文化生活部 橋爪充
はしづめ・みつる 1969年、カナダ生まれ。都内IT系出版社を経て2008年入社。ノイズ音楽から梅酒づくりまで、「文化」と名のつくものは全て取材対象。ヒップホップ、フットサル、曽宮一念さん、ヒカシュー、しずおか連詩の会、ラブライブ!サンシャイン!!、コーエン兄弟を好みます。クラフトビール愛好歴18年。ブラジリアン柔術青帯。
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富士宮出身作家 横関大さんサイン会 富士
テレビドラマ化、映画化された小説「ルパンの娘」シリーズなどで知られる作家横関大さん(47)=富士宮市出身=が3日、富士市の書店「谷島屋富士店」で自身初のサイン会を開き、地元ファンとの交流を楽しんだ。 新刊「忍者に結婚は難しい」(講談社)のキャンペーン活動の一環。店舗入り口付近に設けた特設コーナーで、さまざまな年代の来場者が差し出す書籍に次々サインした。 横関さんは富士高の卒業生。富士宮市役所勤務時代の2010年に「再会」で第56回江戸川乱歩賞を受賞した。なじみ深い地域での初サイン会に「作品を読んでくださっている方々と会えるのが楽しい」と述べ、担当編集者らを交えてファンと言葉を交わした。
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ビール醸造所直営の宿泊施設内覧 静岡・用宗の魅力、発信拠点に
クラフトビールメーカー「ウエストコーストブルーイング(WCB)」(静岡市駿河区用宗)は29日、醸造所近隣に7月オープンする直営宿泊施設の内覧会を開いた。取引先関係者ら約120人が、タップルーム(パブ)とベッドルームが一体化した新施設の門出を祝った。 老舗レストランをリノベーションした2階建て宿泊施設「ザ・ヴィラ・アンド・バレル・ラウンジ」は全5室。各部屋に生ビールサーバーが付き、1階のタップルームでも同社の多彩なビールが楽しめる。ビール醸造所が宿泊施設を運営するのは珍しい。 2017年から用宗地区の観光開発に取り組むCSA不動産(同市葵区)の小島孝仁社長は「クラフトビール界屈指の人気ブラ
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静岡市歴史博物館 建物設計の意図「SANAA」2氏に聞く
7月23日にプレオープンする静岡市歴史博物館(葵区)は、市の歴史や文化を学ぶ展示とともに、世界的に活躍する建築事務所「SANAA」(サナア)が担当した館のデザインも見どころだ。博物館の機能と「かたち」の美をどう両立させたのか-。SANAAの妹島和世さん、西沢立衛さんに、設計の意図を聞いた。 抑揚生む「雁行配置」 徳川家康や今川氏の歴史をはじめとした、静岡市の成り立ちを理解するための展示と資料を収める同館。市街地と、家康の居城だった駿府城公園を結ぶ地点に位置する。 SANAAの二人は設計にあたり、何度も直角に折れ曲がりながら城下を通り抜ける旧東海道に着目した。石垣を直角に曲がってたどり着
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伊豆市資料館「埋甕」 縄文時代中-後期【美と快と-収蔵品物語㉛】
旧中伊豆町の町立施設として1987年に建てられた伊豆市資料館。館内に掲示された市内の主な遺跡の地図には誰もが目を見張る。その数、116カ所。うち縄文時代が約80カ所を占める。狩野川支流の大見川流域、天城連峰の懐に抱かれた肥沃[ひよく]な地は、はるか昔から人の営みとともにあった。同館が収蔵する国指定史跡「上白岩遺跡」の「埋甕[うめがめ]」などの出土品は、3000~4000年前にこの地に生きた人々の確かな証しである。 ■集落営み 今に伝える 上白岩遺跡は1976年の予備調査を踏まえ、77年に本格的な発掘調査が開始された。調査は2004年までに計12回行われている。旧中伊豆町立中伊豆歴史民俗
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各部屋にサーバー ビール醸造所が宿泊施設 静岡、7月1日開業
クラフトビール醸造・販売のウエストコーストブルーイング(WCB)は7月1日、静岡市駿河区用宗の醸造所の向かい側に直営宿泊施設「The Villa&Barrel Lounge(ザ・ヴィラ・アンド・バレル・ラウンジ)」を開業する。小規模ビール醸造所は全国に580カ所超、本県に20カ所超あるが、本格的な宿泊施設を運営するのは珍しい。30~50代の国内ビールファンをターゲットに年間稼働率6割を目指し、宿泊客の周辺回遊を促すことで、用宗地区一帯で開発が進む観光関連ビジネスの活性化に寄与する。 「ブルワリーに泊まれる」をコンセプトにした全5室を提供する。各室とも生ビールサーバー付きで、宿泊者限定ビール
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静岡人インタビュー「この人」 鈴木康広さん(東京都) 県文化奨励賞に選ばれた現代美術家
ありふれた日常に新しい切り口を与え、世界の捉え方を問い直す作品をつくり続ける。2021年に静岡市美術館の入り口ホールで開いた個展では、10年の同館開館時の展示作品「まばたきの葉」を同じ場所に“再生”。時空を超えた参加型アートとして話題を呼んだ。武蔵野美大教授。浜松南高出。43歳。 -受賞の感想を。 「たいへん光栄。活動機会をいただいたこと、それを文化・芸術として認めてもらえたことがうれしい。僕は生活の中で『大切だ』と思ったことを、研究機関や展覧会を企画する方々と具現化してきた。街の空間に新しい場所を見つけるのが自分の活動だと再認識できた」 -「楽しさ」を深く、広
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アニメ制作スタジオ 静岡市に初進出 県内学生採用に意欲
東京都に本社を置くアニメ制作会社「シャフト」が6月、静岡市葵区に制作スタジオを新設した。アニメ制作会社が同市に進出するのは初めてで、アニメ業界への就職先として市内の専門学校からも歓迎の声が寄せられている。首都圏から移住した社員もいて、市は「若者の人口流出を防ぎ、地域活性化の起爆剤になれば」と期待を込める。 23日にはシャフトの久保田光俊社長(62)=菊川市出身=が静岡市役所を訪れ、田辺信宏市長に新設した「静岡スタジオAOI」の業務開始を報告した。久保田社長は「ここ数年の通信環境の向上やテレワークの定着で、首都圏以外でも制作できると考えた。静岡から世界に作品を発信するというロマンを追い掛けた
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ドラムの楽しさ♪議論 浜松で気鋭2人が座談会
気鋭のドラマー2人が奏法を語り合う「ドラム・ザ・座談会」が、浜松市西区のカフェ「エスケリータ68」で開かれた。バンドサウンドを下支えする苦労や楽しさについて、お互いへの敬意を込めて議論した。 インストバンド「SAKEROCK」の創設メンバー伊藤大地さんと、ジャズやラテンなど幅広い音楽性のバンド経験がある滑川博生さん(三島市)が登場。2基のドラムセットに座り、それぞれが参加した近年の楽曲を聴きながら、ドラムパートの工夫を実演、説明した。 スティックさばきの練習や、バンド演奏時のテンポの修正方法など、寄せられた質問にも専門家の立場から答えた。高校時代はロックバンド「X JAPAN」に憧れてい
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丸子のビール醸造開始 静岡の食に対応、ラガー中心 駿府匠宿内
