元に住むロランと合流した。2日間、モンペリエとその近郊を案内してくれる予定で、初日は彼の恋人ユーリャも一緒だ。 まずは、街の中心地コメディ広場へ。三美神像をオペラ座や映画館が取り囲み、メリーゴーラウンドとレストラ
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【五輪評論】パリからパリ 五輪130年の回帰(5)の下 崇高な平和運動へ進化を、政治への発言と行動が必要だ
6月23日、五輪と国際オリンピック委員会(IOC)は1894年にパリで産声を上げてから130年の歴史を刻んだ。二つの世界大戦、東西冷戦とボイコット、国際政治の波、民族対立に揺れた五輪は7月26日、ロシアによるウクライナ侵攻、ガザ紛争の戦禍がやまぬ中、パリで開幕する。「聖火」は平和をともすのか、一橋大名誉教授の坂上康博さんが語った。 2008年の北京五輪、射撃の女子エアピストル。開会式当日から軍事衝突が始まったロシアとグルジア(現ジョージア)の選手が2位、3位となり、この2人が表彰式のメダル授与後にとった行動が、人々に深い感動をも
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米国の膨大な情報収集手法「外国人は問答無用」 日本には戦前の苦い記憶、憲法との整合性も【ワシントン報告(18)日本の能動的サイバー防御】
日本で能動的サイバー防御の議論が本格化した。憲法が保障する通信の秘密との整合性やサイバー攻撃を先回りして抑え込む法的根拠など課題は多い。前提として膨大な情報収集が欠かせない。世界をリードする米国は、その良しあしを別にして外国人の情報収集は事実上、問答無用と割り切る。日本にとって未体験の領域だ。(共同通信ワシントン支局長 堀越豊裕) ▽令状不要 米議会は4月、国内外の情報収集を定めた外国情報収集法(FISA)702条の2年延長を決めた。昨年末に期限が切れた後、暫定法案でつなぎ、ようやく合意した。賛否が割れ、交渉は難航した。安全保障
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80年代の「5強」がプレミア発足を画策、有料衛星放送スカイで飛躍的な発展へ 【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生】(2)
フーリガン問題やスタジアムにおける事故などが相次ぎ、イングランドのサッカー界が冬の時代を迎えた1980年代。水面下では新リーグ発足の動きが本格化していた。主導したのが当時の「ビッグ5」だったリバプール、エバートン、アーセナル、トットナム、マンチェスター・ユナイテッド。高い人気と知名度を誇るクラブはテレビ放映権が1~4部リーグの全92クラブに分配されていることに不満を募らせ、リーグを統括していた「フットボール・リーグ」からの独立を企てた。(共同通信=田丸英生) ▽テレビとの冷え切った関係 ユニホームに企業スポンサーが付き、スタジア
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言うこと聞かないと「気合」。県史も認める佐渡金山の朝鮮人強制労働、その痕跡を歩く 世界遺産登録へ「負の歴史」をどう説明するか
「1939年に始まった労務動員計画は、名称こそ『募集』『官斡旋(あっせん)』『徴用』と変化するものの、朝鮮人を強制的に連行した事実においては同質であった」 新潟県が1988年に発行した「新潟県史 通史編8 近代三」の文章だ。戦時中、佐渡金山などへの朝鮮人の強制動員・強制労働があったと記している。佐渡島を歩くと、あちこちに朝鮮人徴用工が働いた痕跡があった。証言も残っている。 日本政府は「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録を目指しているが、こうした強制労働の歴史があり、登録は簡単に実現してこなかった。(共同通信新潟支局)
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【福祉コンサルの違法助言】「国からのお金で高収益」 障害者ビジネス、質低下も
精神、知的障害者を対象にした訪問看護や障害福祉サービスを巡っては、「国からのお金で安定して高収益が得られる」などとうたい参入を促すコンサルタントが、10年ほど前から相次いで登場している。利益目的でビジネスとみなし、利用者は二の次で質の低下を招いているが、歯止めがかかっていないのが現実だ。 ▽「地方に注目」 「安定した収益の柱をもう一つ持ちたいと思っているあなたへ 福祉が今最も狙い目!」 訪問看護を巡ってコンサル契約先に違法な助言をしていたことが判明した一般社団法人「介護福祉サポート協会」。2020
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【世界はいま】奈良・吉野材にスイス注目 スギやヒノキ、新供給源へ ロシア産は侵攻後激減
公共建築物での木材利用を促進しているスイスで、奈良県が産地の「吉野材」が注目されている。樹齢数百年のスギやヒノキの均一的な長さや太さといった品質の高さが好評だ。ロシアのウクライナ侵攻でロシア産木材の輸入が激減。スイスの木材加工業者が新たな供給源を模索する中、日本が売り込みをかけている。 ▽評価 北部ニューレンスドルフを拠点にベニヤ材を製造、販売するボリンゲル・フルニエレ社。倉庫には大小さまざまな木板がところ狭しと置かれていた。吉野材について、同社社長のロビン・リュッツさん(30)は「ヒノキの色合いや品質は独特でスイスにはない。スギも含めて顧客に紹介していきたい」と話した。 スイスでは景
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【トランプ氏暗殺未遂】危うい「米国改造計画」 保守の革命、高まる緊張
「この国は『第2次アメリカ革命』の渦中にある。左派が許せば、無血(革命)のまま進んでいくだろう」 7月初め、保守革命論が全米に流れた。発言の主はケビン・ロバーツ氏。米首都ワシントンに本拠を置く保守系のシンクタンク「ヘリテージ財団」のトップだ。 物騒な言葉が飛び出したのは、トランプ前大統領の最側近だったバノン元首席戦略官のポッドキャスト番組。左派が許さなければ、流血もあり得ると暗示する“託宣”は、トランプ氏暗殺未遂の不吉な予兆となった。 容疑者が射殺され、左派の犯行かどうかは明らかではない。確かなこ
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【災害時の透析支援】医療と行政、連携生きる 能登地震、水不足で奔走
能登半島地震の被災地では、大量の水が必要な透析患者の命を守ろうと医療関係者らが一刻を争う現場を支えた。自衛隊や行政も協力して被災病院から転院させ、透析が続けられない事態に陥った人はいなかった。情報共有の迅速さが奏功した。災害の規模が大きくなるほど自治体を超えた連携の必要性は高まり、関係者は「日ごろから協力関係をつくることが重要」と強調する。 ▽断水 翌日の透析を控え、穏やかな元日を過ごしていた七尾市の住職片山昌之さん(87)宅が突然、大きく揺れた。たんすが倒れ、道路は割れた。市内の恵寿総合病院から「断水で透析できない」と連絡がき
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UV防止機能の有無確認を サングラスの選び方 用途からレンズの色選ぶ
実用的にもおしゃれにも活躍するサングラス。近年はレンズの色や濃さのバリエーションも増えている。サングラス専門店「和真メガネ 新宿アネックス店」店長の堀川敬史さんに、選び方のこつを聞いた。 ―サングラスの機能や効果は? 「太陽光のまぶしさを和らげるだけでなく、太陽光に含まれる強い紫外線(UV)から目を守ることで肌の日焼けや、白内障などの発症リスクを抑えます」 ―紫外線防止機能を確認するには? 「例えば『UVカット率99%以上』あるいは『UV透過率1・0%以下』と書かれ
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【記者書評】ブレイディみかこ著「転がる珠玉のように」 血の通ったパンチライン
人の心に突き刺さって抜けない言葉をヒップホップなどで「パンチライン」と呼ぶそうだ。英国に住む福岡出身のライターが日常をつづるこのエッセー集には、ただの「いい言葉」ではなく「パンチライン」と呼びたくなる、強烈なフレーズがちりばめられている。 「男の子の遊びとか女の子の遊びとか言わない国にわたしたちは来たんでしょ」。著者が働いていた英国の託児所にアフガニスタンから来た少女がいた。彼女からサッカーボールをねだられ「女の子がサッカーなんて…」と困惑する父親を説き伏せ、ボールを買った母親の言葉だ。 他にも「一人でもあなたの行為を受けて助か
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世界最高峰サッカーリーグはどのようにして生まれたのか―相次ぐ事故や火災で死傷者、暴動と悲劇を経て動き出した改革 【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生】(1)
サッカーの母国イングランドの「プレミアリーグ」は世界最高峰のリーグとして知られる。世界的スターが名声を確かなものとし、三笘薫や香川真司といった日本を代表する名手も活躍の場を求めて海を渡った。 リーグの人気は欧州域内にとどまらず、試合の視聴世帯は世界約190カ国・地域の9億に上る。市場規模は1兆円とスペインやドイツの約2倍に及び、イタリア、フランスを含めた欧州5大リーグの中で群を抜き、サッカーは王室と並ぶイギリスを代表するブランドになった。 だが1992年のリーグ開幕以前はフーリガンと呼ばれる過激な集団が暴れ回り、スタジアムでは痛
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農産物よ、おまえもか―。野菜にも及び始めた値上げの波 価格高騰は勘弁、でも農家廃業も避けたいジレンマに消費者104人が出した答えは
円安を背景に輸入する原材料や燃料の価格が高騰してさまざまな日用品が値上がりする中、野菜や果物、食肉などの農産物にも価格上昇の波が及び始めた。資材費や輸送費、人件費などとともに、輸入に頼る肥料や飼料、農薬の価格も高くなっている。食卓に欠かせない農産物の値段について消費者がどのように感じているのかを探るべく、東京都内の商店街を訪れて声を集めた。答えてくれた104人からは、「懐が痛むのは勘弁してほしい、でも価格転嫁できずに割を食った農家が廃業するのも避けたい」とのジレンマが浮かび上がった。(共同通信=音光香菜美) ▽キャベツにブロッコ
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「脱性売買」に公的支援 韓国、心のケアや能力開発 日本とも知見共有
性売買に従事する女性の自立を支援し、業界からの脱出を手助けする韓国の取り組みが注目を集めている。公的資金で民間団体が運営する「相談所」と呼ばれる組織が女性の心のケアなどに当たるほか、仮住まいや能力開発の機会も提供。日本でもこうした女性への支援が課題となる中、知見共有へ日韓の関係者が交流する動きも出始めた。 ネオンが光る「ノレパン(カラオケ)」が軒を連ねるソウルの繁華街の一角。この地区には女性が個室で接客する店が多く、性売買の温床とされている。相談所の女性スタッフらが一店一店を巡回し、連絡先が記されたライターなどの日用品を店主らへ手渡していた。 相談所によるアウトリーチ(訪問支援)は200
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減少する宮大工、育成急務 脱徒弟制度へ塾登場
神社仏閣の建築や改修を担う宮大工。少子化の影響に加え、昔ながらの厳しく長い修業が若者に敬遠され、その数は減少の一途をたどる。現在では寺社のみを扱う専業の宮大工は全国で千人以下ともいわれ、若手の育成が急務だ。専門家は「従来の徒弟制度ではなく、数年で一人前になれるような教育の仕組みが必要だ」と強調。現場で実践を重ねながらカリキュラムに沿って若手宮大工を育てる塾も登場した。 4月、三重県志摩市の薬師寺で、4人の若者が本堂の修繕に取り組んでいた。中学や高校を卒業後に親元を離れ、一般社団法人「宮大工養成塾」(大阪府柏原市)に入り各地で腕を磨いている。 韓国出身の佃亮周さん(20)は、進路に悩んでい
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「プロ野球90年」精神科医・香山リカさんが語る日本ハムの魅力「新庄監督はどんどん型破りなことをやってほしい」
発足から90年を迎えたプロ野球への思いを聞くインタビューシリーズ。精神科医の香山リカさんは北海道出身で、現在はむかわ町で地域医療に携わっている。日本ハムの地域密着球団としての魅力をたっぷりと語ってくれた。(聞き手 共同通信=神内隆年) ▽かっこよかった「悪太郎」 私はスポーツをするのは苦手ですが、見るのは大好き。子どもの頃から野球や大相撲、プロレスを見るのが大好きでした。 小学生の頃はテレビ中継の影響でジャイアンツ(巨人)のファン。堀内恒夫投手を熱狂的に応援していま
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【エネルギー基本計画】電力自給率、2040年までに70%に 再生可能エネルギーと蓄電で 米国立ローレンス・バークリー研究所研究員の白石賢司さん
資源価格の高騰と円安で電力やガス、ガソリンなどの価格が上昇し、家計や企業への負担が増大している。日本がエネルギーの約9割を化石燃料の輸入に頼っているためだ。それらの価格を抑える補助金は一時的な対策に過ぎない。国産エネルギーを安価で安定的に供給することが必要だ。 政府は本年度内に第7次エネルギー基本計画を策定することとしており、2040年のエネルギーミックスを決める議論が進んでいる。 次期基本計画では、国産の再生可能エネルギーと、その電力をためて効率的に利用する蓄電池
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【上川多実さん】「黙っていたら問題がないことにされる」 見えにくい現代の部落差別に向き合う
被差別部落にルーツを持ち、東京の被差別部落以外の地域で生まれ育った上川多実さん(44)は見えにくい現代の部落差別を巡る問題を問い、発信する。 「部落問題って、知ってる?」 ある時は同級生に、またある時はママ友に、何度もこう問いかけてきた。 今年出版した初のエッセー集「〈寝た子〉なんているの? 見えづらい部落差別と私の日常」(里山社)では、上川さんにとっては、子どもの頃から日々の暮らしの延長線にあった「差別」や「人権」について、平易な言葉でつづった。差別にとことん向き合って、自分の足元から社会を見つ
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ゴール量産でフランス2部リーグ制覇、オセールで活躍するオナイウ阿道 異国で成長、1部昇格の新シーズンへ、日本代表復帰と2026年W杯にも意欲
ワインの産地シャブリからほど近いフランス中部のオセールで、ゴールを量産した。サッカーの同国2部リーグでオナイウ阿道(28)は、2023~24年シーズンに15得点をマーク。優勝と1部昇格を果たしたオセールに欠かせない戦力となったFWが、昨季を振り返りつつ新シーズンの展望や復帰を目指す日本代表への思いなどを語った。 ―昨季は2度のハットトリックを達成するなど15ゴールの好結果を残した。 「前回(トゥールーズで)2部でプレーした時よりも取れた。満足はしていないけれど、最低限は達成できたと思う。ある程度、誰が見ても数字で目に留まるような
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JR東海支援のテキサス新幹線、親日アムトラック副社長が明かした「名称案」 車両は「日本メーカーが製造」、単独インタビューで明言「鉄道なにコレ!?」
JR東海や全米鉄道旅客公社(アムトラック)などが支援するアメリカ南部テキサス州の新幹線計画を巡り、担当するアムトラックのアンディ・バイフォード上席副社長が単独インタビューで「2030年代前半に開業する可能性はある」との見通しを示した。総事業費は300億ドル(1ドル=160円で4兆8千億円)を超えると試算しており、資金調達が依然大きなハードルだと認めながらも「実現できると確信している」と強調。「日本が大好きだ」と公言する親日のバイフォード氏は東海道・山陽新幹線と西九州新幹線で運行しているN700Sをベースにした車両を導入して「日本メーカーが製造する」と明言した。検討している路線の名称案も明らか
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「水のように空気のように」言葉に寄り添う文字を作る 「歴史の先端にいる」という意識で【生き抜く】「書体設計士」
シャープペンシルを握る鳥海修(69)の手が、1枚の紙の上をすっすっと上下左右に動く。周りで顔を寄せ合う人たちが0・3ミリの芯の先を凝視している。目で追うのは、明朝体で書かれた平仮名の「み」。場の空気が張り詰めていく。 長野県松本市で2024年4月に開かれた「松本文字塾」の開講日。鳥海は十数人の受講生の前で「み」の形を整える作業をしてみせた。「太くしたり細くしたりする時に、本当に慎重にやること」。受講生はこれから1年かけて自分のイメージで明朝体の仮名をデザインする。鳥海がふっと表情を緩めて問いかけた。「耐えられる? 大丈夫そう?」
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北欧メタルバンド「ブラインド・チャンネル」 教室の一番後ろから挑発【ワーオ!】
北欧と言えばヘビーメタル。ダークで重厚なサウンドに交響曲ばりの荘厳な展開を想起するロックファンもいるだろう。フィンランドの6人組「ブラインド・チャンネル」もそんな伝統に名を連ねるメタルバンド…というわけではなく、彼らのキャッチコピーはこうだ。 「メタル界のバックストリート・ボーイズ」 フィンランド北部のオウル出身。メタル好きのニコとヨエルが2013年に始めたバンドだ。ヒップホップやテクノなど異なるジャンルを取り込んだ「ニューメタル」に挑む。だが若い世代に人気が広がってもメタルファンからは不評だった。
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「頼りないと言われても権力は健全じゃないといけねぇんだ」 何が岸田首相を派閥解散に駆り立てたか【裏金政治の舞台裏】
「裏金事件の責任をとっていない」として岸田文雄首相に逆風が吹いている。ただ、首相にとってのけじめは事件発覚直後に決断した自民党宏池会(岸田派)の解散方針だった。5人の首相を輩出した「名門派閥」は近く67年の歴史に幕を閉じる。誰より派閥に愛着があった岸田首相が宏池会解散をなぜ決断したのか。経過をたどると、最高権力者の矜恃とその代償が浮かんだ。(共同通信裏金問題取材班=村山卓也) ▽「岸田政権のせいでこんな目に遭っている」 東京地検特捜部の捜査がヤマ場を迎えていた昨年末、首相は周囲にぼやいた。「『なん
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【パリ五輪の選手ウエア】盗撮対策でユニホーム改良 メーカー開発、選手も作製
アスリートへの性的な意図を持った隠し撮りが問題となる中、パリ五輪に向けて選手が着用するユニホームの改良が進んでいる。スポーツ用品大手ミズノは赤外線カメラによる盗撮を防ぐ生地を開発し、五輪に出場する6競技でこの素材が採用された。体操では選手が自ら肌の露出を抑えた衣装を作製するなど、競技に集中できる環境づくりへ新たな動きが広がる。 ▽機能と両立 ミズノは約20年前から盗撮問題に取り組んできた。赤外線カメラ対策はこれまで、スポーツウエアに求められる伸縮や吸汗性などの機能と両立が難しかった。しかし、2019年に開発が始まった今回の生地は
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【首相のNATO首脳会議出席】東アジアに米欧引き込み 中国反発、遠のく往来
岸田文雄首相は北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に3年連続で招待された。インド太平洋地域で覇権主義的な動きを強める中国とウクライナに侵攻するロシアが連携を強化する中、東アジアが直面する危機を自ら訴え、安定確保へ米欧を引き込む狙いがある。軍事同盟であるNATOの関与を警戒する中国は早速反発。首相が掲げる中国との「建設的で安定的な関係構築」に向けたハイレベル往来の機運は遠のく。NATO加盟国も内政に事情を抱え、足元はおぼつかない。 ▽脅威 「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分だ。NATOと連携を深めていこう」。現地時間10日夕、
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【水俣病再懇談】対話15時間、傾聴アピール 被害者は失望、本気度注視
水俣病被害者のマイク遮断から約2カ月。「関係の修復」を目指し、環境相が再懇談に臨んだ。計3日間、15時間以上に及ぶ対話で傾聴の姿勢をアピールするも、救済制度の抜本的見直しはなく、「ゼロ回答」だと失望が広がる。協議継続では一致し、被害者側は環境省の本気度を注視する。 ▽歴史と経緯 「被害者のみなさまの声をつぶさにうかがった」。鹿児島、熊本両県の離島を船で巡り、全日程を終えた伊藤信太郎環境相は11日夕、報道陣を前に「信頼関係をさらに深めていく」と述べた。 経済的困窮、差別、失った健康な体―。再懇談では
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【タウンページ廃止】スマホ全盛にあらがえず 電報、AMラジオも
固定電話しかなかった時代、一家に1冊はあった黄色い表紙の電話帳「タウンページ」の廃止が決まった。インターネットに接続して何でも検索できるスマートフォンの全盛にあらがえなかった。定型文の電報サービスはデジタル化の波にのみ込まれてなくなり、AMラジオも存亡の瀬戸際に立っている。 ▽「ヘイ、シリ!」 欲しい商品やサービスを扱う近所のお店が分からないとき、職業名などから電話番号を探せるタウンページのお世話になった人は多いだろう。 しかし、スマホの便利さはタウンページの比ではない。米アップルのiPhone(アイフォーン)に搭載されている「Siri(シリ)」のように、ほとんどの機種に音声アシスタン
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【旧統一教会献金勧誘訴訟】「自由意思」退け厳格判断 教団の解散請求に影響も
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金を巡り、最高裁は11日、教団側が信者との間に交わした「返金や賠償を求めない」とする念書の有効性を否定した。教団が盾としてきた「自由意思」との主張を退け、献金問題の根幹に対する厳しい司法判断といえる。宗教法人法に基づく解散命令請求の裁判に影響するとの見方もある。 ▽広がり 「こういうことは許されないと一定の基準を示した。諦めている被害者への大きな励ましになったと思う」。原告側代理人の山口広弁護士は記者会見で判決を評価した。 昨年11月に東京高裁が同様の書面
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無人機普及で誤爆相次ぐ 戦況左右、変質する紛争 アフリカ、過激派も使用
アフリカの紛争で各国の軍が敵を攻撃する際に無人機を多用している。予算不足の軍でも容易に入手でき、戦況を左右するまでになった。だが誤爆が相次ぎ、市民の死者は3年で約10倍に急増。敵対する過激派にも無人機が拡散し、紛争のありさまが変質している。 「家族が狙われた理由が分からない。胸が張り裂けそうだ」。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは5月、ソマリア南部で3月に発生した無人機攻撃の報告書を公表し、妻や6歳の娘ら家族4人を失った農家の男性(49)が悲嘆する様子を伝えた。 政府軍が過激派の掃討作戦を展開中、トルコ製の無人機が避
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【識者コラム】注目される海底鉱物資源 日本、国際貢献を 窪川かおる
土用の丑の日に大量に食卓に上るニホンウナギは、その漁獲量が減少し、輸入品に頼るようになって久しい。水産物に限らず食料資源の自給率は低いが、日本は鉱物資源もほぼ全てを輸入に頼っている。スマートフォンの電池などに使われるリチウム、コバルトやニッケルは100%輸入に依存する。 ▽国産に挑戦 だが、島国の日本には、国土面積の約12倍の広さを持つ領海と排他的経済水域(EEZ)があり、その中にはマンガンやコバルトなどの鉱物資源が存在している。 しかも海底鉱物資源は、陸上資源より有用な金属の含有量が多い。商業化
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【米大統領選】混乱招くエゴと信念 国際社会の危機を増幅
「ジョーは撤退しない。(政治家としての)エゴがあるから。自分ならトランプに勝てると信じている。このままだと2024年は20年の再来だ。最低の選挙戦になる」 1年前の取材メモにはこんな一節がある。まるで米大統領選を巡る現下の大混乱を予言したかのような言いぶりだ。言葉の主はバイデン米大統領(81)の元側近。民主党の上院議員だったバイデン氏の下で10年近く外交政策を立案した専門家だ。 先月の候補者討論会で言い間違いや言いよどみを繰り返し、精気がなかったバイデン氏。対する挑戦者のトランプ前大統領(78)は威勢がよかった。うそや誇張を幾度
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【現在地】作家の結城真一郎さん 虚構ならではのゾクゾク感
動画投稿サイトやマッチングアプリなど現代的な要素を取り込んだミステリーで人気を博す作家の結城真一郎さん。新刊「難問の多い料理店」(集英社)の舞台に設定したのは、気軽に料理を自宅まで届けてもらえるフードデリバリーの世界だ。えたいの知れないオーナーシェフのもとで、配達員たちが事件の謎解きに関わることになる。 「この数年で急速に普及したサービスですが、その仕組みはブラックボックス。『日常の謎』としてミステリーと相性がいいと思いました」 全6話収録の連作短編集。第1話では大学生の「僕」が配達員として店に通い、高額報酬に釣られて入り浸る。
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【シネマ】「メイ・ディセンバー ゆれる真実」 「真実」は作為に基づく
「メイ・ディセンバー ゆれる真実」は、30代の女性教師が10代前半の少年と不倫し、実刑判決を受けた事件を基にした劇映画。女性役を演じる主演俳優が事件の「真実」に迫り、自らの演技につなげようと、演じる対象の女性に接触するところから物語は始まる。 俳優のエリザベスをナタリー・ポートマンが、服役中に少年ジョーとの子どもを産み、出所後は彼と結婚した女性のグレイシーをジュリアン・ムーアが演じる。エリザベスは彼女らの平穏な生活に入り込み、事件の関係者らに話を聞いていく。 エリザベスは、グレイシーに恥や罪の意識がないといった分析をし、裏付ける
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自分で決めれば逃げ道も後悔もない 節目ごとに巡り合うタイミングの良さ・福留孝介さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(41)
プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第41回は福留孝介さん。大阪・PL学園高時代にドラフト会議で7球団から指名を受けた逸材は社会人野球に進み、五輪でも奮闘。中日から大リーグへと活躍の場を移し、日本球界復帰後は45歳までプレーしました。輝かしい球歴に不可欠な、意欲の源を明かしてくれました。(共同通信=栗林英一郎) ▽井の中の蛙にはなりたくなかった 僕が育った鹿児島県大崎町やその辺りは、小学生の部活動っていうのはソフトボールで、野球がなかったんですよ。小学3年の時に始める
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【仏総選挙】投票直前に反極右票動く? 番狂わせ、最終盤に失速
6~7月のフランス国民議会(下院、577議席)総選挙では、世論調査会社の調査に基づき「極右政党、国民連合(RN)が第1勢力へ」と連日伝えた地元メディアの報道が外れ、最終盤に失速し第3勢力にとどまった。番狂わせの背景には、投票直前に反極右票が予想以上に動いた可能性がある。 ▽包囲網 総選挙は2回投票制で、6月30日の第1回投票ではRNが得票率33%でトップに。フィガロ紙は世論調査に基づき、RNの平均予想獲得議席を275とした。左派連合が190と続き、マクロン大統領の与党連合は75。 だがその後、情勢
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【NATO首脳会議】陰の主役はトランプ氏 返り咲きに備え動き加速
9日に開幕した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、盟主・米国のバイデン大統領の高齢に懸念が強まり、返り咲きを狙うトランプ前大統領が陰の主役になった。ウクライナへの軍事支援やNATOに否定的なトランプ氏が勝利する事態に備えた動きを、加盟国は加速させている。 ▽先手 「民主主義の仲間が安全でなかったら、われわれも安全ではいられない」。1949年4月に12カ国が北大西洋条約に調印したワシントンの講堂。民主党のバイデン氏だが、野党共和党のレーガン元大統領の言葉も引きつつ、超党派の支持があるNATOの維持は米国にとって「神聖な義務」だ
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【自治体非正規職員の待遇】15分時短で退職金回避か 不満噴出、国見直し求める
全国の自治体で働く非正規職員から、勤務時間がわずかに短いだけで退職金を受給できないとの不満が噴出している。退職金が支給されるフルタイムより勤務時間が1日約15分短い契約の職員は約5万8千人。自治体が勤務時間を支給条件に満たないよう調整しているとの疑念もある。総務省も勤務実態に応じて採用の区分を見直すよう求めている。 ▽将来不安 「たった15分の差で得られないものが大きい」。秋田県内で働く図書館司書の50代女性は、自治労連のアンケートに回答した。休憩時間を削って働き、実質的にはフルタイムと同等以上の勤務時間というが「不満を言えば再
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【世界の街から】反省点
米国で出張の楽しみの一つは長距離ドライブだ。単調な道路が多く、もちろん疲れる。だが退屈や疲労が吹き飛ぶ壮大な景色に出くわすことがある。 ラスベガスから自宅があるロサンゼルス近郊に戻る約4時間のドライブ。巨大な岩山に囲まれた荒野を走り続けていると、自身が風景に溶け込んでいく感覚に陥った。シカゴからインディアナポリスへの運転中には、風力発電の機器で埋め尽くされた平野が続き、スケールの大きさに圧倒された。 長距離運転では反省点もある。メキシコ国境の町、テキサス州イーグルパスからサンアントニオに向かっていた時のことだ。200キロを超える
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【性別変更時の外観要件】「二者択一」批判根強く 法改正議論に曲折も
性同一性障害の人が男性から女性に性別を変更する際、外性器の見た目を変える手術を事実上強制してきた「外観要件」に関し、広島高裁が違憲の疑いがあると判断した。変更を断念するか体にメスを入れるかの「二者択一」を迫り、人権の観点から批判が根強い外観要件。既に最高裁判事から憲法違反との意見も出ており、国会に法改正を迫った形だが、保守系議員らの反発による曲折も予想される。 ▽生きにくさ 10日朝、代理人弁護士から電話で決定内容を知らされた申立人は、受話器の向こうでむせび泣いた。「生きにくさから解放される」。申立人は幼少期から性的指向が男性に
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【海自艦が中国領海航行】日本政府、即座に火消し 侵入繰り返す中国と隔たり
海上自衛隊の護衛艦が中国領海を航行したことが明らかになり、日中両政府は新たな難題を抱えた。日本政府は経緯を調べる意向を即座に中国政府に伝え、火消しを図った。ただ中国は日本領海への侵入を繰り返している。日本産水産物の輸入停止や邦人拘束といった問題も含め、両国の立場の隔たりは大きい。関係安定化への道は険しい。 ▽耳打ち 「本件について経緯を調査したい」。護衛艦「すずつき」が浙江省沖の領海に入った4日、北京の中国外務省にはその日のうちに日本政府からメッセージが寄せられた。中国外交筋は「関係安定化に向けて日中両国が努力しているさなか、日
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【東日本大震災13年】心の乱れも語る覚悟 津波生還の元消防署員 宮城・気仙沼伝承館長に
生き残った後ろめたさをまだ整理できない。それでも13年を経て、あの日のことを語ると決めた。東日本大震災当時、宮城県南三陸消防署員だった及川淳之助さん(69)が今春、同県気仙沼市の東日本大震災遺構・伝承館長に就任した。津波に流される直前まで一緒にいた3人を含め、同僚10人の命を奪った波の威力、自分だけ助かった負い目…。心の乱れもそのままに伝えていく。 2011年3月11日は非番だった。経験したことのない大きな揺れが収まった後、自宅から消防署へ急いだ。「今、波が水門を越えた」。指令室で情報を集めていると、約1キロ離れた南三陸町の防災対策庁舎から無線連絡が入った。そ
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京都市のホテル、4月訪日客7割超 最高水準続く、料金上昇も円安で予約好調
京都市のホテルに宿泊するインバウンド(訪日客)の割合が過去最高水準で推移している。4月は7割を超えた。物価高の影響で客室料金は値上がりしているものの、円安を受けて訪日客の予約は好調。当面はこの傾向が続く見通しで、ホテルは訪日客の取り込みに力を入れている。(共同通信=小林磨由子) 6月下旬、JR京都駅近くの高級ホテル。バイキング形式の朝食会場はほぼ満席で、英語や中国語など多様な言語が飛び交っていた。8割以上は訪日客とみられ、家族や仲間とゆったりとした時間を過ごし、和食に舌鼓を打つ客もいた。 京都市観光協会が市内のホテルのうち110
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「旅」極上のアジフライを求めて 訪ねたい「聖地」 長崎県松浦市
海に臨む長崎県松浦市は、アジの水揚げ量全国トップクラス。定食などでおなじみのアジフライの食べ歩きマップや「松浦アジフライ憲章」をつくるなどして「聖地」を掲げ、極上の一品を目当てに全国から食通が訪れるという。どんな味とアジに出合えるのだろう。 伊万里湾を囲むように島が点在する松浦エリア。御厨港からフェリーで青島に渡る。潮風が心地よく、穏やかな海が広がる。青島は、一部の家庭で、漁業や民泊などの体験プログラムに取り組んでおり、今回はアジ釣り体験が目的だ。 周囲10キロほどの小さな青島。インストラクターで島の漁師松尾文博さんから「集落は歩いて回れるほどの広さ」と聞き、小一時間ほど散策。船着き場近
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近視の進行抑制に注目を 外遊びが有効、遠くを見て 眼科医らがリスク指摘
2022年度の文部科学省の調査で、裸眼視力1・0未満の小中高校生の割合が過去最多に―。視力低下への危機感が広がる中、眼科医から「近視の進行抑制に、もっと目を向けるべきだ」との声が上がっている。 眼科医の窪田良さんは、6月に新著「近視は病気です」(東洋経済新報社)を刊行。近視を、正常に見える「正視」からずれた状態で、緑内障や白内障につながるリスクの高い病気と捉え、「万病の元」と警鐘を鳴らす。 21年度の文科省の近視実態調査では、近視になると伸びる角膜から網膜までの長さ「眼軸長」が、小学校高学年で大人並みだったと判明。スマートフォン
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討論会惨敗のバイデン米大統領のささやかれる「代替候補」、トランプ氏を圧倒しうる著名人とは 「もしトラ」恐れる民主党で議論巻き起こる
11月のアメリカ(米国)大統領選挙で再選を目指す民主党候補のジョー・バイデン大統領が討論会で共和党候補のドナルド・トランプ前大統領に惨敗し、トランプ氏が大統領に返り咲く「もしトラ」を恐れる民主党の内部では代わりの候補を立てるべきだとの議論が巻き起こっている。政界関係者や現地メディアなどから代替候補として名前が挙がるのは女性初の大統領を目指してきたカマラ・ハリス副大統領にとどまらず、トランプ一族と意外な“因縁”がある有力州知事、大手ホテルチェーン創業家の知事ら多士済々だ。そんな中でも、大統領選候補になった場合にはトランプ氏を圧倒できるとの世論調査結果が出た著名人が1人い
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「そこら中に現金が落ちているようなもの」 1950年代の朝鮮戦争特需でも問題になった金属盗、なぜまた増えた?