静岡市駿河区丸子の観光施設「駿府の工房 匠(たくみ)宿」内に新設されたクラフトビール醸造所「静岡醸造」が21日、本格的に醸造を開始した。市内四つ目のビール醸造所が動きだした。 福山康大代表(33)=同区=、醸造担当の折山徹郎さん(32)=同区=が、醸造所の第1号となるホワイトビールを仕込んだ。コリアンダー、ユズの皮、米こうじを副原料に使い、ラガー酵母で発酵させるという。240リットルの発酵タンク5基が並ぶ醸造所内に甘い香りが漂う中、2人は麦汁の煮沸や糖化の作業にいそしんだ。 ホワイトビールは7月中旬に完成する見込みで、同時期に仕込むIPA、ラガーとともに醸造所に隣接する飲食施設で提供する
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記者コラム「清流」 「こだわり」が多すぎる
昨今のコンビニには「こだわり」があふれている。「こだわりの○○ケーキ」「こだわり製法」「シェフこだわりの〇〇」-。いつからこんなに増えたのだろう。 新聞やテレビもしかり。「任期中の表明にこだわった」「こだわり抜いた職人技」。理解できるものも、違和感があるものも。先輩記者には「拘泥の『拘』。本来、肯定的な言葉ではない」と教わった。 新明解国語辞典には「どうでもいいと考えられることにとらわれて気にし続ける」とある。一方で「深い思い入れをする」とも。意味がプラスに転じた珍しい例らしい。 便利な表現なのかもしれないが、使用頻度が高すぎないか。安直さ、空虚さを感じ取るのは私だけか。自問自答を聞い
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戦争の記憶にじませて 静岡の岩崎さん短編集「水の彼方」刊行
小説家岩崎芳生さん(静岡市葵区)の新刊「水の彼方 十四の短編」は、静岡に深く根を下ろし、市井の人々に材を求めた約40年間を俯瞰[ふかん]する自選集。岩崎さんは過去の14編と向き合い、ストーリーラインをくっきりと浮かび上がらせるべく、曖昧さのそぎ落としに没頭した。極限までシェイプさせた小説群は、読む者の胸の底に確かな刻印を残す。 1979年の「牛坂」から2021年の新作「川の中で」まで、人々の暮らしに潜むドラマを描く作品が続く。何度となく故郷を題材にした小川国夫(1927~2008年、藤枝市出身)の言葉が常に頭にあったという。「『何を書くかではなく、どう書くかだ』と言っていた。見えているもの
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ペナルティ・ヒデ Jリーグ後半戦占う 若きキーマン 清水は鈴木唯人選手/磐田は古川陽介選手に注目
「静岡サッカー熱血応援番組」を掲げ、3月に始まったSBSラジオ「ヒデとキトーのFOOTALK(フットーク)!」。番組ナビゲーターのペナルティ・ヒデが、開幕後3カ月半が経過したJリーグの後半戦を占った。 清水、磐田ともに、シーズンの折り返しを前に下位に沈んでしまっています。共通して言えるのは、後半を戦い切れていないこと、勝負弱さを感じること。体力が落ち、ストレスもある中で、相手に対するマークが徐々にずれていき、点を取られる印象ですね。 若きキーマン リーグ戦中断明けのキーマン、清水は鈴木唯人選手ですね。自分の前のスペースを作って走りだすタイミングがいい。ゴールまでの道筋がはっきり見えてい
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親子でハマる野外音楽フェス♪ 心と体に開放感【NEXTラボ】
開放的な空間で多彩なアーティストの演奏が楽しめる野外音楽フェスティバル(フェス)が、本格的なシーズンを迎えた。若者向けのイメージもあるイベントだが、近年は参加者の年齢幅が広がり、静岡県内会場でも家族連れの姿が増えている。新型コロナウイルス禍の中でも、主催者は世代を超えて愛されるフェスを目指し、子ども向け企画や過ごしやすさに配慮した運営に力を注ぐ。 増える家族連れ 過ごしやすく 5月中旬に富士市の「富士山こどもの国」で開催された「FUJI&SUN(フジ・アンド・サン)」は、子ども向けの広大な遊び場が会場。イベントとしての企画に加え、動物への餌やり体験や大型遊具の開放など、既存の設備を使った
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三善(掛川市)川合利弘さん 食品スーパーの一角 “架空の醸造所”出現【しずおか クラフトビール新世代㉔・完】
食品スーパー「フードマーケットサンゼン葛川店」(掛川市)には、「醸造所」を名乗るスペースがある。「『サンゼン・ブリュワリー』。2021年2月の店舗改装に合わせて“架空の醸造所”を出現させた」と話すのは、運営会社「三善」の川合利弘社長(52)=同市出身=だ。国内外のクラフトビール約150種をずらりと並べ、オリジナルのグラスやTシャツも販売。市内生産者の豚肉を使ったソーセージなど、おつまみの提案にも余念がない。スーパーとしては異例の売り場をつくり出した。 創業から120年以上、食品スーパーとして半世紀以上の歴史がある三善の4代目である川合さんがクラフトビールにのめり込む
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記者コラム「清流」 “人格”を得た県美
15日まで県立美術館で開かれていた「大展示室展」は前代未聞だらけだった。展示室の移動壁、照明器具、館の備品が、堂々と展示物として飾られていた。びっくりした。 監視員の業務内容も紹介していた。無人販売所が多い土地柄からか、入り口で野菜を預かることが「よくある」そうだ。展示室に植物は持ち込めないと初めて知った。 会期が終わり、はたと気付いた。これはとても勇気がいる試みではなかったか。来館者を信頼し、全てをさらけだした県美。よろいを脱ぎ捨てて県民との距離を一気に詰めたな、という印象だ。 一つの人格が与えられたようにも感じる。6月には新しい企画展が始まる。顔つきをがらりと変えた県美に&ldqu
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侵攻前の貧村「息吹」鮮明に ウクライナ出身写真家が来日個展
ウクライナ・マリウポリ生まれで現在はドイツ・ベルリンを拠点に活動する写真家ビクトリア・ソロチンスキーさんが、旧知のキュレーターで映画監督の渡辺真也さん(沼津市出身)の招きで来日。東京・渋谷でチャリティー展覧会「生命[いのち]を夢見て:ウクライナと共に」を開いている。首都キーウ近郊の貧村を捉えたシリーズは図らずも「失われた風景」の記録となってしまった。「ロシア軍の侵攻は、ウクライナの文化を破壊している」と訴える。 世界23カ国で展覧会を開いている。日本での個展は2017年に京都で開かれた「Anna&Eve」展以来。自身の内部を戯画的に映し出すポートレートでも知られるが、今回展ではドキュメンタ
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ほぐせない関係性、平穏の背後に 宇佐見りんさん「くるまの娘」
芥川賞作家の宇佐見りんさん(沼津市出身)が、受賞後第1作の「くるまの娘」(河出書房新社)を発刊した。人間同士の解きほぐせない関係性と、その不均衡を包摂して紙一重で保たれている平穏。何げない日常に潜む危うさを、家族という共同体に託して物語化している。 高校生のかなこは、祖母危篤の報を受け、父母、弟、兄と父の実家に車で向かう。車中泊、祖母の死、集まる親戚たち、葬儀-。淡々と進む儀礼の合間に、家族の過去が差し挟まれる。 かなこと父、かなこと母、父と母、父と兄、かなこと弟。傷つけ、傷つけられしながら今に至る1対1の関係性が容赦なく描かれる。のんきな家族間の会話の背後に、暴力の気配が立ちこめていく
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ウクライナの子ども支援へ写真展 沼津出身の映画監督、東京で開催