ガードレール、側溝のふた、水道の蛇口や銅線ケーブル…。どこにでもあるような金属が、カネになる。金属価格が高騰しており、こうしたものを盗む犯罪者にとっては「そこら中に現金が落ちているようなもの」(捜査関係者)らしい。昨年の金属盗の認知件数は約1万6千件。統計を始めた2020年の約3倍である。 実は、朝鮮戦争特需の影響で金属価格が高騰した1950年代にも金属盗は多発し社会問題になった。その後、被害は減少したはずだが、なぜ今再び増加しているのか。 被害が全国ワーストの茨城県で取材を進めると、実態や課題が見えてきた。(共同通信=奥林優貴
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【変わる百貨店お中元商戦】儀礼から個人の価値観重視 多様な需要対応、自分用も
夏の風物詩として長年盛り上がりを見せてきた百貨店のお中元商戦が変化している。各社は定番品を中心に店頭で大々的に売り出す形から、個人の価値観に合わせて選べる商品展開や販売方法に工夫を凝らす。中元や歳暮を含む儀礼的な意味合いの強いフォーマルギフト需要の縮小が背景にあり、自分や家族へのご褒美としてのニーズも意識する。 ▽まばら 「ただいまの時間、45分待ち」。阪急百貨店梅田本店(大阪市)9階に設置された中元商品の販売特設会場の案内板。開設初日だった6月1日、注文受付カウンター付近には、メモを手にした高齢女性ら大勢の客が詰めかけた。
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【米大統領選】バイデン氏不安払拭空回り 撤退論やまず求心力低下
米大統領選の討論会で精彩を欠いたバイデン大統領(81)の撤退論がやまない。不安払拭の試みは空回りし、いら立ちから出た不用意な発言が、自身を支えてきた民主党議員らの不信感を助長。擁護する党指導部も動揺を隠せず、求心力の低下が加速しそうだ。 ▽波紋 バイデン氏は8日、MSNBCテレビに電話で突如出演し、出馬継続を宣言。それでも撤退を迫る民主党議員らがいるなら、8月に党が候補を正式に指名する党大会で自分と競えばいい、と勇ましくたんかを切った。 自身が共和党のトランプ前大統領(78)に勝つ可能性が最も高い
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【仏下院選挙で極右失速】危機は深まるだろう 真の決戦は27年大統領選に 同志社大教授 吉田徹
「歴史を耐え忍ぶよりも、歴史を書くことを選ぶ」―。6月の欧州議会選の敗北を受けて国民議会(下院、577議席)解散を宣言したフランスのマクロン大統領による、この言葉は偽りのないものだったろう。しかし、選挙の結果は期待を裏切るものとなった。 6月30日の第1回投票で極右、国民連合(RN)は得票率33%と、欧州議会選を上回る支持を得ていた。有権者の3割以上が、インフレによる所得減と治安の悪化から、穏健化したRNの政策を支持すると回答している。 2022年下院選の第1回投票の425万票に対して1065万票と得票数は倍増、極右政権誕生も視
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【76年以後最小の韓国五輪選手団】韓国スポーツ、弱体化憂慮 少子化背景、養成に変化も
26日開幕のパリ五輪に韓国が派遣する選手団が、1976年のモントリオール大会後で最小規模となり、国内でスポーツの弱体化が憂慮されている。サッカーなど団体球技で出場権を逃したことが直接の理由だが、世界最低水準の「超少子化」で、スポーツをする子どもの絶対数が減少していることも背景にある。エリート養成する選手に文武両道を求める制度の導入の影響も指摘される。 「韓国スポーツの危機」。4月、人気競技のサッカー男子が、アジア最終予選で敗れて五輪連続出場が9回で途切れた際、韓国メディアは深刻さを訴えた。団体球技はサッカー以外もほぼ全滅で、出場権を獲得したのはハンドボール女子
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【国立競技場の民営化】収益向上へコンサート増 スポーツの聖地と両立図る
東京五輪・パラリンピックのメイン会場だった国立競技場(東京都新宿区)が、来年4月から民営化で大きく生まれ変わる。開催経費の膨張や新型コロナウイルス禍で迷走した大会の象徴的な施設として、赤字運営は必至とみられていたが、運営の中心を担う見通しとなったNTTドコモは「自立した収益性の高い運営をしていきたい。確実に利益は生める」と手応えを示す。収益を見込めるコンサートの回数を増やしつつ「スポーツの聖地」との両立を図る。 ▽集中開催 懸案だった音楽興行の開催増に向け、展望が開けたのが大きい。屋根を設置しなかった国立競技場は、風通しのよい設
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【旧優生保護法救済策】補償額、対象範囲焦点に 被害証明の負担軽減不可欠
強制不妊手術の被害救済に向けた議論が本格的に始まった。旧優生保護法を違憲とした最高裁判決を踏まえ、超党派議員連盟は新法制定を軸に、補償の枠組みを整える見通しだ。金額や対象にする範囲が焦点で、原告側は被害証明のハードルを下げるよう要望。障害のある人や高齢の被害者にも負担が少ない仕組みが不可欠となる。 ▽苦難 「最高裁で良い判決が出て、やっと希望の光が見えたが、苦しみは消えることがありません。早く解決できるよう、お力添えをお願いします」。9日の議連総会に出席した、仙台訴訟原告の飯塚淳子さん=70代、仮名=は声を詰まらせ、国会議員に一
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【防衛省】事故に不祥事、満身創痍 海自「解体的出直し」の声
海上自衛隊で相次いで不祥事が明るみに出ている。内部から解体的出直しを唱える声まで上がる始末で、満身創痍の状態だ。4月に起きた対潜水艦戦訓練中のヘリコプター衝突、墜落事故は、見張り不十分など「ヒューマンエラー」が重なったと結論付けた。任務増大により、部隊の疲弊は著しいとされる。ヘリ事故の再発防止策を打ち出したが、実効性は不透明だ。 ▽負荷 「極めて緊急な事態や潜水艦の捜索では、逐一見張りの報告をするゆとりがない場合もある。今後も負荷は軽くない」。海自トップの酒井良海上幕僚長は9日の記者会見で任務の難しさを強調した。
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【防衛費使い残し】予算大幅増の正当性に疑問 不安含みのスタートに
政府が2023年度予算に計上した防衛費で、多額の使い残しが判明した。岸田文雄首相は安全保障環境の悪化を理由として防衛予算の大幅増に踏み切ったが、正当性に疑問符が付く事態となった。相次ぐ自衛隊の不祥事もあり、首相が掲げた防衛力強化は不安含みのスタートとなった。 ▽無理 「人手が不足しており、契約作業が進められない」。防衛省関係者は多額の不用額計上を余儀なくされたことに関し、内情を明かした。別の同省関係者によると、予定していた人員を確保できなかったことや、執行できなかった航空機の修理もあるという。 政
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【英新政府始動】ミドルパワー網構築を 対中抑止力の一角に
英下院総選挙で、野党労働党が与党保守党に歴史的な勝利を収めた。「変化」を掲げる労働党のスターマー首相は、内政や外交・安全保障の多方面で改革に着手する。 14年ぶりの保革交代で注視したいのは、保守党政権が始めたインド太平洋地域重視が、中身と実行を伴う形で継承されるかどうかだ。中国が台頭する中、米国外交の激変にも備え、日本などミドルパワー同士の協力網構築も急ぐべきだ。 英国はキャメロン政権下の2016年に欧州連合(EU)離脱が決定して以来、外交の新たな方向性を模索。後継のメイ首相が外交・安全保障の方針で「グローバルブリテン(世界的な
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定年後に給与が大幅に下がる対策は? 専門家に対策を聞いた【経済トレンド】
Q 60歳以降、継続雇用で働く予定です。給与が大幅に下がるため、年金をもらうまでの生活が不安です。 A 定年後に継続雇用等で働く方が増えていますが、現役時代と比べ収入が大きくダウンしてしまうケースは少なくありません。 雇用保険にはそうした収入の減少を補う「高年齢雇用継続基本給付金」があります。60歳以降も雇用保険に加入しながら継続して働く65歳未満の方が対象です。「雇用保険の加入期間が5年以上」「60歳以降の給与が60歳時点の75%未満に低下」などの要件を満たせば、
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カスハラから従業員守れ!AIで練習 職場の信頼高めて退職防止【経済トレンド】
客が従業員に迷惑行為をする「カスタマーハラスメント(カスハラ)」は、職場の意欲低下や離職を招きかねない。組織での対策を目指し、接客練習ができるツールや弁護士に相談できる保険商品が人気を集めている。(共同通信=川村剛史記者) ▽改善 「何度も同じ事を聞くな! 役に立たないな」 問い合わせをした客がいら立ち、強い言葉を浴びせる。その声は人工知能(AI)の音声だ。インタラクティブソリューションズ(東京)の対話
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宅配転換が「ヤマト運輸」起死回生の策 戦後は経営危機に【経済トレンド】
宅配最大手。創業者の小倉康臣が1919年に現在の東京・銀座で大和運輸を設立したのが起源だ。牛馬や人力での貨物輸送が主流だった時代にいち早くトラックを導入し、運転手に制服・制帽を採用した。集めた荷物を拠点間で定期輸送する路線事業を国内で初めて開始。関東一円に配送網を築き、トラックによる運送業の原型をつくった。(共同通信=出井隆裕記者) 太平洋戦争後は、その成功体験が判断を誤らせ、東京―大阪など大都市間の輸送で後れを取り、経営難に陥った。康臣の息子で経営を引き継いだ昌男社長(当時)は起死回生の策として宅配事業に転換。家庭へ手軽に荷物
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大画面テレビでスポーツも動画も楽しもう AIが調整、臨場感豊かに【経済トレンド】
人気のスポーツ競技やインターネットの動画などは、機能豊かな大画面テレビで視聴すると面白さが増す。画質などを自動調整して臨場感を高めたり、番組を一覧表示して好みを探せたりする商品や、画質と音質にこだわったタイプもある。(共同通信=川村剛史記者) シャープが2024年6月に発売した「アクオス QD―OLED 4T―C55GS1」は、明暗が豊かで鮮やかな色を再現する有機ELパネルを採用。人工知能(AI)が画質と音質を自動調整する機能は、人の顔などを検知して色味を調整したり、音声信号を解析してスポーツを視聴する時に臨場感を高めたりする。
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17年ぶりの新ブランドビール開発者に聞く 東北産ホップ「晴れ風」【経済トレンド】
「17年ぶりの新ブランドでおいしさを届けたい」。キリンビールが4月に発売したビール「晴れ風」。好調の理由を商品開発を担当するキリンビールの向井優夏(むかい・ゆか)さんに聞いた。(共同通信=増井杏菜記者) 東北産ホップを使い、酸味を抑えるなどの工夫で飲み応えと飲みやすさを目指した。店頭想定価格は350ミリリットルで225円前後。価格は2024年7月時点。 2024年6月末で販売数量は年間目標の6割を超えた。酒税法改正で2026年にはビール、発泡酒、第三のビールの税額が
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人力車に専門家が感じた地方経済の可能性 観光で知った小樽の歴史【経済トレンド】
古く美しい街並みに異国情緒があり、観光の町としてブランド力を持つ北海道の小樽を訪ねた。小樽といえば、運河やすし、ガラス細工を思い出す方が多いかもしれないが、北海道で最も古い時代から栄えた場所だったということをご存じだろうか。 小樽では早くからニシンやコンブの漁が盛んで、そうした海産物を日本海側を通って秋田、石川、下関、大阪と、順に売りさばいていく船が、大きな利益を得ていた。今も運河周辺に残る倉庫などの多くは「ニシン御殿」の名残だという。 ▽銀行の支店も並ぶ
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富士山静岡県側3登山ルート、10日開通 訪日客にぎわい予想/マナー違反や「弾丸」流入懸念
富士山静岡県側3登山ルート(富士宮、須走、御殿場)は10日、全面開通する。山小屋などによると、訪日観光客を中心に登山客の増加が予想される。一方でマナー違反の問題は近年深刻化し、今夏は山梨県吉田ルートの規制の影響による弾丸登山者の流入など懸念材料が増えた。本県が試行する県富士登山事前登録システムの抑止効果は見通せず、不安を拭いきれないまま開山を迎える関係者もいる。 富士宮や須走ルートの山小屋によると、円安や新型コロナウイルス禍の収束により、特に訪日観光客の個人、ツアー予約が堅調。関係者から「予約の7、8割が外国人」「旅行代金のつり上がりの影響か、日本の旅行会社の方が苦戦している印象」などの声
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「旅」北斎と花の街のおもてなし 山あいの美術館に「大波」 長野県小布施町
7月発行の新千円札の裏面には、江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の「富嶽三十六景(神奈川沖浪裏)」がデザインされている。絵柄の波は、北斎が何度も取り組んだ画題だ。山あいの街、長野県小布施町には、その表現の極致とも言われる晩年の大作が残る。 長野電鉄小布施駅から歩いておよそ10分。特産の栗を使った菓子などを売る「小布施堂」の立派な正門がある。 1842年、数え年で83歳だった北斎は、小布施堂を経営する市村家12代当主の高井鴻山にこの地に招かれた。初めて訪れた際、この門をたたいたそうだ。鴻山から金銭的なサポートを受けた北斎は、制作に没頭で
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未曽有の化学テロから30年、今も続く特定人物のつるし上げ 松本サリン事件「犯人視報道」の教訓
考えてみてほしい。ある日突然、事件の犯人のように仕立てられ、自分のことが新聞に載ったとしたら。警察に家宅捜索され、喋ってもいないことを報道されたとしたら―。 1994年に発生した「松本サリン事件」で実際に起きた出来事だ。メディアは、第1通報者で当時会社員の被害者、河野義行さん(74)を犯人視する報道を展開した。オウム真理教による化学テロだと分かると、共同通信を含む各社は河野さんへのおわび記事を掲載。事件報道の在り方に重い課題を残した。 30年たった今も、新型コロナウイルス感染を巡るSNS上の騒動など、不確実な情報で特定の人物が標
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社会人野球最高の舞台・東京ドーム目指す「クラブチーム」 「打倒・大企業」の情熱と組織づくりとは
社会人野球の最高峰「都市対抗野球大会」が7月19日に開幕し、熱戦が展開される。最多優勝を誇るENEOS(横浜市)に、昨年優勝のトヨタ自動車(愛知県豊田市)―。言わずと知れた大企業がしのぎを削る舞台に続く道には、中小の地元企業などが支える「クラブチーム」も名を連ねていることをご存じだろうか。野球で頂点を目指すだけでなく、地域貢献にも重きを置き、行政との連携が功を奏した事例も。野球に情熱をかける二つのクラブチームの奮闘を取材した。(共同通信=内藤界) ▽お手製の練習場 3月中旬の平日。日が落ちた頃、山
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【政治活動の警備】変わる演説風景、悩む政党 聴衆と距離、集票両立は
2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件や23年4月の岸田文雄首相襲撃事件を受け、政治家の街頭演説の風景が変わってきている。警察庁からの求めに応じ、政党側が聴衆と距離を空けるなどの対応をしているためだが、警備上の適地がなく演説を断念するなど、集票の思惑との両立に悩む現状も。新たな選挙活動の在り方の模索が続いている。 ▽主催者によって 「今こそ政権交代を」。今年6月中旬、JR大阪駅前の街宣車の上で立憲民主党の泉健太代表が声を張り上げた。拍手を送る聴衆は幅約10メートルの大通りを挟んだ向かい側。周囲の数メートルおきに立つ警察官が通行人
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【米政権、太陽電池関税上げ】大統領選控え産業保護傾斜 脱炭素に逆風、険しい両立
バイデン米政権が6月、東南アジア4カ国から輸入する太陽電池への関税免除措置を終了した。中国の過度な補助金による安価な製品の迂回輸出ルートをふさぐことを狙うが、コスト増による太陽光導入ペースの鈍化が懸念される。11月の大統領選を意識した産業保護策への傾斜が、看板の脱炭素政策には逆風になる恐れがあり、両立の道は険しい。 ▽弱体化 「中国は欧州で製造会社を廃業に追い込んでいる。米国でそんなことは許さない」。バイデン米大統領は5月、中国による太陽光パネルの過剰生産に厳しく臨む姿勢を鮮明にした。 昨年の太陽
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【米国の対イスラエル政策】米武器供与に抗議の辞職 国務省元職員、政権追及
パレスチナ自治区ガザを襲うイスラエルに武器を与え続けるバイデン米政権に対し、国務省の職員が抗議の辞職に踏み切り、国際法軽視だと訴えている。戦闘は9カ月を経過し、ガザの死者は3万8千人を超えた。元職員は、米国の政策が民間人の犠牲拡大を招いていると追及を続けている。 「最も人道的な基準を掲げていたのに、全て無視した」。ワシントン近郊で取材に応じたジョシュ・ポールさん(46)は、同盟・友好国への支援を所管する国務省政治軍事局の中堅幹部だった。活発に議論できる国務省の雰囲気は誇りだった。 国際法に抵触する疑いがある場合、武器供与しないと
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【仏下院総選挙】EUけん引役、機能不全も 三つどもえ、政策決定困難
フランス国民議会(下院)総選挙は左派連合勝利というサプライズが起き、極右政党の国民連合(RN)は失速した。だがマクロン大統領の与党連合を含め、どの勢力も過半数に届かない三つどもえとなり、法案を可決できない「機能不全」状態に陥る恐れも。政局が混迷し、政策決定が困難となればフランスがけん引する欧州連合(EU)への波紋が広がる。 ▽安堵 「最悪の事態は避けられた」。フランスと並ぶ欧州の大国ドイツの与党、ショルツ首相の社会民主党(SPD)幹部が胸をなで下ろした。 最悪の事態とは、反移民、反EUを唱えるRN
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【日銀さくらリポート】景気足踏み、決め手欠く 利上げ時期見極め難しく
日銀が8日公表した地域経済報告(さくらリポート)は、景気判断を横ばいとする地域が多く、国内全体として足踏み感を示す内容だった。歴史的な円安による物価高を背景に、金融市場の一部でくすぶる早期の追加利上げ観測を後押しする材料にはならなかった。今月30、31日の金融政策決定会合に向け、日銀は難しい判断を迫られる。 ▽節約 「日常消費を中心に節約志向が急に広がっているとみている」。日銀の岡本宜樹札幌支店長は公表後の記者会見で、こう指摘した。 リポートで示された全9地域のうち、個人消費は近畿など2地域で判断
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【都知事選】石丸氏、既存政治に一石 ネットをフル活用 若者の受け皿に
東京都知事選で、前広島県安芸高田市長石丸伸二氏(41)が約165万票を獲得し2位に入った。政党の支援を受けず、5千人以上のボランティアが支えた。インターネットをフル活用した戦略で個人献金は2億円を超え「日本の政治を変えよう」と訴えて若者や無党派層の受け皿に。既存政党による従来型政治に一石を投じたが、政策的な深みが不十分だと疑問視する向きは少なくない。 ▽「恥を知れ」 「胸を張って、できることは全部やったと言い切れる」。7日夜、敗戦が決まった石丸氏は、すがすがしい表情で語った。敗因を聞かれると「メディアが当初全く扱わなかった」。市長時代から変わらぬ“石丸節”に、参集
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【クマの市街地出没対策】ハンターに責任負わせるな 猟友会、法改正議論を注視
クマによる相次ぐ人身被害を防ぐため、環境省の専門家検討会は8日、鳥獣保護管理法改正を目指す方針を決めた。要件を緩め市街地でも条件付きで銃猟が可能になる見通しだが、従来は制限が厳しく自治体の要請で撃ったハンターが後に猟銃所持許可を取り消されたケースも。「ハンターに責任を負わせない仕組みを」。猟友会関係者は今後も議論を注視する。 ▽理不尽 クマによる人身被害は昨年度、過去最多の219人に上り、6人が亡くなった。街中に出没する「アーバンベア」も目立つが現行法では住宅地での発砲は違法。ただそれでは駆除ができず、警察庁は通達で、現場の警察
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男性更年期働きやすく 企業、休暇制度や研修 周囲の理解重要
更年期症状に悩む男性が働きやすくなるよう休暇制度や研修といった職場環境を改善する企業、自治体の取り組みが注目されている。女性特有の健康課題と誤解されがちだが、男性も似たような症状が出ることがあり、周囲の理解が重要になりそうだ。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券は4月、女性向けの生理休暇を刷新。男女問わず更年期障害の人も対象とした「ヘルスケア休暇」を新設した。1カ月につき2日まで有給扱いになる。女性の更年期の休暇を検討する中で男性にも更年期があることから「性別で区別しない」(担当者)と決めた。SMBC日興証券も同様の休暇を導入。同社は「さまざまな症状や状況で悩
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【日比の安全保障協力】対中抑止、効果見通せず 衝突時の対応は不透明
日本とフィリピンが安全保障・防衛協力を一層強化することで合意した。南シナ海で威圧を続ける中国を抑止する狙いだが、実効性は見通せない。実際に中国とフィリピンが南シナ海を巡り応酬を繰り広げる中、中比の本格衝突が起きた場合の日本政府、自衛隊の対応も不透明なままだ。 ▽後ろ盾 「両国の部隊間の交流を進める。防衛装備技術や能力構築の協力を継続し、強化する」。8日、マニラで自衛隊とフィリピン軍の相互往来を容易にする「円滑化協定(RAA)」に署名した上川陽子外相は、その後の記者会見でこう強調した。 日比の安保協
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【水俣病再懇談】制限撤廃、議論は平行線 「命あるうち補償を」
伊藤信太郎環境相との懇談で水俣病被害者らの発言が遮られた問題を受け、異例の再懇談が8日、熊本県で始まった。発言遮断は水俣病問題の軽視と批判され、環境省は時間制限を撤廃。高齢化した被害者の訴えは「命あるうちに補償を」と切実だが、環境省側は従来の答弁を繰り返し、認定制度に関する議論は平行線だった。 ▽ゼロ回答 「形式的な懇談では問題解決につながらない。ゼロ回答だ」。5月の懇談で発言中にマイクを切られ、8日に再び伊藤氏と対面した「水俣病被害市民の会」の山下善寛代表(83)はそう断じた。 被害者側は患者認
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【東京都議補選】裏金「悪夢」やまず 首相不信、底なしの様相
自民党が東京都議補欠選挙で大きく負け越した。裏金事件の逆風下、無党派層に駄目出しを食らった格好だ。4月以降の選挙で、党公認・推薦候補の敗北が続く「悪夢」はやまない。裏金事件の再発防止に向けた政治資金規正法改正を経て、国会が閉幕しても、岸田文雄首相に対する不信感は底なしの様相を呈し、首相の政権運営に暗い影を落とす。 ▽うつろな目 「真摯に受け止める」。8日、岐阜県恵那市。首相は視察先で、補選大敗に対する自らの責任について記者団から問われると、この言葉を2回繰り返した。 無党派層が多い東京で行われる補
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【記者書評】阿部暁子著「カフネ」 生活を支える人肌の希望
平日に放送中のラジオ番組で、リスナーにこう呼びかけるDJがいる。「お仕事中の方、お休み中の方、病気療養、子育て、介護、お勉強、それぞれの生活を送る皆々さま」。このあいさつを聞くと、いろんな状況に置かれた人がいることを想像するとともに、近年まで「お仕事」「お勉強」以外の人は社会の中で隠された存在になっていたのではないかと感じる。 本作は、その「以外」の人たちの暮らしや心情に光を当てる物語だ。主人公の薫子は法務局に勤める公務員。ボランティア活動に誘われ、週末にさまざまな家に、清掃に入るようになる。 41歳の薫子は出産を望んで不妊治療
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「日本の民主主義が笑いものになる」。都知事選でSNSを席巻した掲示板ポスター問題。なぜこんな事態になったのか、改めて振りかえる
7月7日に投開票された東京都知事選は6月20日の告示直後からSNSの話題をさらった。その内容は、国政を背景にした与野党の代理戦争でも、現職と新人の政策論争でもなかった。 爆発的に拡散したのは、普段注目を浴びることが少ないポスター掲示板の画像。他の候補のポスターを取り囲むように、凹型に同じデザインのポスターが並んでいた。 ポスターの内容は風俗店の紹介、有料SNSへの誘導、亡くなった俳優の肖像など。選挙に無関係と思われるものが多かった。掲示板が選挙以外の目的に使われている―。さらに、裸同然の女性のポスターが張られていたことも判明した
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【仏下院総選挙】落日の「マクロン政治」 7年で期待から失望へ
7日のフランス国民議会(下院)総選挙決選投票で、マクロン大統領(46)の与党連合の大敗は必至だ。国民の夢と期待を背負って2017年に同国史上最年少で大統領となった若きエリートは、7年後に失望と憎悪の的に。右も左もの超党派中道を目指した「マクロン政治」は、急進勢力を中心に左右両派を勢いづかせ、分断を克服できないまま落日を迎える。 ▽裏切り 「彼にはもう何も期待していない」。マクロン氏の故郷、北部アミアンで工事会社勤務の女性ファディラさん(57)が吐き捨てるように言った。 17年の大統領選では、アミア
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「孤独死が発生しています」住み慣れた団地にまさかの掲示、憧れだった都心の一等地は今や超高齢社会 日本の未来の縮図で起きている悲しい現実
遠藤シマ子さんは、86歳の今も現役のヘルパーだ。毎週2回、早起きしてバスで全身まひの男性宅へ通い、身の回りの世話全般を担当する。帰宅は深夜になることも多い。 東京・新宿区の都営団地「戸山ハイツ」で独り暮らしをしている。総戸数約3千戸の大規模なマンション群は、1960~70年代に建てられた。当時は、好立地や手ごろな価格から爆発的な人気を呼んだが、現在は住民の半数以上が65歳以上の高齢者とみられている。都心に生まれた局所的な「超高齢社会」。遠藤さんは昨夏、友人を失った。孤独死だった。「明日はわが身だわって思ったの」。日本の「未来の縮図」のような場所で今、何が起きて
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【イラン大統領選】若者票、改革派後押しか 自由じわり、社会が変化
イラン大統領選で改革派ペゼシュキアン氏の当選を後押ししたのは、政教一致のイスラム体制に基づく保守強硬派の締め付けを嫌った若者とみられる。近年、女性のヘジャブ(スカーフ)着用強制に反対の流れが広まり、社会生活の制約がなし崩しに緩まっていた。都市部を中心に自由に振る舞おうとする若者も増え、イラン社会は少しずつ変化している。 決選投票前日4日夜の首都テヘランの飲食店。DJが音楽を爆音で流す中、多くの女性客はヘジャブをかぶらず、髪が完全にあらわになっていた。肩を出したり、へそが見えたり、肌を露出する服を着る女性もいた。男性客は「もう見慣れた光景だ」とつぶやいた。
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【都知事選】旋風なく「失点回避」 政党不信、色濃く反映
東京都知事選は、自民党などが支援した現職小池百合子氏(71)の3度目勝利となった。論戦は低調でかつての「旋風」はなく、他陣営は「失点回避の作戦」とも指摘する。自民の裏金事件で政治に対する信頼が失墜。政党に頼らない前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)が勢いを見せた一方、立憲民主党が支えた前参院議員の蓮舫氏(56)は苦しんだ。既成政党への不信が色濃く反映され、与野党に国政選挙への警戒感が漂う。 ▽現状維持 「熱い思いを届けていただいた。重責を痛感する」。7日夜、小池氏は支援者を前に喜びをかみしめた。
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子どものSOS見逃さない 学校と福祉、チームで支援 不登校増、進む体制整備
学校の居づらさや複雑な家庭環境などを背景に不登校が急増している。学校には学習指導だけでなく、児童生徒や保護者が抱える問題に気付き、支援に結びつける役割も求められる。顕在化しにくいSOSを把握するため、福祉の専門家らと連携した体制づくりに取り組む動きも出始めた。 「子どもだけでなく、親にも困り事があるかもしれない。スクールカウンセラーとの面談につなげましょう」。5月、名古屋市立大高南小で開かれた「チーム会議」。校長や担任と、スクールソーシャルワーカーら福祉や心理の専門家10人以上が集まり、不登校の児童の支援策を話し合った。 松永典
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労働に新しい視点を ケアから発想する社会 「稜線の思考(2)」哲学者・鷲田清一
近年、労働をめぐっては「働き方改革」や「給与水準」の議論が盛んですが、一方で「ケア」という労働のあり方もしばしば議論されますよね。 ケアといえば「人の世話」として、介助とか食事、洗濯といった家庭内の仕事がまず思い浮かぶかもしれませんが、人のニーズに応えるという意味では医療や看護、介護、さらに保育・教育や接客、配達や運搬、ごみ収集など、さまざまな業態があります。 そしてそれが個人の生活を支え、共同体を円滑に運営していく上でも、モノの生産に劣らず、社会に不可欠の営みであ
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停戦から四半世紀、街を分断する壁残る 北アイルランド【境界から】
街の“こちら側”と“あちら側”を隔てていた鉄製の門がゆっくりと開く。英領北アイルランドの中心都市ベルファストの夜明け前。通り過ぎた車のヘッドライトが壁の向こうの街角を照らす。 同じキリスト教のカトリック系住民とプロテスタント系住民が互いを攻撃した紛争が終わってから四半世紀。だが分断は目に見える壁という形で残り、住民の心の溝も埋まっていない。「壁がなくなるにはあと何世代もかかるだろう」との声がある一方で、わだかまりを乗り越えようとする若い世代も現れている。 ▽100カ所 高さ約4メートルの門は午後10時半から翌朝6時まで自動で閉まる。両脇の
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暴力パワハラ問題根絶へ「指導者もアップデート」を 日仏の違い、柔道五輪金メダリスト谷本歩実さん
日本スポーツ協会や日本オリンピック委員会(JOC)が連携し、スポーツ界の暴力や暴言、ハラスメント行為の撲滅を目指す「NO! スポハラ(スポーツ・ハラスメント)」活動を開始して1年が過ぎた。実行委員会のメンバーを務めた柔道女子五輪金メダリストの谷本歩実さん(42)は現役引退後、パリに留学した経験も踏まえ「指導者のアップデートも必要」と強調する。このほど共同通信のインタビューに応じ、日本とフランスの指導を取り巻く違いやスポハラ根絶への思いを語った。(聞き手は共同通信=七野嘉昭、田村崇仁) ▽選手のSOS ―昨年4月から1年間の活動で
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特別支援学級では内申点は付けてもらえるの?【NEXT特捜隊】
小中学校に設置され、比較的軽い障害がある子どもが通う「特別支援学級」。高校受験で重視される内申点の仕組みを紹介した静岡新聞社「NEXT特捜隊」に、浜松市の中学生の母親佐藤さん(仮名)から「支援学級では内申点は付けてもらえるのでしょうか」と疑問が寄せられた。支援学級の内申点の仕組みや進路について調べた。 学習内容に応じ、指導要領に評定 内申点は、中学生の学習を評価する5段階の数字「評定」の9教科合計。中学が高校に送る「調査書」に記載され、高校入試の選抜材料となる。佐藤さんは複数の同市立中の支援学級について情報収集した。A中は「評定が付かない」、B中は「評定は付くが通常学級とは数字の意味が異な
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【鈴木おさむさん】SMAPの運命を変えた「あの日」に区切り 放送作家を引退しなければ書けなかった
平成のテレビ黄金期に国民的アイドルグループとなった「SMAP」。2016年の旧ジャニーズ事務所からの独立騒動から、解散までの動向は、日本社会を巻きこんだ大ニュースとなった。放送作家として長年仕事を共にしてきた立場から、グループの運命を変えた「あの日」の内幕などをつづった小説「もう明日が待っている」(文芸春秋)を今年3月に刊行し、ベストセラーとなったのが鈴木おさむさんだ。 「引退しなければ書けなかった」と、刊行日と同じ日に放送作家の肩書を外すほどの覚悟の一冊。テレビ史に残る異例の謝罪放送への悔いと葛藤、番組に心血を注いだスタッフの姿を残したい思いが執筆に向かわせたと振り返る。(共同通信=加藤
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20年性風俗店を渡り歩いた女性が「業界脱出」に成功できた理由 韓国の相談所、心のケアや大学進学も支援
ソウルのある繁華街の一角。ネオンが光る「ノレパン(カラオケ)」が軒を連ねる。この地区には女性が個室で接客する店が多く、性売買の温床とされている。性売買に従事する女性の自立を支援し、業界からの脱出を手助けする組織(「相談所」などと呼ばれる)の活動に3月、同行した。 相談所の女性スタッフらは一店一店くまなく巡回し、相談所の連絡先が記されたライターや手鏡、ばんそうこうといった日用品を店主らへ手渡していた。 一度入ってしまうとなかなか抜け出せないと言われる性風俗業界だが、体系的なサポートにより、多くの女性が新たな一歩を踏み出している。関
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“隠れた報復”進むヨルダン川西岸占領地 聖地で探ったユダヤ人入植者の本音、なぜ土地に固執、過激化するのか?
イスラエル軍の掃討作戦が続くガザ地区での悲劇に世界の注目が集まる中、パレスチナ人に対する“隠れた報復”が、ガザから東へ40キロほど離れたもう一つの占領地、ヨルダン川西岸で進行している。 昨年10月に起きたイスラム組織ハマスによる越境攻撃以来、入植者による暴力が急増し、4月上旬までに700件を超えた。犯人が罰せられることはまれで、西岸は無法地帯化しつつある。 ガザを拠点とするハマスは、1200人ものイスラエル市民らを虐殺した。イスラエル側の衝撃と怒りは想像も同情もできる。しかし入植者はなぜこの土地にかくも固執し、過激化するのか?現
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「キッド」と「ドッグ」双方が再出発できる場に 命を見つめ、共に成長する【生き抜く】「若者と保護犬」
保護犬と触れ合えるカフェ。両親と訪れた幼い子どもが、そのうちの1匹に駆け寄っていく。様子を見守っていた岡本達也(41)が「その子はちょっと怖がりだから、顔の下からそっとなでてあげると喜ぶよ」と穏やかな口調で声をかけた。 保護犬と新たな飼い主の出合いの場となるカフェを運営するのは、茨城県つくば市のNPO法人「キドックス」。犬の世話を通じ、人間関係の悩みや不登校の問題を抱える若者の自立を支援している。事務局長を務める岡本は犬たちを見つめながら、こう口にした。「犬とは、問い続けることで分かる存在なんです」 ▽重なる記憶
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AI時代に自ら思考 哲学本、相次ぐ刊行 対話型、深い思索求めて
「親ガチャの哲学」など、「哲学」を冠した本の刊行が目立っている。語りかけるような文体や対話型の作品が人気で、人工知能(AI)が発達する時代に、自ら深く考えることを求める人が増えていると言えそうだ。 立命館大教授の千葉雅也さん(45)が4月に刊行した「センスの哲学」(文芸春秋)は、発行部数4万7千部と人文書としては異例のヒットになっている。「センス」という言葉を皮切りに、芸術と生活の関わり、そして人間という存在を考える。「さて、実はこの本は『センスが良くなる本』です」などと、語りかけるような文体が特徴だ。 千葉さんは物事の複雑な「
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ウイスキー蒸留所10年で2・5倍に 海外人気で参入活発化
ウイスキー製造への参入が活発だ。海外での日本製品人気と少量生産品のファン増加を背景に、国内の蒸留所はこの10年で2・5倍になった。焼酎など同じ蒸留酒業者が事業を広げたり、異業種から市場開拓を目指したりしている。(共同通信=相沢一朗) 「一つ一つに個性がある。知らない蒸留所と出合えるのが楽しい」。福岡市で6月に開かれた九州最大のウイスキーイベント「ウイスキートーク福岡」。学生時代に働いたバーでウイスキーのとりこになった佐賀県伊万里市の男性会社員(27)は笑顔で話した。 国内外のメーカーなど123のブースが出展。熟成途中の原酒の試飲
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JR西日本の株式1億円分を岡山県真庭市が取得へ、鉄道の存廃議論に発言力高める 市長「鉄道を必要としている市民への配慮は絶対に必要」
人口約4万人の岡山県真庭市が、JR西日本の株式を1億円分購入することを決めた。市内にはJR姫新線が走る。利用者が低迷するローカル路線を存続させるかどうかの議論が広がる中、株主になって発言力を高める狙いだ。路線を維持したい自治体と効率的な経営を重視する鉄道会社の新たな関係に注目が集まる。(共同通信=石井祐) ▽通学、通勤に欠かせない 雨が降るある日の夕刻、真庭市中心部の久世駅では、1両編成の列車から高校生らがホームに降りていた。隣接する津山市に通っているという高校3年の男子生徒(18)は「中学生の時から乗っている。列車がなかったら、
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【米民主党候補】大統領選撤退なら後継は? バイデン氏進退に注目
米大統領選で民主党が揺れている。討論会での不振を受け、バイデン大統領(81)を党候補にせず、新たな人物の下で戦うべきだとの声が広がり始めた。投開票が約4カ月後に迫る中、バイデン氏の進退を有権者は固唾をのんで見守る。撤退した場合、誰が後継となるのか。顔触れを探った。 ▽女性が軸か 最有力は黒人でアジア系の女性ハリス副大統領(59)だ。バイデン氏の伴走者として予備選段階を勝ち抜き、陣営の組織と莫大な資金を使える。支持基盤の黒人票や女性票のつなぎ留めへの期待もある。バイデン氏と同様に人気は低迷しているが、現職副大統領の存在は無視できな
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【能登のキリコ祭り】郷土の誇り、地震で危機 高齢化地域、流出加速も
能登半島地震の影響で、住民の心の支えとなり、郷土の誇りでもある「キリコ祭り」が危機に直面している。家屋倒壊や津波被害などで地域社会は一変。地震の傷は深く、多くの地区で祭り開催の見通しが立たない。元々高齢化が進んでいた石川県能登地方で、人が集まる重要な機会でもあった祭り文化の衰退は、人口流出を加速させる恐れがある。 ▽とても言えない 6月上旬、七尾市の石崎小学校では、8月の「石崎奉燈祭」の雰囲気を味わってもらおうと、太鼓の打ち手が笛の音に合わせてリズミカルに打ち鳴らした。最初静かに見ていた児童は、打ち手につられ、ばちさばきやかけ声
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【EU、中国EVに追加関税】双方の駆け引き当面続く 消費者と企業に不利益 ニッセイ基礎研究所常務理事 伊藤さゆり
欧州連合(EU)は中国製の電気自動車(EV)に最大37・6%の追加関税を5日から適用すると決めた。今回の措置は暫定的なもので、11月上旬までに最終的な結論を出す。それまでの間、追加関税そのものは徴収されず、双方は対話による問題解決の道を探ることになる。 8月1日から米国も中国製EVに100%の追加関税を課す。EUと米国は一見、中国製EVの排除で一致しているようだが、両者の措置は似て非なるものだ。 米国はEUのように中国製EVの輸入が急増しているわけではなく、追加関税を課す対象をEVに限定していない。バッテリーや同部品、重要鉱物な
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【空き地対策】住環境悪化、高まる危機感 国に先行、有効活用も
国土交通省が空き地の荒廃を防ぐため、法整備に乗り出す。放置すれば不法投棄や野生動物出没などで住環境の悪化を招くとして、自治体が危機感を強めているためだ。ただ空き家の対策に比べ出遅れた感は否めない。一部の自治体は国に先行し、有効利用するための方策を始めている。 ▽苦情 「高齢化で相続の機会が増え、管理が行き届かなくなる土地が増える恐れがある」。国交省幹部が打ち明けた。 国交省が把握する中に、郊外のニュータウンでのケースがある。住居が建てられないままになっている複数の空き地は夏場に雑草が生い茂り、住民
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【通園バス置き去り死】安全装置頼みの対策限界 意識向上、日常の備えを
静岡県牧之原市の認定こども園のバスに放置され、3歳女児が死亡した事件で、静岡地裁は前園長(74)ら2人を有罪と結論付けた。惨事をきっかけに、国は置き去り防止の安全装置設置を義務化。全国で導入が進むが、機械のみに頼り、事故を100%防ぐことは難しい。専門家は「子どもに携わる全ての人が平時から、意識を高め、安全管理を徹底することが重要だ」と指摘する。 ▽徹底 6月下旬、滋賀県野洲市の市立中主幼稚園に到着したバスから、園児約30人が降りた。補助員2人が残った子どもがいないか見回り、車外では年長児が年少児の手をつないで並び、保育士が乗車人数と食い違いがないか確認した。 同園では2022年3月、
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【EU、中国EVに追加関税】報復の連鎖に要警戒 対話による問題解決を
欧州連合(EU)は中国から輸入する電気自動車(EV)に5日から追加関税を課すと決めた。安価なEVが大量に流入し、EU域内の競争をゆがめているのに対応するためだ。米国も追随する。中国が対抗手段を取るのは必至で、欧米と中国の関係が一段と冷え込む恐れも拭えず、警戒を要する。 追加の関税率は最大37・6%で、税率はこれまでの10%に上乗せされ最大47・6%となった。EUは不当な政府補助金を受けた中国メーカーが低価格のEVを造り、EUに輸出していると判断しており、追加関税発動はやむを得ない面がある。 今回のEUの措置は暫定的なもので、11
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【東証最高値】背景に個人マネー流入も 新NISAや物価高で
東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価が共に史上最高値を更新した背景の一つには、1月からの新しい少額投資非課税制度(NISA)による個人投資家の資金流入がある。物価上昇が続く中、目減りする預貯金から資金を移す動きを追い風に、金融業界は個人マネーの呼び込みに知恵を絞る。 ▽相談増加 「新NISAを利用したいが、何から始めたらいいか分からない」。みずほ証券と楽天証券が出資して4月に開業した金融商品仲介業のMiRaIウェルス・パートナーズには、投資経験の少ない人からの相談が増えているという。 みずほ証
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【英総選挙】英有権者、EU離脱を後悔 欧州重視の労働党に期待
英国が2020年に欧州連合(EU)を離脱してから4年が経過した。与党、保守党は離脱を訴え、前回19年の総選挙で大勝したが、ふたを開ければ経済はしぼみ、移民減少で競争力は衰退。今や国民の半数以上が離脱を「失敗」と捉え、後悔している。有権者は保守党に失望し、欧州との関係を重視する最大野党の労働党に期待を寄せる。 ▽負け組 「英国の最盛期はEU離脱で終焉を迎えた。活気のない経済は欧州の負け組だ」。米ブルームバーグ通信は今年3月のコラムで英国が離脱以降、EU諸国から差をつけられていると分析した。 EU単一
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5千円札の顔、意外な縁 新・津田と2代前・新渡戸 近代教育確立へ共に奔走 紙幣刷新で功績に脚光
新旧5千円札の顔に意外な縁―。7月登場の新紙幣の津田梅子(1864~1929年)と、かつて描かれた新渡戸稲造(1862~1933年)は共に近代教育の礎を築こうと奔走、友人の間柄だった。さらに2人は小説家樋口一葉(1872~96年)と共通の知人もいた。それぞれの功績に再び光を当てる好機と、関係者は講演などに力を入れる。 「2人は友人だった。友人同士でお札の肖像になるなんてなかなかありませんよね」。今年1月、東京都小平市の津田塾大で梅子と新渡戸の交流をテーマにした講演会が開かれ、市民ら約150人が聞き入った。講師を務めたのは、新渡戸の出身地盛岡市で「新渡戸基金」を
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【現在地】美術家の浅井裕介さん 世界を想像する窓を描く
窓や壁にまで広がり、建物を侵食していくかのように見える動植物たち。マスキングテープや土など身近な素材を使った作品は見る人を包み込む。美術作家、浅井裕介さんが描くのはどこまでも続く「大きな世界の一部分」だ。「作品は外に広がる世界を想像してもらうための小さな窓です」 赤や黒、金色―。各地で採取された土で描くモチーフは動物にも植物にも見える。福井県あわら市の「金津創作の森美術館」で開催中の個展「星屑の子どもたち」でも、「けもの」と呼ぶキツネのような生き物を核に、周囲の環境に順応し太陽に向かって伸びる植物のように世界を広げていく。 幼い
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【シネマ】「Shirley」 スリリングに異世界へ
スティーブン・キングにも影響を与えたという米国の作家、シャーリイ・ジャクスン。彼女についての伝奇小説を映画化した「Shirley シャーリイ」には、一言では説明できない魅力がある。独特のスリルに身を委ねた観客は、いつのまにか思いも寄らない世界に入り込んでいる。 1948年、シャーリイ(エリザベス・モス)と大学教授の夫スタンリーが住む家を、若い夫婦が訪ねてくる。夫のフレッドがスタンリーの仕事を補佐する職を得たのだ。スタンリーの要望で2人は居候し、妻のローズは創作で神経をすり減らしたシャーリイの世話をすることになる。 シャーリイは、
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「自分は何者」そこまで考える必要ない?虐待、いじめ、リスカ傷痕も大切な一部 「死んではダメ」手差し伸べた恩人のため「もう一度働きたい」
「障害者虐待は反対! 雇い止めはやめて!」。大阪府池田市のダイハツ本社前に声が響く。訴えの主は、2024年2月までこの会社で嘱託職員として働いていたYさん(30)だ。うつ病などがあり、23年3月に障害者枠で採用された。しかしミスをするたび上司から「障害を言い訳にするな」となじられ、継続を望んでいた雇用は1年で終わった。 母からの虐待、学校でのいじめ・・・。戸籍上の性別は男性だが、性別への違和感も持ち続けてきた。これまでの人生で「自分は何者なのか」と悩み、「そこまで考える必要ないんちゃう?」という言葉に苦しんできた。復職を求める背景には、どん底にいたとき「死んで
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【新紙幣の偽造防止技術】3D肖像、世界初採用 偽札減少でも対策強化
20年ぶりに全面刷新された紙幣の流通が3日、始まった。新紙幣には、傾けると肖像の顔の向きが変わって回転したように見える3Dホログラム技術が世界で初めて採用された。足元では偽造紙幣の発見枚数は減少傾向にあるが、専門家は「偽造防止に注力すること自体に意味があり、通貨に対する信用を維持することにつながる」と話す。 ▽首振る渋沢 「渋沢栄一が首を振ってる!」。埼玉りそな銀行さいたま営業部の店舗に訪れた20代男子大学生は、新紙幣を手に声を弾ませた。朝7時半から銀行の前に並び、一番に新紙幣を両替した。「日本の偽造防止技術を感じることができて
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【KADOKAWAサイバー攻撃】暴露データ、SNSに拡散 ランサム攻撃に対応難しく
出版大手KADOKAWAを襲ったサイバー攻撃を巡り、ロシア系ハッカー犯罪集団が身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」で盗んだ大量のデータを暴露した。グループ従業員の個人情報や契約書だけでなく、学校法人「角川ドワンゴ学園」の生徒の個人情報も漏えいした可能性が高い。ハッカー集団は3日午後に犯行声明を削除したが、漏えい情報の一部は交流サイト(SNS)に拡散。KADOKAWAは難しい対応を迫られる。 2日未明、ロシア系ハッカー犯罪集団「BlackSuit(ブラックスーツ)」が匿名性の高いダークウェブに設けた闇サイトに変化があった。KADOKAWAの犯行声
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【規正法改正】「政治にカネ」手付かず 裏金15項目、使途に疑問も
派閥裏金事件を受けた政治資金規正法改正は「カネをかける政治」に手を付けないまま終わった。派閥からの還流資金の使い道は、自民党の聞き取り調査によれば、懇親費用、手土産代など15項目に上り、高額支出の実態が浮かぶ。岸田文雄首相は政治に必要なコストを強調するが、妥当性には疑問も呈される。 ▽パーティーで捻出 改正規正法が成立した6月19日、岸田文雄首相は党首討論で立憲民主党の泉健太代表に食ってかかった。 「政治にはコストがかかる。企業・団体献金、政治資金パーティー、政策活動費と全て禁止し、現実を見ない案
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【世界の街から】サインの意味
厳重な警備が敷かれた香港の法廷の被告人席。東大博士課程在学中に起訴された元立法会(議会)議員、区諾軒氏は手でバツのサインをつくり「それ以上の量刑の軽減措置は不要」とのメッセージを弁護人に送った。 立法会選挙に向けた予備選に絡み、民主派47人が香港国家安全維持法(国安法)違反で起訴された事件の公判。被告人として出廷した区氏は淡々とした表情で自身の情状酌量を求める弁護人の声に聞き入っていた。 サインを出したのは弁護人が裁判官から刑の軽減要求は50%で本当に良いのかと問われた場面。国安法の規定では、他の被告人の有罪を立証するための検察
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【旧優生保護法訴訟】違憲明確、国に反省促す 請求権自動消滅、容認せず
旧優生保護法を違憲とした3日の最高裁判決は、20年の経過で損害賠償請求権が消える「除斥期間」を適用しないと判断した。期間が経過さえすれば請求権は消滅するという従来の最高裁判例を変更。適用は容認できないとして被害者の全面救済に道を開いた。旧法の違憲性も明確に指摘し、国に反省を強く促した。 ▽厳格運用 2020年の改正法施行前の民法は、不法行為の時から20年の経過で損害賠償請求権が消滅すると規定。この規定について1989年に最高裁が、事情によっては進行の中断も可能な「時効」ではなく、除斥期間だと判断し、以降は厳格に適用されてきた。
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【旧優生保護法違憲】被害者救済へ巧みな判決 除斥期間、実質「時効」に 元最高裁判事 泉徳治
不妊手術に関する旧優生保護法の規定は、子をもうけるかどうかの意思決定をする自由を奪い、幸福追求権を保障する憲法13条に反することや、不合理な差別的取り扱いを禁じた憲法14条1項に違反することは、誰が見ても明らかだろう。 今回の不妊手術という不法行為を強いられた被害者が国に損害賠償を求めた訴訟の争点は、最高裁が1989年12月の判決で示した「除斥期間」の解釈をどうするかの1点だった。 旧民法724条は、不法行為の損害賠償請求権について「(被害者側が)損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行
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【年金財政検証】「100年安心」綱渡り 心もとない老後の暮らし
政府は、公的年金について5年に1度の「健康診断」に当たる財政検証の結果を発表した。給付水準は目標とする「現役収入の50%以上」をかろうじて上回った。ただモデル世帯の給付水準は現在若い人ほど低くなり、老後の暮らしは心もとない。出生率や経済成長の想定が甘いとも指摘され、政府が掲げる金看板「100年安心」は綱渡りとなる可能性をはらむ。 ▽公約 「将来にわたって50%を確保できる。今後100年間の持続可能性が改めて確認された」。林芳正官房長官は3日の記者会見で財政検証の評価を問われて、こう述べた。 100
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【旧優生保護法最高裁判決】後手の政府、全面補償急務 根深い差別払拭なるか
障害者らに不妊手術を強いた旧優生保護法を巡る訴訟で最高裁は3日、立法自体を違憲と指弾し、国の賠償責任を認めた。「戦後最大の人権侵害」に後手の対応を続けた政府に救済を迫る司法判断で、全面的な補償への検討が始まる。一刻も早い解決を望む被害者の切実な訴えにどう応えるか。社会に根深く残る差別払拭や、問題検証に向けた取り組みも急がれる。 ▽乱用 「国が悪いと裁判官が認めてくれた。障害者が当たり前に暮らせる社会へ一歩ずつ歩みたい」 判決後、衆院議員会館で開かれた報告集会。神戸市の鈴木由美さん(68)が、車いす
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【前米大統領公判】「法を超越」暴走懸念 トランプ氏、免責で勢い
米共和党のトランプ前大統領が公務に関する刑事責任の免責特権を連邦最高裁に認められ、勢いづいている。起訴された議会襲撃事件の初公判や、有罪となった不倫口止めに絡む事件の量刑言い渡しが先延ばしとなり、11月の大統領選に専念する環境が整った。このまま「法の超越」がまかり通れば、大統領の暴走を防げなくなるとの懸念が広がっている。 ▽お墨付き トランプ氏の弁護団の動きは早かった。「公務関連の証拠は、陪審に提示されるべきではなかった」。最高裁が1日、米史上初めて大統領の免責特権に関する判断を示すと、数時間後には不倫口止め事件を担当するニュー
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【年金財政検証】低年金者への対策急げ 給付削減期間一致が有効 ニッセイ基礎研究所上席研究員 中嶋邦夫
公的年金の将来見通しを示す「財政検証」の結果が5年ぶりに公表された。前回に比べ出生率の想定を低めに見積もったにもかかわらず、近年の堅調な経済成長を反映して良好な結果となった。しかし、政府の戦略通りに経済が成長しても基礎年金(国民年金)の目減りは避けられず、制度の見直しは必要だ。 現在の年金制度では、現役世代が負担する保険料を据え置く代わりに、年金財政が健全化するまで高齢者向け給付の実質的な削減が続く。「マクロ経済スライド」という仕組みである。 今回の財政検証結果によると、政府が指標としている将来の現役世代の手取り収入と比べた給付
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窒素取り込む小器官発見 肥料不要の農作物も? 「教科書に載る」と専門家
高知大と米カリフォルニア大サンタクルーズ校などの研究グループは、植物プランクトンの細胞内にすみ着き窒素を取り込むバクテリアが、プランクトンと一体化して細胞内小器官に変化していることを発見したと、米科学誌サイエンスに発表した。元々単独の生物だったものが細胞内小器官になった例にはミトコンドリアや葉緑体があるが、窒素を取り込めるものは初めて。 将来的に窒素肥料を使わずに育つ農作物の誕生につながる可能性がある。この分野に詳しい京都大の吉田天士教授(海洋微生物学)は、数億年単位の変化が生物の多様性につながっており、今回の発見も新たな進化の始まりかもしれないと指摘。「将来
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ウクライナが核攻撃されれば米国はどう報復するか 通常兵器で直接攻撃も、ロシアの演習で高まる緊張
ウクライナへの侵攻を続けるロシアの核兵器使用への懸念が再び、高まっている。5月には戦術核使用を想定した演習を実施、ウクライナを支援する欧米へのけん制を強めたが、米国はロシアの核使用に対し、どのような報復策を想定しているのだろうか。検証した。(共同通信=太田清) ▽反発 ロシア国防省は5月21日、侵攻の拠点となっている南部軍管区で演習の第1段階を開始したと発表した。 演習では核弾頭搭載可能な弾道ミサイル「イスカンデル」を運用する部隊が「特殊弾薬」を装備して移動する訓練
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【2024年英総選挙】日本企業、政策転換に翻弄 EU離脱、分かれる戦略
英国で2010年に始まった保守党政権は、欧州連合(EU)からの離脱という歴史的な政策転換を決め、進出する日本企業を翻弄した。英国を去る動きが出た半面、日産自動車は英国工場への大規模投資を決めるなど戦略は分かれる。4日の下院総選挙で政権を奪還する可能性が高まっている野党労働党は、事業環境の改善を約束し、景気浮揚を狙う。 ▽理想 「お役所仕事が多くなった」。ある日系企業の英国法人で働くサプライチェーン(供給網)の管理担当者は、EU離脱後に「通関手続きのための仕事量が20~25%増えた」と顔を曇らせた。
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【ふるさと納税】ポイント禁止に楽天反発 規制効果、疑問視する声も
自治体がふるさと納税を募る際、寄付した人に特典ポイントを付与する仲介サイトの利用を禁じる総務省の規制に、楽天グループが猛反発している。大手各社はポイントの原資は自社負担だと説明するが、総務省は一部が自治体の支払う手数料に含まれている可能性を指摘。制度の適正運用を目指す考えだが、識者からは規制の効果を疑問視する声も出ている。 ▽囲い込み 「コンセンサスを取らずポイント禁止というやり方に憤りを感じる」。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長はX(旧ツイッター)に投稿し、総務省を批判した。 総務省は6月、関
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【能登半島地震】寺社復旧「住民より後」 費用多額、避難先の役割も
多くの参拝者らが訪れていた能登半島の寺社などが元日、激震に襲われた。復旧には多額の費用負担がのしかかるが、氏子や門徒らとして資金面でも支えてきた住民が被災しており、関係者からは「寄付のお願いなんて言えない」「再建は住民より後」との声が漏れる。伝統行事の継承などで地域と歩んできた宗教施設。多くは災害時に住民の命を守る避難先の役割も果たしているとして、識者は公的な支援の必要性を強調する。 ▽再び被災 石川県珠洲市の日蓮宗本住寺は、本堂が崩壊した。住職大句哲正さん(70)の妻が、屋内から自力ではい出した。最大震度6強を観測した昨年5月
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【新紙幣きょう登場】便乗犯罪に警戒強める 「旧札使えない」デマも
20年ぶりに全面刷新された新紙幣の流通が3日、始まる。銀行などを通じていよいよ全国の家庭にもお目見えする。楽しみな一方、気を付けたいのが「改刷」にかこつけた犯罪やデマだ。過去にもお札が切り替わるタイミングでは犯罪が多発しており、関係機関は警戒を強めている。 ▽旧札も有効 財務省は、新紙幣の発行に便乗し「旧紙幣が使えなくなる」とうそを言って現金をだまし取る詐欺が増えると警戒している。交流サイト(SNS)上で誤った情報が広がったこともあり「これまでの紙幣も引き続き使用できる」と注意を呼びかけている。
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【自民総裁選】地方票、相次ぐ比重拡大論 「ポスト岸田」反発も
9月の自民党総裁選で党員・党友票を合わせた「地方票」の比重を高めるよう要求する言動が党内で相次いでいる。派閥裏金事件による党勢低迷への危機感が全国に拡大する中、次期衆院選を見据えた「選挙の顔」選びに、地方の声を強く反映させようとの思惑だ。ただ一部の「ポスト岸田」候補は国会議員票の獲得を重視しているとみられ、反発も予想される。 ▽自動的に割り振り 「総裁選で地方票の比重を高めることが必要だ」。6月10日、盛岡市。岩手県連の臼沢勉幹事長は、政治刷新車座対話のため訪れた党本部の小渕優子選対委員長に、総裁選のルール見直しを求める要望書を
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予報士とAI、目指す共存 気象予測、人の知見が補完 相乗効果で精度向上 将来は個別ニーズ対応も
気象庁や民間気象会社の予報士らが天気予報に人工知能(AI)を積極的に利用し、精度を向上させている。AIにさまざまな職業が奪われるという見方もある中、両者が目指すのは「共存」。膨大なデータを処理できるAIを、気象学の知見が豊富な人間が使うことで相乗効果が期待される。いずれは地域別だけではなく「一人一人のニーズに応えた天気予報」が実現される未来を目指す。 ▽改善 北側の冷たい空気と南側の暖かい空気を分ける局地的な前線。その位置によって気温は大きく変わる。2021年12月下旬の東京都練馬区。気象庁の従来の方法では、前線の位置を北寄りに
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カメムシ大量発生、専用殺虫剤売り切れでも諦めないで 習性踏まえて家庭で対策【経済トレンド】
触ってしまうと強烈な臭いを出すカメムシが2024年は大量発生し、一般家庭でも目にする機会が増えている。殺虫剤で駆除するのが確実だが、カメムシ専用は状況によって品切れの場合もある。メーカー側は「他の害虫用でもカメムシに効果のある商品があり、そちらは入手しやすい」と助言。習性を踏まえた対策が大切で粘着テープでつまむ方法なども有効だ。(共同通信=出井隆裕記者) ▽諦めないで 住友化学園芸(東京)は2024年に入り、エアゾール式の殺虫剤「カメムシアタッカーEX」を発売した。
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麺類に生卵が人気、濃厚でまろやかに 話題のTKM冷凍やチルドで【経済トレンド】
麺類に生卵をかけて食べると、濃厚でまろやかな味わいが楽しめる。卵かけご飯(TKG)に続き、まぜ麺に生卵をかけた「卵かけ麺(TKM)」が交流サイト(SNS)で話題になっている。家庭で手軽に味わえる冷凍やチルド商品が登場。うどんにかけて生卵をトッピングすると完成する具入りの麺つゆも好評だ。(共同通信=出井隆裕記者) 日清食品冷凍は「冷凍 日清まぜ麺亭 たまごかけまぜそば」を3月に発売した。魚粉とカキのうまみをきかせた「だししょうゆ」のたれに、ニンニクやショウガを入れた。具材として焼き豚などが付く。「TKGの味わいをまぜ麺で再現」と担
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外国人旅行者への二重価格は正当化できるか 関西大学の佐藤方宣さん【経済トレンド】
兵庫県姫路市の清元秀泰(きよもと・ひでやす)市長が、修繕費負担を理由に、姫路城の入場料金を外国人のみ4倍にするという考えを示し論議を呼んでいる。こうした二重価格の設定は、すでに飲食店でも導入されているケースがあるようだ。 懸念や批判も見られる問題だが、まずは二重価格を正当化する論理があるかどうかから考えてみたい。飲食店と文化財施設のケースに分けて考えよう。 飲食店では、外国語でのメニュー作成や接客などの追加コストを理由に挙げる声があるようだ。この場合、外国籍か否かで
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植物性代替肉の開発、老舗豆腐のノウハウ活用 大豆の青臭さ解消【経済トレンド】
トーフミート(山口県宇部市)が製造販売する植物性代替肉「TOFU MEAT」シリーズが好評だ。専用豆腐で作ることで特有の臭みをなくした。開発した村上英雄(むらかみ・ひでお)さんは「老舗の豆腐作りを基に新商品を生み出しました」と話す。販売価格は250グラム入りで1404円(価格は2024年6月時点)。(共同通信=増井杏菜記者) 売上高は2023年1月と2024年1月の単月比較で約2・9倍と急拡大している。8年前、創業60年超の豆腐製造会社から事業を引き継いだ。豆腐は地元で広く愛されており「昭和一桁生まれである社長の豆腐への情熱にひ
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空き家の放置、税金の負担が重くなるって本当? 特例の対象外になる可能性も【経済トレンド】
Q 空き家を放置していると税金の負担が重くなると聞きました。 A 土地を所有している人には毎年、固定資産税が課せられます。税額は課税標準額(固定資産税評価額)に税率を掛けたものです。住宅用地に関しては特例があり、税負担が軽減されます。 この特例は空き家の立っている敷地にも適用されますが「特定空き家」は対象外となり、固定資産税の負担が重くなります。 特定空き家とは、(1)そのまま放置すれば倒壊などの危険がある
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「本格焼酎」広めた老舗は創業100年超 「黒霧島」が看板【経済トレンド】
芋焼酎「黒霧島」で知られる本格焼酎メーカー最大手。1916年宮崎県都城市で江夏吉助(えなつ・きちすけ)が「川東江夏商店」として焼酎を造ったのが始まり。(共同通信・増井杏菜記者) 1949年、現社名に変更。長男順吉(じゅんきち)が社長に。その後、霧島連山の地層で磨かれた地下水を発掘。芋焼酎の仕込みに使い、原料のサツマイモも厳選。芋蒸し機など現在の生産設備の基本を構築した。 1953年に蒸留法による焼酎の分類「甲類」「乙類」が定められた。商品は乙類焼酎と呼ばれるようにな
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アイドル歌謡グループ・華MEN組(かめんぐみ) お風呂掃除で一曲歌わせて【ワーオ!】
「お風呂掃除しますから一曲歌わせてください!」。そんな風変わりな企画をひっさげ、歌謡界に新星が誕生した。5月にメジャーデビューした6人組「華MEN組(かめんぐみ)」は、平均年齢29歳の“アイドル歌謡グループ”だ。 5月末、埼玉県川越市の温浴施設。明るい髪色やすらりとした長身の6人が、きらびやかな衣装で、手を胸元に当て恭しくあいさつした。名刺代わりの1曲「陽気なピエロ 華MEN組テーマ」では、「夢見る頃を過ぎたなんてまだ言わないで」としっとり歌い上げたかと思うと「カメカメカメカメ華MEN組!」と軽快にダンス。駆け付けたファンから「かわいい~」と歓声が上がった。 温浴
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水俣病マイク遮断問題で発言を封じられた82歳男性が伝えたかった妻の記憶と、国に願うこと 68年たっても全容解明されぬ「公害の原点」、環境省の不手際の背景に浮かぶ、患者認定の高いハードル
5月8日、熊本県水俣市。「深くおわび申し上げます。本当に申し訳ありませんでした」。頭を下げる伊藤信太郎環境大臣の姿があった。向かう相手は、水俣病の被害者団体の一つ「水俣病患者連合」の松崎重光副会長(82)。その1週間前、水俣市で開かれた環境省との懇談で、発言を途中で遮られた「マイク遮断問題」の当事者だ。 懇談の場で松崎さんは、被害を訴えながらも患者認定されないまま、約1年前に79歳で亡くなった妻悦子さんとの思い出を語っていた。環境相に直接、思いの丈をぶつけられる機会は、ほとんどない。無念のまま離別した妻の最期を振り返っていたその時、不意にマイクが切られた。「1
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田んぼの真ん中の「ワケあり」物件、民泊施設に転換して若者呼ぶ 栃木県、5年前に移住した夫婦の奮闘【地域再生大賞・受賞団体の今】
青々とした稲と湿った風が初夏の訪れを感じさせる。栃木県小山市の広大な田園の真ん中に、ぽつんと立つ一軒家に次々と若者が訪れる。元農家の空き家という「ワケあり」物件をリフォームし、民泊施設として軌道に乗せたのは5年前に移住した夫婦だ。地域再生の成功事例として注目されている。(共同通信=藤田康文) ▽恵まれていない立地 東京から高速道路を通っても1時間半程度。JR小山駅から最短ルートで6キロ以上ある。有名な観光地が近くにあるわけではない。決して恵まれているわけではない立地に、一棟貸しの民泊施設「まなかのいえ」はある。
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追いかけてくる罪責性 遠くの戦争を思って 「稜線の思考(1)」哲学者・鷲田清一
遠くで戦争が起こっている。それに対して何もできない無力さにうちひしがれる人がいる。当事者と非当事者の間には、確かに越えがたい溝がある。けどそこに覚えるうしろめたさというのは、人間であるということの限界じゃないですか。 つまりね、われわれだけじゃなくてウクライナでも、避難できた人は取り残された人に、都市部の兵士は最前線の兵士に、生き残った人は亡くなった人に、みんなうしろめたさがある。そこから逃れられるのは死者だけでしょ。生きている限り、みながみずからの限界に苦しんでいる。
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【ウクライナ穀物】市場価格低迷、農家を直撃 輸送コスト、人手不足も
ロシアの侵攻を受けるウクライナで国産穀物の市場価格低迷が農家を直撃している。穀物輸出量は侵攻以前の水準に回復しつつあり、地元企業は安全性の高い新たな輸出経路に投資するが、輸送コストは高い。長引く混乱は人手不足も招き、農家の廃業が懸念される。 ▽バッドディール 「今はコリアンダーとライ麦を作るようにしている。よく売れるから」。南部ミコライウの穀類卸売「ザラトイ・コーラス」の経営者ナディア・イワノワさんは、ため息交じりに話した。 市内を流れる川の港は、黒海につながる河口付近に機雷が多く機能停止。小麦や
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【電気代補助再開】政治的に打ち切り難しく 内閣支持率低迷が底流に 第一生命経済研究所首席エコノミスト 熊野英生
政府は電気・ガス料金への補助を8~10月にかけて再び実施する方針を決めた。9月の自民党総裁選を意識しているのは間違いない。秋には経済対策を策定し、年金生活者や低所得世帯を対象に給付金を支給する一方で、ガソリン価格を抑える補助金も年内いっぱい継続する。一連の施策に先立って政府は、6月から所得・住民税の定額減税を実施している。 電気代への補助は本来5月使用分を最後に終えるはずだった。それがほとんど間を置かず、8月使用分から再開する。政府は先に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で、財政の健全度を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化
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【米大統領選】バイデン氏擁護か交代か 民主、討論不振の余波続く
米大統領選に向けた6月27日の討論会でバイデン大統領(81)が振るわず、足元の民主党で余波が収まらない。高齢不安が再燃した現職の擁護を貫くか、別の候補を立てるべきか。11月5日の投票日が約4カ月後に迫る中、共和党のトランプ前大統領(78)の復権阻止を最重要課題とする民主党は苦悩が続く。 ▽10ポイント増 「重要なのは討論会での出来ではなく、大統領としての仕事ぶりだ」。民主党の重鎮ペロシ元下院議長は6月30日、CNNテレビの番組で、バイデン氏が誠実に大統領を務めてきたと訴えた。 オバマ元大統領やクリ
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【辺野古のサンゴ移植】免罪符に過ぎない 中止し、幅広い議論を 東京経済大教授 大久保奈弥
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先となる名護市辺野古沖の埋め立てを巡り防衛省沖縄防衛局は、貴重なサンゴなどが生息する大浦湾側でサンゴ類移植のための作業を始めた。 だが、この地域でこれまでに国が行ったサンゴの移植では、多くのサンゴが死滅したことが報告されている。成功する保証のないサンゴを移植のために約8万4千群体も採取することは保全どころかこの地域の生態系に悪影響すら与える。基地建設工事による環境破壊の免罪符でしかない移植は中断し、これまでの移植がはらむ問題点の検証や研究をオープンな形で実施することが先決だ。 過去に辺野古