沼津市出身のキュレーターで映画監督の渡辺真也さん(42)が代表を務めるアートボランティア団体「アートエイド実行委員会」が、ロシアによるウクライナ侵攻で被害を受けた現地の子どもを支援しようと、世界的評価を受けるウクライナ出身の写真家ビクトリア・ソロチンスキーさん(42)を招いた個展を12日、東京・渋谷の「ギャラリーTOM」で始めた。 2009~18年に首都キーウ近郊の村に通い、古い民家に住む高齢者たちの生活を撮影したシリーズ「Lands of No-Return(帰らざる国)」など約30点を出品した。 ソロチンスキーさんはウクライナ南東部のマリウポリ生まれ。1990年に家族とともに当時のソ
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多彩な魅力「カストリ雑誌」 静岡市でトークショー
遊郭研究の第一人者で遊郭専門出版社「カストリ出版」を経営する渡辺豪さん(45)=写真=が、太平洋戦争終結直後にGHQの検閲をかいくぐって出版された「カストリ雑誌」の成り立ちや魅力を紹介するトークショーを、静岡市葵区の登録有形文化財鈴木邸で開いた。 各種メディアでは、カストリ雑誌の数々を戦後の闇市を販路として広がった「エログロ雑誌」と定義する例が多い。渡辺さんはこれに異を唱えた。「1946(昭和21)年ごろから出始めたカストリ雑誌は、49(昭和24)年に大手取次がつぶれ中小出版社の在庫が露店に流れるまで、書店に並んでいた。情報不足でイメージが先行したのではないか」 低質で乱造された「かす取
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中世ビール原料「ヤチヤナギ」 静大に植樹、株増やし醸造材料に
静岡大の学部横断組織「発酵とサステナブルな地域社会研究所」(所長・大原志麻人文社会科学部教授)は6日、産学官の垣根を越えて再現を試みる中世欧州のビールに必須の原料植物「ヤチヤナギ」を静岡市駿河区の同大学内に植樹した。生育の経過を観察しながら県内で株を増やし、3年後にビール醸造の材料として用いる計画。 式典では田島慶吾人文社会科学部長とプロジェクトに加わるふじのくに地球環境史ミュージアム(同区)の佐藤洋一郎館長が、ヤチヤナギの研究に取り組む北海道立総合研究機構森林研究本部林業試験場から提供された幼木を丁寧に植えた。 ヤチヤナギは中世の欧州の庶民が飲んだ「グルートビール」の主原料。ヤマモモ科
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KIRINJI 生演奏で心地よい緩さ FUJI&SUN出演
富士山を間近に見ながら約30組のライブとキャンプを満喫するフェスティバル「FUJI&SUN(フジ&サン)’22」(静岡新聞社・静岡放送、WOWOWなど主催)が14、15の両日、富士市の「富士山こどもの国」で開催される。主要アーティストのKIRINJIは新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった2020年の同フェスに出演予定だった。メンバーの堀込高樹は仕切り直しとなった今回の出演を心待ちにする。 堀込高樹、堀込泰行の兄弟グループ「キリンジ」として1998年にメジャーデビュー。2013年に高樹が中心の6人組バンド「KIRINJI」として再編成し、21年からは高樹のソロプロジェク
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館蔵品を蓄積、新サイト公開 作品情報の活用促進へ 静岡県立美術館長/木下直之氏【本音インタビュー】
静岡県立美術館は4月、新しいデジタルアーカイブを公開した。収蔵品検索のほか、動画や超高精細画像による作品・作家の紹介など新しいコンテンツも導入した。デジタル時代の美術館はどうあるべきか。役割の変容を聞いた。 -刷新の背景は。 「新型コロナウイルス禍で、展示室を閉めるという想定していなかった事態に陥った。県境を越える移動の制限で、県外在住者の来館を遠慮していただく時期もあった。公に対して開かれているべき美術館や博物館は、こうした場合にどういう形で開けばいいのかという問題に直面した。国がオンラインの展示活動について、奨励を始めたことも大きい。今回のアーカイブ拡充にも国費が出ている」 -約2
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異形うごめく歌詞世界 逆柱さん「漏電銀座」 静岡でライブ
漫画家逆柱いみりさん(静岡市葵区)のバンド「漏電銀座」が、同区七間町に移転オープンしたライブハウス「騒弦」で演奏を行った。ぐしゃっとした音色のギターにのせて、異形の者どもがうごめく摩訶[まか]不思議な歌詞世界を描いた。 2007年に結成したバンドの第1弾CD「ぬばたまの世界」発表後、初の地元ライブ。ナースルックで現れた逆柱さんは、ニシガヤキウコさんのドラムと自身のギターで不穏かつポップなサウンドを構築。ぬめっとした生き物たちが跋扈[ばっこ]する地下世界を歌う「ねずみの国」を皮切りに、風変わりな単音のギターフレーズを繰り返しながら、しゃがれた声で客席に言葉を投げつけた。 1980年前後の英
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ビアパブ12年礎築く 呉服町タップルーム(静岡市葵区)横田史剛さん【しずおかクラフトビール新世㉓】
JR静岡駅は、徒歩圏内にビアパブやビアバーが約20軒ある。「日本一のクラフトビールシティー」と評価する声も聞こえる。 クラフトビールが今ほど認知されていなかった2010年、17タップを並べたビアパブ「ビールのヨコタ」を市役所近隣に開き、クラフトビールシティーの礎を築いたのが横田史剛さん(41)=吉田町出身=だ。2年前に「呉服町タップルーム」と名を変えた店は4月4日、12回目の誕生日を迎えた。 「30年は続けるつもりで始めた。まだ12年しかたっていないのかと」。ひょうひょうとしたキャラクターだが、大人数の来店をご法度とするなど、確固たる哲学を持つ。12年間の営業を経て、一人客の居心地を優先
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初登場の角銅真実 「偶然」に身委ねたい FUJI&SUN
雄大な富士山の懐で音楽ライブやキャンプ、野外活動のワークショップを楽しむフェスティバル「FUJI&SUN(フジ&サン)’22」(静岡新聞社・静岡放送、WOWOWなど主催)が5月14、15の両日、富士市の「富士山こどもの国」で開かれる。3回目の今年は約30組のアーティストが集う。初登場のシンガー・ソングライター角銅真実に、初夏の野外フェスを前にした心境を聞いた。 2020年、アルバム「oar」でメジャーデビューした。東京芸大音楽学部打楽器専攻卒。弦を中心に据えたアコースティック楽器の穏やかなアンサンブルに、静謐[せいひつ]さと力強さを兼ね備えた歌声をのせたサウンドで、音楽ファンを
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静岡県立美術館 新デジタルアーカイブ 所蔵2700点を収録 池大雅作品、高精細画像で
静岡県立美術館が、所蔵品約2700点の作品を検索できる新しいデジタルアーカイブを公開した。これまでの検索サイトを一新し、作品解説など情報の充実を図ると同時に、動画や高精細画像を活用したコンテンツを加えた。スマートフォンでも見られる。 所蔵品検索のエリアでは、約8割の作品が画像付き。図書閲覧室に収めた図録などの情報も新たに加えた。 動画のエリアでは浜松市出身の美術家中村宏さんが1950年代から現在までの作品制作を語るインタビューや、木下直之館長と「批評とその愛人№1-7」が同館に所蔵されている美術家森村泰昌さんの対談などが見られる。 所蔵作品への新たなアプローチも。オーギュスト・ロダン作
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美術館の機能可視化「大展示室展」開幕 静岡県立美術館再始動