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【政府が電気代補助再開】問題多く、再考求める 低所得者層に対象絞れ
政府は物価高対策として再開する電気・ガス代の負担軽減策の詳細を決めたが、筋の悪い政策と言わざるを得ない。唐突であり、酷暑対応とうたいながら7月使用分に間に合わないなど付け焼き刃の感が否めないからだ。支持率低迷に悩む岸田政権の浮揚に向けたなりふり構わぬ措置と受け取られても仕方がない。軽減策の再考を求める。 先月、岸田文雄首相は経済財政運営の指針「骨太方針」を決定した直後の記者会見で、5月使用分を最後に終えたばかりの電気・ガス代の補助を8月使用分から再開する方針を突如表明した。 10月使用分まで3カ月の時限措置で、電気・ガス代の負担
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【中国改正反スパイ法施行1年】スマホ検査に不安広がる 摘発強化へ新規定
中国で改正反スパイ法施行から1年となった1日、スパイ摘発強化に向け個人のスマートフォンやパソコンを検査する当局の権限を明確化する新規定が施行された。国家安全を重視する習近平指導部の方針に基づき当局が外国人監視を強める中、新規定が恣意的に運用されるのではないかと不安が広がっている。 ▽危機感 「中国ではなるべくスマホで通信しないようにする」。1日、北京首都国際空港に降り立った英国人女性教師(33)は中国旅行のタイミングで新規定が施行され「気分が悪い」と顔をしかめた。仕事で北京を訪れた40代の日本人男性は「怪しまれない行動を心がける
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【仏下院総選挙】マクロン氏「賭け」に敗北 極右、悪魔的イメージ払拭
フランス国民議会(下院)総選挙は同国で初めて極右政党、国民連合(RN)が第1勢力になる勢いだ。欧州連合(EU)欧州議会選でRNに大敗したことを受け、いちかばちかで下院を解散したマクロン大統領の「危険な賭け」は敗北が濃厚となった。RNは長年の「悪魔」的イメージを払拭、2027年の次期大統領選で勝利を狙う。 ▽人間爆弾 「今回の解散は戦後の第5共和制の歴史で最も浅はかな行為の一つだ」。フランスの政治学者バンサン・マルティニー氏が地元メディアに語った。「致命的(なミス)だ。マクロン氏は全てを失いかねない」
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オレンジ飲料、食卓遠のく 不作に円安…販売休止続々
家庭で長年親しまれてきたオレンジジュースの販売休止が相次ぎ、食卓から遠い存在となる可能性が出ている。オレンジの主要産地で世界的な不作が続き、果汁の価格が高騰。記録的円安を背景に日本企業が海外で買い負ける展開も目立つ。 オレンジジュースの原材料となる果汁は国産比率が低く、輸入割合が需要の8割を超えている。飲料メーカーや商社などでつくる「日本果汁協会」(東京)によると、オレンジ果汁1リットル当たりの輸入価格は2021年の267円から、23年には2倍に近い491円にまで急騰した。 価格高騰の主因は、天候不順や病害による供給不足だ。日本
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【集団的自衛権10年】自衛隊が米戦略補完 指揮統制巡り懸念も
集団的自衛権の行使を容認した憲法解釈変更後、自衛隊の活動は拡大の一途をたどってきた。急速に軍備を増強する中国に米軍だけで対処するのは難しくなっており、米国の世界戦略の一部を自衛隊が補完する側面もある。在日米軍との指揮・統制枠組み見直しも進むが、有事には圧倒的な情報を持つ米軍の指揮に従わざるを得なくなるとの懸念も根強い。 「安全保障環境が厳しさを増す中で国民の命と暮らしを守るため、幅広い活動を平素から行うことが必要だ」。木原稔防衛相は6月28日の記者会見で、自衛隊の任務拡大は不可欠だと強調した。 2014年に憲法解釈を変更した閣議
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【能登半島地震】復旧徐々に、孤立防止課題 政府躍起、冷ややか見方も
発生から1日で半年となった能登半島地震の被災地・石川県では、仮設住宅への入居が徐々に進んでいる。生活再建への一歩を踏み出す被災者がいる一方で、孤立防止など新たな課題が見えてきた。インフラ復旧の遅れは顕著で、岸田文雄首相は能登での政府拠点設置など、最優先課題と位置付ける早期復興に躍起だが、政権内からは冷ややかな見方も。専門家は「被災者に寄り添った対応の充実を」と求める。 ▽心のゆとり 能登半島から離れた石川県野々市市には今、多くの被災者が身を寄せる。輪島市出身の沢田真弓さん(40)は「離れた場所で慣れない生活を送る人を支えたい」と
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【H3ロケット】低価格、信頼性向上が課題 実用化へ大きく前進
国産新型ロケット「H3」が3号機で初めて大型衛星を載せて打ち上げに成功し、実用化に向けて大きく前進した。今後は実績を重ねながら改良を続け、需要の高まる衛星打ち上げビジネスへの本格参入が目標になる。だが突出した実力を持つ米国だけでなく、中国や欧州なども存在感を増し、日本が競争力を得るには低価格化や信頼性向上など課題も多い。 ▽一歩 「日本の宇宙へのアクセスと国際競争力の確保に向けた大きな一歩だ」。1日に鹿児島県の種子島宇宙センターで記者会見した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川宏理事長は強調した。
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【日銀短観】潤う輸出企業、苦しむ個人 物価高の負担重く
6月の日銀短観は、大企業を中心に企業の景況感が足踏み状態ながら引き続き高い水準にあることを示した。一方、1~3月期の国内総生産(GDP)は臨時改定でさらに悪化。浮かんでくるのは、歴史的な円安で輸出企業などが潤う一方、消費者は物価高に苦しむ構図だ。 ▽節約志向 過去に国内最高気温を記録し「日本で一番暑い街」として知られる埼玉県熊谷市。6月下旬に市内の百貨店を訪れると、入り口にある高さ4メートルの「大温度計」は真夏日に当たる30・4度を示していた。 冷房の効いた店内には休憩用スペースがあり、買い物客が
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江戸時代から続く瓦の生産技術、オカリナに 淡路島でプロジェクト進行、数世紀続く文化へ
兵庫県の淡路島で江戸時代から続く瓦の生産技術を生かしたオカリナ制作プロジェクトが進んでいる。島の瓦はいぶし銀のような光沢が特徴。愛知、島根両県産と並び「日本三大瓦」と称される。主宰する南あわじ市の友地裕(ともち・ひろし)さん(42)は「瓦のように数百年先まで残る文化に育てたい」と夢を描く。(共同通信=伊藤美優) 淡路瓦も友地さんの作る「吟オカリナ」も、島で採れた良質な土を原料とし焼き上げて完成させる。吟オカリナは軽量で丸洗いできるほか、プロジェクトの仲間が手がけるオカリナは初心者用に穴の数を減らすなどユニークさが際立つ。価格帯は5千円台から4万円超まで。オンラ
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【記者書評】坂口恭平原作、道草晴子漫画「生きのびるための事務」 好きなことで生きるには
好きなことをして生きるには事務が大切。そう説く、漫画仕立てのいわば自己啓発書だ。ホームレスの家を撮影した写真集「0円ハウス」や、携帯電話の番号を公開して死にたい人の相談に答える「いのっちの電話」など、破天荒な活動で知られる原作者に、こんなにも堅実な一面があったとは。何かを成し遂げたい人に勇気をくれる一冊だ。 主人公は20代当時の坂口恭平。大学で建築を学んだ後、文章と絵と音楽を志して無職で暮らす。やりたいことのイメージはあっても具体化ができない彼に、事務員の「ジム」が丁寧に事務のやり方を教えていく。 無精ひげの坂口と、目がまん丸の
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生活支える「共同売店」 住民がオーナー、沖縄 地域のよりどころにも
近くに商店がなく、買い物が困難な地域が問題となる中、沖縄で100年以上続く独自の商店形態「共同売店」が注目を集めている。地域住民たちが共同でオーナーとなって経営する商店で、かつては沖縄や鹿児島の離島に約200店あったという。現在は60店ほどが人々の生活を支える。 最初の共同売店は1906年、沖縄本島北端に近い沖縄県国頭村の奥集落に誕生した。那覇市から車で約2時間半。緑に囲まれた人口100人ほどの集落の中心部に、その「奥共同店」はある。 平屋の店舗の棚には食料品や日用品が並び、来客がゆんたく(おしゃべり)する喫茶スペースも。郵便局
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知名度勝負の選挙、「キャラ立ち」の東京都知事生む? 注目度の高さ、乱立の原因に。選管も想定外の56人立候補
首都のかじ取り役を決める東京都知事選は論戦のまっただ中。過去最多の56人が立候補したが、実は以前から候補は乱立気味だった。最近は20人以上の立候補が続いている。 注目度が高い選挙では、知名度が勝敗を分けることが少なくない。これまでにあった都知事選は21回で、知事の座に就いたのは9人。振り返ると「キャラ立ち」した人が多い。現職はキャスター出身の小池百合子氏。他の面々も作家やタレント出身とバラエティに富む。 投開票日はもうすぐ。知事のキャラクターや選挙の歴史をひもとけば、選挙の行方が見えてくるかも。(共同通信=東京都知事選取材チーム
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「スーパーボランティア」が見た能登半島の今 地震発生から半年、受け入れたくても受け入れられない被災地の事情とは
能登半島地震発生翌日の1月2日夕方、ミニバンで愛知県小牧市の自宅を出た。現地を通る際、緊急車両の邪魔にならない時間帯を狙った。渋滞にも遭遇せず、日付が変わるころには石川県珠洲市に入った。車には水や食料、工具。道中は倒れた家や土砂崩れの箇所を見つけると、道路の端に寄せた。垂れ下がった電線にはタオルを結んだ。後続の車両が通りやすくするための工夫だ。 自ら宿泊拠点を構え、重機や特殊車両を使って活動する「技術系ボランティア」の藤野龍夫さん(72)。東日本大震災を皮切りに、数え切れないほどの災害現場に駆け付けてきた「スーパーボランティア」だ。能登でも休みなく被災地の依頼
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【香港国安法4年】抗議消滅、きしむ法の支配 経済まい進の思惑に狂い
香港での2019年の反政府デモを受け導入された香港国家安全維持法(国安法)は、30日で施行から4年。国安法によって民主派はほぼ壊滅状態に追い込まれ、抗議活動は消えた。国際金融都市としての地位を下支えし、香港が誇った「法の支配」にきしみが生じ、経済回復にまい進したい香港政府の思惑に狂いが出ている。 ▽全体主義 「香港は全体主義になりつつあり、法の支配は大きく損なわれた」。6月上旬に香港終審法院(最高裁)の非常任判事の辞任を表明したサンプション元英最高裁判事は英紙への寄稿で、国安法が司法に与えた影響への不満をあらわにした。
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【都知事選】選挙戦術の違い鮮明 組織票固め、街頭中心
東京都知事選(7月7日投開票)の選挙戦は折り返しを過ぎ、各候補者の戦術には違いが鮮明に出ている。現職の小池百合子氏(71)は公務をこなしつつ、合間に業界団体を回り組織票固めを進める。一方、前参院議員の蓮舫氏(56)らは連日、街頭演説を開き、支持拡大を図っている。 ▽二刀流 小池氏は「公務と選挙の二刀流」と宣言。告示後に目立つのが知事としての現場視察の多さだ。ダムや学校給食センター、市立小学校、都立病院など10カ所以上に上る。衆院東京15区補欠選挙の妨害事件などの影響で、大規模な警備が必要な街頭演説は控え気味。業界団体の会合に出席
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【旭川いじめ再調査】死から3年、一転認定 相次ぐ迷走、検証不可欠
北海道旭川市でいじめを受けた女子中学生が凍死した問題は再調査の末、発覚から3年超を経て、当初「不明」とされたいじめと自殺の因果関係が認定された。いじめを巡って当初の調査結果が遺族の理解を得られずに迷走する事案は、全国で後を絶たない。なぜ1回の調査で結論が得られないのか。有識者からは当初調査の問題点を検証すべきだとの声が上がる。 ▽自信 「今後の再調査のモデルとなるようなものを目指した」。旭川市が設けた再調査委員会の尾木直樹委員長は30日、記者会見で手応えを口にした。中でも再調査委が自信を示したのは、交流サイト(SNS)の投稿内容
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【能登半島地震から半年】生活再建、手続きで足踏み 「集約化」に地元警戒
能登半島地震から半年となる石川県の被災地では、倒壊した建物が方々に残るなど、元日と変わらない光景が広がる。解体数は少しずつ増えているが、手続き段階で足踏みしている住民も。解体の遅れは生活再建の遅れに直結し、人口流出にもつながりかねない。国が提唱する「集約的なまちづくり」の議論に、地元は警戒を強めている。 ▽前向けず 6月23日、弁護士や建築士らが石川県能登町で開いた被災者向け相談会では、家屋解体の相談が多数寄せられた。能登町の石垣サナエさん(76)は半壊となった実家の解体手続きを相談。相続人全員の同意が必要と聞くと「解体したくて
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「食」で支える日本外交 公邸料理人、なり手不足も 重責への不安、円安背景に
大使館や総領事館など在外公館での会食を担う公邸料理人。現地文化への理解と、食を通じて日本の魅力を発信する表現力が求められる。「食の外交官」とも呼ばれ、世界各地で日本の国際関係を支えている。ただ重責への不安から敬遠したり、記録的な円安を背景に給与面で折り合いが付かなかったりと、なり手不足が深刻化している。 調理器具がずらりと並んだ厨房の中央に立ち、堀郁雄さん(53)は翌日の夕食会に向けて大根の皮をむき始めた。 日本の外交で重要拠点となる在外公館は約230カ所に上る。その一つ、在中国日本大使館が堀さんの職場だ。金杉憲治駐中国大使の昨
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消えゆく日本の中古電車 インドネシア首都通勤支え 部品調達難、国産化狙う
ヤシの木が茂るビル街を走り、常夏のインドネシア・ジャカルタ首都圏の通勤を20年以上支えてきた日本の中古電車。その光景は現地の人も引きつけてきたが、劣化した部品の調達が困難となり、車両は姿を消し始めている。インドネシアは中古輸入をやめ、徐々に国産の新型車両に切り替えていく方針だ。 インドネシアで現役として最古参となった東急電鉄8000系の8両は、日本で1970~82年に製造された。2005~08年にインドネシアに渡り、ジャカルタと近郊を結ぶボゴール線を走ってきたが2度目の“引退”を静かに迎えることになった。 運転席近くのガラスには「乗務員室」とかすれた日本語の表記。
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マトリのS(スパイ)となった大物密売人の末路とは 実名インタビュー「命がけで協力したのに裏切られた」
「S(スパイ)になってくれないか?」。麻薬取締官(マトリ)からそう誘われ、密売グループの捜査に協力した末に、薬物所持で警察に逮捕された大物密売人の男がいる。約6年半、名古屋刑務所で服役していたが昨年末、仮出所した。 男は法廷で、Sとして違法薬物の取引を通じ捜査協力をしていた状況について説明したが、担当の取締官は「男が違法な取引に関わっていたとは聞いていない」と突き放した。男は仮出所後の今も、「危険を冒して命がけで協力してきたのに、裏切られた。トカゲのしっぽ切りだ」と憤りを隠さない。今回、実名でインタビューに応じ、知られざるSの実態と、身を滅ぼすまでの一部始終を
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【田崎健太さん】25年前のサッカークラブ“消滅”の裏側に何が… 知られざる証言で浮き彫りになる「永遠の課題」
横浜フリューゲルスは、サッカーJリーグ発足時の10チーム「オリジナル10」の一角を占める名門だった。だがスポンサーである全日空の経営悪化などを受け、1999年に横浜マリノスと合併して“消滅”する。その裏側をノンフィクション作家の田崎健太さんが著書「横浜フリューゲルスはなぜ消滅しなければならなかったのか」(カンゼン)で追いかけた。これまで表に出なかった関係者の貴重な証言も多く引き出し、「スポーツクラブは誰のものか」といった現在に続く課題を浮き彫りにした。(共同通信=川元康彦) ▽美談扱いに違和感
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【能登半島地震半年】犠牲者の検案、信頼が重要 大災害に教訓を生かせ
多大な犠牲者と被害を出した能登半島地震から半年。遺体の検案にあたった、長崎大教授の池松和哉さんに聞いた。 能登半島地震では約300人もの人命が失われた。私は日本法医学会の「災害時死体検案支援対策本部」の一員として、警察庁と連携して会員の応援派遣の人選を担当した。現場に出た医師の会員には地元警察と共同し、死因、死亡時刻の推定などを行う死体検案を担ってもらった。道路が寸断されて移動がままならず、活動は東日本大震災以上に厳しかった。 痛感したのは情報収集、そして警察などと
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【能登半島地震半年】復興で持続可能なまちに 人口維持へ「集住」も
多大な犠牲者と被害を出した能登半島地震から半年。復興支援の在り方について、金沢大准教授の青木賢人さんに聞いた。 被災地の高校生などと能登の復興について話す機会が増えてきた。そのときに議論しているのが集まって住むことの重要性だ。 財務省は「将来の需要減少や維持管理コストも念頭に」と、コスト面から集約的なまちづくりやインフラ整備を求めているが、私は別の観点から訴えている。 能登半島地震が発生しなくても20年
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【能登半島地震半年】安全な広域避難へ備えを 災害関連死防止に必要
多大な犠牲者と被害を出した能登半島地震から半年。人命救助や復興支援の在り方について、同志社大教授の立木茂雄さんが論じた。 能登半島地震が起きた後に亡くなり、遺族が石川県内の市町に対して災害関連死の認定を申請した人が200人を超えている。6月28日現在、52人が正式認定され、18人の認定も決まっている。 避難生活や仮設住宅での暮らしが長期化することで体調の悪化が懸念される。亡くなる方を増やさないためにも、日常の生活に一刻も早く戻れるよう全力を挙げなければならない。
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台頭する極右と高まる移民・難民排斥の機運、欧州はどこに向かうのか 専門家の見方は~青山学院大の羽場久美子名誉教授
6月に投開票された欧州連合(EU)欧州議会選の結果、EUの政策に懐疑的な極右や右派の政党が議席数を増やした。その背景にあるのが、ヨーロッパ全体で高まる移民・難民排斥の機運だ。ヨーロッパで今何が起きているのか、そしてどこに向かうのか―。欧州国際政治の専門家である青山学院大の羽場久美子名誉教授に、現状と今後の展望を聞いた。(共同通信=立田成美) ―これまでのヨーロッパの移民・難民への対応は。 2015~16年、内戦や地域紛争の影響でシリアなどから100万人以上の難民がヨーロッパに押し寄せた。当時、ヨー
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アイドルも「休んでもいい」。心身不調を経験、元アンジュルム・和田彩花さんが訴える意識改革 「次のジャニー氏」出さず、芸能界を発展させるには?
ジャニーズ事務所(当時)を創業したジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害が社会問題化して、1年が過ぎた。旧事務所からアイドルらを引き継いだ新会社が本格始動したが、スターを夢見る子どもたちをさまざまな形で追い込みかねないアイドル業界の土壌を変える機運は高まっていない。国連人権理事会の作業部会は、アイドル産業では若いタレントがプロデューサーの要求に従わざるを得ない契約を強いられているなどと指摘。こうした環境が加害者側を罰しない風潮を生み出し「性暴力やハラスメントを助長している」としている。 人気グループ「アンジュルム」元メンバーの和田彩花さん(29)は、「
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「どせばいい?」と死を語り合う 人生の最期を輝かせるために【生き抜く】「ACP」
「やっぱり、これじゃなくてこっちかな」。テーブルを囲む4人の前に複数のカード。治療やみとり、葬儀の希望など、全てに終末期や死に関わる言葉が記されている。 札を引いたり手持ちの札を戻したりしているのは、青森県内で働く看護師約80人。研修の一環で、「どうしたらいい?」を津軽弁のタイトルにした「どせばいい?カード」に取り組んでいた。話題にしにくい「死」を気軽に語り合うゲームだ。 「迷ってください。黙々と、はだめですよ。迷ったときの合言葉は『どせばいい?』です」。にこやかに声をかけるのは高橋進一(65)。青森市の特別養護老人ホーム「三思
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【米大統領選討論会】「老人と詐欺師」の対決 不安残したバイデン氏 米政治アナリスト ブルース・ストークス氏
米大統領選の討論会は、特定の問題に対する立場より、候補者の性格や適性を明らかにするケースが多い。民主党のバイデン大統領(81)と共和党のトランプ前大統領(78)による今回の対決は「老人」と「詐欺師」の戦いだった。 バイデン氏が2期目も体力的に問題ないと信じる米国人は7人に1人(15%)しかいない。今回の討論会でのしわがれ声や、時折言いよどんだことは、高齢不安を強める結果となった。 一方、倫理的に見てトランプ氏が大統領にふさわしいと考える人も4人に1人(26%)どまり
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【鹿児島県警守秘義務違反】公益通報なら起訴は不当だ 報道側捜索、判例無視か
鹿児島県警の本田尚志前生活安全部長が守秘義務に反し、捜査資料を札幌市のライターに送ったとして国家公務員法違反の疑いで逮捕、起訴された事件には、二つの大きな問題がある。 一つは、野川明輝本部長が警察官による盗撮などを隠蔽しようとしていると伝えるための「公益通報」だったのではないかという問題だ。 公益通報者保護法が定める公益通報は、公務員を含む労働者や退職後1年以内の元労働者などが勤務先、元勤務先による一定の法令違反行為を通知することをいう。通報には、自らが利益を得るな
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「少年院ワイン」地域貢献 農業と更生連携、各地でも
約120年の歴史を持つワイン醸造所と、茨城県牛久市の少年院「茨城農芸学院」のコラボで誕生したワインが好評を博している。伝統を紡いでいきたい醸造所や市と、農業を通じた地域貢献を更生に役立てたい施設側の思惑が合致した。法務省によると、農と更生の連携は各地で進み、一定の効果も上がっている。 ▽伝統と熱意 知的能力に制約がある少年ら約90人が入る茨城農芸学院。広大な敷地の一角に並ぶビニールハウスでは、ブドウの木約220本が栽培されている。2022年4月に職業指導の一環で始めた取り組みのきっかけは、地元ワイン醸造所「牛久シャトー」と、出資
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【シネマ】「ルックバック」 背中をふわっと後押し
漫画への思いでつながった2人の女性が理不尽な事件により引き裂かれる。漫画家藤本タツキのコミックをアニメ映画化した「ルックバック」。出会いと別れで進んでいく人生のままならなさを描きながら、観客の背中をふわっと後押しする。 学年新聞での4こま漫画が絶賛される小学4年の藤野だが、不登校の同級生京本の作品を見て力の差を痛感。一度は漫画の道を諦めるものの、京本から憧れの思いを伝えられ、2人で制作に励む。コミック雑誌で評価され、互いに表現の場を高める中、事件が起こる。 アニメならではのダイナミックな映像に引き込まれる。京本の言葉で自信を取り
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宮古民謡歌手の松原忠之 叙情的な旋律を歌い継ぐ【ワーオ!】
「青い海にギラギラ輝く太陽。そして、そこでの人々の暮らしに思いをはせて聴いてもらいたい」。宮古民謡歌手の松原忠之がこう語る通り、彼の新アルバム「美ぎ宮古ぬあやぐ」を聴くと、宮古を訪れたことがない筆者の目にも美しい自然に囲まれた人たちの温かな営みが浮かんだ。 沖縄本島の南西に位置し、リゾート地としても人気の宮古諸島。だが、この地域で歌い継がれ、「沖縄民謡」とはひと味もふた味も違う発展を遂げた「宮古民謡」という音楽をどれくらいの人が知っているだろうか。 松原が教えてくれた。沖縄民謡は三線に合わせて歌詞のリズムを楽しむが、宮古民謡に三
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大相撲の師匠は「おやじ」、背中は永遠 ウルフの迫力と優しさ、猛牛の懐と気遣い…「父の日」を機に思う、師弟の絆の大切さ
長い歴史を誇る大相撲において、弟子を指導する師匠は古くから「おやじ」と呼ばれてきた。相撲部屋という同じ空間で暮らし、日々の稽古で相撲の技術はもちろん、角界のしきたりや礼儀など生活面の全てを教える。まさに父親代わりといえる存在だ。6月16日の「父の日」を機に、親子にも似た師弟関係に思いをはせてみた。(共同通信=田井弘幸) ▽横綱が今日あるのは「おやじ」のおかげ 2024年4月に54歳で亡くなった元横綱曙の曙太郎さんは現役時代、行司の最高位である第28代木村庄之助(本名は後藤悟さん)から大相撲の歴史や土俵入りの意味合い、地位の重みな
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【旧ジャニーズ性加害】問題風化、危惧する被害者 国連調査、手続き終了
旧ジャニーズ事務所(SMILE―UP.、スマイルアップ)の性加害問題などを調べる国連人権理事会の作業部会が、昨年夏の日本での現地調査から約1年で一連の手続きを終了。被害者救済の「道のりは長い」との報告書をまとめ、日本政府や同社に対応見直しを求めた。ただ報告に法的拘束力はなく、効果は不透明なのが実情だ。被害者らからは問題の風化を危惧する声が漏れる。 ▽憂慮 「国際社会が力を注いで議論している。胸が熱くなった」。スイス西部ジュネーブでの国連人権理事会会合で報告が議題となった26日、現地入りした「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の発起
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【株主総会ピーク】進む持ち合い解消 株主提案で攻防も
企業が取引先との関係維持などを目的に持つ「持ち合い株(政策保有株)」を売却する動きが止まらない。27日にピークを迎えた3月期決算企業の定時株主総会では、投資ファンドが持ち合い株の売却を求める株主提案を京成電鉄に提出。三菱UFJ信託銀行も過剰な保有を認めない姿勢を打ち出した。売却益を成長投資や株主還元に回すよう求める投資家と、保有の意義を主張する企業の攻防が激しくなっている。 ▽時価総額超え 「今回の提案をきっかけに、会社が良い方に進んでいくことを期待している」。27日に千葉市中央区のホテルで開かれた京成電鉄の定時株主総会に出席し
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【再生プラ使用義務化】国際社会に押され対応 政府、規制強化重圧に
政府が再生プラスチックの使用を製造業に義務付ける方針を固めた。製造から焼却処分までの過程で大量の二酸化炭素(CO2)を排出するプラスチックは地球温暖化だけでなく、廃棄ごみによる汚染問題も顕在化。汚染を国際的に規制する条約作りも進む。欧州連合(EU)を中心とした規制強化の流れが重圧となり、日本政府がようやく重い腰を上げた。 ▽限定的 「この数年で、これほど認知が広がるとは思わなかった」。経済産業省で27日に開かれた有識者会議では、資源の再利用や効率的な利用を図る「循環経済」を推進する政策に出席した委員から、賛同の声が相次いだ。
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【黒川検事長定年延長判決】政府見解否定、議論再燃も 安倍政権関与解明は困難
東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年延長文書開示訴訟で、大阪地裁は27日、法務省内の協議記録の開示を命じた。検察官にも定年延長が適用されるとした法律の解釈変更については「黒川氏の定年延長を目的としている」とし、政府の主張を覆した。一方、同省と安倍晋三政権(当時)との折衝文書の存在は認めず、政権の関与解明にはつながらないとみられる。有識者からは国会での検証を求める声が上がり、議論が再燃する可能性もある。 ▽不自然 「どう考えても黒川氏のため。まっとうな判決だ」。大阪市内で記者会見を開いた原告上脇博之・神戸学院大教授は、判決を歓迎し
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ハイキュー!!聖地巡礼熱く ファン続々、地元歓迎
岩手県北部、人口約8千人の軽米町が、人気バレーボール漫画「ハイキュー!!」ファンの聖地巡礼熱で沸いている。岩手県は、原作者古舘春一さんの出身地。軽米町とよく似た景色が作品の随所に登場し、口コミで話題になった。町にはポスターやのぼりが立ち、歓迎ムード一色。一方、作品の舞台として登場する仙台市でもイベントが企画されるなど、ブームは広がりを見せている。 「宮城県立烏野高校排球部」の部員らの成長と活躍を描いた物語。漫画は2012~20年に週刊少年ジャンプで連載され、単行本全45巻の発行部数は6千万部を超える。14年からテレビアニメが放映開始。今年2月に公開された映画は
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【識者コラム】学問の自由に自律不可欠 学術会議人事、深刻な侵害 長谷部恭男
日本国憲法の23条は学問の自由を保障する。学問の自由は、ほかの憲法上の権利とはかなり違ったところがある。思想・良心の自由であれば、自分で自由に考えをめぐらせばよい。表現の自由であれば、思ったこと、見たこと聞いたことを自由に表現すればよい。 学問の自由はそうはいかない。学問であるためには、分野ごとに伝統的に受け継がれてきたルールを守って研究をすすめる必要がある。研究の成果は、同じ分野の研究者による検証が可能になるよう根拠を明らかにしなければならない。 ▽研究者集団が決定 歴史研究であれば、誰が書いた
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【現在地】Z世代を分析した経営学者の舟津昌平さん ビジネスの論理行き渡る社会の姿反映
「Z世代の言動が異様に見えるのは、社会の姿が映し出されているからです」。新著「Z世代化する社会」(東洋経済新報社)を刊行した東京大講師で経営学者の舟津昌平さんは語る。「Z世代」と呼ばれる今どきの大学生ら若者の言動を経営学の観点から分析し、彼らに影響を与える社会の実態をあぶり出した。 1989年に生まれた「ゆとり世代」の舟津さんが、下の世代に関心を持ったのは大学院生時代。OBとして関わった大学の部活で、試験期間中の練習への参加を任意にしようと提案した学生が、後輩の「精神的負担」を理由に挙げた。具体的な内容を尋ねられても「何もないけれど、そう言った方が意見が通りや
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1人で5分の訪問看護、でも記録上は“2人で30分” 「患者や家族はおかしさに気付かない」ホスピス型住宅の「手厚い」ケア
末期がんや難病の高齢者を対象に、みとりに対応する有料老人ホームや高齢者住宅が近年、各地で増えている。「ホスピス型住宅」などと呼ばれ、高齢化による多死社会を迎えていることが背景にある。訪問看護・介護のステーションを併設していることが多く、運営事業者は「手厚い」ケアをうたう。事業者は看護・介護を提供すればするほど、公的な報酬をたくさん受け取れるため、業界ではビジネスモデルとして確立。中には報酬目当てで不正、過剰に訪問看護を提供している事業者もいる。ところが、ほとんどの患者や家族は不審に思わない。行政のチェックも行き届かず、現場の看護師からは「やりたい放題。こんなのおかしい」との声が相次ぐ。何が起
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【競技団体の財政難】五輪前に、現場にしわ寄せ 合宿中止、大会削減も
2021年の東京五輪で日本勢は史上最多27個の金メダルを獲得し、57年ぶりの自国開催の祭典で期待通りの好成績を収めた。一方、多くの国内競技団体の経営基盤は弱いままで、東京大会後は注目度の低下もあり苦境に陥った。パリ五輪を前に財政難で強化現場にしわ寄せが及び、窮状を訴える声も上がっている。 ▽中止 「(本来なら)もっと五輪に集中できたはずだが。本当に残念」。11日、報道陣の取材に応じたバドミントン日本代表の朴柱奉監督は、五輪に向けて予定した複数の代表合宿が予算不足で中止になったと明らかにした。 日本
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【ウィキリークス】報道の自由へ影響懸念 秘匿情報の暴露で波紋
内部告発サイト「ウィキリークス」創設者、ジュリアン・アサンジ氏が自由の身となった。だが司法取引で罪を認めたことで、政府が秘匿する情報を暴く記者活動への影響を懸念する声も出ている。公的機関の機密情報は誰のもので、どこまで公開されるべきなのか。投じられた一石の波紋は広がり続けている。 ▽激震 「人々の知る権利のため、大きな代償を払った」。ウィキリークスは25日、X(旧ツイッター)への投稿で、アサンジ氏が政府の腐敗や人権侵害を暴き、権力者の責任を追及してきたと主張。「私たちを支え、自由のために戦ってくれた全ての人々に感謝する」とし、ア
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【世界の街から】民主主義祭り
6月上旬、メキシコ大統領選の取材で首都メキシコ市を訪れた。約9800万人の有権者が、10月から6年間にわたって国を統治する元首を選ぶ重要な機会だ。上下両院選や地方選を合わせ2万以上のポストを巡る投票が行われ、同国史上最大規模の選挙となった。 投開票日の夜。市中心部の広場には、大統領選に出馬した与党、国家再生運動(MORENA)のシェインバウム前メキシコ市長の支持者が大勢集まった。当選を確実にした同氏が翌日未明に訪れると、歓声が湧いた。 現地メディアも熱狂した。朝から複数のテレビ局が特番を組み、各地の状況や争点を報じた。シェインバ
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【障害者ホーム指定取り消し】今後住まいは…不安と不信 事業許した行政にも注文
「ふわふわ」という名称で障害者向けグループホーム(GH)を各地で急速に増やしてきた大手運営会社「恵」(東京)。愛知県などの事業所指定取り消しを受けた連座制の適用により、同社は障害福祉業界から事実上の退場処分となる。入居者の今後に不安を抱く家族、会社に不信感を募らす社員ら。悪質さが指摘される同社の事業拡大を許した行政にも責任を問う声が上がっている。 ▽少ない受け皿 「娘にとっては今のホームが居場所。今後、娘の希望がかなう生活ができたらいいのだが…」。茨城県内にある同社のGHで20代の娘が暮らす父親(70)はそう話す。
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【コメ値上がり】米穀店「今までない事態」 品不足の懸念も
コメの価格が上昇している。一部の飲食店や小売店などでは品薄感も広がり、価格の高止まりを見込む声もある。コメの値上がりは、長年続いてきたコメ余りからの局面転換を意味するのか。 ▽入荷不能 「こんなに急激なコメ不足と値上がりは、今までになかった」。東京都練馬区で米穀店を経営する男性は驚きを語る。銘柄によっては、卸売業者も在庫切れで入荷できないという。男性は「秋に新米が出回ると価格は落ち着くだろうが、それまでは高騰が続きそうだ」と予想した。 国内産がほとんどを占めるコメは、円安や地政学リスクの影響を受け
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【#ジェンダー ともに】孤立防ぐユースクリニック 生理や予期せぬ妊娠相談を SOS出せる場「全国に」 行政による設置も
生理や予期せぬ妊娠、人間関係など、若者が心や体の悩みを専門家に気軽に相談できる「ユースクリニック」を各地に広げようという動きがある。東京や京都では行政による設置も。関係者は、悩みを抱えた若者が孤立するのを防ぐため「国の主導でSOSを出せる場を全国につくってほしい」と訴える。 「生理痛がひどくて…」。5月下旬、女子栄養大(埼玉県坂戸市)の学園祭に合わせて開かれた「たんぽぽユースクリニック」を訪れた高校1年の女子生徒は、生理の悩みを相談していた。 ユースクリニックを開催したのは埼玉医科大助教で産婦人科医の高橋幸子さん(49)と、女子
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絶滅した飛べない鳥ドードー、今も心に生きる 祖先と自然に重ね、「境界から」☆()モーリシャス
インド洋に浮かぶ常夏の島にはかつて、ずんぐりした“飛べない鳥”がいた。外敵がいないため翼が体に比べて小さくなり、地面をとことこ歩いて豊かに実る果物をついばみながら、のどかに暮らしていた。人間が船で渡ってくるまでは―。 険しい山の稜線(りょうせん)がサンゴ礁の海につながる絶景の島国モーリシャス。多くのリゾート客が訪れるが、乱獲や外来生物の影響で姿を消した「ドードー」の生息地だったことでも知られる。愛嬌(あいきょう)のある姿は島の象徴として今も人々の心に残る。時に祖先が味わった苦難に思いを重ね、美しい自然を守るための努力を続けながら。 ▽平和な世界 「君たちの世界は
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極端な主張でゆがむ世論 国際大准教授・山口真一氏 30年前の予測と違う現象 「さまよう民主主義」(6)ネット社会と政治
日本でインターネットが普及し始めた30年前、このツールは自由な言論を促し、民主主義が発展していくとの予測があった。だが実際に起きた現象は全く違う。極端な主張が増幅され、現実の世論をゆがめる空間が形成されている。落とし穴を理解しないと、民主主義は退化しかねない。この問題に詳しい山口真一・国際大グローバル・コミュニケーション・センター准教授に聞いた。(聞き手は共同通信編集委員・久江雅彦、写真は同・堀誠) ▽批判的な思考が不可欠 ネット空間は、極端な意見を持つ人ほど発信し
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Xで知り合った「投資の先生」に従い、海外FXで月利10% 信じた女性を待っていたSNS型投資詐欺の手口とは
「貯蓄から投資へ」。テレビから聞こえてきた言葉に、兵庫県の30代会社員のアユミさん=仮名=は思わず反応した。物価高が続く2022年夏、日用品や食品はできるだけ安い価格のものを選ぶようになった。日本経済への不安が募る中で耳にした「投資」に背中を押された気がした。自分で何とか資産を増やすしかないと決意し、ツイッター(現X)で情報収集を始めた。そして、あるアカウントが目に留まった。(共同通信=後藤直明) ▽収益5600万円のデイトレーダー 「Manaka」という名前のアカウントだった。アイコンには人気漫
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【虹波】医師、副作用でも臨床継続 軍と蜜月、患者に苦痛
戦時中から終戦直後にかけて国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(熊本県合志市)で行われていた患者に対する薬剤「虹波」の臨床試験。同園の中間報告書は、激しい副作用で死亡者が出ても突き進んだ医療関係者の実態を浮き彫りにした。患者との力関係、軍部との蜜月などが背景にあったとみられる。元患者の高齢化が進む中、負の歴史の検証が急務となりそうだ。 ▽七転八倒 嘔吐激烈ニシテ実際ニ応用シ難キ―。計80ページ超の中間報告書(本編、資料編)は、当時の資料から引用する形で「虹波」の強い副作用の実態をつぶさに記述した。 報告
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【パリ五輪開幕まで1カ月】セーヌ川の水質、テロ懸念 五輪直前、内政の不安定も
パリ五輪は26日で開幕まで1カ月。開会式やトライアスロンのスイムなどを行うセーヌ川の水質問題とテロ対策が大きな課題となっている。大会関係者は安全性のアピールに懸命だが、フランス国内では国民議会(下院)の解散総選挙が五輪開幕前に行われる政治情勢の不安定さも懸念材料だ。大会直前に波乱含みの展開となっている。 ▽悲願の遊泳 「私の泳ぐ準備は整っている」。今月7日、五輪マークが設置されたパリ市中心部のエッフェル塔前でイダルゴ市長は強い思いを口にした。水質悪化で1923年に禁止されたセーヌ川での遊泳。後に大統領となったシラク氏が市長時代に
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【電気・ガス料金の負担軽減策】秋に「延長論」浮上も 異例再開、幕引き見通せず
異例の再開が決まった電気・ガス料金の負担軽減策が固まってきた。標準世帯で電気代は月約1400円、ガス代は月約450円の減額になるように政府が補助金を出す方向だ。8~10月の使用分に限定するが、物価高抑制をアピールして政権浮揚を図りたい岸田文雄首相の意向を受け、秋にまとめる経済対策に合わせて、政府、与党内で延長論が浮上する可能性がある。幕引きは見通せない。 ▽賛否両論 自民党が25日に開いた政調全体会議。「行き当たりばったりだ」「ころころ変わり、国民にポリシーが伝わっていない」―。関係者によると、40人ほどの参加者からは、負担軽減
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【ふるさと納税の仲介サイト】かさむ手数料、問題視 1兆円市場に新たな規制
総務省がふるさと納税の新たな規制に乗り出す。自治体が仲介業者に支払う手数料がかさんでいることを問題視。業者が寄付に応じて付与する特典ポイントが手数料増の一因だとして、こうしたサイト利用を禁止することが寄付収益の増加につながる―との青写真を描く。ただ、寄付総額が1兆円規模に膨らむ市場で、自治体も仲介業者に依存しており、見直しが寄付の動向に影響を与える可能性もある。 ▽恩恵 「制度の適正な運用を確保する」。松本剛明総務相は25日の記者会見で、規制の意義を強調した。自治体に及ぶはずの恩恵の一部が、仲介業者に流れてしまっているとして是正
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【東京都知事選】自民、著名人旋風に翻弄 都市型選挙、苦手意識も
自民党は東京都知事選(7月7日投開票)で、現職の小池百合子氏を支援している。過去にタレント出身者ら著名人候補が巻き起こした旋風に翻弄され、苦杯をなめてきた自民。派閥裏金事件の逆風が吹く中、知名度を持つ同氏とタッグを組むしかないとの判断だ。推薦は見送り、政党色も出さない。自民内では、都市型選挙である都知事選への苦手意識が根強い。 「党本部として党都連と連携し、小池氏に必要な支援を行う」。自民の茂木敏充幹事長は25日の記者会見で、都知事選を巡り強調した。都連所属の国会議員は党本部に集まり情勢を分析した。 「首都の顔」を決める都知事選
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【外国人材受け入れ】視界不良の共生社会実現 進む定住、自治体任せ
6月に成立した改正入管難民法で創設される外国人材受け入れの新制度「育成就労」は、来日後の長期就労促進が狙いだ。さらなる定住化も想定されるが、政府が掲げる「共生社会の実現」には、日本語教育の充実などの課題も残る。昨年末時点の国内の在留外国人は過去最多の340万人超。識者は、自治体任せの現状に警鐘を鳴らす。 ▽生活者 外国人約1万5千人が暮らす群馬県伊勢崎市。5月の日曜、公共施設で開かれた日本語教室にブラジルやネパール出身の約30人が参加し、約2時間のレッスンに励んだ。「漢字が苦手。もっと上達して仕事に生かしたい」。中級クラスに参加
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【最低賃金】働き手、大幅上積み切望 中小、人件費増に不安
最低賃金の引き上げ論議が今年も幕を開けた。物価高騰に伴い生活苦にあえぐ労働者は大幅な上積みを切望する。一方、賃上げは人件費増に直結するため中小企業の経営者らは、急激な引き上げにならないか不安を募らせている。 ▽「生活費を…」 25日、厚生労働省の庁舎前。論戦開始に合わせ全労連が集会を開いた。秋山正臣副議長は「今月は定額減税があるが、生活が本当に厳しい状況は変わっていない。最低賃金の引き上げが必要だ」と訴えた。参加者約50人は、最低賃金を全国一律で1500円以上にするよう要求。さらに「1700円を目指そう」と声を張り上げた。
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【自民党安倍派裏金事件】新証言、幹部4人会見せず 専門家「世論納得しない」
自民党安倍派の裏金事件は、公開の法廷で真相解明が進む。最大の焦点だった資金還流の再開について、事務局長の松本淳一郎被告(76)=政治資金規正法違反罪で公判中=は18日の公判で「幹部議員4人が協議し、決まった」と証言。国会での4人の説明とは正反対とも言える主張だが、4人は1週間たっても記者会見を開かず、逃げの姿勢に終始している。専門家は「世論は納得しない」と、説明責任を果たすよう求めている。 「私が独断で『還流します』とは一切言えない」。18日に東京地裁で開かれた第2回公判。松本被告は弁護側の質問にきっぱりとこう述べ、還流再開は2022年8月の幹部協議で決まった
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【ロ朝首脳会談】破壊されるNPT 核同盟化にくさび打て
「北朝鮮をロシアの兵器工場にする」。北朝鮮の動向を注視する韓国の幹部外交官は、最近訪朝したプーチン・ロシア大統領の狙いをこう喝破した。ウクライナ侵攻が長期化する中、開戦以来「核のサーベル」をちらつかせながら、米欧諸国の本格介入を阻止してきた独裁者は、継戦能力の確保に血眼のようだ。 ウクライナで使われるであろう弾薬をロシアに供給する北朝鮮も当然、自身の国益に資する見返りを最大限得ようとする。その最たるものが、金正恩朝鮮労働党総書記が今回プーチン氏と署名した「包括的戦略パートナーシップ条約」だ。 あいまいな部分も残るが、同条約は「一
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【中国月探査】月誕生の謎解きに期待 深める自信、米は警戒
月の裏側で試料を初めて採取した中国の無人探査機「嫦娥6号」が地球に帰還した。月の起源や太陽系初期の歴史といった謎解きが進むことに期待が高まる。宇宙分野の開発に自信を深める中国は、世界各国が狙う水などの月面資源探査でも優位性を確保する構え。一方、トップランナーを自任する米国は警戒感を募らせており、両国の激しいつばぜり合いが予想される。 ▽月の記憶 「人類の月探査に新たな章を開いた」。中国外務省の毛寧副報道局長は25日、「嫦娥6号」の任務成功後の記者会見で胸を張った。「(各国の)国際パートナーと手を携え、宇宙を探索していく」と強調、
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ごちゃまぜ感でインパクト こだわりの絵本雑誌が話題 体感する「さがるまーた」
若手編集者が企画した雑誌「さがるまーた」が話題を集めている。触れ込みは「絵本を“体感”する」。絵本界の巨匠の新作からシロクマやヒグマ、パンダの描き分け方の解説、編集者の対談まで多彩な内容を詰め込んだごちゃまぜ感が、紙の雑誌ならではのインパクトを放っている。 世界で高い評価を受ける絵本作家の名前もずらり。荒井良二さんが描いた暖かな色味の表紙をめくると、とじ込まれた大判のスズキコージさんの迫力あるイラストが飛び出す。石黒亜矢子さんの妖怪お面もあれば、イランの絵本作家のイラストによる物語も。読者が切り抜いたり、描き込んだりできるページもある。
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中国の過剰生産能力問題の影響は? 丸紅の鈴木貴元さんに聞く【経済トレンド】
2024年4月のイエレン米財務長官訪中以降、中国の「過剰生産能力」を巡って中国と先進国の間で摩擦が起きている。5月にはバイデン政権が対中追加関税を発表した。中国の有望な貿易品目に育った電気自動車、車載用電池、太陽光パネルなど、米国の輸入金額180億ドル分に、最高100%の追加関税を課す内容だった。 この問題の本質は、中国の工業の過剰在庫、過当競争、稼働率低下であり、それによるマクロ経済への悪影響である。中国でも経済の専門家の間ではこの議論がなされている。一方、一般からは「安価で高い技術の製品輸出は、比較優位に基づく正当なものであ
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金融経済教育推進機構ってなんですか? プロに聞きました【経済トレンド】
Q 最近、ニュースなどで取り上げられている金融経済教育推進機構とはどういうものですか? A 新たな少額投資非課税制度(NISA)や確定拠出年金の普及などにより、資産運用への関心が高まっています。利用者である個人の金融への理解や判断力の向上を目指し、2024年4月に官民で設立された認可法人で、8月から本格的に稼働します。金融機関からは独立しています。 個人に寄り添うアドバイザーを認定・公表するほか、イベントやセミナーを通じたライフプランや資産形成に関する知識や情報の提
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「セキグチ」のモンチッチ50周年 愛らしい表情が世界で人気【経済トレンド】
ぬいぐるみや人形、雑貨などをつくる玩具メーカー「セキグチ」。サルをモチーフに開発した看板商品の「モンチッチ」は、愛らしい表情が世界で人気を集めるぬいぐるみだ。発売から50周年を迎えた。(共同通信=川村剛史記者) 1918年、関口友吉が現在の東京都葛飾区でセルロイド製人形の製造販売会社を設立。戦後、ソフトビニール製やぬいぐるみの製造も始めた。 生まれたてのサルをイメージしたぬいぐるみ「くたくたモンキー」、指を口にくわえたソフビ人形「マドモアゼルジェジェ」を経て、197
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水遊び安全に楽しくフローティングベスト 子ども向けやベルトタイプ【経済トレンド】
水辺のレジャーが盛んな季節になった。安全に水遊びを楽しむためにはフローティングベストの備えが大切。子ども向けのほか、デザインにこだわった商品や、ベルトのように装着し緊急時に膨らむモデルもある。(共同通信=増井杏菜記者) 大阪府和泉市のアパレル「アンティカ」の「antiqua toy フローティングベスト」は、子ども向け製品だ。成長に合わせて調節可能な胴部のベルトのほか、食い込みにくい斜めがけの股ベルトを採用。水中での抜け落ちを防ぐという。背面に取っ手をつけ、緊急時につかむことができる。販売価格は2860円。
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「素肌風5本指ハイソックス」開発者に聞く 履くだけで足元にネイル【経済トレンド】
サンダル履きの足元をおしゃれに―。衣料品などを企画販売するフェリシモの「素肌風5本指ハイソックス」シリーズは、指先にネイルアートを施した。素足のように見えてサンダルでも違和感はなく、冷房が効いた室内の冷え対策にもなる。企画した西村英里香(にしむら・えりか)さんに開発の狙いを聞いた。(共同通信=川村剛史記者) 発売のために2024年3月に用意した2千足は早々に完売、その後も注文は順調だ。価格は1足2200円(価格は2024年6月時点)。 ストッキングのような薄さで、5
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【記者書評】ミア・カンキマキ著、末延弘子訳「眠れない夜に思う、憧れの女たち」 重苦しさをはね返す
親愛なるミア・カンキマキ様。あなたの本のタイトルを目にした時、手を伸ばさずにいられませんでした。「眠れない夜に思う」に心当たりがあったからです。でもそれだけではありません。後に続く「憧れの女たち」に、重苦しいものをはね返す強さや希望の予感があったからです。 本はあなたの自己紹介から始まりました。40代で「独身、子なし」。社会的立場を示す記号のようで「どうやら見通しは最悪」ともあるし、重なる要素が多い身としては、少しひるみました。でも「女は人生でなにができるのか?」と自問する道行きに、付いて行きたくなりました。 あなたは憧れの女性
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「捜査を回避するためには選挙するしかない」 事件化前に自民幹部が進言した「幻の衆院解散」とは【裏金政治の舞台裏】
岸田文雄首相は6月中の衆院解散を見送ることになった。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件による逆風がやむ気配はなく「衆院選に突入すれば惨敗していたところだった」と与党内には奇妙な安堵が広がる。 解散権という「伝家の宝刀」をいつ行使するかは時の総理大臣の大きな悩みの種だ。岸田首相も例外でない。昨年も何度か解散を断念していた。その過程で、東京地検特捜部による捜査を避けるための早期解散を一部の党幹部が迫っていたことは、あまり知られていない。「捜査逃れの解散案」を巡って政権内で何があったのか。舞台裏を探った。(共同通信裏金問題取材班=植田純司)
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【知床の携帯電話基地建設】許されない自然破壊行為 公益性も必然性も欠く 京都大教授 島村健
知床の地名は、アイヌ語の「地の果て(シリエトク)」に由来すると言われ、そこには開発の手が及んでいない原生の自然が残っている。その先端の知床岬には、知床連山を踏破するか、カヤックでしかたどりつけない。 2005年には、流氷がもたらす豊かな生態系の価値などが評価され、世界自然遺産に登録された。その「核心地域」である半島中央部から知床岬にかけての地域は、自然公園法に基づき、開発を厳に抑制すべき国立公園の特別保護地区に指定されている。 今、この地域で大規模な開発行為が行われようとしていることは、北海道以外ではあまり知られていない。22年
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【ロ朝の新条約】北朝鮮支援の自動介入ない 北東アジアは第2次冷戦 韓国・国民大教授 アンドレイ・ランコフ
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が署名した「包括的戦略パートナーシップ条約」を過大評価してはいけない。新条約の「相互軍事援助」条項は、ソ連と北朝鮮の1961年の友好協力相互援助条約(96年失効)にあった「自動軍事介入」ではない。多くの留保がついており、軍事衝突の際に互いを支援する「義務」を定めていない。 実は、旧条約下でもソ連は、自動介入条項を巡り、北朝鮮の危険な行動に巻き込まれないよう苦慮していた。68年に北朝鮮が米国の情報収集艦プエブロ号を拿捕し、朝鮮半島情勢が一触即発の危機になった際、ソ連は「拿捕は北朝鮮の一方的な行為であり、攻撃を
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【西アフリカの安全保障】米軍撤収、軍政がロシアへ接近 「空白地帯」過激派の温床
近年クーデターが相次いだ西アフリカのニジェールなど3カ国で、軍事政権がロシアへの接近を加速させている。米政府は5月中旬、イスラム過激派対策で、ニジェールに駐留する米軍の撤収を正式発表し、西側諸国の「空白地帯」が生まれる事態に。ロシアが軍事パートナーになっても、サハラ砂漠南部に位置し過激派の温床となっているサヘル地域が安定する兆しは見えない。 ▽ニアミス 「軍事協力を推進するために来た」。4月10日、ニジェールの首都ニアメーにロシア軍の輸送機が到着し、降り立ったロシアの要員が地元テレビに語った。昨年7月のクーデターで親欧米政権を失
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【羽田事故再発防止策】海外を参考、課題は山積 人材不足が障壁に
年明けに羽田空港で起きた日航機と海上保安庁機の衝突事故を受け、国土交通省は再発防止策の骨格を示した。事故からまもなく半年となるのを前に、管制官の配置見直しや増員を柱に、ソフトとハードの両面で海外の例を大きく取り入れたのが特徴だ。実現には人材不足が壁となる。国内主要空港は規模や便数が一様ではなく各地で実情に応じた運用が必要とも指摘され、課題は山積する。 ▽人による監視 「痛ましい事故が二度と起きないよう、対策をしっかり実施する」。24日、有識者を交えた対策検討委員会の中間とりまとめについて斉藤鉄夫国交相は力を込めた。
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【三菱UFJ銀に改善命令】親会社の処分踏み込まず 資産運用立国、影響嫌う?
三菱UFJ銀行と系列証券2社が顧客企業の情報を無断で共有した問題で、金融庁は3社に業務改善命令を出す一方、親会社の三菱UFJフィナンシャル・グループを処分しなかった。子会社への監督責任の認定を巡る駆け引きは1年に及んだとみられる。親会社の処分に踏み込まなかった背景として、業界では「資産運用立国の機運に影響するのを嫌ったのでは」との見方が相次ぐ。 ▽思惑 関係者によると、証券取引等監視委員会では親会社への処分勧告を求める声が強かった。三菱UFJが「グループ一体型の経営」を掲げているのが理由だ。 金融
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【自民総裁選】「岸田降ろし」顕在化 支持率低迷に危機感
通常国会の閉幕を待っていたかのように、自民党内で岸田文雄首相の交代論が噴き出した。政治資金規正法を改正しても裏金事件の逆風はやまず、内閣支持率の長期低迷から脱却できない首相に対し、非主流派のキーマンである菅義偉前首相らの間で危機感が拡大。「岸田降ろし」が顕在化した。「ポスト岸田」に誰を据えれば次期衆院選で勝てるか。9月の党総裁選をにらんだ駆け引きが始まった。 ▽号砲 「岸田首相自身が裏金事件の責任に触れずに今日まで来ている。そのことに不信感を持っている国民は結構多い」。菅氏は23日公開のインターネット番組で、支持率低迷の原因を分
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島民生活80年近く支えた発電所廃止へ 三重県鳥羽市、「さみしい」と惜しむ声
三重県鳥羽市の離島「神島」の人々の生活を、80年近くにわたり支えてきた小さな火力発電所が廃止される。2005年まで島の電気を賄い、その後は、海底ケーブルによる本土からの送電が止まった場合の予備電源の役目を果たしてきた。来年3月以降に解体が予定され、関係者からは「さみしい」と惜しむ声が上がる。電力会社はケーブルを増設し、島への安定供給に万全を期す。(共同通信=大貫紗英) 発電所を保有する中部電力パワーグリッド(PG、名古屋市)は、発電機の修理用部品の入手が困難なことなどが廃止の理由だと説明している。発電所で約40年働いた小久保知明さん(79)は5月24日、19年
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【育休支援】肩代わりする社員に手当や人事評価 背景に大企業男性社員の育休増
国が男性の育児休業取得を推進し、取得率が上がる中、不在中の仕事を肩代わりする社員を、手当や人事評価で支援する動きが目立ってきた。基幹業務を担う社員の休みが増えると職場の負担が大きくなり、業務に響きかねないためだ。不公平感を減らし、休みやすい雰囲気をつくるのも狙い。男性育休に対する意識に変化も出始めている。(共同通信編集委員 尾原佐和子) ▽「頑張れる」 「仕事のカバーはしんどいが、手当があればその分頑張ろうと思える」。育休で7カ月休んだ同僚の仕事を引き受けた大和リー
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「旅」じか書き看板訪ねて、南へ カラフルな絵も、沖縄
沖縄の映像や写真を見ていると、あることに気付く。建物のコンクリート壁などに、直接文字などが書き付けられているのだ。地元では「じか書き看板」と呼ばれる。他県では見られない景色を訪ね、南へ飛んだ。 那覇市内の幹線道路沿いには思ったほど見られないが、県北部に向け国道を行けばじか書き看板が目につくようになる。名護市の国道沿いに、空色の壁に「パーラー」「沖縄そば」と大きく書かれた建物を見つけた。壁に、じかに書かれている。 店名は「みなみ」。沖縄そばだけでなく、地元の食材で調理した定食などが楽しめる店だ。1人で切り盛りする女性に聞くと「夫が
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【ジョージア】「黒幕」が親ロシア路線へ転換か 米欧、引き留めに懸命 ジョージア情勢
旧ソ連構成国のジョージア(旧グルジア)の与党が野党側の猛反対を押し切り、ロシアのプーチン体制が独裁強化に利用した悪法に酷似する、通称「スパイ法」を成立させた。ジョージアを長年支配する「黒幕」が、従来の親米欧路線からロシア接近へ転換を決断したとみられている。 米欧は民主主義の後退だと批判し、政府・与党への圧力を強めている。2024年10月のジョージア議会選に向け野党を間接的に支援し、親米欧路線に引き留めようと懸命だ。 ▽異例の演説
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情報爆発の時代、図書館はどこへ…シンガポール、デジタル化とAIで革新 たった1分で物語を生成したり、3Dプリンターを使えたり
情報が爆発的に増える時代、図書館はどうなるのだろうか。シンガポールがデジタル化と生成人工知能(AI)を通じ、図書館の革新に取り組んでいる。人口が少なく、資源に乏しいシンガポールは人材育成を重視し、経済成長につなげてきた。図書館を身近にして読書体験を後押しし、デジタル時代に応じた国民の能力や可能性の底上げを狙う。(共同通信シンガポール支局=角田隆一) ▽物語創造 「すごい」。暗がりの中、物語AI体験室で子どもたちの興奮した声が聞こえる。音楽とともに、壁一面の巨大パネルにタイトル、物語の「起承転結」をそれぞれ示した計5枚の絵本風の静
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【米最高裁判断から2年】進む中絶規制、社会二分 大統領選控え摩擦激化
米連邦最高裁が全米で人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェード」判決を覆してから24日で2年。共和党が優勢な各州で規制が進み、権利擁護を掲げる民主党との摩擦が続く。11月に大統領選を控え、米社会を二分する論争は激しさを増している。 ▽金字塔 「プロ・ライフ(中絶反対派)が求め続けた成果を実現した」。22日、ワシントンでキリスト教福音派の有力団体「信仰と自由連合」が開いた年次大会。共和党のトランプ前大統領は、在任中に保守派判事3人を最高裁に送り込んだことが、連邦法で中絶の権利が保障されなくなったことに直結したと胸を張っ
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【裁判所の予算不足】人手わずか、裁判所悲鳴 離婚後共同親権で負担増も
国家予算のうち裁判所への割り当てが少なすぎるとして、現場から悲鳴が上がっている。家事審判が年々増え、今後は離婚後共同親権の導入で子の養育に関する紛争なども相次ぐ見込み。だが、政治と距離を置く最高裁は予算獲得に積極的とはいえず、特に地方では人員不足が顕著だ。全国で等しく裁判を受けられる社会を目指す日弁連は「地方で裁判が受けられなくなる」と懸念する。 ▽常駐なし 「家裁がパンクするのではないか。本来なら裁判官や調査官を大増員すべく予算を求めるべきだ」。津地裁で民事訴訟の裁判長を務める竹内浩史判事(61)は取材に、人手の少なさを嘆いた
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【小児脳死臓器提供100例】子どもの移植、機会限られ 突然宣告、渡航環境厳しく
心臓移植しか助かる道はない―。具合が悪くなった子どもを連れて行った病院で、親たちはある日突然、そんな宣告を受ける。2010年7月の改正臓器移植法施行以降、18歳未満からの脳死臓器提供は100例を超えた。だが国内で移植を受けるチャンスはまだ少ない。いつ巡ってくるか分からない国内移植を待つか、リスクを承知で海外に渡るか。渡航移植を巡る環境は厳しさを増しており、国内の移植機会の増加を求める切実な声が上がる。 ▽真っ白 宮城県の大学2年横山由宇人さん(19)は4歳だった09年「特発性拡張型心筋症」と診断された。父親の慎也さん(53)によ
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【沖縄慰霊の日】防衛力強化「まるで戦前」 有事回避へ外交努力求め
太平洋戦争末期の沖縄戦終結から23日で79年となった。沖縄県民の平和への願いとは裏腹に、政府は台湾や尖閣諸島を巡る有事を念頭に、防衛力強化にまい進、住民の避難計画も練る。“鉄の暴風”に焼き尽くされた地上戦の惨禍の記憶が頭をよぎり、戦争体験者は「まるで戦前だ」と憂慮。政府に対し、悲惨な歴史を顧み、衝突を避ける外交努力を求めている。 ▽緊張 「抑止力の強化がかえって地域の緊張を高めている」。玉城デニー知事は沖縄全戦没者追悼式の平和宣言で、各国・地域の軍備拡張が東アジアの不安定化を招いていると指摘。一方、経済的には結び付くなど安全保障
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【8回連続の支持率20%台】首相、再選へ描けぬ展望 目玉政策不発、募る焦り
岸田内閣の支持率が8回連続で20%台に沈んだ。裏金事件の「泥沼」にどっぷり漬かった影響により、9月の自民党総裁選で岸田文雄首相の再選を望む声はわずか10・4%にとどまる。首相にとって目玉政策と言える改正政治資金規正法や定額減税も低評価で、不発に終わった。政権浮揚と総裁再選への展望を描けぬどころか、退陣要求が噴出し焦りばかりが募る。 ▽酷似 「2009年8月の衆院選で大敗し、自民が下野した麻生政権の末期に酷似してきた」。23日、首相に近い自民ベテラン議員は、共同通信世論調査で22・2%だった内閣支持率を知ると思わずうめいた。
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英会話、先生は対話型AI 能登地震で児童学習に一役 早大、関西大でも導入
対話型人工知能(AI)を英会話学習の先生役に活用する動きが広がっている。人間の教師のような自然な受け答えをして、生徒や学生の語学能力を判定、早稲田大や関西大などが一部の授業に使う。能登半島地震で避難した小学生の英会話学習には、AIアプリが一役買った。 モニター画面に映った先生役のAIキャラクターが英語で「お薦めの映画はありますか」と尋ねると、東京都内の大学受験生(19)が英語で「ホラーは嫌いですが、あなたのお薦めは?」と返す。AIは「アクション映画に興味はありますか」と質問を重ねた。 AIは受験生の英会話能力を6段階の下から2番
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加害者の今を知ってしまった…「娘の未来は絶たれたのに」中2いじめ、遺族の憤りと煩悶 学校推薦で高校進学、実業団選手に。謝罪はないまま
2016年9月、兵庫県加古川市立中の2年生だった当時14歳の女子生徒が同級生らからのいじめを苦に自死した。それから7年。両親は娘の死と向き合い続ける日々の中で、加害生徒の1人が実業団スポーツ選手として活躍していることを知ってしまった。「娘の未来は絶たれてしまっているのに、なぜ…?」。もう会うこともできない娘とのあまりの“落差”に、抑えきれないほどの憤りと悔しさが再燃した。 事件後、加害生徒から直接謝罪の言葉はなく、いじめを本人らが認めたかどうかもはっきりしないままだった。両親は当時から生徒らへの厳しい指導を学校や市教育委員会に求めてきたが、学校側はその裏で加害
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【山口祐加さん】自炊料理家が問う「総菜を買える時代に自分で作る意味」 一汁一菜で小さな喜び、自分を養う
「自炊料理家」として活動する山口祐加さん(31)が発信する「料理を楽しく続けるこつ」が、幅広い世代の共感を呼んでいる。焼いただけでも立派なごちそう、一汁一菜を基本の型に…。「料理ができない」と悩む人の声をきっかけに、初心者も無理なく始められる調理法を伝授している。 料理は苦手だと感じる人は“理想の家庭料理”のイメージに縛られている場合が目立つと山口さん。頑張らなくても自分のペースで自炊をすれば、「おいしい!」と小さな喜びを日々感じることができると伝えている。 その活動の根底には、「自分の手で体と心を満たす料理を作れれば、小さな自
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出生前診断で障害が判明 “命を選択する”葛藤、出産を選んだ母
妊娠中に染色体異常などお腹の子の障害や病気を調べる出生前診断。障害が判明すると、命をめぐる重い選択に向き合うことになる。14年前、香川県高松市の川井真理さん=仮名、当時43歳=は、2人目の子どもの妊娠時に出生前診断を受け、胎児に障害が判明した。1人目の長男にも障害があったため「障害がある子を、2人は育てられない」と、当初は中絶するつもりだった。だが「私がこの子の心臓を止めていいのか」と悩み抜いた末、長女を出産した。これまでの子育てで川井さんは何を感じ、どう考えてきたのか。10年以上前に取材した筆者が、その後の思いを聞こうと再び訪ねた。(共同通信=船木敬太) ▽
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中国の鉄道車両メーカー、スパイ懸念や納入遅れで破談相次ぐ 日本に競り勝ったインドネシア高速鉄道は“金食い虫”に「鉄道なにコレ!?」
中国の広域経済圏構想「一帯一路」の中核を担う国有企業で、鉄道車両メーカー世界最大手の中国中車(CRRC)のグループがヨーロッパやアメリカで納入を目指した案件が相次いで破談に追い込まれた。「ダンピング(不当廉売)」とされる安値で受注を上積みしてきたが、中国のスパイ活動に利用されることへの懸念や、納期の大幅な遅れへの不満などが敬遠された。一方、建設支援で中国が日本に競り勝ち、中国中車製の列車を導入したインドネシアの高速鉄道は“金食い虫”となっており、インドネシアの財政を圧迫するとの懸念が強まっている。(共同通信=大塚圭一郎) 【一帯一路】世界で2番目の経済大国である中
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「部活動」強豪校を中退して新たな道へ バスケ続けられる場所探す【生き抜く】
練習を終えると、体育館から逃げるように暗がりに飛び出した。隣接する寮に駆け込み、泣きながらスマートフォンを手に取った。「もう限界。帰らせて。迎えに来て」 2023年6月のある夜。岐阜県内の私立校バスケットボール部の3年生で、主力選手の一人だった高桑利加(18)は監督とのあつれきに耐えきれなくなり、母の栄子(47)に救いを求めた。富山県の実家に帰り、とうとう高校中退を決断した。 「夢と希望にあふれて」(栄子)全国制覇の経験もある強豪校に進学し、部員専用の寮に住んでバスケに没頭した。でも部を離れると、学校に残る理由もなくなる。トップ選手の王道から外れたが、新たな道を歩み始めた今、気付いた。「
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【#ジェンダー ともに】子にどう伝える?「性」 勤務先が共に学ぶ場提供 包括支援で企業もメリット
子どもに「性」についてどう伝えればいいのか。思春期の体の変化や性的同意を親子が共に学ぶきっかけを、勤務先の企業が提供する取り組みが始まっている。背景には社員の学びを包括的にサポートする動きがある。「子どもへの性教育を通して自分の体の知識も増え、健康的に働き続けられる」と専門家は企業側のメリットも指摘する。 ▽線でつなぐ支援 「宝石交換する?」「今回はやめておく」。日本新薬と京都信用金庫などの従業員と小中学生の子ども約50人が3月下旬、京都市内の施設でグループに分かれ、ボードゲームを前に目を輝かせていた。 ゲームは、助産師による企業支援を展開するWith Midwife(ウィズ・ミッドワ
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舞台「未来少年コナン」 あの宮崎アニメの動きを現実に【ワーオ!】
あの宮崎アニメが演劇に―といっても、英ロンドンで長期公演中のジブリ映画を基にした舞台作品のことではない。宮崎駿監督が日本アニメーション時代に手がけた初期の名作を、加藤清史郎主演で舞台化した「未来少年コナン」の話である。 物語の舞台は「超磁力兵器」の使用で荒廃した地球。島育ちの少年コナン(加藤)が、工業都市インダストリアに追われる少女ラナ(影山優佳)を助けるため、さまざまな困難に立ち向かう。 アニメの舞台化には、特徴的なキャラクターや世界観をどう再現するか、という課題がつきまとう。大抵は凝った舞台装置や特殊メークなどで「ビジュアル
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女性の歌声に希望を見いだした1990年代、進化続ける「Get Wild」 40周年、Jポップのレジェンド小室哲哉さんが語る“新しい音”とは
1990年代、街の至る所で小室哲哉さんの音楽が流れていた。TRF、華原朋美さん、globe、安室奈美恵さん…。小室さんプロデュースの音楽はまさに時代のBGMだった。 そんな小室サウンドに再び注目が集まっている。ネットフリックスの映画「シティーハンター」ではTM NETWORKの代表曲の最新版「Get Wild Continual」が響き渡り、TMのデビュー40周年の全国ツアーも好評のうちに幕を下ろした。少数精鋭のオーケストラで小室さんの楽曲を演奏する公演「billboard classics ELECTRO」も6月29日から9月まで歌手の野宮真貴さんらをゲスト
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埋め立てられる「リサイクル優等生」、徳島市収集のペットボトル大半が再生せず、その理由は…全国最下位影響か
お茶などの清涼飲料の容器として身近なペットボトルは、使用後に再資源化しやすい「リサイクルの優等生」と呼ばれる。近年は環境意識の高まりを受けて再利用が進み、資源価値が上昇、飲料メーカーや自治体を巻き込んだ争奪戦も起きているほどだ。 そんなペットボトルだが、徳島市では家庭から分別収集したもののうち、大半が直接埋め立てに回されていた。リサイクル率は2022年度の推計で25%以下にとどまる。記者は取材で、埋め立てを行う最終処分場に、徳島市から大量のペットボトルが搬入される現場を確認した。 他のごみと交じっていて取り出しにくいから?汚れて
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【ロ朝新条約】後ろ盾、最大限に演出 極東情勢深入り嫌うロシア
北朝鮮がロシアと19日に交わした「包括的戦略パートナーシップ条約」は、有事の軍事援助を明記し、冷戦終結前の旧ソ連との同盟関係を想起させる条項が盛り込まれた。条約全文は北朝鮮が先んじて公開。ロシアによる後ろ盾の力を最大限に演出し、日米韓に対抗する狙いとみられる。一方、ロシアには極東の安全保障問題への深入りを避けたい思惑もにじむ。 ▽本音 「ロシアのような強国を戦略的パートナーとすることはこの上ない誇りだ」。首脳会談を終えた金正恩朝鮮労働党総書記は19日夜、夕食会で満足そうに笑みを浮かべ、プーチン大統領とワイングラスで乾杯した。
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【都知事選告示】駆け引き先行、政治思惑も 有権者、本質的議論望む
首都のトップを決める選挙戦がスタートした。20日告示の東京都知事選(7月7日投開票)に現職の小池百合子氏(71)や、知名度を誇る前参院議員の蓮舫氏(56)ら56人が立候補。早々に公約やイメージ戦略で駆け引きが始まり、支援する与野党の思惑も見え隠れする。一方、有権者は「本質的な政策を競って」と望み、都政の課題解決に迫る議論を求めている。 ▽横綱相撲 「課題は山ほどあるが、正面から向き合いたい」。20日午前、小池氏は都内の事務所で支援者に落ち着いて語りかけた。午後には複合施設を視察する「公務」をこなし、控えめに滑り出した。
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【過去最低の円安水準】日本経済の足かせに 価格上昇で家計圧迫
歴史的な円安の長期化が日本経済の足かせになっている。かつては輸出を後押しするとして歓迎されてきた円安だが、近年は輸入品価格の上昇を通じて家計を圧迫するなどの悪影響が目立つ。円安は日本経済の実力低下を映しているとの指摘も上がる。 ▽全体でプラス? 円安は現在も製造業などの収益には貢献している。SMBC日興証券によれば、上場企業1421社の2024年3月期決算の純利益合計額は前期比17・2%増の48兆8470億円と、3年連続で過去最高の見込みだ。円安が自動車メーカーなどの業績を押し上げた。海外からの投資や消費を増やす効果も期待される