静岡県立美術館(静岡市駿河区)で2日、展示室の機能や仕組みをテーマにした企画展「大展示室展」が開幕した。約7カ月の改修工事による休館を経て再始動した同館が、全国でもほぼ類例がない展覧会をスタートさせた。 来館者の快適さを確保するための展示室の構造、作品を安全に展示するための器具や照明について、備品と解説文で紹介。普段は『脇役』の移動壁、スポットライト、作品の梱包(こんぽう)用具などに焦点を当てた。空調や温湿度の管理、空気中の有害物質計測にも言及し、通常の作品展では目につかない工夫を可視化している。 「変わった預かり品」「はらはらさせる展示物」など、監視員が業務のこぼれ話を語るボードも随所
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静岡県立美術館 7カ月ぶり展示再開 空調、照明、壁…設備に作品生かす工夫いろいろ
耐震工事などによる臨時休館を経て4月、県立美術館が約7カ月ぶりに展示を再開する。2日からの「大展示室展」は作品展示の工夫や美術館内の知られざる仕組みがメインテーマ。これを機に、地域の財産とも言うべき収蔵品のより良い見せ方や、美術館・博物館の意義を考えたい。県立美術館で収蔵品の保存管理を担う新田建史上席学芸員に、「大展示室展」の内容に沿って展示室の設備を解説してもらった。 ■移動壁 美術館の展示室は企画内容に応じて可動式の移動壁を設置します。壁は鉄骨の上に木板を貼りクロスで覆ったもの。当館の移動壁は高さ約4メートル、幅は2・6メートルから7メートル超までさまざまです。 展示室上方
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読書体験、作品の糧に 小説プロジェクトが文科大臣賞 加藤学園暁秀高の小池さんと駒走さん
加藤学園暁秀高2年の小池りりいさん(沼津市)、駒走旬星[こまはしりじゅんせい]さん(同)による、地元を題材にした小説のプロジェクトがこのほど、国立青少年教育振興機構が主催する「地域探究プログラム」の文部科学大臣賞に選ばれた。幼少期から積極的に本に触れ、受賞作品の糧とした二人に、それぞれの読書体験を語ってもらった。 -最初に自分で選んで読んだ本は。 小池「小2の頃に書店で買った『ドギーマギー動物学校』(姫川明月/作・絵)です。犬が好きだったので、動物たちが描かれた表紙に引かれて手に取りました。イラストがかわいらしく、楽しく読んだ記憶があります」 駒走「自宅にあったグリム童話集。小2か小
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193バレーブリューイング(島田市) 渡辺威夫さん 茶農家に縁、思い込め【しずおかクラフトビール新世㉒】
島田市の伊久美地区と縁を紡いで丸10年。193[イチキューサン]バレーブリューイング(同市)の渡辺威夫醸造長(30)は、2月に完成した、地元産茶葉を使ったビール2種を前に来し方を振り返った。「今までのつながりに、やっと答えが出た気がする」 伊久美に初めて来たのは、東京農大の学生だった2011年12月。環境保全や食に関わる課題解決を目指す学生のネットワーク「世界学生フォーラム」の活動の一環として、先輩に導かれた。 東京生まれで、島田市や静岡県に特別な思いはなかった。中山間地の少子高齢化、過疎化の対策を実地研修を交えながら考える上で適切。伊久美はそうした意味合いで選ばれた地域だった。茶の栽培
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28日発表 米アカデミー賞予想 映画評論家・鬼塚大輔さんに聞く
米国時間27日(日本時間28日)に発表される第94回米アカデミー賞。日本映画として初めて作品賞にノミネートされた濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」を軸に、同賞など主要4部門の行方を静岡英和学院大、常葉大非常勤講師の映画評論家鬼塚大輔さん(59)に占ってもらった。 ■「ドライブ・マイ・カー」邦画初 作品賞なるか ▼作品賞 昨年の「ノマドランド」(クロエ・ジャオ監督)、一昨年の「パラサイト」(ポン・ジュノ監督)はどちらも格差と分断をテーマにしています。社会階層間のコミュニケーション不全は世界的に課題とされていて、ここ2年の作品賞の結果はその表れだと思います。 今年のノミネート作品では
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震災11年 福島の生活は 美術家・乾さん 浜松で報告会
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から11年目の3月11日、浜松市中区の鴨江アートセンターで、美術家の乾久子さん(同市西区)が、2021年に福島市で開いた個展と、同年に福島県内を旅した様子について報告するトークを行った。参加者との対話を交え、福島の生活や文化の過去と現在を浮かび上がらせた。 乾さんは同年3月から12月まで、計6回福島県を訪れた。震災があった11年、3月12日からの新聞1面を黒で塗りつぶす作品を毎日制作した経過があり、10年後に改めて五感で現地を体感したくなったという。 21年3月11日、福島入りした乾さんは常磐線車中で得がたい体験をした。地震が起こった午後2時4
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アートの力を事業に生かそう 地域課題解決へ実証実験 アーツカウンシルしずおか、県内4社と
静岡県が県民の芸術活動支援のために設置した「アーツカウンシル(AC)しずおか」が、アートの力を使って企業活動や地域の活性化を図るプロジェクトに取り組んでいる。県内4社を選定し、それぞれの事業活動にアーティストやアートディレクターを関わらせることで、どんな“化学反応”が生まれるか検証する。事業者がアートの思考で市民と対話し、事業内容や街並みに目に見える変化を生み出すのが狙いだ。 空き家の利活用プロジェクト「アキヤアソビ」を手掛ける日の出企画(三島市)は選定4社の一つ。今月、市内の空き家、空きスペースで、それぞれアート作品展示や飲食を核に据えたイベントを企画する。ACし
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静鉄車両で朗読劇 SPAC俳優 3月19、27日に上演
静岡鉄道の運行車両内を“舞台”として沿線の歴史や風物を題材にした朗読劇を展開する「きょうの演劇inしずてつ」(静岡市主催)が19、27の両日上演される。開催に先立ち6日、関係者向けに試演された。 SBSラジオで毎週土曜に放送中の「きょうの演劇」の発展演目。昨秋に放送した静岡鉄道にまつわる戯曲3本を、SPAC俳優宮城嶋遥加さんが新静岡駅から新清水駅までの約20分間に身体表現を交えて朗読した。 ギターとオーボエの即興演奏に乗せ、県産茶を運んだ鉄道の歴史、沿線各駅の由来や周辺環境、過去に存在した遊園地「狐ケ崎ヤングランド」(現在の静岡市清水区)の風景などを、乗客に語り掛
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アオイブリューイング(静岡市葵区)星野賢人さん 倒産から1年で復活「恩返しを」【しずおかクラフトビール新世代㉑】
運営会社の倒産に伴う醸造停止から1年。22日、復活なったアオイブリューイング(静岡市葵区)のビール3銘柄が市内3店舗で飲めるようになった。 2014年から稼働したかつての「アオイ」の代表的ブランドであるゴールデンエール、IPA、アルトを同じレシピで再現。同区のビアスタンド「ザ・パイント・シャック」では、午前11時の開店を待ちかねたように注文するファンもいた。アオイの醸造長星野賢人さん(35)は「ファンの期待が大きくプレッシャーを感じていたが、第1弾が完成してほっとした。醸造を重ね、品質をさらに高めていきたい」と気を引き締めた。 星野さんがアオイに入ったのは20年10月。広島市でのビール醸