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【宝塚宙組公演再開】性急な再始動に厳しい目 現役俳優やファンも懸念
休止が続いていた宝塚歌劇団宙組の公演が20日、昨年9月の俳優急死から1年もたたずに再開された。「世間が許すのか」「悲劇が繰り返されるのでは」。組織改革が緒に就いたばかりのタイミングでの再始動に厳しい目が注がれ、現役タカラジェンヌやファンらの中にはさまざまな懸念が渦巻いている。 「感動した」「これからも頑張って」。この日、久々の公演再開を喜ぶ観客が目立った宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)。一方で「(宙組俳優に)発言の機会がないまま幕を開けて良いのか」「再発防止策などをもっと説明してくれれば、もう少し前向きな気持ちで公演を見られるのに…」と歌劇団幹部への不満を漏らすファ
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【藤井八冠から陥落】絶対王者に異変? ライバル出現か
将棋の藤井聡太叡王が第9期叡王戦5番勝負で、挑戦者の伊藤匠七段に対戦成績2勝3敗で敗れ、全八冠から七冠へ後退した。今シリーズは絶対的な強さを誇る終盤戦で、藤井七冠らしからぬ指し手が続いた。挑戦者の良さが出た一方で、若き王者に何が起きたのか。 叡王戦第1局は藤井七冠が先手番となり、得意の角換わりで競り勝った。続く第2局は後手番でほぼ互角の展開が続いたが、藤井七冠が大駒の飛車で相手の金を取ると、人工知能(AI)の数値が伊藤新叡王の優勢に大きく振れ、そのまま押し切られた。 印象的だったのは第3局。先手の藤井七冠が終盤の入り口あたりまで
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【横浜市教委、動員発覚1カ月】「被害者のため」に違和感 傍聴妨害、支援者ら指摘
横浜市教育委員会が教員による児童生徒への性加害裁判に職員を動員し、一般の傍聴を妨害していた問題が発覚して21日で1カ月となった。市教委は一貫して「被害者側から要請を受け、プライバシー保護のためだった」と主張。それに対し、現場で犯罪被害者と向き合う支援団体関係者からは違和感を指摘する声が上がる。動員目的を含め、丁寧な実態解明が求められる。 ▽当然の前提 「被害者のためではなく、学校の名誉を守るためではないか」。神奈川県や県警と連携する「神奈川被害者支援センター」(横浜市)の永野弘幸所長(69)は、報道で問題を知り、そう感じた。
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【内閣不信任決議案】裏金追及、そろった足並み 野党、衆院選は同床異夢
野党は、通常国会最終盤の岸田内閣に対する不信任決議案への対応で、足並みがそろった。立憲民主党が提出した不信任案に主要野党はこぞって賛成し、自民党派閥裏金事件などで支持率の長期低迷にあえぐ政権への追及姿勢を鮮明にした。ただ次期衆院選を見据えた各党の思惑はばらばらで、今回の共闘も「同床異夢」に過ぎず、本格連携は見通せない。 ▽計算 「裏金問題で国政が停滞した。岸田政権の責任は明らかだ。自民政治は変えなければならない」 不信任案を採決した20日の衆院本会議。不信任案の趣旨弁明で壇上に立った立民の泉健太代
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コストコ誘致に熱視線 雇用・人口増「頼みの綱」 上陸四半世紀、商店に不安
米国系会員制スーパー「コストコ」の日本上陸から今年で四半世紀。日本法人は地方で出店を進め、自治体は誘致に力を入れている。雇用創出や税収増といった波及効果を期待し、用地や周辺道路を整えてアピール。誘致成功で人口増に転じた町もある。地元商店からは競争激化に不安も漏れるが、衰退する自治体の首長にとってコストコは頼みの綱に映る。 「町の知名度が一気に高まった。まるでテーマパークだ」。熊本県御船町の藤木正幸町長は強調する。誘致のため「上京しては日本法人に名刺を置きにいった」。2016年の熊本地震後は「復興のシンボルに」と掛け合った。 21年に開業し、減少傾向だった町の人口は3年で300人ほど増え、
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【識者コラム】野生の道案内に驚嘆 森の中、先住民の知恵 山極寿一
かつてゴリラを追ってアフリカのジャングルを歩いていた頃、現地の狩猟採集民の人々の高いナビゲーション能力に驚かされたものだ。まだ人工衛星のネットワークを使って目標の位置や距離を測るGPSシステムがない時代である。しかも、ろくな地図もなく、磁石で方位が分かってもどこに行きつくか見当もつかない。 当初、私は日本で山や森を踏破した経験から、迷ったら高台を目指せばいいし、木に登れば周囲を見渡して行き先の見当を付けられるとたかをくくっていた。ところが、コンゴ盆地の熱帯雨林は少し高い場所に登っても、高い木が生えていて視界はさえぎられている。木々には枝がなく、幹には鋭いとげが
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新聞紙、卵の殻やもみ殻、バナナリサイクル 仮設住宅、Tシャツにも【経済トレンド】
リサイクルが進化している。被災地では新聞紙を原料にした断熱材が導入され、廃棄される卵の殻や米のもみ殻を活用したガラス製品や、バナナの茎からできたTシャツも登場している。(共同通信=川村剛史記者) ▽特性 能登半島地震の被災地では、木造仮設住宅の着工が進んでいる。その一部で新聞紙をリサイクルした断熱材が利用されている。デコス(山口県下関市)が製造する「デコスファイバー」だ。 デコスファイバーは、粉砕した新聞紙にホウ酸などを混ぜて製造することで、断熱材として求められる特性を実現した。 仮設住宅は季節を問わず屋内で過ごしやすくする優れた断熱性能が欠かせない。防火性や、生活音による騒
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【シネマ】「ホールドオーバーズ」 寂しさ抱え、心通わす
新たなクリスマス映画の名作が生まれた。「サイドウェイ」などで米アカデミー賞脚色賞に輝いたアレクサンダー・ペイン監督の「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」。深い孤独を抱えた人々が心を通わせる過程を、ユーモアも交え巧みに描いた。 舞台は1970年、クリスマス休暇を迎えた米ボストン近郊の寄宿学校。生真面目でみんなから煙たがられている古代史の教師ポール(ポール・ジアマッティ)は、家に帰れない生徒の監督役を任されることに。母親の再婚の影響で急きょ学校に残ることになったアンガス(ドミニク・セッサ)、ベトナム戦争で息子を亡くした食堂の料理長メアリー(ダバイン・ジョ
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【現在地】1冊しか扱わない書店のオーナー森岡督行さん 毎週が「新装開店」、注がれた情熱伝える
東京・銀座の中心街から離れた静かな通りにある「森岡書店」は“1冊”の本を扱う小さな書店だ。昭和初期に建てられたビルの1階で2015年にオープンして以来、常連客や観光客、扱う本の著者のファンが集う。オーナーの森岡督行さんは「1冊の本の世界観、そこに注がれた情熱を伝えられたら」と話す。 販売する本は1週間ごとに変わり、詩文集や写真集、児童書などさまざま。本に合わせて展覧会などを催し、花の本には花を、金継ぎの本には古道具や器を、お菓子の本には焼き菓子をと「毎週、新装開店」のよう。訪れた人は本の内容を五感で感じ、購入できる。「高速回転のように見えて、年間で扱うのは約5
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【NATO】ロシアのウクライナ侵攻3年目、なお焦点 前事務総長のラムスセン氏に聞く
7月9~11日、米首都ワシントンで開かれる北大西洋条約機構(NATO)75周年首脳会議。先進7カ国首脳会議(G7サミット)に続き、3年目に入ったロシアのウクライナ侵攻が焦点となる。ゼレンスキー政権と連携し、平和回復の方途を探ってきたラスムセン前NATO事務総長にウクライナ加盟の道筋や支援の課題を聞く。(共同通信編集委員・川北省吾) ▽加盟交渉開始の検討を ―ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を支持している。
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被災住宅どう直す?住人を悩ます再建問題 能登地震5カ月、ボランティア建築士の各戸訪問相談に記者が同行
12万棟以上の住宅が被害を受けた能登半島地震。発生から約5カ月がたち、被災地では住宅の再建に悩む人たちが増えている。「取り壊すのか、修繕して住み続けるのか」「どうすれば費用を抑えられるのか」―。被災住宅の9割以上が半壊や一部損壊だが、素人にはわからないことばかり。国や自治体の複雑な支援制度も悩みの種だ。被災住宅を各戸訪問し、実際に家を見ながら相談に応じている建築士のボランティア活動に記者が同行した。(共同通信=高田香菜子) ▽「その家でどのように生活してきて、どう再建したいのか」に寄り添う 今回同
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目の前で殺された家族、でも「泣くことさえ禁止された」 ガザで人質、イスラエル人女性が振り返る50日間
「(イスラム組織)ハマスは、私たちが泣くことさえ禁止しました」―。2023年10月7日のハマスによる奇襲攻撃で拘束され、人質となったイスラエル人女性ヘン・アルモグゴールドシュタインさん(49)が4月、共同通信の電話取材に応じた。ヘンさんはイスラエル南部のキブツ(集団農場)、クファルアザで夫と長女を目の前で殺害された上、次女、長男、次男と共に捕らえられ、パレスチナ自治区ガザへ連行された。23年11月26日に解放されるまで、約50日間に及んだ人質生活。恐怖と悲しみに満ちていた過酷な日々を振り返った。(年齢は取材当時、共同通信エルサレム支局=平野雄吾)
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注目度急上昇、アメリカの女子プロバスケ クラーク選手らが人気をけん引
アメリカの女子プロバスケットボールのWNBAが5月14日に開幕し、28年目の今シーズンは注目度が劇的にアップした。バスケットボールリーグで世界最高峰となっている男子のNBAの陰に隠れがちだったが、大学を卒業してインディアナ・フィーバーに入団したガードのケイトリン・クラーク選手らが人気をけん引している。(共同=山崎恵司) ▽注目の的 注目の的となっているクラーク選手は身長183センチで、飛び抜けたシュート力を備えている。持ち味は、3ポイントラインのさらに後ろから放つ3点シュートだ。 アイオワ大を2年
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【能登半島地震】募るストレス、ケア急務 関連死危惧、熱中症警戒も
能登半島地震の災害関連死として石川県で新たに22人の認定が決まり、直接死と合わせた犠牲者は282人に上る見込みとなった。2016年熊本地震の276人を上回り、平成以降の自然災害では東日本大震災、阪神大震災に次ぐ人的被害。避難生活や仮設住宅暮らしの長期化に伴い、さらなる関連死の増加が危惧される。夏本番を控えて熱中症への注意も欠かせない。専門家は「時間がたってからメンタルに影響が出る被災者は多い。長期的なケアが必要だ」と指摘する。 ▽環境激変 これまでに関連死と正式認定された珠洲市、輪島市、能登町の計30人のうち、年代が公表されてい
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【ロ朝首脳会談】「同盟」誇示も打算の連携 日米韓と対決、中国は距離
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が19日の会談で、全面的な関係強化に合意した。ロシアのウクライナ侵攻を機に急速に接近したロ朝は「同盟」関係への格上げを誇示したが、連携を裏打ちするのは損得勘定による打算の側面が強い。ロ朝と同様に欧米と対立を深める中国は一定の距離を保ち、北朝鮮が望むような日米韓との「対決構図」は描けていない。 ▽振り子 「不敗の同盟関係を絶えず発展させる。両国発展の100年の大計だ」。金氏は24年ぶりに訪朝したプーチン氏と会談後、肩を並べて新条約の意義を表明。有事の相互支援に踏み込んだ。
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【世界の街から】箱
南アフリカ政治の節目となった日、どよめく開票センターの片隅に30年前に使われた金属製の投票箱がぽつんと展示されていた。故マンデラ元大統領が率いた与党アフリカ民族会議(ANC)が、1994年の全人種選挙以来初となる過半数割れに追い込まれた総選挙を現地で取材した。 5月29日の投票日、最大都市ヨハネスブルクにある複数の投票所を訪れると、早朝から多くの人が列をなしていた。「94年に初めて投票したときはとても興奮したよ」と話す老齢の黒人男性。地区によっては黒人と白人が同じ列に整然と並び、票を投じていた。 先輩記者の30年前の記事をひもと
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【日本版DBS法成立】判断基準、丁寧に議論を 就業制限、乱用防止が課題
「日本版DBS」創設法が成立した。保育園などの現場や性犯罪の被害者は一定の評価をする一方、確認を義務付ける性犯罪歴の対象拡大を求める声が上がる。雇用主側による行き過ぎた就業制限や配置転換、解雇といった乱用も危惧される中、判断基準となるガイドラインの作成に当たっては、職業選択の自由など労働者側の権利にも十分に配慮した丁寧な議論が求められる。 ▽安心材料 「ここが第一歩。真に子どもを守れる社会をつくるため、大人の責任が問われている」。制度創設の要望活動を行ってきた認定NPO法人フローレンス(東京)の赤坂緑代表理事は19日午後の記者会
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【検証・改正政治資金規正法成立】落ちた火の玉、首相深手 再選シナリオ瓦解寸前
自民党派閥の裏金事件で失った政治への信頼を取り戻そうと、岸田文雄首相は「火の玉になる」と宣言して政治資金規正法改正に臨んだ。しかし後ろ盾である麻生太郎副総裁の反対を押し切り、公明党や日本維新の会の修正要求を丸のみした結果、逆に信用を喪失し、求心力は落ちるばかり。深手を負った首相が狙う政権浮揚と自民総裁再選のシナリオは瓦解寸前だ。舞台裏を検証した。 ▽「自民党が終わる」 5月29日夜、首相は東京都内の日本料理店で、麻生氏、茂木敏充幹事長と向き合った。話題は自然と規正法改正に及んだ。公明の山口那津男代表からは、政治資金パーティー券購
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【介護保険料過去最高】抜本的な制度改革を 公費負担引き上げ視野に 淑徳大教授 結城康博
2024年度から65歳以上が支払う介護保険料が、全国平均で6225円となり、過去最高を更新した。最も高い大阪市が9249円、最も低い東京都小笠原村が3374円で、6千円近い地域格差も生じている。 保険料は今後も上がり続ける見通しで、年金から保険料を天引きされる高齢者の生活を圧迫する。負担は限界に近い。残された選択肢として、公費負担引き上げなどを視野に入れるべき時だ。 3年おきに改定される保険料は前回21年度は6014円だったため、211円の引き上げとなる。確かに、単純に介護保険料が「高いか安い」で、介護施策を評価すべきではない。
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上方落語、2人を変えた 元教員と聴力失った女性 自分らしく師匠と前へ
1人の上方落語家との出会いが2人の人生を変えた。小学校教員だった男性は弟子入りして寄席の高座に上がり、片耳の聴力を失いながらアマチュア落語をしていた女性はスタッフとして魅力を発信する喜びを見いだした。型破りな師が繰り出す落語の自由さにひかれ、自分らしい生き方を見つけた2人。それぞれの道で精進を重ねている。 22歳の時に教員になった落語家の桂雪鹿さん(34)は、元々漫才師になる道を考えるほどのお笑い好きだったが、教育実習で子どもたちの素直さに触れ「絶対先生になる」と決意した。赴任後もやりがいは感じたが、一番褒められるのは忘年会のコント。複雑な思いがくすぶり続けた
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【境界から 韓国】フェミニズム巡り対立する若い世代の男女 政治にも広がり
ソウル近郊の大学に通う朴☆(女ヘンに研の旧字体のツクリ)知(パク・ヨンジ)(24)は、高校を中退し、ハンバーガー店でアルバイトをしていた19歳の時、同僚の男性から関係を迫られた。「君を愛している」との言葉は、いつしか「言うことに従え」と強圧的になり、性暴力を受けた。 「断れなかった自分が悪い。そうされて当然なんだ」。忌まわしい経験は自らへの「罰」だと思い込み、胸の奥にしまい込んでいた。だが、大学に入って出会ったフェミニズムが、朴の考えを変えた。「自分の経験を説明する言葉を見つけることができた」。その解放感を共有しようと、学内でフェミニズムの団体にも参加した。 今も、フェミニストであるとい
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「旅」デニム愛あふれる「聖地」 自分だけのジーンズも 岡山県倉敷市児島
瀬戸内海に臨む岡山県倉敷市児島地区は、「国産ジーンズの聖地」として、デニムを愛する多くの人が訪れるという。自分だけのジーンズも作れると聞き、わくわくしながら向かった。 JR児島駅を出ると、天井から垂れ下がる複数のジーンズが迎えてくれた。児島は良質の綿花が取れることから、江戸時代後期に繊維産業が始まり、1965年に日本初の国産ジーンズの生産が始まったという。 まずはジーンズ作りが楽しめる「ベティスミス ジーンズミュージアム&ヴィレッジ」へ。 体験工場で、数ある中からストレッチの利いた濃いインディゴのスリムジーンズを選択。装飾用に、緑やピンクなど色とりどりのリベット(ポケット口を補強するび
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市民権を得たプライドパレード、30年前日本で始めた92歳の男性が心配すること LGBT理解増進法に潜む差別、「大事なのは個々の幸せ」
6月は、性的少数者の権利への啓発を促すプライド月間。毎年、世界各地で関連するパレードやイベントが開かれるようになったのは、1969年6月28日にニューヨークで起きた「ストーンウォールの反乱」がきっかけだ。この日、ゲイバー「ストーンウォール・イン」に強制捜査に入った警察と、反発した客らが衝突。翌年6月からデモ行進が行われるようになり、性的少数者の権利拡大を求める運動として広がった。 日本でパレードがスタートしたのは、1994年。30周年を迎えた今年4月、東京・渋谷で行われた「東京レインボープライド」は過去最大の規模になった。初回のパレードを企画したのは、ゲイ雑誌
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【回転ずし大手】回す戦略、違い鮮明 上昇気流、加速の一手
回転ずし大手のスシローとくら寿司が好調だ。新型コロナウイルス禍や迷惑行為騒動による客足の落ち込みを脱し、直近の中間決算ではともに増収増益を記録。割安なキャンペーンや人気キャラクターとのコラボレーション企画で、消費者を引き付けた。上昇気流に乗る中、さらなる加速に向けた「回す戦略」は違いが鮮明になっている。 ▽デジロー 大阪府吹田市のスシロー江坂店。テーブル席に向かうと、ブースの壁いっぱいに設置されたモニターが目に飛び込んできた。すしなどの商品が映し出され、ゆっくりと流れていく。スシローを運営するフード&ライフカンパニーズ(F&LC
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【世界難民の日】命を守れる法制度に 改正法施行で送還の恐れ 認定NPO法人難民支援協会代表理事 石川えり
「軍事クーデターの後、反政府デモに参加して逮捕されそうになった」「同性愛は死刑になるので、脱出した」。母国での迫害を逃れ、日本にも多くの難民が来ている。 6月20日の「世界難民の日」を前に、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が発表した推計によると、故郷から避難を余儀なくされている人は世界で空前の1億2千万人に達した。これは10年前の約2倍で、日本の人口にほぼ匹敵する。 ウクライナやガザのみならず、スーダン、コンゴ(旧ザイール)、エチオピアなど、世界の至る所で紛争や迫害があり、大勢の人が避難している。
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【防災気象情報見直し】「建て増し」重ね複雑化 命守る行動に生かせるか
「建て増し」を重ねて複雑化した防災気象情報は、どう改良すれば命を守る行動に生かすことができるのか。有識者検討会が18日、情報を「4段階16通り」に整理した名称案を含む報告書を公表。「受け手の主体的な判断」への支援が役割と強調した。情報が多い割に伝わりにくいとの評価を覆すには、伝え方に工夫を凝らす取り組みが欠かせない。 ▽「よかれと」 「大災害が起きるたびに、よかれと思って情報を建て増ししてきた」。気象庁の担当者は、防災気象情報が複雑化した歴史をこう振り返る。 死者・行方不明者が299人に上った19
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【ロシア大統領訪朝】欧米への対抗姿勢鮮明に 国連制裁破り「常態化」も
ロシアのプーチン大統領は北朝鮮訪問に合わせ18日の朝鮮労働党機関紙、労働新聞に寄稿し、ロ朝関係の重要性を強調した。「ウクライナでの軍事作戦に対する北朝鮮の強力な支持」を歓迎。欧米との対立が決定的となったロシアは、同様に制裁を受ける北朝鮮と共闘姿勢を鮮明にする。緊密連携により、国連安全保障理事会の制裁破りが「常態化」(専門家)する恐れもある。 ▽絶賛 「米国による長年の経済的圧力や軍事的脅迫を受けながら国益を守ってきた」。プーチン氏は寄稿で北朝鮮を絶賛。欧米はウクライナを軍事支援しロシアに制裁を科しているが「ロシアを封じ込め孤立化
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【ウクライナ侵攻の行方は】G7合意の履行にリスク 南の国々、取り込みも不発 笹川平和財団上席研究員 畔蒜泰助
ロシア・ウクライナ戦争は停戦・和平の見通しもないまま2年4カ月が経過しようとしている。 そうした中で、6月15~16日にウクライナ提唱の和平案「平和の公式」を話し合う世界平和サミットが100以上の国と国際機関が参加してスイスで開催された。また13~15日には、イタリアの先進7カ国(G7)首脳会議でもウクライナ支援が議論された。二つの国際会議の成果を、どう評価すべきだろうか? ウクライナ政府は、平和サミットにロシアを招待しなかった。その狙いは、西側主導の対ロシア制裁に距離を置く中国や、グローバルサウスと呼ばれるアジア、中東、アフリ
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【SNS成り済まし投資詐欺】対策強化へ本腰どこまで LINEやメタの動き焦点
著名人に成り済まし、投資に誘う交流サイト(SNS)の詐欺広告の対策を政府が決めた。運用を改善するよう事業者へ一定の圧力をかける内容だが、拘束力はない。LINE(ライン)ヤフーや米メタといったIT大手が、防止策の強化にどこまで本腰を入れるかが当面の焦点となりそうだ。 ▽直近は改善か 警察庁の1~3月の集計によると、SNS型投資詐欺で最初の接触に使われたSNSやサイトの割合は、男性がライン20・5%、フェイスブック20・0%。女性はインスタグラム35・3%、ライン18・5%。SNSでの対策が、被害防止に欠かせないことは明確だ。
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【安倍派裏金】議員主張を真っ向否定 異例の展開、説明求める声
責任を負わされた形の事務方が公開の法廷で、議員らのこれまでの主張を真っ向から否定する異例の展開となった。自民党安倍派の政治資金パーティー裏金事件の公判で事務局長松本淳一郎被告(76)は、資金還流の再開が幹部議員らとの協議で決まったと証言。再開の判断に幹部議員らの関与はあったのか―。国民の信頼をよそに脈々と続けられた裏金づくりの実態に関し、身内の自民党からも説明責任を果たすよう求める声が一層強まっている。 ▽やむなし 「還流が決定されたということでいいか」「はい。やむなしという結論だった」。還流再開の可否が議題となった2022年8
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【政治資金規正法改正】細部に潜む「抜け道」 生煮えの制度設計(1)
裏金事件を受けた政治資金規正法改正案が19日成立する運びとなった。自民党は、公明党や日本維新の会との修正協議を重ね、再発防止へ実効性を確保したと強調。岸田文雄首相も自信を見せる。だが制度設計は生煮えの部分が目立ち、細部に「抜け道」が潜んでいる。 ◇ ◇ ▽独立性、権限に課題 第三者機関 政治資金の透明性を確保する上で、鍵を握るのは付則で定められた第三者機関の設置だ。「ブラックボックス」と呼ばれた政策活動費の支出に対する監査を担うことになるが、具体的内容は「検討
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【政治資金規正法改正】領収書「黒塗りあり得る」 政策活動費(2)
政策活動費は主に政党から政治家個人に支給される資金を指す。明確な根拠規定はなく、自民は二階俊博元幹事長に在任中の5年間で約47億8千万円を渡した。使途を明らかにする必要がないため、野党は「選挙工作に使ったのではないか」とただした。 首相はかねて使途について「個人のプライバシーや企業の営業秘密、政党の戦略が他の政治勢力や諸外国に明らかになってしまう」と述べ、全面公開に慎重だった。しかし維新の賛成を取り付けるため、要求通りに年間の支出上限を設け、10年後に領収書を公開すると付則に加えた。 ただ自民の実務者は参院政治改革特別委員会で、
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【政治資金規正法改正】与野党、主張平行線 企業献金とパーティー(3)
与野党の主張が平行線をたどったのは企業・団体献金の扱いだ。 衆院政治改革特別委員会では、立憲民主党の柚木道義氏が「紅こうじ」による健康被害問題を持ち出し、機能性表示食品の上位5社が自民の政治資金団体に10年で約3億5千万円を寄付したと指摘。健康被害が出ても報告義務や罰則がない現行制度の問題点を突き「政策をゆがめたのではないか」と迫った。 一方、自民は多様な政治資金を確保する必要性を強調。首相も特別委などで最高裁判決を引き合いに「企業は政治活動の一環として寄付の自由がある。一部の企業からお金を受けることによって政策がゆがめられるこ
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【政治資金規正法改正】責任転嫁助長の恐れ いわゆる連座制(4)
裏金事件では、安倍派の会計責任者が在宅起訴されたのに、「知らぬ存ぜぬ」を繰り返した派閥幹部が立件されなかったため「トカゲのしっぽ切り」と批判が上がった。 そこで国会議員に対し、会計責任者の監督と、政治資金収支報告書が規定通りに作成されたと認める「確認書」の交付を義務付けた。不記載や虚偽記入があった場合に、確認が不十分であれば公民権停止につながる50万円以下の罰金を科す。 自民はこれを「いわゆる連座制」と定義。確認書を交付している以上、記載内容を「全く知らなかった」と言い逃れできなくなるという理屈だ。ただし、会計責任者が虚偽説明し
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【政治資金規正法改正】資金分散で規制形骸化 政治団体間の資金移動(5)
自民の茂木敏充幹事長の政治団体から使途公開基準の緩い団体に多額の資金が移されていたと共同通信が2月に報じた。野党は「茂木氏方式」と呼び、「違法ではないが脱法的」と非難した。 そこで、政党支部や資金管理団体に相当する「国会議員関係政治団体」から年間1千万円以上の寄付を受けた「その他の政治団体」を対象に、国会議員関係政治団体と同等に支出を公開させて厳格化する。 だが立憲民主党の岡田克也幹事長は「三つ団体をつくってしまえば、3千万円未満は中身を明らかにしなくても済む」と強調。資金分散による規制の形骸化に懸念を示した。立民は基準額を「年
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【国の指示権拡大】「主従関係」に強い疑念 自治体の姿勢問題視も
非常時、国が自治体へ指示できるようにする改正地方自治法が19日に成立する。政府はコロナ禍を例に必要性を強調するが、今後どんな事態に行使されるのかは曖昧なまま。「恣意的な介入を許し、対等な関係の国と地方が主従関係の時代へと逆戻りさせられる」と疑念は根強い。ただ、明確に反発した自治体首長や議会は一部にとどまる。補助金の配分権限を持つ国の方針に従いがちな自治体側の姿勢を問題視する声もある。 ▽追及 「その時点での法制では想定されない事態はこれからも起こり得る。地方の自主性、自立性は維持し、(指示権行使は)特例として運用する」。松本剛明
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【日航トラブル頻発】現場力強化へ抜本対策を 再生の原点風化させるな
安全運航に直結するトラブルを相次いで起こした日本航空が、国土交通省に再発防止策を提出した。国交省が5月に鳥取三津子社長を呼び厳重注意した際、提出を求めていた。1月2日に羽田空港で起きた海上保安庁機との衝突事故では、全乗客乗員の「奇跡の脱出」が世界から称賛されたが、実際は各所にほころびがあった。 日航は致命的な事故が起きる前に、現場力の強化に全力で取り組まなければならない。 航空業界は人手不足で現場の疲労蓄積が深刻という。空港の地上業務などは肉体的にきつい仕事だ。精神論や運用上の弥縫策では問題の根本解決にならない。機械化を進めるな
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【戦後79年】米先住民部隊、沖縄戦に 日本人写真家、元兵士撮影 「捨て石」の過去に共感
沖縄は23日、沖縄戦で亡くなった犠牲者らを悼む「慰霊の日」を迎える。沖縄戦では米先住民族ナバホの若者も、民族の言葉を活用した暗号を使う特殊部隊として、米海兵隊に従軍。在米写真家の河野謙児さん(74)は「米政府に虐げられた先住民が、大戦の局面で都合良く使われた歴史を伝えたい」と元兵士らを撮ってきた。「本土防衛の捨て石にされた沖縄の境遇も似たところがある」と共感、日本での写真集の出版も目指している。 「沖縄」、「琉球列島」、「昭和二十年」。白黒の写真の中で、高齢の元兵士の男性が広げた日の丸に、日本語が手書きされている。男性はこの絹製の布を米西部のナバホの居留地へ持
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ヤンマーの由来はトンボの王様 農機を世界で販売【経済トレンド】
農機大手。創業者の山岡孫吉(やまおか・まごきち)が1912年に大阪市でガス発動機の修理・販売を行う山岡発動機工作所を創業したのが始まりだ。1921年に石油発動機を完成させて製造業に転換。この発動機にヤンマーという商標を初めて使った。トンボの王様といわれるオニヤンマにちなんだ。(共同通信=出井隆裕記者) 滋賀県出身の山岡は大阪での成功を夢見て故郷を出た。ガス配管工事の作業員として働いた際にガス発動機に出会い、創業のきっかけに。ドイツ視察で燃費の良いディーゼルエンジンに可能性を感じ、1933年に世界初の小型ディーゼルエンジンの開発に
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いびき、肩凝りを緩和して安眠できる枕 ストレートネックにも対応【経済トレンド】
日々の疲れを癒やすには快適な睡眠が欠かせない。そのためにも自分に合った枕選びが大事になる。形状や素材に工夫を凝らし、いびきや頸椎(けいつい)の変形による首の痛み、肩凝りといった悩みに対応する商品がそろっている。(共同通信=川村剛史記者) ニトリの「横向き寝がラクなまくら(ナチュラルフィット)」は、頭が横向きになりやすい形状をしている。首の角度を一定に保ちやすく、肩口などの負担を少なくして自然な姿勢を保つ。いびきは、舌が喉の奥の方に落ちやすいあおむけの姿勢だと出やすい。横向きはいびきの抑制につながることがあり、手助けになる。販売価
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超加速スポーツベイブレード開発者に聞く 発売半年200万個出荷【経済トレンド】
タカラトミーの現代版ベーゴマの最新シリーズ「ベイブレードエックス」は2023年7月の発売から半年間で国内累計出荷数が200万個に達した。(共同通信=出井隆裕記者) 互いのコマをランチャーといわれる発射装置で回し、専用スタジアムで戦わせる基本は変わらないが「超加速」という新ギミックを採用。企画・開発を担当したタカラトミーの篠永恭平(しのなが・きょうへい)さんは「『遊びではなくスポーツ』という世界観を前面に打ち出しています」と語る。 コマの軸先、専用スタジアムの縁のレー
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壊れやすいハードディスク対策どうすれば? 中央大の岡嶋教授に聞く【経済トレンド】
Q ハードディスクって壊れやすいんですか? A パソコンを構成する部品の中では比較的壊れやすいものになります。どんな機械でもそうですが、激しく動く箇所は負荷が集中します。 ハードディスクは構造上、円盤を1分間に1万回転ほどの速度で回転させることでデータの読み書きをしています。落としたら壊れそうなのは想像できると思います。 故障対策が手厚い高級機だと、落下や振動を検知したら回転を止めたり、2台のハードディ
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高齢者定義70歳に引き上げの条件とは 結城康博淑徳大教授に聞く【経済トレンド】
2024年5月23日の経済財政諮問会議で「高齢者の健康寿命が延びる中で、高齢者の定義を現在の65歳から5歳引き上げることを検討すべきだ」との70歳案が民間有識者から提起された。この議論は年金支給開始年齢と関連するため、社会保障給付費抑制策への環境づくりでないかと臆測されがちだ。 2023年度予算ベースで年金給付費は60・1兆円と社会保障給付費の44・8%を占め、国内総生産(GDP)比では10・5%となっている。今後の超少子化・高齢化社会において財源問題が大きな課題となっている。
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30年たった今も見つかる2千人の遺骨、殺りくをあおったラジオの教訓 80万人犠牲のルワンダ大虐殺、今も続く悲しみと希望
今から30年前、アフリカ中央部の小国ルワンダで悲劇が起きた。この国で多数派を占める民族、フツ人主体の政府軍や民兵が1994年4月から7月までの約100日間で、少数派ツチ人と穏健派フツ人の殺りくを繰り広げたルワンダ大虐殺だ。当時、権力を巡る争いなどが続いていたルワンダで惨劇の引き金となったのは、フツ人の大統領を乗せた航空機が何者かによって首都キガリで撃墜されたことだった。国際社会の介入が遅れて被害は拡大し、犠牲者は約80万人に達した。2024年4月上旬、30年の節目にルワンダを訪れると、今なお発見される大量の遺骨を前に肉親を思う遺族や、虐殺を助長したメディアの過ちを胸に民族和解を促すラジオ番組
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【AIの世紀】創薬、開発期間を大幅短縮 感染メカニズム解明手助け
日本の医薬品開発で生成人工知能(AI)を活用し、研究に必要な期間短縮や費用削減を狙う「創薬AI」のプロジェクトが進んでいる。新型コロナウイルスなど感染症のワクチンや新薬を開発する際、AIがウイルスや細菌のタンパク質の電子顕微鏡画像を大量に学習し、その形態の変化を予測し、感染のメカニズム解明を手助けする。製薬17社が薬の成分の化合物と効能のデータを持ち寄り、有望な化合物を提案するAIも開発する。 メガファーマと呼ばれる欧米の製薬大手は新薬開発に豊富な資金を投入し、日本の製薬業界の存在感は薄い。AIを利用して生き残りを目指す。 「創
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【仏観光業界の温暖化対策】観光業も温暖化対策加速 仏南西部、人気持続を左右
自然や歴史遺産で旅行先として人気が高まるフランス南西部で、降雪の減少や干ばつの発生など各地と同様に地球温暖化の影響が出始めている。持続可能な発展が観光業界にも重要課題。観光コンテンツの多様化や温室効果ガスの排出削減を図る鉄道利用の促進など、対策を加速させている。 「例年は雪があちこちにあるのだけど」。3月下旬、世界遺産のガバルニー圏谷へ国外の旅行業者らを案内したルルド観光局のロラン・ポンゾさんは、道沿いにほとんど雪が残っていない状況を見て説明に付け加えた。 地元メディアによると、この日ガバルニー村の気温は22度近くになり、3月と
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筋ジス新薬「届ける」決意 研究重ね、有効物質発見 自身も患者の信州大助教
筋力が上半身から低下し身体を動かしにくくなる難病「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)」の症状を和らげる新薬の研究に、患者でもある研究者が取り組んでいる。試行錯誤し、効果が期待できる物質を発見。「最終ゴールは患者に薬を届けること」と決意を新たにしている。6月20日は病気への理解を広げる「世界FSHDの日」だ。 「周りから置いてけぼりを食らっているようだった」と振り返るのは、信州大基盤研究支援センター(長野県松本市)の助教、吉沢隆浩さん(41)だ。小学3年のころ、口がぽかんと開いてしまう症状があり、病院でFSHDと診断された。
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【ホスピス型住宅】高収入「みとりビジネス」 需要捉え急増、適正化論も
複数の運営会社で不正、過剰な訪問看護が指摘される「ホスピス型住宅」。濃密な医療的ケアが必要な末期の高齢者の受け皿が足りないというニーズを捉え、各地で急増している。かなりの高収入を得ている会社もあるが、その原資は国民の税金と保険料。医療・介護業界では「みとりビジネス」として以前から問題視されており、適正化を求める声が上がる。 ▽1人月100万円 「倫理的にどうなのか、ジレンマを感じていた」。大手のホスピス型住宅併設の訪問看護ステーションで働いたことがある首都圏の看護師は、そう漏らす。 診療報酬をなる
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【政治資金規正法改正】首相、後ろ盾麻生氏と亀裂 総裁再選戦略に狂い