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野外音楽フェス「頂」6月開催発表 吉田公園で3年ぶり
2011年から吉田町で毎年初夏に開かれ、20、21年は新型コロナウイルス禍で中止になった野外音楽フェスティバル「頂-ITADAKI-」の主催者が24日、3年ぶりの開催を発表した。6月4、5の両日、県営吉田公園で行う。コロナ禍以前の19年まで開かれていた県内各地の主要なフェスが、ことしはほぼ全て復活することになった。 「頂」は感染症対策として出演者数や来場者数を絞るなど、規模をこれまでに比べ抑制する。出演者は3月に発表する。小野晃義プロデューサーは「野外で音楽を聴く気持ち良さを改めて提示したい」と意気込んだ。 町は開催を歓迎する。企画課まちづくり推進部門の辻祐輔さんは「例年、来場者の半数が
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元祖ロードムービー 3月、静岡で特集上映 ベンダース監督の名作6本【とんがりエンタ】
ドイツ映画の巨匠ビム・ベンダース監督が自ら監修、修復した名作6本が3月、静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーで特集上映される。監督の代名詞である「ロードムービー」の初期3作をはじめ、多様な作品群をまとめて見られる。 ラインアップは4~10日が「都会のアリス」(1974年)「アメリカの友人」(77年)「パリ、テキサス」(84年)で、11~17日が「まわり道」(75年)「さすらい」(76年)「ベルリン・天使の詩」(87年)。同館の川口澄生副支配人はベンダース監督について「70年代のドイツ映画の新潮流『ニュー・ジャーマン・シネマ』の担い手の一人。主人公の旅を追うロードムービーという映画ジャンルを確立
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次郎長からっと明るく 町田康さん小説新シリーズ「男の愛」 静岡県のローカルヒーロー主人公に
熱海市に居を移して16年目。芥川賞作家の町田康さんは小説新シリーズ「男の愛」で、静岡県のローカルヒーロー清水次郎長を主人公に据えた。浪曲で知られるアウトローの一代記を、軽妙な会話と大立ち回りを織り交ぜながら喜劇として展開する。「さまざまなエンターテインメントの題材になっている次郎長の、新しい姿を示したい」 物資を満載した千石船、荷揚げ荷下ろしの人足、料理屋、宿屋、遊女屋-。2019年9月から続くウェブ連載をまとめたシリーズの単行本第1弾「たびだちの詩」(左右社)は、にぎわう清水湊[みなと]の描写で幕が開く。 次郎長は幼少期から親しみのあるキャラクターだ。「小学生の頃には映画や歌謡曲を通じ
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縦横 強弱 端正な交錯 筆致多様に世界表現/ベルナール・ビュフェ 色彩と線㊦「線の変容」
第2次大戦後まもなく、19歳で本格的に画壇デビューしたフランス人画家ベルナール・ビュフェ(1928~99年)。当初は虚飾を排した独自の人物描写に注目が集まったが、そのモチーフは摩天楼、昆虫、水辺の風景など時代によって変遷した。ベルナール・ビュフェ美術館(長泉町)で開催中の所蔵品展「具象画家 ベルナール・ビュフェ-ビュフェが描いたもの-」に出品された代表作からは、画題の移り変わりが線の変容と一体であることが読み取れる。 ≪アトリエ≫は頭角を現し始めた10代後半の作品。黙々とキャンバスに向かう自身を描いた。物の輪郭線や背景の質感表現としての線が特徴的で、対象によって明確に違いが出ている。同美術
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八雲作品の朗読・演奏 動画を公開 焼津、能楽師安田さんが演出
昨年10月に焼津市の旧服部家「帆や」で行われた、能楽師安田登さんが演出を担当した小泉八雲作品の朗読・演奏会の動画が、1月21日から毎週金曜に動画投稿サイト「ユーチューブ」で順次公開されている。明治時代に建てられ、昨年再生工事が完了した古民家を舞台にした迫力満点のライブ。焼津ゆかりの八雲の作品に新たな命を与えている。 演目は「耳なし芳一」と「漂流」。安田さんと俳優佐藤蕗子さんの朗読、琵琶奏者塩高和之さん(静岡市出身)の演奏を4台のカメラがドラマチックに捉えた。琵琶を手に平家物語の平家滅亡を語る芳一の姿、平家の亡霊と相対する芳一の恐怖の描写が聴きどころ。 緩急と抑揚を巧みに使い分けた二人の朗
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記者コラム「清流」 “巨木”に並ぶ芸術祭
年明け早々「おっ」と声が出た。「美術手帖」の今年注目の国際芸術祭ベスト6に、大井川鉄道の駅や周辺で毎年開催する「UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川」が選ばれていた。 ベスト6には、来場100万人超が見込まれる瀬戸内国際芸術祭などの大規模展も名を連ねる。「無人駅-」の主催者や支援者、過去4回の参加アーティストの充実した活動が、“巨木”に比肩する評価をもたらした。 本当の「地方創生」とは何か。「無人駅-」はアートを通じてヒントを示す。キーワードは「地域性」「再発見」だ。 今年は2月25日開幕。川根路の風景が少しだけ変わる。駅などの作品に「おっ?」と声が出たら。
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紙素材を作品の“肌”に 現代美術家・楡木令子さん(藤枝市)
1990年代から紙を素材にした立体作品を発表する現代美術家楡木令子[にれきれいこ]さん(東伊豆町出身)。昨年、藤枝市の地域おこし協力隊の一員になり、中山間地域で子どものアート教室を実施している。 富士市で開催中の個展に設置したインスタレーションは、95年に初めて紙で創作した「人の抜け殻」7体が中心。ベルリン芸術大院在籍時に再生紙の卵パック約5千ケースを砕いて水に溶かし、粘性を高めて形を作った。高さ170センチほどの作品群はアーティストとしての“原点”だ。 「粘土を使ったこともあるが、完成までのプロセスが長すぎる。鮮明な像として結ばれたアイデアがだんだんぼやけて鈍く
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伊豆の国ビール(伊豆の国市)渡辺仁さん なじみの水で仕込み「飲みやすさ高める」【しずおかクラフトビール新世代⑳】
自分が育った町で、飲み慣れた水を使ってビールをつくっている。「伊豆の国ビール」の醸造担当、渡辺仁さん(42)は醸造所が立地する旧大仁町(伊豆の国市)出身、在住。「大仁の水は昔からおいしいと言われていた」と胸を張る。 20代から30代半ばまで、ビールが全く飲めなかった。日本酒、焼酎、サワーなど酒類は何でも飲めたが、唯一の例外がビール。「ホップの苦みが苦手だった」という。 2015年、醸造所のレストラン担当として、毎朝のビールテイスティングを任された。「ピルスナーもヴァイツェンも苦さが控えめ。口当たりが柔らかく、のど越しが良かった」。人生で初めてビールを「うまい」と感じた。 同醸造所のルー
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世界の“格言”題材に対話 静岡県詩人会、田中章義さん講演会
静岡県詩人会(中久喜輝夫会長)は、年始恒例のイベント「ポエム・イン・静岡」を静岡市駿河区の県男女共同参画センターあざれあで開いた。歌人の田中章義さん(同区)が約20年前から世界を旅して集めた「千年生きている言葉」を題材に、約20人の参加者と対話した。 「多く持っていない人が貧しいのではなく、多くほしがる人が貧しい」(スペイン)「友のいない人生は塩気のないピラフだ」(ウズベキスタン)「神さまは決して目をつぶらない」(ジャマイカ)-。田中さんは各国で長く伝えられている“格言”を一つ一つ紹介。一部の単語を隠した形で文を提示し、「詩人の方々には一人一人の正解がありそうだ。皆
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ビール友達、夢を実現 三島に醸造所「ティールズ・ブリューイング」、今春本格稼働
三島市のクラフトビール醸造所「ティールズ・ブリューイング」が今春、本格的に醸造を始める。昨年12月18日、醸造所併設の飲食施設を先行開業した。同市でビール醸造所が創業するのは初めて。市内のビアパブで意気投合した二人が、約5年かけて夢を実現させる。 醸造担当で同社代表社員の秋田克彦さん(48)=新潟県出身=と店舗担当の川口聡さん(46)=三島市出身=は2016年、伊豆箱根鉄道三島広小路駅前にあった「ビアバール丸々」で出会った。「お互いの仕事など細かいことは何も知らなかった。楽しい飲み友達だった」(秋田さん) その後、秋田さんはビール醸造への、川口さんはビアパブ経営への情熱を募らせ、別々に
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理学部・人文社会科学部100周年 静大同窓会が冊子 コロナや災害論考
静岡大理学部、人文社会科学部の同窓会が、両学部の前身である旧制静岡高創立から100年を迎える記念事業として新型コロナウイルス禍や自然災害に関係した研究結果や知見をまとめた冊子を発刊した。 「文理両面から迫る新型コロナウイルスと自然災害」と題し、両学部の教員14人が歴史学、心理学、化学、生物学など多様な視点で論考を寄せた。 人文社会科学部の鈴木実佳教授はダニエル・デフォーの著書「ペストの記憶」(1720年)を参照しながら、18世紀初頭の情報伝達のありようを論じた。理学部の徳元俊伸教授は新型コロナワクチンのメカニズムを、開発過程を交えて解説した。 A4判76ページの冊子は約5千部印刷し、県
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中世ビール再現へ 静岡大プロジェクト、春にも原料を試験栽培
中世の欧州で飲んでいたビールを、静岡県産の原料で再現しよう-。静岡大に今冬設置された研究組織「発酵とサステナブルな地域社会研究所」(所長・大原志麻人文社会科学部教授)が、産学官や大学の学部の壁を超えたプロジェクトを始めた。中世のビールに欠かせない植物「ヤチヤナギ」を北海道から取り寄せ、2022年春から富士宮市の醸造所が試験栽培する。 大原教授のゼミ生が21年夏に取り組んだ、中世の欧州の庶民が飲んでいた「グルートビール」の再現実験を発展させる。スペイン史が専門の大原教授ら文系学部の教員のほか、同大の理系学部教員、富士宮市のクラフトビール醸造所「フジヤマハンターズビール」の深沢道男代表、ふじの
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ZOO(静岡市葵区)伏見陽介さん 百人百様の味わい 飲み比べ楽しんで【しずおかクラフトビール新世代⑲】
自他共に認める、静岡のクラフトビールの「伝道師」だ。2021年春に自らの会社「ZOO」を立ち上げ、11月末に生ビールの有料試飲ができる酒販店「MUGI」をオープンした伏見陽介さん(27)=静岡市葵区=。「市内のどんな居酒屋にも県内の醸造所のビールが常時置かれている。そんな状況を目指す」と理想を掲げる。 17年に同市内のクラフトビール店を紹介した「静岡クラフトビアマップ」を発刊し、名をあげた。19年には全県版を12万部発行。18年からは清水区で秋に開かれる「静岡地ビールまつり」の企画も担当する。セミナーや講座の講師としてもおなじみだ。本県のクラフトビールファン増と、各醸造所のブランド向上への
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「ナビ派」研究の成果披露 美術館学芸員がオンラインシンポ
ボナール、ドニら19世紀末のフランスで活躍した画家集団「ナビ派」の研究者、作品を所蔵する本県などの美術館の学芸員らが集うオンラインシンポジウム「日本の美術館とナビ派-地方美術館から考える研究の可能性」が開かれた。 一橋大大学院言語社会研究科の主催。同科の小泉順也教授は「地方美術館のコレクションが持っている可能性を探り、大学院生を含めた多くの研究者が積極的に関与する出会いの場を作ること」と企画意図を説明した。 小泉教授を含めた5人がナビ派の作家や作品の技法や創作背景について論じ、全体討議を通じて地方都市の美術館の役割について考察した。 静岡県立美術館の貴家映子主任学芸員は、三重県立美術館
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ヒカシュー25作目 月例ライブで精製、心躍るメロディー
結成43年のバンド「ヒカシュー」が25作目のアルバム「虹から虹へ」を発表した。新型コロナウイルス禍の中で継続した月例ライブで生まれた、メロディーが際立つ楽曲が基軸。ボーカルとさまざまな楽器を担当するリーダー巻上公一(熱海市)に、サウンドの背景を聴いた。 エストニアで録音した即興演奏曲主体の24作目「なりやまず」からちょうど1年。昭和歌謡のムードを濃厚に漂わせる旋律や心躍る8ビートが前に出た、前作と対をなす作品に仕上がった。 「(東京のライブハウス)吉祥寺スターパインズカフェでのマンスリーライブを通じてできた楽曲がほとんど。メロディーがポップなのは、三田超人さん(ギター)や坂出雅海さん(ベ
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苦悩 解放感 海と空 感じたままに塗る/ベルナール・ビュフェ 色彩と線㊤「色の変遷」
戦後の具象画シーンを引っ張ったフランス人画家ベルナール・ビュフェ(1928~99年)は、2020年秋から21年初頭にかけて東京で回顧展が開かれるなど、近年再び注目度が高まっている。ベルナール・ビュフェ美術館(長泉町)で開催中の所蔵品展「具象画家 ベルナール・ビュフェ-ビュフェが描いたもの-」で見られる代表作を上下2回の特集で紹介し、作品の背景や技法を読み解く。「上」のテーマは「色の変遷」。 初期のビュフェは栗色や灰色など、少ない色で画面を構成する。21歳のビュフェの自画像とも言われる≪肉屋の少年≫について同美術館の杉崎有拡学芸員は「第2次大戦直後のフランス社会、そして自分自身の苦悩や不安を
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“現代の浮世絵”表現競う 静岡の牧野宗則さん風鈴丸さん、都内で二人展
静岡県内で制作を続ける、ともに版画家の牧野宗則さん、風鈴丸さん親子が17日から26日まで、東京都中央区の和光ホールで「二人展」を開く。伝統木版画という共通の技術を用いながら、それぞれに独自の作品世界を切り開いてきた。会場空間を共有する機会を心待ちにする。 2020年秋にフェルケール博物館(静岡市清水区)で二人展を開いているが、都内では初の“共演”。20年5月に開催予定だったが、新型コロナウイルス禍で延期されていた。両者で約100点を出品し、表現を競う。 牧野さんは18年に同会場で個展を開いた。開催直後に二人展の話が来た。「根底の技術は伝統に則しているが、全く違う表
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浜松出身音楽家 鈴木惣一朗が新アルバム コロナ禍、歌の刻印残す
浜松市出身の音楽家鈴木惣一朗のソロプロジェクト「ワールドスタンダード」が13作目のアルバム「エデン」を発表した。2020年秋の前作「色彩音楽」と同様に自身の歌を中心に据え、女声と弦楽器を配して穏やかな音像を構築。イラストレーター横山雄の描き下ろしイラストと鈴木の全曲解説を掲載したCDブックのスタイルも前作を踏襲した。 「コロナ禍2年目の意味を、刻印として録音芸術に残す必要があった」と心境を語る。打楽器が入らない全8曲は、語り掛けるような歌声も相まって、淡いモノトーンの世界を印象づける。 「安直な希望、癒やしの歌を書くことはできない。状況が揺れているのであれば、自分の気持ちも揺れ動く。それ