岸田文雄首相と、政権発足以来の後ろ盾である麻生太郎自民党副総裁の間に亀裂が生じている。裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、首相が麻生氏の反対を押し切り、公明党が主張するパーティー券購入者の公開基準額の引き下げ幅を「丸のみ」したからだ。麻生氏が不快感を強めれば、9月の党総裁選で再選を目指す首相の戦略が狂いかねない。 ▽怒り 「今国会会期末までに規正法改正案の成立を期する。協力をお願いしたい」。首相は17日の自民党役員会で呼びかけた。出席者によると、首相と麻生氏は終始目を合わせなかったという。
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ガラス細工のホタルイカ人気、30分で完売 SNSで反響「かわいい」「おいしそう」
富山湾の春の味覚、ホタルイカをかたどったガラス細工が人気を集めている。富山市の富山ガラス工房が交流サイト(SNS)で作品を紹介すると、「かわいい」「おいしそう」とたちまち話題に。手作りのため、用意できた数十個を売り出すたび、30分もたたずに完売する状況が続く。ホタルイカ漁の最盛期を過ぎた今でも、多くの人の目を楽しませている。(共同通信=吉永美咲) 作品は「生」と「ボイル」の2種類で、ホタルイカのつややかな質感や色味を再現した。一人で制作するフリーのガラス作家勝木竜二さん(35)は「注目してもらえるのは純粋にうれしい」とほほ笑む。
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韓国俳優のソン・ソック 切なく危うい大人の色気
すらりとした長身に甘いマスクで、代表作はメロドラマもしくはラブコメディー。歴代の韓流スターが歩んできた、そんな王道を覆す存在がいる。俳優ソン・ソック、41歳。ふがいない浮気男や悪役でその名を知らしめた彼から漂うのは、切なく危うい大人の色気だ。 俳優として遅咲きのソックは、30代前半で男性への性被害を描いたフランスと韓国の合作「Black Stone」で映画デビュー。全編英語の米SF作「Sense8」でドラマに本格出演し、メインキャストの一人であるペ・ドゥナの恋人役を情熱的に演じた。 注目を集めたきっかけは、いずれも日本のドラマをリメークした2018年の「マザー」と「最高の離婚」だ。前者は
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【記者書評】岩井圭也著「われは熊楠」 「天才」の学びの源流描く
博物学や民俗学、生物学など多数の研究分野で膨大な成果を残し、「知の巨人」と呼ばれた南方熊楠。好奇心を片手に縦横無尽に世界を駆け抜けた、フィールドワークの巨人でもあった。本作は、その生涯を通じて「学び」の源流を生き生きと描き出す歴史小説だ。 凡人とは違う頭脳の持ち主だったのだろう―。そんな安易な予測は、冒頭から思わぬ方向に吹き飛ばされる。登場するのは15歳の熊楠。中学を無断欠席し、捕まえたカニを観察する彼の頭の中では「いくつもの声が同時に湧いて」いる。声の主はどれも熊楠自身だ。 幼い頃から唐突に現れる声は彼をおびえさせ、かんしゃく
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日傘利用、男性にも広がり 猛暑影響で熱中症対策に シンプルで明るい色が人気
今夏も猛暑が予想される。外出時の熱中症対策として、日傘が効果的だ。近年は、男性の利用も増えているという。 ぎらぎらと地上に降り注ぐ太陽光線には、紫外線、可視光線、赤外線が含まれる。可視光線と赤外線は肌や衣服などに吸収されると熱に変わる。天気が原因で体調が崩れる「気象病」を専門とする愛知医科大客員教授の佐藤純医師は「熱中症予防は『遮光』『遮熱』がポイント」と指摘する。 佐藤医師によると、真夏に日光を浴びると頭付近の温度は55度前後にまで上昇するが、日傘を使えば40度ほどに下がる。「日差しを遮ることで体感温度が下がり、熱中症の危険が
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【五輪評論】パリからパリ 五輪130年の回帰(4) 自由な都市型競技、メダル至上主義と折り合いつくか
パリ五輪では即興で踊りを繰り出す「ブレイキン」が採用され、コンコルド広場で行われる。東京大会のスケートボードなどを合わせ、五輪に「都市型競技」の導入が続く。若者のスポーツ文化が五輪に加わる意味や懸念をスケートボードに詳しい立命館大産業社会学部教授の市井吉興さんが論じた。 振り返れば、スケートボードは「やんちゃな若者が勝手気ままに街中を疾走する危険なもの」と煙たがられていた。しかし、東京五輪での日本選手の活躍は、スケートボードをオリンピアンやプロにもなれる「スポーツ」へと、子どもたちのみならず、大人たちの認識を変えてしまった。スケ
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石垣島に残る巨石の謎を追った郷土史家の著書「明和大津波」が天皇陛下の目に留まった訳は
天皇陛下は一人の郷土史家に光を当てられたことがある。 江戸時代に沖縄・先島諸島を襲った「明和の大津波」を、丹念なフィールドワークで調べ上げた沖縄県石垣市の故牧野清さん(1910~2000年)だ。 過去に学び、未来に生かす。牧野さんの姿勢は、防災に対する陛下の思いと一致する。足跡をたどると、皇室とのつながりが見つかった。(共同通信=田中真司) ▽1冊の本 「『津波石』の存在は、石垣市の職員であった牧野清氏が職務の傍ら現場に赴き、石垣島に
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【法務省の保護司検討会】処遇時の安全、議論不可避 過度な考慮、強み欠く懸念
大津市で男性保護司が殺害された事件は、担い手不足解消を図る議論の真っただ中にある法務省に衝撃を与えた。同省の保護司制度に関する有識者検討会はこれまで、安全対策を議題の中心に据えず、軌道修正は不可避に。ただ温かみのある環境で膝を突き合わせるのが望ましいとの考えから、危険性を考慮し過ぎると処遇の強みを欠くとの見方もある。議論の落としどころは見えない。 「保護司制度の根幹を揺るがす事態だ。職員一丸となって安全確保に取り組む」。法務省は10日、全国の保護司に、押切久遠保護局長名でのメッセージを発信するという異例の対応を取った。 保護司は
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【政治資金】維新、旧文通費改革で混迷 政権との距離感巡り温度差
日本維新の会が看板政策としてきた「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)改革への対応を契機に党内が混迷しつつある。改革実現の見返りに派閥裏金事件を受けた自民党の政治資金規正法改正案に、衆院で賛成を決めた執行部の判断を疑問視する声が出始めた。創業者の橋下徹氏も連日、交流サイト(SNS)で苦言を呈する。根底には政権との距離感を巡る温度差がありそうだ。 「結局、岸田文雄首相を助けただけに終わってしまう。何も得るものがない」。今国会中の旧文通費改革が不透明な状況に中堅議員はぼやいた。きっかけは浜田靖一自民国対委員長の11日の発言だ。会期内の改革実現は「日程的に見
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【世界平和サミット】ウクライナ案、一歩前進 ロ孤立回避、和平は遠く
ウクライナ提唱の和平案を話し合う「世界平和サミット」に57カ国の首脳級がそろい、共同声明を採択した。ロシア軍撤退を明記した案を旗印に国際的な団結を誇示し、ロシアに受諾を迫る戦略は一歩前進したが、地域大国のインドなどは声明に加わらなかった。ロシアは欠席圧力をかけ、多くの新興国が首脳を送らなかった。不参加の中国はロシアに肩入れした独自の和平案を公表。分裂した世界の中でロシアは孤立を回避し、和平実現は遠い。 ▽結束訴え 「結束した世界は、いかなる侵略者よりも強い」「われわれは、世界の分断という最も恐ろしい事態を回避できた」
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【G7サミット閉幕】結束演出も溝浮き彫り 「中絶」権利、言及せず
イタリア南部ファサーノで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明は、ウクライナへの「揺るぎない支援」を表明、強い結束を演出した一方で、各国政権の立場の違いによる溝も浮き彫りとなった。「妊娠中絶」の文言が省かれ、性的少数者の権利の言及が減るなど2023年5月の広島サミットより内容が後退した点もある。 ▽弱めの表現 ウクライナ支援では、制裁で凍結したロシア資産を活用しウクライナに500億ドル(約7兆8千億円)を提供することを決定。ウクライナが劣勢となる中、自
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【朝鮮半島情勢】南北の応酬、異様な緊張感 「一触即発の危機」を、日本と米国は憂慮
韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記が初の南北首脳会談を経て、交流強化をうたった共同宣言を発表してから15日で24年。ビラ散布やごみ風船、軍事境界線での宣伝放送など挑発の応酬が続き、朝鮮半島は異様な緊張感に包まれている。専門家は一触即発の危機に陥ることを懸念。日米も憂慮を深める。 ▽好戦 「平和は屈従ではなく力で守るものだ」。韓国の尹錫悦大統領は6日、朝鮮戦争の戦没者を追悼するソウルでの式典で「われわれの力が強くなってこそ北朝鮮を変えることができる」と述べ、抑止
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【G7サミット閉幕】存在感増すグローバルサウスと連携を 日本は架け橋になることが求められている
やまぬ銃撃、大国による威圧、深まる世界の溝…。課題が山積する中、イタリア・ファサーノの地で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)はどのような成果があったのか。日本総合研究所調査部長の石川智久さんに聞いた。 近年、先進7カ国(G7)の存在価値が高まっている。リーマン・ショック後いったんは、参加国が多い20カ国・地域(G20)が最も重要な国際的な議論の場となっていた。だが、その多さが災いして意見が集約しにくくなったことや、米国と強権国家の中国、ロシアが対立する中で、中ロも加わっているG20の機能不全が顕著になり、日米欧はG7を再
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【G7サミット閉幕】首脳は内政で苦境、指導力に陰り 自由と民主主義の価値共有の枠組み岐路
イタリアで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、ウクライナ情勢をはじめ国際社会の難題に結束して対処する意思を確認し、幕を閉じた。ただ、首脳の多くは支持低迷や選挙戦での劣勢など内政で苦境に直面する。指導力の陰りは隠せず、自由と民主主義を普遍的価値として共有するG7の枠組み自体が岐路に立たされている。 ▽不透明 G7サミット初日の13日、ウクライナを議題とした討議。岸田文雄首相は招待されたゼレンスキー大統領を前に「G7で引き続き結束して支えていく」と述べ、将来に
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【G7サミット閉幕】ウクライナ支援では大きな成果 ロシアの継戦能力をそぎ和平を
ウクライナやパレスチナ自治区ガザで戦火はやまず、アジアでは中国が威圧的行動を続けている。こうした中で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するという内容の首脳声明をまとめた。G7が山積する課題に結束して取り組む姿勢を打ち出したことを、ひとまず評価したい。 G7は今回、ウクライナに侵攻したロシアへの制裁措置として凍結したロシア資産の活用策を決めた。基金を設けて融資し、これを基にウクライナを支援する。融資は500億ドル(7兆8千億円強)規模に上り、同国は返済義務を負わないという。
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【G7サミット閉幕】国際秩序の維持は大きな岐路に 問われる成果の継承
やまぬ銃撃、大国による威圧、深まる世界の溝…。課題が山積する中、イタリア・ファサーノの地で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)はどのような成果があったのか。慶応大教授の神保謙さんに聞いた。 イタリア南部ファサーノで開かれた今回の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、半世紀近くにわたり国際社会の秩序形成に努めてきたG7が、まさに大きな岐路に差しかかっていることを印象付ける会合になった。 英国とフランスでは近く総選挙が予定されている。米国も11月に大統領選を控えて
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100メートルでの初五輪へ「1位以外は興味ない」 日本短距離界のエース、サニブラウン・ハキーム
人類最速のスプリンターを決める陸上男子100メートルで、世界との距離を着実に縮めている。サニブラウン・ハキーム選手(25)=東レ=は花形種目で初めての五輪代表に決まった。パリ大会では「1位以外は興味がない」と公言し、競技に打ち込む。一方で、小中高生向けの大会を創設するなど、陸上界のための努力も惜しまない。パリ五輪の開幕が近づく中、日本短距離界のエースが抱く熱意に迫った。(聞き手 共同通信・山本駿) ▽世界トップ選手の1人に、確かな自信 昨夏の世界選手権では前年の7位を上回る6位で2大会連続の入賞。
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【河合優実さん×山中瑶子監督】出会って生まれた「宝物」、カンヌで栄冠 高校時代に直談判!6年越し出演映画
ドラマ「不適切にもほどがある!」など話題作への出演が相次ぎ、今を時めく俳優の河合優実さん(23)が、高校生の時に出演を直談判していた山中瑶子監督(27)とタッグを組んだ。そして生まれた映画「ナミビアの砂漠」は、フランス・カンヌ国際映画祭の「監督週間」に出品され、国際批評家連盟賞を受賞。そんな輝かしい成功をつかんだカンヌの地で、ワールドプレミア(世界初公開)を終えた2人に思いを聞いた。今回得た「宝物」を胸にどんな活躍をしてくれるのか、期待が高まる。(共同通信=鈴木沙巴良) ▽国を超え、同世代に広がった共感 ―世界三大映画祭の一つ、
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【沖縄戦】猛爆「鉄の暴風」による壊滅的な破壊 写真で振り返る米軍上陸前後の首里城周辺
太平洋戦争末期の沖縄戦の戦闘終結前後に、米軍が撮影した数多くの写真が、沖縄県公文書館(同県南風原町)に収蔵されている。このうち、激戦地となった那覇市の首里城周辺の航空写真を時系列で並べると、壊滅的な破壊と復興の姿が浮かび上がる。 「沖縄慰霊の日」の6月23日を前に日米で計20万人超が死亡、県民の4人に1人が犠牲となった沖縄戦を写真で振り返った。 1945年4月1日、沖縄本島中部の海岸に上陸した米軍は「鉄の暴風」と呼ばれる空襲や艦砲射撃を続けながら進軍。旧日本軍は、首
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【G7サミット】忍び寄る「第3次世界大戦」の影 エスカレートの連鎖を断て
「サピエンス全史」などのベストセラーで知られるイスラエルの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリ氏が最近、米国際政治学者イアン・ブレマー氏に告げたという。「私たちは既に第3次世界大戦に突入しているかもしれないが、それに気付いていない可能性がある」 ロシアのウクライナ侵攻から2年余り。「第3次大戦を起こすわけにいかない」とのバイデン米大統領発言と裏腹に、戦闘は「ロシアVS西側」の代理戦争と化し、次第にエスカレートする。(共同通信編集委員 川北省吾) 米欧の軍事同盟、北大西洋条約
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ロックバンド「サカナクション」」のボーカル・山口一郎さんが語るディープなドラゴンズ愛「ナゴヤ球場に広告が出せて夢みたい」
発足から90年を迎えたプロ野球への思いを聞くインタビューシリーズ。人気ロックバンド「サカナクション」のボーカルの山口一郎さんは、2軍戦で使用するナゴヤ球場に自費で広告を出すほどの熱烈な中日ファン。本業の音楽と同様「一生やめられない」というドラゴンズへの思いを語った。(聞き手:共同通信=品川絵里、児矢野雄介) ▽北海道でドラゴンズファン 父が岐阜県・飛騨金山の出身で、根っからのドラゴンズファン。北海道に移り住んで僕が生まれたんですが、当時の北海道は巨人ファンばかりで、学校に行くとみんな巨人ファンで自分だけドラゴンズファンでした。音
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ただ静かに「ここにいる」 障害者の作品作りに伴走する病院職員【生き抜く】「アウトサイダーアート」
魂を刻みつけるように、絵を描く。慈しむように色を重ねる人もいる。東京・八王子の平川病院にある「造形教室」。ここは精神障害がある人々が、内なる自己を表現する場だ。生きづらい現代社会で、参加者は自らの「生」をよみがえらせようとしている。 教室には、あまたの作品が所狭しと並べられている。引きちぎられた左手を模した白い立体物は、その断面が血のように赤い。不敵に笑う3人を描いた油絵は、その瞳の部分だけがオリーブの実のように重ねて盛られている。一見異様だが目が離せないのは、そこにむき出しの情念が宿っているからだ。 作品作りに伴走するのは、教
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【日銀が国債購入減額へ】苦境映す小出しの修正 足元見透かす市場
日銀は14日、金利を低く抑えるために実施している国債買い入れの減額方針を決めたが、開始時期や減額幅は次回7月会合で決めるという折衷策だった。急な引き締めで景気が悪化することは避けたい一方、歴史的な円安を前に「ゼロ回答」もできない苦しい立場を映す小出しの修正となった。市場は日銀の足元を見透かし、円売りを進める場面もあった。 ▽既定路線 「丁寧に(減額計画の)決定のプロセスを進めたい」。植田和男総裁の記者会見は慎重な物言いがいつになく目立った。
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【G7サミット】信頼回復へガザ停戦を ウクライナ和平の鍵 元外務政務官 山中あき子
イタリアで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、制裁で凍結したロシア資産を活用し、新たに500億ドル(約7兆8千億円)の支援をウクライナに行うことで合意した。 支援の輪をさらに広げ、和平の糸口を探っていくには、イスラム組織ハマス掃討を掲げ、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで続ける軍事作戦を停止する必要がある。 なぜなら、米国はロシアに厳しく対処する一方で、ガザの人道危機を引き起こしている同盟国イスラエルには甘いとする「二重基準」への不信感がグローバルサウス(
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【日銀が国債購入減額へ】緩和策の着実な修正必要 円安防ぎ、財政に規律を
日銀は金融緩和策である国債購入の減額方針を決めた。購入を減らすと国債の価格が下がり、利回りは上がりやすくなるので、3月のマイナス金利解除に続く引き締め策となる。物価下落が続くデフレではなくなったためで、当然の措置だ。 脱デフレを目指して日銀は金利の上昇を抑えようと、国債を大量に買って市場に資金を供給する量的緩和策を進めてきた。その結果、保有額は600兆円近くに上り、発行残高に占める比率が50%超と異常な高水準に達している。 14日の金融政策決定会合で日銀は、7月の次
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【日銀が国債購入減額へ】詳細欠き期待外れ 金融政策正常化は緩慢 マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)フェロー 深谷幸司
日銀は14日の金融政策決定会合で、大規模な緩和策の柱だった国債購入の減額方針を決めた。実施に向けて、市場関係者の意見も聞きつつ、7月末の次回会合で減額の詳細を決める。購入を減らす時期や額は現時点では不明で、期待外れの内容であり、これで「決めた」と言っていいのだろうか。 市場関係者の多くは現在月6兆円程度の購入額を5兆円程度に減らして、近く実施するというシンプルな形を想定していた。それだけに、日銀は減額実施について慎重なスタンスを示したと言える。 3月の会合で日銀はマ
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【外国人育成就労】隣国と労働者奪い合いも 少子化深刻、受け入れ盛ん
参院本会議で14日に成立した改正入管難民法の新制度「育成就労」は、国内の労働力不足の解消が狙いだ。隣国の韓国や台湾も少子化が深刻で、外国人労働者の受け入れが盛んに。争奪戦は既に始まっており「選ばれる国」となるためには、待遇面はもちろん、受け入れ後のキャリアアップが明確に担保されているかも鍵となりそうだ。 ▽韓国 韓国は2023年の出生率が過去最低の0・72で、8年連続前年割れと「超少子化」に歯止めがかからない。人材確保が難しい製造業や農畜産業、漁業などの職場に限り、
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【中体連の縮小】教員の負担増、改革は不可避 削減競技から不満の声も
日本中学校体育連盟(日本中体連)が全国中学校体育大会(全中)の大幅な規模縮小に踏み切った。日本中体連の区分に沿えば19競技中、水泳や体操など9競技を2027年度から取りやめると決定。運営に携わる教員の業務量が増大して改革は避けられなかった一方で、削減された競技団体からは不満も漏れる。 ▽繁忙 東北地方で中学バドミントン部の顧問として全中に5度参加した30代の元男性教員は、家庭生活との両立ができず退職した。授業の準備をしながら土日は練習試合、お盆も練習で、完全な休日は
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【三菱UFJ処分】顧客の意思無視は「悪質」と判断 規制緩和議論に水を差す、との懸念も
証券取引等監視委員会は14日、顧客の情報管理を巡り違法行為があったと認定し、三菱UFJフィナンシャル・グループの銀行と証券計3社の処分を金融庁に勧告した。顧客側が拒否の意思を示していたにもかかわらず、機密性の高い情報を3社で共有した疑いがあり、監視委は悪質性が高いと判断。専門家らは、欧米に足並みをそろえようと進む規制緩和の議論に水を差すと懸念する。 ▽情報拡散 銀行、証券会社間の情報共有を制限するファイアウオール規制は、資金提供者として強い立場にある銀行の横暴を防ぐ
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【G7サミット】AIとの共生は遠い理想か 戦場では高性能兵器に
イタリアで開催中の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、急速に普及する人工知能(AI)の活用を主要テーマの一つに据えた。AIには、生活の利便性を飛躍的に高めるとの期待が寄せられる半面、ウクライナなどの戦場では兵器の高性能化に使われ、憎しみを生んでいる。AIが人類の発展を助ける「共生」の理想は遠い。 ▽史上初 14日、ヘリコプターで会場に降り立ったローマ教皇フランシスコはAIを議題とした討議に参加した。勢ぞろいした主要国の首脳に「AIがもたらす可能性に興奮する一方で、
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【G7サミット】対中国のスタンスに、目立つ温度差 岸田首相、東アジア情勢への関心の薄れ警戒
先進7カ国(G7)首脳は、海洋進出を強める中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を再確認した。ロシアの侵攻を受けるウクライナ情勢を巡る議論への注目が高まる中、岸田文雄首相は東アジア地域への欧米の関心が薄れないよう、各国と結束して対中抑止を図りたい考えだ。ただ中国との経済関係を重視する国もあり、温度差が目立つ。 ▽水面下の働きかけ 14日、イタリア南部プーリア州。首相はインド太平洋を議題とした討議で「インド太平洋地域と欧州の安全保障は不可分一体だ。引き続き
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【戦後79年】凄惨な歴史、目背けないで 丸木夫妻「沖縄戦の図」 大作完成から40年
連作絵画「原爆の図」で知られ、戦争の悲惨さに肉薄した画家の故丸木位里・俊夫妻による大作「沖縄戦の図」が今春、完成から40年となった。作品を多くの人に見てもらおうと、30年前、沖縄県宜野湾市に佐喜真美術館を開いた佐喜真道夫さん(78)は「住民を巻き込む凄惨な戦争の歴史から目を背けてはいけない」と訴える。 血を流して地に崩れ落ちた人や、炎に追われ逃げ惑う母子…。壁一面を覆う縦4メートル、横8・5メートルの絵を前に、来館者は立ち尽くし、後ずさりし、手で口を覆っていた。 同館によると、夫妻は1983年秋に制作を開始。「命を落とした人々の
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【AI どう向き合う―アート】触発し合う共同制作者 適切な距離で付き合う アーティスト 市原えつこ
生成人工知能(AI)の進化は、アートの創作現場に大きな変化をもたらすと言われる。それは表現者の存在を脅かす技術革新なのか―。アーティストと評論家が、現場の感覚と美術という枠組みについて論じた。 ◇ ◇ 昨年に参加した東京都現代美術館での企画展「MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ」で、作品の一部に、AIに生成させた架空の教団のプロパガンダ・ポスターを、人間の自作したデザインに混ぜて試験的に展示した。 その時に感じたのは、AIが自分とは違う切り口から発想をくれるツールのよう
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【AI どう向き合う―アート】根幹を問う絶好の機会 創造は作者の占有物か 美術評論家 椹木野衣
人工知能(AI)は今後も進化を続け、わたしたち人間のなしうる能力をどんどん凌駕していくだろう。それは創造性の代名詞として使われてきたアートにおいてもまったく同様だと思う。 けれども、アートはその先端的な見かけに反して、「作者」というひどく古い概念によって守られてきた。先に触れた「創造性」が帰属するのも、作品というよりは作者のほうだ。すると、AIそのものが人間としての作者概念を獲得できない限り、たとえAIが今後、作品の生成上でどんなに、驚嘆すべき能力を示そうとも、その所産は最終的には作者の側にいる人間から勝手に収奪されるしかない。
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負けてヘラヘラ笑う若手は叱り飛ばした。成績が悪いのに年俸が上がってびっくり・山崎裕之さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(40)
プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第40回は山崎裕之さん。ロッテで4番も務めたマルチな好打者ぶりを発揮し、埼玉移転で新たなスタートを切った西武では常勝軍団の土台作りに貢献しました。いぶし銀の輝きを放った二塁手は現役時代の話の中身にも渋さがにじみました。(共同通信=栗林英一郎) ▽かなわなかった甲子園大会での兄弟バッテリー 私の子どもの頃は少年野球チームとかが全くなかった。小学校から帰ったらランドセルを放り投げ、実家(JR上尾駅近くの和菓子店「伊勢屋」)の裏にあった造
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五輪控えるパリの「不都合な真実」。でこぼこの石畳、階段しかない地下鉄…花の都は「バリアー」だらけ
夏に五輪・パラリンピックが開かれる「花の都パリ」は、障害者に優しくない街なのかも―。記者が実際に車いすユーザーとパリの街を歩いてみた感想だ。大きくうねった石畳は、記者がスーツケースを転がして歩くだけでも一苦労。同行者の乗った車いすはひっくり返りそうになった。 地下鉄は網の目のように張り巡らされているが、車いすで乗れるのは1路線だけ。主要駅では人波をやりすごし、スリにも注意を払う必要がある。迂回に迂回を重ね、移動には通常の3倍の時間を要した。 東京やロンドンは五輪・パラリンピック開催を機にバリアフリーが進んだとされる。「パリは大丈
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【米金融政策】揺れるFRB、遠のく目標 金利差縮まらず
米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の利下げ回数の見通しを3回から1回に引き下げた。インフレ率が下げ渋り、物価目標の達成が遠のいているためだ。揺れるFRBは高い政策金利を維持し、円安基調の主因である日米金利差は縮まらない。日銀が円安是正も狙った政策調整に動くとの観測もあるが、行方は不透明だ。 ▽変化する意見 「(利下げを)あまりに長く待つと経済に悪影響があるし、早すぎるとこれまでの利上げが台無しになる」。パウエル議長は12日の記者会見で、利下げ時期を巡る判断の難しさを吐露した。 FRBが四半期ごと
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【自民総裁任期中の改憲断念】首相、保守層対策足踏み 裏金余波、再選へ懸念
岸田文雄首相が先送りできない課題と位置付けた憲法改正と皇位継承策の議論で足踏み状態が続いている。9月の自民党総裁選に向け、岩盤保守層の取り込み策として狙いを定めたものの、自民派閥の政治資金パーティー裏金事件の余波で任期中の実現は時間切れとなった。自民支持層の「岸田離れ」は顕著で、総裁再選へ懸念が募る。 ▽突き上げ 「時間的な制約があるのは事実だ。党として最大限努力していく」。首相は10日の参院決算委員会で、改憲を巡り答弁した。改憲勢力の一角をなす日本維新の会の清水貴之氏は、総裁任期中の実現は困難だとして「戦略を練り直したらどうか
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【郵便値上げ】負の循環、再値上げの影も 全国配達網、維持へ苦境
郵便離れが止まらない。日本郵便が大幅な郵便料金の引き上げに踏み切ったのは、赤字の事業を立て直すのが狙いだが、値上げによってさらに郵便物が減り、経営が一段と悪化する「負のスパイラル」に陥る懸念がつきまとう。全国をカバーする配達網の維持には収支の改善が必要だが、苦境を脱する見通しは立たず、早くも再値上げの可能性がちらつく。 ▽ピークから半減 「郵便のユニバーサルサービス(全国一律)を安定的に維持していくため、ご理解をお願いしたい」。オンラインで13日記者会見した日本郵便の斎藤貴執行役員は苦渋の表情で語った。10月以降の再値上げの可能
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【育成就労創設】あえぐ地方、流出懸念 「転籍」で待遇向上も
外国人材受け入れの新制度「育成就労」を創設する関連法案が14日の参院本会議で成立する。施行後は、原則禁止だった同一業務分野における職場変更「転籍」が可能となる。移動を縛り人権侵害につながった技能実習の反省を踏まえた対応だが、労働力確保にあえぐ地方では都市部への人材流出を懸念する声は根強い。一方、企業に待遇向上や職場環境改善を促す好機との見方もある。 ▽格差 6月初旬、宮城県石巻市の水産加工会社「阿部長商店渡冷」。衛生服に身を包んだ実習生らが包丁を使い、黙々と魚をさばいていた。「仕事は慣れてきて楽しい。みんな優しく手伝ってくれる」
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【G7サミット】「全没収」に国際法の壁 凍結資産、運用益活用軸に
イタリアでの先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、欧米の制裁で凍結されたロシア資産を活用してウクライナを支援する仕組みを構築できるかどうかが最大の注目点だった。ゼレンスキー政権は凍結資産を全て没収して支援に回すよう迫ってきたが、財産権侵害の恐れがあるとする国際法が壁となった。軸となったのは、凍結資産の運用益を転用する米国案だ。 ▽巨額 「プーチン(ロシア大統領)にとって最優先なのは金だ。凍結資産がウクライナに移れば、血を流すことなくプーチンを劇的に弱らせることができる」。ゼレンスキー大統領は、資産没収が戦争継続への意欲をくじく
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【ジェンダー・ギャップ指数】順位低迷は経済停滞の象徴 改善へ男性の働き方改革を 昭和女子大特命教授 八代尚宏
世界経済フォーラムが2024年のジェンダー・ギャップ(男女格差)指数を公表した。日本の男女平等度は146カ国中118位で、昨年よりも7位高まったものの、先進国として極めて低い水準にとどまった。 健康の58位や教育の72位と比べ、政治の113位と経済の120位が、総合的な順位を押し下げた。日本の順位は、06年の80位からほぼ低下している。日本経済の停滞時期とも重なっており、指数の低迷はその象徴とも言える。 ジェンダー・ギャップ指数は毎年、経済、教育、健康、政治の4分野で、男女平等の度合いを指数で示すものだ。
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つややかな飛騨春慶ネイル 伝統工芸、魅力を世界に
つややかな漆に透けて見える木目―。岐阜県の飛騨高山地域の伝統工芸漆器「飛騨春慶」を、地元のネイリストと塗師がつけ爪に取り入れ、ショーなどで発信している。約400年前から続く飛騨春慶の職人は後継者不足で減っており、将来が見通せない状態だ。「世界に魅力を伝え、伝統を守りたい」と奮闘している。 高山市でネイルサロンを営む佐藤直子さん(48)がデザインし、県産木材を彫刻刀などで削り出してつけ爪のチップを作成。同市の飛騨春慶塗師川原俊彦さん(63)が漆を塗って完成させる。普段の仕事の合間に作業し、両手分のつけ爪1セット作るのに3カ月ほどかかるという。
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【識者コラム】「批判的思考」の育成を 教育変革が日本を活性化 中満泉
先日国連インターナショナル・スクールの卒業式が国連総会議場で行われ、約130人の卒業生一人一人に卒業証書を手渡した。この学校の理事長は国連事務次長の一人が兼務することになっており、2年前から私が務めている。国際的な教育プログラム「国際バカロレア(IB)」を採用しており、世界共通の卒業試験に合格すれば100カ国以上で大学入学資格を得ることができる。 IBカリキュラムの特徴は、初等教育での基礎的学力習得後には徹底的に思索型・探究型のクリティカル・シンキング(批判的思考)を養うのを目的としていることだ。高校での必修科目には「知識の理論」という知識の本質を考える哲学的
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ワタリガニ「岬ガザミ」完全養殖に挑戦 大分・豊後高田の漁師ら
大分県豊後高田市の漁師らが、ワタリガニ「岬ガザミ」の完全養殖に挑んでいる。海水温の上昇や生息域の藻場減少などで漁獲量が最盛期の2割程度に減少し、特産品としてのブランド存続が危ぶまれているためだ。カニの習性である共食いの克服に歩を進めている。(共同通信=森本愛) 「大きさを保ちながら育てるのが難しいが、多くの人に知ってもらえるように頑張りたい」。豊後高田市の海岸に面した約4千平方メートルの養殖場で育つ約2500匹のガザミを前に、漁師の吉永和広(よしなが・かずひろ)さん(34)は意気込む。 市によると、記録が残る2004年には約70
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【現在地】インド研究者の笠井亮平さん 多様な社会、実像紹介
人口は世界首位の14億人。経済規模がいずれ米国、中国に次ぐ3位になると予想される大国インドを研究するのが岐阜女子大特別客員准教授の笠井亮平さんだ。ビジネスや安全保障での重要性は増すばかりで「関わらない選択肢はない」と語る。 元々中国政治が専門で、チベット亡命政府があるインドを2003年に訪れて縁ができた。「ちょうどインドが急成長する時期と重なり、大きな刺激を受けた」。政治、外交、文化と研究分野は幅広い。ヒンズー教、イスラム教、シーク教などがある宗教をはじめ、多様性に富む「モザイク社会」だと言うインド。「『なぜ一つの国でいられるのか』とよく質問される。僕自身もそ
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【液晶撤退】成功体験で「不可能はない」と思い込み MBOに成功したシャープの元エンジニアが語る教訓
シャープが大型液晶パネル生産からの撤退を決めた。これで国内のテレビ用液晶生産は消滅する。台湾の鴻海精密工業の傘下で経営再建途上だが、業績は厳しく、看板事業の手じまいに追い込まれた。市場では、鴻海の動きに再び注目が集まる。シャープの経営の変遷から何を学び取るべきか。エンジニアとして絶頂期を支え、転出した子会社を経営陣による自社買収(MBO)して成長軌道に乗せた新潟電子工業の岡崎淳(おかざき・じゅん)社長に聞いた。(共同通信編集委員 宮野健男) ▽躍進 私がシャープに入
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「神様の作ったゲーム」を楽しもう!銀河のグループ分けや小惑星探し。ネットを通じて盛り上がる市民天文学
宇宙は謎だらけだ。世界中の研究者がその答えを求めて日々研究に取り組んでいるが、無数に散らばる銀河や星々を見つけて分類するだけでも、とても手が足りない。そこで、皆さんの出番だ。 高性能な望遠鏡が集めた膨大なデータを手がかりに、銀河を形ごとにグループ分けしたり、太陽系を巡る小惑星を見つけたり。インターネットを通じて多くの一般市民が宇宙の謎解きに挑む「市民天文学」が盛り上がっている。何が答えなのかまだ誰も知らない、まさに「神様が作ったゲーム」。挑戦の先に待っているのは、歴史に残る発見かもしれない。(共同通信=岩村賢人)
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【G7サミット】薄れる「広島レガシー」 続く侵攻、増す核脅威