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自慢のコーヒー飲み比べ 浜松、地元店集まりフェス
浜松市中区の浜松城公園で、地元コーヒー店が味と香りを競う「浜松ローカルコーヒーフェス」が開かれた。13店が軒を連ねた。4店のコーヒーが試飲できる千円のチケットを買い、飲み比べできる。市内に散らばる個性的な店舗の自慢の1杯を楽しんだ。 西区の「香茶屋」は焙煎[ばいせん]の全国競技会で3位入賞した伊藤孝浩さん(52)の店。約20分待ちで手にできたエチオピアの豆を使ったコーヒーは、柔らかな酸味と上品な甘さが口の中でゆったりとほどけた。 光サイホンで提供していたのが粋庵(中区)。生田智日皇さん(64)が「この日のために用意した」という豆は、ブラジル産とコロンビア産をプレミックス(生豆で混合)し、
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費用の確保支え、つなぐ 所有者代わり建造物を管理 静岡文化財保存活用機構理事/島村芳三氏【本音インタビュー】
文化的価値がある建造物を保存活用する目的で2020年に設立された一般社団法人の機構で、主導的役割を果たす。管理案件第1号である原田昇左右元建設相の生家「原田家住宅」(焼津市)の整備に尽力する。 -文化財保存活用機構の設立経緯は。 「18年の文化財保護法改正で、所有者に代わって民間団体が文化財を保存活用する仕組みが整った。建造物の維持管理は所有者の経済的な負担が大きく、文化的価値が高いのに修繕されずに老朽化している例が多い。こうした場合、維持管理の費用を自ら稼ぐ必要も生じる。機構は、そうした事業を支援する。20年11月には、登録有形文化財の原田家住宅の管理団体として文化庁から指定を受けた
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静岡市美術館 11年ぶり「まばたきの葉」展示 開館時の空間再び
静岡市美術館(静岡市葵区)は2010年の開館時に展示した美術家鈴木康広さん(42)=浜松市出身=の作品「まばたきの葉」を、30日から再展示する。公開に先立つ29日、鈴木さんが展示作業に立ち会い、11年前の空間を再構築した。 エントランスホールでの鈴木さんの個展「まばたきの葉 未来の待ち合わせ場所」の一環。開館10周年の20年に予定したが、新型コロナウイルス禍を受けて延期した。 「まばたきの葉」は樹木を模した高さ5メートルほどの筒状の塔から、植物の葉を模した紙が大量に降ってくる作品。紙には片面に閉じた目、もう片面に開いた目が描かれ、降り落ちる際はまばたきしているように見える。周囲にいる人が
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一騎醸造(三島市)阿久沢健志さん 麹への興味「扉」開く ソロ活動で探究の旅【しずおかクラフトビール新世代⑱】
醸造家としてのブランドネーム「一騎[いっき]醸造」を掲げ、さまざまな醸造所でビールをつくる阿久沢健志さん(34)=三島市=。その姿は「漂泊の醸造家」とも「ソロ・ブルワー」とも称される。 比類なきスタイルの原点には麹[こうじ]への強い興味があった。2012年に反射炉ビヤ(伊豆の国市)に入社し醸造を担当していたが、周辺に広がる水田からインスピレーションを得た。「日本の食文化にはみそ、しょうゆなど発酵食品が欠かせない。原料となる米や麦の麹をビールに使えないか」 天ぷらやオムライスなど、換骨奪胎も日本の食文化の美点。ビールにもその伝統を取り入れたい。麹は新しい扉を開く鍵になる-。そんな発想だった
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所蔵品をデジタル保存へ 静岡県立美術館 閲覧サイトも開設予定
改修工事で来春まで休館中の静岡県立美術館は、2026年の開館40周年を見据え、22年度からの「5カ年計画」の策定を進めている。所蔵品を活動の基盤とし、本格的なデジタルアーカイブを構築する方針で、来春以降には多くの所蔵品が見られる新しいウェブサイトを開設予定。デジタルデータ化された作品の画像や来歴情報の教育分野の活用も促す。 同館は、休館中に所蔵品の撮影を順次行っている。新しいアーカイブサイトには、現在の公式サイト内で閲覧できる作品も含め、所蔵品約2700点の8割をデジタル画像で収録する計画という。美術情報の検索利便性を高めることで、小中高校など教育現場で使えるオンライン教材の開発や、美術館
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4作家 創作の軌跡たどる 沼津で企画展トーク
静岡県東部の美術家グループ「EN[えん]」を主宰する長橋秀樹さん(57)=沼津市=が、自身が企画したグループ展「位置のエクササイズ」の出品作家3人と、会場の「DHARMA[ダルマ]沼津」でトークセッションを行った。 参加したのは菅沼稔さん(70)=同市出身=、松浦延年さん(71)=島田市(旧金谷町)出身=、相沢秀人さん(74)=神奈川県=。それぞれが、学生時代からの創作の軌跡をたどった。後半は「場所性」をテーマに議論した。 大型の油彩画を2点並べた菅沼さんは「大きさで空間を凌駕[りょうが]する。空間の中にどう入っていくかが大切」と意図を語った。 松浦さんは印刷会社の旧工場を活用した展示
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注目!高校演劇 咲かせる個性 伊東と静岡城北、関東大会へ
高校の演劇部の演目が「高校演劇」の名の下に脚光を浴びている。「アルプススタンドのはしの方」(兵庫・東播磨高)が映画化され、「水深ゼロメートルから」(徳島市立高)がプロ劇団によって上演されるなど、昨年から今年にかけて大きな動きも相次ぐ。折しも静岡県は本年度から「演劇の都」構想を掲げ、県舞台芸術センター(SPAC)を核に観光交流や人材育成を図るプロジェクトを進めている。高校年代の底上げも重要なテーマだ。高校演劇の魅力は。静岡県の実情は。20、21日に開かれた県大会の様子を軸に考えた。 全国大会への通過点となる県高校演劇研究大会(県高校文化連盟演劇専門部、県高校演劇協議会主催)が20、21の両
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朝霧JAM復活へ一歩 富士宮の音楽フェス、1月にプレイベント
富士宮市で毎秋開かれる野外音楽フェスティバル「朝霧JAM(ジャム)」を巡り、地元住民らでつくる実行委員会と企画制作会社スマッシュ(東京)は24日までに、2019年から3年連続で開催を見送ったフェスの22年再開に向け、1月16日に市内でプレイベントを開くことを決めた。富士宮市も後援し、官民で国内屈指の大規模フェスの復活を目指す。 富士宮市民文化会館に折坂悠太、ハナレグミら4組を迎える。新型コロナウイルスの感染の落ち着きや、政府のイベント開催緩和を受けて決めた。当日はマスク着用、検温など対策を徹底する。 01年から続く朝霧ジャムには毎年、約1万2千人が集った。19年は台風接近で、20、21年
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学芸員、大学で講義 浜松市美術館・島口さん「作品と対話を」
浜松市美術館(浜松市中区)の島口直弥学芸員が、静岡大浜松キャンパス(同)で講義を行った。工学部、情報学部の学生約100人を前に同美術館のあらましや展覧会を楽しむこつ、地域の文化・芸術に親しむことの大切さを説いた。 ことし開館50周年の同美術館が所蔵する7000点以上の作品からガラス絵「青服を着た中国婦人像」、「刺繡[ししゅう]不動明王二童子像掛幅」、洋画家岸田劉生の「草と赤土の道」を紹介し、「コレクション、アーティスト、地域の作家と文化の研究を行うのが学芸員の役割」と語った。 展覧会の特質にも触れた。大別して2種あるとし「学芸員の研究発表の場でもある自主企画と、全国的に高い知名度がある展