岸田文雄首相はイタリア開催の先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出席する。法の支配に基づく国際秩序の堅持や、「核兵器のない世界」の実現といったG7広島サミットの成果の継承を目指す。ところが国際社会では、ロシアによるウクライナ侵攻や中国の威圧的行動が続く。ロシアや北朝鮮による核兵器の脅威は増すばかりだ。首相が誇る広島サミットのレガシー(遺産)の意義は薄れつつある。 ▽議論リード 「昨年のG7広島サミットの成果を踏まえ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持、強化を重視し、議論に取り組む」。12日、官邸。首相はイタリアへの出発
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【米朝首脳会談6年】金正恩氏「制裁つらい」 文前大統領、回顧録に記す
米国のトランプ前大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が2018年にシンガポールで史上初の米朝首脳会談を開催してから12日で6年となった。金氏と計3回会談して米朝の「仲介役」を務めた韓国の文在寅前大統領は5月に回顧録を出版。金氏が「どうすれば米国を説得できるのか」「制裁はつらい」と漏らしていたと舞台裏を明かした。 「経済を発展させるのが最重要課題なのに(国連安全保障理事会の)制裁のせいで難しい」 回顧録によると18年4月27日、南北軍事境界線のある非武装地帯(DMZ)の板門店で開かれた南北首脳会談で金氏はこう吐露したという。
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【米大統領次男に有罪評決】身内不祥事、再選へ重荷 共和、反転攻勢狙う
11月の米大統領選で再選を狙うバイデン大統領は、次男ハンター氏(54)が薬物依存を申告せず不法に銃を購入したとして有罪評決を言い渡される不祥事で、重荷を背負い込んだ。不倫口止め疑惑で有罪評決を受けたトランプ前大統領の返り咲きを目指す共和党は、ハンター氏と外国企業の不透明な取引疑惑を追及し、反転攻勢を狙う。 ▽動揺 「私は大統領だが、父親でもある。息子を愛している」。有罪評決を受け、バイデン氏は急きょ予定を変更し私邸のある東部デラウェア州に移動、空港でハンター氏と強く抱き合った。 この日は、評決直後
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【世界の街から】街に名を刻む
パリを歩いていると、紺地に白い文字で通りや広場の名前が書かれた表示板が至る所に掲げられていることに気付くだろう。驚くのは、芸術家や政治家ら歴史上の人物にちなんだ名前の多さだ。 元大統領の「ジャック・シラク通り」、作曲家の「サンサーンス通り」、作家の「エミール・ゾラ大通り」…。自宅近くだけでも偉人の名前が付けられた通りをいくつも思い付く。命名することで、人類への偉大な業績にオマージュ(敬意)をささげているのだ。 今年、新たに命名されて話題になったのが2016年に69歳で死去した英ロック歌手の名を冠した「デビッド・ボウイ通り」だ。パ
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【スマホアプリ規制新法】料金低下や新サービス期待 業界歓迎、安全性懸念も
スマートフォンのアプリストアが事実上、米アップルとグーグルの2社で占められていることに風穴をあける新法が成立した。新たな企業が参入して競争が激しくなり、料金低下や革新的なサービスが生み出されることが期待される。ゲーム業界や新興企業は歓迎ムードだが、安全性を巡る懸念も根強く、今後の課題となっている。 ▽異例の声明 アプリ開発企業などでつくる「モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)」を含む7団体は5月、新法案を支持する共同声明を発表した。声明はアップルとグーグルを念頭に「独占的なプラットフォーム事業者」が自社の利益を優先し、手数料などで消費者と事業者に過度な負担を強いていると批判。「スタ
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【給食無償化拡大】人気の公約、財源が壁に 政府主導求める声も
家庭が支払うのが一般的だった給食費を、公費で賄う動きが広がっている。この数年で大きく進展し、昨秋時点で自治体の3割が公立小中学校での無償化を実現した。公約に盛り込む首長らが目立ち、子育て支援として人気を得やすいとの思惑もありそうだ。一方、財源が壁となって二の足を踏む自治体も多く、地域格差が生じる懸念は拭えない。政府主導の一律実施を求める声が強まる。 ▽コロナ転機 「給食費は保護者の負担とする」。学校給食法に定められたこの一文により、長年多くの自治体が費用を家庭に求める運用を続けてきた。2017年度調査でも、小中の完全無償化を実現
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【ジェンダー・ギャップ報告】鈍い歩み、政治経済に遅れ 「女性活躍」ほど遠く
世界経済フォーラム(WEF)が12日に発表した男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告で、日本は先進7カ国(G7)の中で最低の118位だった。特に政治、経済分野の遅れが顕著だ。女性衆院議員の割合は約10%で、企業の女性役員比率も低い。各国が格差解消の取り組みを進める中、日本政府も女性活躍推進を掲げるが、その歩みは鈍く、ジェンダー平等の実現はほど遠い。 ▽風土 政治分野の女性参画は113位と低水準が続く。衆院議員の定数に占める女性の割合は1946年の8%から11%の微増。G7のほとんどは30%を超え、差は歴然だ。
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【国立大授業料値上げ】無償化の流れに逆行 高等教育へ投資不可欠 徳島大教授 山口裕之
このところ、国立大の授業料値上げを巡る動きが相次いでいる。3月に中教審の部会で伊藤公平・慶応義塾長が、国立大の授業料を150万円程度に引き上げるよう求めた。これは現状の約3倍の大幅値上げである。 5月には東京大が授業料の10万円程度の値上げを検討していることが報じられ、自民党の調査会が「値上げも視野に入れた適正な授業料の設定」などについて提言をまとめた。 おそらくこれらは、物価高の情勢下で値上げに対する世論の抵抗感が下がっているタイミングを見計らって上げられた観測気球だろう。反対の世論が盛り上がらなければ、来年度以降、国立大はお
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エリートが虐殺会議、映画に 服従と野心の心理描く【境界から ドイツ】
ドイツ・ベルリン西部のバンゼー地区は、湖と森に囲まれた静かな邸宅街だ。1942年1月20日、この街の「バンゼー荘」に政府高官らが会議のため招集された。総勢15人の男たちの多くは軍や省庁の次官級で、うち7人は30代の若さ。8人は博士号を持つ教養あるエリートだった。 会議は正午に始まった。議題が示され、資料が配られる。各省庁の利害が調整され、課題の優先順位が決まる。議論が行き詰まると、関係者が中座して根回しや駆け引きも繰り広げられた。1時間半後、会議が決着すると、出席者たちはコニャックのグラスを傾けた。 すべては紳士的で穏やかだった。ただ一つ、議題が「ユダヤ人問題の最終的解決」、つまりユダ
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「世界一過酷な400メートル」ジャンプ台逆走レースに、100キロマラソン経験者が挑んでみた “四つんばい”で感じた絶望と、連覇達成者が語る魅力
札幌市中央区の大倉山ジャンプ競技場で5月、ラージヒルジャンプ台を逆走する「Red Bull 400(レッドブルフォーハンドレッド)」が開催された。最大斜度は37度で「世界一過酷な400メートル」をうたい、今回で7回目となった大会には男女合わせて過去最多となる1644人が参加した。記者(42歳男性)もその一人で、断崖絶壁をよじ登るも同然で想像を絶する苦しさだった。 女子と男子の優勝者はそれぞれ、2連覇と4連覇を達成。これだけつらいレースに毎年挑みたくなるのはなぜなのか、魅力を語ってもらった。(共同通信=松本はな、佐々木一範)
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【モディ政権3期目】独自外交、ロシア重視 インド大国化で主張強める
インド総選挙でモディ首相率いる与党連合が辛勝し、モディ政権が9日、3期目入りした。日米欧は民主主義などの基本的な価値観を共有するインドを重視するが、インドはウクライナ侵攻が続く中でロシアから原油の大量購入を続け、独自の外交を展開。経済成長、人口増といった自国の大国化に伴って、独特の主張をさらに強める可能性が高い。 ▽したたか ベンガル湾に沿って南北に砂浜が伸び、縦列駐車する武骨なトラックが何台も連なる。インド亜大陸東岸のチェンナイ港はロシアからの原油の受け入れ主要港だ。 「侵攻前はロシアからの原油
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【アップル人工知能】米IT、AIシフト鮮明 生活に浸透、安全に懸念も
米アップルがiPhone(アイフォーン)への生成人工知能(AI)の搭載を発表し、米IT大手のAIシフトが鮮明となった。アップルが個人に特化した「パーソナルAI」を掲げ、マイクロソフト(MS)やグーグルは対話型AIの高性能化を競うなど方向性に違いも。一方、生成AIの安全性の議論は遅れており、規制強化を求める声も強まっている。 「独自開発したアップルインテリジェンスは既に生活に深く関わっている製品をより不可欠なものにするだろう」。10日の発表会で、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は強調した。これまでプライバシー保護や情報の信頼性への懸念から生成AI
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【欧州議会選で急進右派伸長】「市民の欧州」回帰が課題 EU基本路線に揺らぎも 千葉大教授 水島治郎
2024年の欧州議会選挙は、各国で急進右派(右派ポピュリストとも呼ばれる)勢力が拡大した。フランスではマリーヌ・ルペン氏率いる「国民連合」が、イタリアではメローニ首相の「イタリアの同胞」が、それぞれ第1党となった。 欧州議会における急進右派の会派は、「欧州保守改革」と「アイデンティティーと民主主義」の二つがあり、いずれも議席を伸ばした。 移民・難民の流入急増、ウクライナ戦争や気候変動対策を背景としたエネルギー価格の上昇と生活苦の広がりなど不安の高まりが、既成政治への不満や「上から規制を押し付ける」EUへの反発と絡んで、EUに批判
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【仏下院総選挙】危機感あおり浮動票狙う マクロン氏「最大の賭け」
欧州連合(EU)欧州議会選で極右勢力に大敗したことを受け、フランスのマクロン大統領(46)は国民議会(下院)を解散し、7月下旬のパリ五輪開幕を前に総選挙を実施する「キャリア最大の賭け」(フランスメディア)に出た。約3週間の選挙戦で極右への危機感をあおり浮動票獲得を狙う作戦だが、マクロン氏の不人気自体が極右台頭を招いているとの声もあり、勝算は不透明だ。 ▽リスク懸念 「ナショナリストやデマゴーグの台頭は、フランスだけでなく欧州にとっても危険だ」。マクロン氏は9日夜、テレビ演説で訴えた。一方、大勝した極右政党、国民連合(RN)のマリ
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【公取委立ち入り検査】運送業者「いじめ」頻発 早期の下請法改正要望も
物流の滞留が懸念される「2024年問題」が現実味を帯びる中、公正取引委員会は11日、運送業者への「いじめ」が指摘される荷主企業への立ち入り検査に踏み切った。事前に取り決めた代金を一方的に減額するなどの違反行為は長期に及んでいた可能性がある。「値上げ交渉を試みたが、取り合ってもらえない」。運送業界でこうした例は枚挙にいとまがなく、意識改革や早期の下請法改正を望む声が上がる。 ▽規制緩和 「30年間以上培われた感覚が抜けていない」。神奈川県にある運送会社の男性社長は物流業界の現状をこう表現する。仕事を発注する荷主の立場は依然強く「代
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【骨太方針案】自民裏金問題で融和優先 風物詩の舌戦鳴り潜める
政府が2024年の骨太方針案を発表した。財政健全化の在り方を巡り、自民党の積極財政派と規律派が繰り広げる風物詩の舌戦は鳴りを潜め、派閥裏金事件に揺れる党内の融和が優先された。人口減少を見据え、長期の経済成長率の目安が示されたが実現への道筋はあいまいで、低調な議論が問題の先送りを招く事態となっている。 ▽余裕ない 骨太方針案の発表に先立つ4日。財政規律派が主導する財政健全化推進本部(古川禎久本部長)は、25年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字化する政府目標の堅持を訴える提言を取りまとめた。ある幹部は「平穏すぎて
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【特捜検事尋問】問題相次ぐ検察独自捜査 「個人責任」に矮小化
大阪地検特捜部が捜査した業務上横領無罪事件の国家賠償請求訴訟で、元特捜検事の証人尋問が11日、大阪地裁で始まった。検察独自捜査では各地で問題のある取り調べが次々と発覚。組織として問題に取り組まず「個人責任」に矮小化するかのような検察の姿勢に批判が集まる。 ▽人格否定 「不穏当だった」。元特捜部検事の田渕大輔・東京高検検事(52)は11日の法廷で、取り調べにおける「検察なめんなよ」という発言をこう振り返った。しかし有罪の証拠はあったとし、無罪は「残念」と強弁した。 尋問を受け、ある法務・検察幹部は「
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【自動車認証不正】制度がブラックボックス化 安全性への過信も 東京都立大教授 白石賢
なぜ自動車業界で検査不正などが起きやすいのか。これは単純に言えば、「型式指定制度」により車の完成検査をメーカー自身が行うからだ。この制度のおかげでメーカーは、いったん指定を得れば大量生産が可能になる。新車販売時に1台1台検査を受ける必要がなく、メーカーと消費者の双方にとって合理的な仕組みのように映る。 しかし実際は、この構造に落とし穴がある。一般の消費者は普通、型式指定制度の仕組みについて十分な知識を有しているわけではない。自分の買おうとしている車が、制度上不正な要素をはらんでいると疑う人はまずいないし、ましてやそれに気付くはずもない。これに対し完成車メーカー
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ボルトに学び、走り方指導 「速さは才能じゃない」
「足の速さは才能じゃない」。約4年前に「走りの学校」を設立した和田賢一さん(36)は陸上経験がないが、ジャマイカに渡って当時、男子短距離のスター選手だったウサイン・ボルトと練習した異色の経歴を持つ。世界最速の男から学んだ極意と心得を、子どもからプロ選手まで惜しみなく伝え「できるかできないかではない。自分がなりたい姿に向かって全力でやる」と、さまざまな人の挑戦を後押ししている。 東京都出身で高校まで野球に励んだ。大学4年で出合ったのが、うつぶせの状態から起き上がって砂浜を走り、20メートル先のフラッグを奪うビーチフラッグス。26歳の時に世界最高峰の大会で2位にな
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国立大学法人化20年の功罪とは【経済トレンド】 秀島栄三名古屋工業大教授に聞く
全国の国立大学が独立法人化されて20年になる。厳しい意見も出ているが大学の経営能力が高まっていったことは少しは評価してよいと思う。各大学は6年間の中期目標・中期計画を策定し、結果が評価される。 大学の自治に甘んじ、時間無制限に大声を張り上げるかつての教授会を思い起こせば、法人化前の大学には自立的な経営能力があったとは思えない。ただ教育と研究に成果主義を持ち込んだことには功罪両面があると言える。 功の部分で言えば、研修などを通じて教員の授業評価、教育力を向上させる機会
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和菓子店がルーツ八天堂の「くりーむパン」 1品集中、冷やして食べる【経済トレンド】
冷やして食べる「くりーむパン」で知られる老舗。1933年、広島県三原市で現社長の祖父が開いた和菓子店「森光八天堂」が始まり。(共同通信=増井杏菜記者) 1975年、「ラ・セーヌ八天堂」と改名。シュークリームなど洋菓子も取り入れ始めた。1991年、森光孝雅(もりみつ・たかまさ)社長が同市内に焼きたてのパン店「たかちゃんのぱん屋」をオープン。自ら神戸市内の名店や東京で4年半修業し開業。商品は100種類以上、広島県内で13店舗を構えるまでに伸長した。 2000年代に入ると
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気になる部屋の湿気やニオイ対策教えて! 暮らし方研究家が答えます【経済トレンド】
Q 部屋の湿気やニオイが気になります。解決策はありますか? A 一番大切なのは換気です。雨でも室内に吹き込むような状況でなければ、短時間でも窓を開けて新鮮な空気を取り込み循環させましょう。 窓は2カ所以上開けるのが効果的。窓が一つしかなければ、扇風機を部屋の中から窓の方に向けて回すと空気の通り道が作られ、循環が促進されます。部屋の空気が動かないとホコリもたまりやすくなり、カビやダニの発生にもつながります。
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外出先でもシートで手軽に汗の臭い対策を ロールオン、じか塗りも【経済トレンド】
蒸し暑い季節がやってきた。人に会う時は汗の臭いに気を付けたい。外出先でも手軽に首筋などの汗を拭けるシートタイプの商品に加え、臭いが出やすい脇に成分をしっかり付着させるロールオンやスティックといったじか塗りタイプの商品がある。(共同通信=出井隆裕記者) コーセーコスメポート(東京)は「デオカラット 薬用デオドラントボディシート」を2月に発売した。液たっぷりのシートタイプで、汗を抑える制汗有効成分、臭いの発生を防ぐ殺菌有効成分を配合。汗のべたつきを拭き取り、さらっとした状態が続く。アロマティックフローラルの香り。40枚入りで実勢価格
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肩の負担減らしたトートバッグ開発者に聞く 「MY our bag」【経済トレンド】
男女のスーツなどを手がける青山商事が2024年1月に発売した女性向けトートバッグ「MY our bag」が好評だ。商品企画を担当する青山商事の金石夢子(かねいし・ゆめこ)さんに商品のポイントを聞いた。 ビジネス使用を想定。「実用的でおしゃれな商品をつくりたい」と開発を始め、収納力や軽さ、肩への負担軽減などの工夫を凝らした。(共同通信=増井杏菜記者) 発売約2カ月で販売数量は目標の30%増だった。販売価格(2024年6月時点)は1万890円。交流サイト(SNS)のインスタグラムの公式アカウントを通じ
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子どもも大人も楽しめる企業ミュージアム 歴史、事業の魅力伝える【経済トレンド】
会社の歴史や事業の魅力を伝える企業ミュージアムが、子どもから大人まで楽しめる施設として人気を集めている。最新の映像技術を取り入れたり、体験型の仕掛けを設けたりするなど飽きさせない工夫が満載。新規の開業、大規模な改装の流れが途切れない。(共同通信=出井隆裕記者) ▽ロマンスカー 関東私鉄大手の小田急電鉄は2021年、神奈川県海老名市に看板車両の名前を冠した「ロマンスカーミュージアム」を開業した。同社初の企業ミュージアムだ。歴代5車種のロマンスカーの常設展示、沿線の巨大
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【記者書評】三宅玲子著「本屋のない人生なんて」 代わりのない場所のために
本が好き、という以上に、本屋にいることが子どもの頃から好きだった。学生時代は毎日2、3軒の本屋に立ち寄っていた。だから、このシンプルな書名に心を動かされた。かつて通っていた本屋がほとんど姿を消してしまった今だからこそ。 本書は、人々が「なぜ本屋を渇望するのか」を探るため、著者が北海道から九州まで11の本屋を訪ね歩いたノンフィクション。開業の経緯、その土地で親しまれる理由、棚づくりの特色などを丁寧に取材し、それぞれの個性を掘り下げていく。 例えば北海道留萌市の本屋は、この街から本屋が全て消えた後、住民らの誘致活動によって開業が実現
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「養育費は月1万6千円です」小児がんの息子を看病する女性を絶望の底に突き落とした通告 「父の日」が襲う恐怖とは…
妊娠中に婚約を破棄され、彼は姿を消した。生まれた息子には小児がんが見つかり、その致死率は「50%」。彼は認知をしないどころか、シンガー・ソングライターとして全国ツアーへと旅立ち、連絡は途絶えたままだ。彼の代理人から届いた通知には目を疑った。子どものDNA型鑑定を要求すると同時に「養育費は月1万6千円」という内容だった。「私にも、病気と闘っている息子にも、向き合わずに逃げ続けているのが許せない」。女性はキャリアを諦め、抗がん剤治療で過酷ながん治療に耐える息子との時間を大切に過ごしている。「父の日」が襲う恐怖と闘いながら。(共同通信=宮本寛)
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【統一教会訴訟】信者の意思か違法勧誘か 高額献金、最高裁どう判断
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金を巡る損害賠償請求訴訟は10日、最高裁で弁論が開かれ、結審した。教団がクローズアップされる契機となった安倍晋三元首相銃撃事件から間もなく2年。献金は信者の自由意思か、それとも違法な勧誘による被害に当たるのか―。宗教法人法に基づく解散命令請求の裁判が進む中、最高裁の判断が注目される。 ▽疑問 「実態を明らかにし、被害を回復させてください」。この日の弁論で、信者だった女性(故人)の長女はこう訴えた。 母親は2004年、75歳の時に入信。大理石のつぼに1300
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【認証不正】売れ筋消え、不安拭えず 制度運用見直し未知数
トヨタ自動車など5社が車の大量生産に必要な「型式指定」の認証を巡る不正を公表してから1週間。販売店は売れ筋を含む計5車種が消え、不安が拭えない。業界の顔であるトヨタの豊田章男会長は認証制度の運用見直しの必要性に言及したが、規制に違反した当事者の訴えだけに思惑通り進むかどうか未知数だ。 ▽月産1万台超 「継続中の調査で新たに不正が出てきたらさすがにまずい」。トヨタの系列販売会社の関係者はやきもきする。 トヨタは人気がある「ヤリスクロス」など3車種の生産を6日から停止した。月間生産規模は計約1万台とみ
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【欧州議会選】進む極右の「新常態」化 移民急増、不満受け皿に
欧州連合(EU)欧州議会選で、反移民やEU懐疑論を掲げる極右・右派勢力の台頭が鮮明となった。フランスではマクロン大統領が極右に敗北し、異例の下院解散総選挙を決断。極右は移民急増やEUの政策に不満を抱く市民の受け皿として存在感を高めており、かつては過激だとして敬遠されていた勢力の「ニューノーマル(新常態)」化が進む。 ▽打撃 「われわれは大量の移民に終止符を打つ用意がある」。フランスの極右、国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏は9日、欧州議会選の結果を受け、国政を率いる意思をあらわにした。 低炭素社
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【地方創生10年】地方先細り、要因分析なく 岸田政権、成果を列挙
政府が10年間の「地方創生」の取り組みを振り返った。政策の成果を並べる一方、国が多額の予算を投じながら東京一極集中に歯止めをかけられなかった要因や責任には触れず、人口減少で先細る地方自治体からは怒りと失望の声が上がる。岸田政権はデジタルを活用した地方活性化を掲げるが、10年前の「熱量」とはほど遠い。 ▽能天気 「地方創生の取り組みの効果や成果が一定程度あると評価できる」。10日に開かれた政府のデジタル田園都市国家構想実現会議で、自見英子地方創生担当相はこう胸を張った。今回の報告書では、自治体の人口増加や移住相談件数の増加について
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ひめゆり館、海外発信強化 ハワイで特別展、伝承模索 女子学徒隊、減る生存者
太平洋戦争末期の沖縄戦に動員された女子学徒隊の被害を伝える「ひめゆり平和祈念資料館」(沖縄県糸満市)が、海外発信に力を入れ始めた。縁が深い米ハワイで、特別展を6月末まで開催。生存者が減る中、地元高校生の対話を促すなど新たな伝承方法を模索する。関係者は「軍備増強が続く今こそ沖縄戦と向き合うべきだ」と話す。 「沖縄という小さな島でこんなことがあったとは」。昨年9月、ハワイ・オアフ島で開かれた展示会に訪れた現地住民らからは、多くの感想が寄せられた。県人会「ハワイ沖縄連合会」主催のイベント会場の一角で行われ、2日間で約700人が見学。今年2月からはハワイ大マノア校で同
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【イスラエル戦時内閣離脱】ガザ戦闘終結、遠のく恐れ 強まる強硬派、米と摩擦も
イスラエル戦時内閣の主要メンバー、ガンツ前国防相が辞任表明した。同氏率いる中道政党も離脱。その結果、ネタニヤフ連立政権に加わる対パレスチナ強硬派、極右政党の影響力増大が必至となった。極右政党はイスラム組織ハマスとのパレスチナ自治区ガザでの停戦案を拒絶、バイデン米政権をはじめ国際社会との摩擦はさらに強まり、戦闘終結が遠のく恐れがある。 ▽あいまい 「ネタニヤフ氏は政治的な思惑から重要な決定を先送りしている」。9日夜、ガンツ氏は辞任会見でネタニヤフ首相を批判した。将来のガザに、パレスチナやアラブ、欧米諸国から成る統治機関の樹立を目指
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【政治資金規正法改正】立民、不信任案にらみ追及 企業献金巡り、首相応酬
立憲民主党が裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、参院審議で改めて追及した。内閣不信任決議案の衆院提出をにらみ、参院でも、政治改革に後ろ向きな岸田文雄首相と自民党の姿勢をあぶり出し、世論を引き付けようとの思惑が透けて見える。自民案に盛り込んでいない企業・団体献金に関し、重ねて禁止を求め批判する立民に対し、首相は「政治活動の自由」を盾に応酬した。 ▽突っ込みどころ満載 「裏金事件が二度と起きないようにするためには、企業・団体献金を禁止すべきなのに、なぜ手を付けないのか。自民案は突っ込みどころ満載だ」。10日午後、参院決算委員会
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「達人」保湿重視、深爪は厳禁 日常的な爪のケア ネイルカラーは3工程で
手足の指先の保護や力を入れるときなどに重要な役割を果たす爪は、日常的な手入れが欠かせない。NPO法人日本ネイリスト協会理事の小笠原弥生さんに、心がけたいケアやカラーのポイントを聞いた。 ―爪の仕組みを教えてください。 「皮膚や髪の毛と同じケラチンというタンパク質でできていて、生活感が表れます。健康のバロメーターとも呼ばれ、体調不良や血流が悪いと、爪の色が白くなったり、筋ができたりします」 ―自分でできるケアの方法は。 「お風呂上がりなどの爪がやわらかいときに、縁から
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【シネマ】「ドライブアウェイ・ドールズ」 爽快な女同士の愛情
「ファーゴ」「ノーカントリー」などの作品で知られ、世界中にファンを持つ映画監督のコーエン兄弟。弟イーサンが妻トリシア・クックと脚本・製作でタッグを組み、劇映画で初の単独監督を務めたのが「ドライブアウェイ・ドールズ」だ。とぼけた物語が笑いを誘い、女同士の愛情の行く末に爽快な気分になる。 舞台は1999年の米国。奔放さのせいで彼女と別れたジェイミー(マーガレット・クアリー)と、堅物の友人マリアン(ジェラルディン・ビスワナサン)は心機一転、東海岸を縦断し、南部フロリダ州に向かうことに。配送会社から車を1台手配され、旅に出る。 間もなく
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表現の自由か、教育を冒とくか…大学占拠し反イスラエル抗議 若者の間に広がるトランプ氏への支持【ワシントン報告(17)パレスチナ支持の学生運動】
初夏の米ワシントンでは、パレスチナ自治区ガザへの攻撃の手を緩めないイスラエルに抗議する学生による大学占拠の動きが広がった。米国は伝統的に親イスラエルだが、バイデン大統領を支える民主党は左派を中心にパレスチナ擁護の動きが強まっている。占拠は表現の自由か、それとも教育への冒とくか。米外交の在り方や世代間対立、宗教論の文脈でも議論された。若者の間でバイデン氏よりトランプ前大統領への支持が増えている点も見逃せない。(共同通信ワシントン支局長 堀越豊裕) ▽逮捕者3千人 5月上旬、ホワイトハウスに近いジョージ・ワシントン大の抗議活動は12
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地域包括支援センターを有効活用するには? ファイナンシャルプランナー【経済トレンド】
Q 各地域に高齢者のための相談窓口があるそうですが、どのようなものですか。 A 65歳以上の高齢者の生活を支援する総合的な窓口として各市町村が設置しているのが地域包括支援センターです。全国に約5400カ所、ブランチやサブセンターも合わせると約7400カ所あります。 地域包括支援センターでは、保健師、社会福祉士、ケアマネジャーといった専門家が、高齢者の生活・健康・介護などに関する相談に応じており、高齢者本人や家族だけでなく、友人や近所の人なども無料で利用することができ
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香りはバナナ、味は焼き芋…「東京島酒」ってどんなお酒? 国が18年ぶりに「お墨付き」、都心から100キロ以上離れた島々の挑戦とは
東京都心から南に約120~650キロの太平洋上に連なる伊豆諸島。その島々で造られている焼酎「東京島酒」が今年、地域の特産品に国が「お墨付き」を与える地理的表示(GI)に指定されたのをご存じだろうか。制度を所管する国税庁によると、その特長は草木のような清涼感と、脂が乗った刺し身にも負けない強いうまみとのこと。いったいどんな酒なのか。知られざる「幻の酒」に迫った。(共同通信=助川尭史) ▽ルーツは江戸時代、流刑地の歴史が生んだ独自の製法 羽田空港から飛行機で約50分。20
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「旅」豊かな自然と歴史的建物 歌と物語が息づく街 啄木と賢治ゆかりの盛岡
北上川と中津川が緩やかに流れる盛岡市周辺は、豊かな自然の中に城跡や歴史的な建物が残る。石川啄木と宮沢賢治が青春時代を過ごした街でもあり、近年は米国のメディアによる世界の「行くべき場所」にも選ばれた。歌や物語の世界が息づく場所を訪ね歩いた。 「不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし十五の心」。石川啄木が詠んだ不来方は、盛岡城周辺のこと。盛岡城跡公園二の丸の木陰に歌碑があった。当時盛岡中学で学んでいた啄木は授業を抜け出してはこの辺りで本を読み昼寝をしたという。石垣の上からは山々や街並みが見え、風がさあっと吹き抜ける。 その啄木と
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【半導体事情】なぜ台湾、韓国に取って代わられたのか アジアのハイテク産業史研究者に聞いてみた
半導体工場の誘致競争が過熱している。かつて世界シェアの約半分を握っていた日本に取って代わったのが、なぜ台湾、韓国だったのか。アジアのハイテク産業史に詳しい川上桃子・神奈川大教授に聞いた。(共同通信編集委員 宮野健男) ▽源泉は米とのつながり 台湾、韓国が半導体で力を付けた背景には歴史的経緯がある。前提として、両国とも1960年代から工業化が本格化し、1970年代、エレクトロニクスが輸出産業として急成長した。他の東アジアの国々が外国企業の誘致にとどまったのに対し、台湾
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【田中泯さん】世界的ダンサーが一番大切にする「ミニシミテ」 言葉にする前に「黙って感じる間をつくれるか」
世界的ダンサーで、映画「たそがれ清兵衛」「PERFECT DAYS」など数々の映像作品で俳優としても活躍する田中泯さんが、著書「ミニシミテ」(講談社)を刊行した。計10年以上も新聞連載を続け、その一部を本にした。身体の表現者である田中さんは、どんなふうに言葉をつづり、発するのか? そこには身体との根源的なつながりがあった。(共同通信=山口晶子) ▽自分の言葉かどうかを洗い直す ―書くことは楽しいですか? 「まだまだ苦しんで書いています。『本当』を書けるかどうかが一番苦しいというか。これじゃいけない
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習近平氏は「不運な」指導者?方向性見えず、強まる統制 中国分析40年の研究者が抱く危惧【中国の今を語る(3)】
「父親が中国共産党革命に参加した習近平総書記(国家主席)は『創業家一族』として大変な決意と迫力で反腐敗闘争を展開し党内の政敵を打倒した。一方で、集団指導体制による分業の弊害でさまざまな領域で汚職が深刻化しており、多くの党員は、1人に権力を集中させることで解決すべきと考えた。この二つが習氏による『1強体制』が生まれた要因だ」 約40年間にわたり、中国の政治や外交を第一線で研究し続けてきた高原明生・東京女子大特別客員教授が習指導部の思考回路を分析した。(聞き手・共同通信前中国総局記者 大熊雄一郎) ▽党内分裂
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生成AIがアメリカ大統領選を混乱させる? 「バイデン氏やトランプ氏の偽画像も簡単に作れる」と専門家、すでにSNSで拡散も
誰でも簡単に文章や画像を作れることで人気となった生成人工知能(AI)が、11月のアメリカ大統領選に混乱をもたらすとの懸念が高まっている。再選を目指すジョー・バイデン大統領や、復帰を狙うドナルド・トランプ前大統領の本物と見まがう偽画像が大量に出回る恐れがあるからだ。AI開発企業は悪用されないよう対策を打っていると主張するが、専門家は「不十分だ」と問題視する。(共同通信ニューヨーク支局=隈本友祐) ▽生成AIは偽画像工場? 国際NPO「反デジタルヘイトセンター(CCDH)」は今年3月、「偽画像工場」と題した調査報告書をまとめた。マイ
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かけがえのない日常失ったが「今はここが私の居場所」 福島から避難、埼玉の交流カフェで【生き抜く】「広域避難」
柔らかな風に潮の香りが混じる。鳥のさえずりが降ってくる。2024年4月半ば、福島県大熊町の小入野地区。渡部まゆみ(67)はかつて自宅のあった付近に立ち、ため息をついた。「ここが玄関、そこが畑で、あのあたりが竹やぶだった。タケノコがたくさん採れたんです」 東日本大震災で爆発した東京電力福島第1原発から3キロ圏内で、今は「中間貯蔵施設」とされる区域。福島県内から運び込まれた汚染土や廃棄物を保管する。2045年までに県外で最終処分する予定だが、場所は未定だ。 ▽必死で逃げる 貯蔵区域は大熊町と隣の双葉町
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空飛ぶクルマへ失敗生かす 新興企業、型式の知見共有
航空機の安全性に当局がお墨付きを与える「型式証明」を取るノウハウを共有しようと、新興企業が奮闘している。半世紀ぶりの国産旅客機を目指した三菱重工業のスペースジェット(旧MRJ)は型式証明の壁が立ちふさがり、開発から撤退。失敗の苦い経験を次世代の「空飛ぶクルマ」に生かそうと、知見の底上げに取り組んでいる。 ▽準備不足 「旧MRJの失敗にショックを受けた。次の国産旅客機開発まで何をすべきか、海外で得た知見を日本の航空産業に還元したい」。米航空機メーカーで燃料系統の認証業務に携わる杉山剛さん(51)は3月中旬、オンラインで開かれたセミ
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「棚が倒れて下敷きになっていたら…」揺れに耐え、ゆがんだ突っ張り棒 能登地震で被災して気付いた失敗
2024年1月1日に起きた能登半島地震。新潟県上越市の石野正彦さんは高台にある木造一戸建ての自宅1階の居間で長くて大きな揺れに襲われた。石野さんは上越教育大の元教授で、地震発生時は執筆の仕事をしていた。 「東日本大震災の時みたいだ」。身をかがめて揺れが落ち着くのを待ち、2階の様子を見に行った。すると、天井近くまである棚の中に置いていたテレビが床に落下し、飾っていたグラスやプラモデルは散乱して壊れていた。 不幸中の幸いで棚自体は倒れていなかった。目に入った突っ張り棒はゆがみ、なんとか揺れに耐えたことが分かった。この棚は合板ではなく
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【欧州議会選】移民分担制度、実施停滞も EU懐疑派、大幅増の勢い
欧州連合(EU)欧州議会選では、極右などのEU懐疑派が移民・難民政策を争点化して支持を集め、大幅に議席を増やす勢いをみせている。EUでは、難民らの流入を抑制し、受け入れる場合にも加盟国間での公平な分担を目指した新制度が成立したばかり。新制度は2026年から適用される予定だが、選挙結果次第では実施が停滞する恐れもある。 ▽崩壊 移民問題が特に深刻なのが、EU機関が集中する「お膝元」のベルギーだ。受け入れ能力を超える移民・難民が流入する中、家族連れや女性の滞在先を優先して確保しているため、「単身男性の多くは居場所がなく、路上生活を余
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【米エヌビディア】AI特需で業績急拡大 5カ月余りで株価2・5倍
米半導体大手エヌビディアの勢いが止まらない。生成人工知能(AI)向け半導体の特需で業績が急拡大し、上昇基調にあった株価は昨年末からの5カ月余りで2・5倍近くに膨張。5日の米株式市場でついに時価総額は3兆ドル(約468兆円)の大台に乗せた。米連邦準備制度理事会(FRB)による高金利政策の長期化を背景に米国株の上昇に一服感も出る中、相場のけん引役としても存在感が高まっている。 ▽期待 「需要は旺盛で、われわれの供給を上回っている」。ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は5月22日の決算発表後、電話会見でこう語り、さらなる成長に