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研ぎ澄まされた音の幸福感 静大サークル源流のバンド「bjons(ビョーンズ)」 新アルバム発売
静岡大の音楽サークルを源流にしたバンド「bjons(ビョーンズ)」が3年ぶり2枚目のアルバム「CIRCLES」をリリースした。シティ・ポップや1970年代の日英米のロック、フォークの香りが漂うサウンドと、ひねりの利いたメロディーが特徴。聴いていると、日だまりの縁側でまろやかな茶をすすりながら青空を眺めているような幸福感を味わえる。 静岡で学生時代を過ごした今泉雄貴(ギター、ボーカル)、渡瀬賢吾(ギター)=浜松市出身=の2人に橋本大輔(ベース)を加えて2017年に東京で結成。現在はドラマー岡田梨沙、キーボード谷口雄がサポートメンバーとして活動をともにしている。 18年の初アルバム「SILL
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昭和のラジオ 熱狂再確認 名物番組を新著で紹介
川野将一さん(放送作家 浜松出身) ラジオのヘビーリスナーを自負するテレビ放送作家の川野将一さん(浜松市出身)が、昭和時代の名物ラジオ番組とパーソナリティーの魅力を伝える著書「日本懐かしラジオ大全」(辰巳出版)を発刊した。「昭和のラジオの熱狂を確認する契機になった」と執筆を振り返る。 ニッポン放送「オールナイトニッポン」、文化放送「セイ!ヤング」、TBSラジオ「パック・イン・ミュージック」-。多くのリスナーを引き付け、時に物議を醸し、社会を揺さぶった昭和の番組のありようを、当時の放送の再現を交えて語る。徹底的な「リスナー目線」の筆致が、ラジオを愛する者の心をわしづかみにする。 全ては自
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詩人5人が紡ぐ “千変万化の川” 12月しずおか連詩の会
1999年に始まった毎年恒例の「しずおか連詩の会」が、今年も12月に開かれる。詩人5人が3日間、時間と場所を共有して現代詩40編を紡ぐ。連歌、連句の伝統を継ぐ連詩の基礎知識を、2009年からさばき手(まとめ役)を務める詩人の野村喜和夫さんに教わった。 Q 連詩はいつ始まった? A 1960年代、同人誌「櫂[かい]」のメンバーだった詩人の大岡信さん(三島市出身)が、日本古来の連歌や連句を下敷きにして、同人の谷川俊太郎さん、川崎洋さんらと遊び半分で始めました。当初は全てが暗中模索でしたが、回を重ねるうちに形式やルールが定まっていきました。 大岡さんは70年代に入ると米国、ドイツ、オランダ
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信念や葛藤きめ細かく 静岡新聞連載小説「レインメーカー」単行本に 真山仁さんインタビュー
2019年7月から20年10月まで静岡新聞に連載された小説「レインメーカー」が単行本化された。医療過誤裁判を起こされた医師を救おうと奮闘する弁護士が主人公。作者の真山仁さんは、きめの細かいヒューマンドラマを目指したという。創作に当たって考えたこと、1年3カ月にわたって小説が掲載された地方紙というメディアへの思いなどを聞いた。 -民事訴訟を書いたのは初めて。 最初は敏腕弁護士が裁判で大活躍する作品にしようとしていました。ところが、日本の民事裁判ではそのような設定になり得ないと知り、結果的に医師、遺族、弁護士、それぞれの信念や葛藤をきめ細かく描く点に重きを置きました。 地方紙の連載として、
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生誕600年“巨星”宗祇法師 連句の世界、膨らむイメージ 裾野で愛好家団体イベント
室町時代に活躍した連歌の“巨星”宗祇法師の生誕600年を記念し、法師が眠る裾野市で、愛好家団体「裾野市宗祇法師の会」などによる著名文学者を招いた連句のイベント「紡ぐ言霊 紡ぐ人の和」が開かれた。俳人長谷川櫂さん、歌人小島ゆかりさん、文芸評論家三浦雅士さんが、メールなどのやりとりで事前に完成させた36句からなる連句「歌仙」の読み解きを行った。1句ごとにインスピレーションを得た絵画や文学作品などを示しながら、聴衆とともにイメージを膨らませた。 発句「富士すがしユニオンジャックのヨットの帆」を作った三浦さんは、英国人が撮影した駿河湾を走るヨットの写真、葛飾北斎の浮世絵「神
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つま恋で音楽満喫 フェス「FRUE」開幕
「魂の震える音楽体験」を旗印に掲げるフェスティバル「FESTIVAL de FRUE(フェスティバル・デ・フルー)」が6日、掛川市のつま恋リゾート彩の郷で開幕した。屋内の大ステージとキャンプサイトステージに国内外のアーティストが出演し、観客を魅了した。 米国のシンガー・ソングライター、サム・アミドンや日本の人気バンドceroの中心人物、高城晶平のソロプロジェクトなど14組がロック、ジャズ、テクノなど多彩なスタイルの演奏を繰り広げた。家族連れや若者グループなど約1600人が集い、音楽に浸る1日を満喫した。 来場者には新型コロナウイルスのワクチン接種の証明書や、48時間以内のPCR検査の陰性
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Track’s 静岡のパンクバンド 新ミニアルバム スピードとメロディー融合
大阪のレーベル「THE NINTH APOLLO」に所属する静岡市の人気パンクバンド「Track’s(トラックス)」が3枚目のミニアルバム「Where’s Summer?」を発表した。疾走するギターサウンドと、1回聴いただけで頭に刻まれるキャッチーなメロディーが高い次元で融合している。 トラックスは、ボーカルとギターの生田楊之介、ドラムスの大村隼太、ベースの内田優貴の3人組で、2014年に結成した。「メロコア」とも称される、メロディー重視の高速ロックサウンドでファンの支持を得ている。「ロック・イン・ジャパン・フェス」など多くの野外フェスへの出演を重ね、17年からは全国のライブハウスを巡るツア
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マイン・シュロス(浜松市中区)杉本大樹さん 老舗の転換点を演出【しずおかクラフトビール新世代⑰】
マイン・シュロス(浜松市中区)の製造部主任杉本大樹さん(34)=旧天竜市出身=は2016年、“体育会系”からビール醸造の世界へ足を踏み入れた。 1994年の酒税法改正による「第1次地ビールブーム」まっただ中の97年に設立されたレストラン併設型の同醸造所は、静岡県内屈指の老舗。「開業したばかりの頃、家族で訪れた。振り返れば、クラフトビールとの初めての接点だった」 小中高校を通じてサッカーに没頭。名門国士舘大でもサッカー部に籍を置き、卒業後は故郷の遠州地域で仕事をしながら社会人プレーヤーとして活躍していた。 小学生時代のおぼろげな記憶しか残っていなかった場所が職場に
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駿府博物館「平和のための宴」 1967年、板谷房作 共存の世界、強く訴える【美と快と-収蔵品物語⑮】
清水市立第四中(現静岡市立清水第四中)で教えた後、1953年に単身フランスに渡り、現地で高い評価を勝ち取った洋画家板谷房(1923~71年)。若き才能を見抜き、彼を物心両面で支えたのは静岡新聞社・静岡放送を創設した大石光之助(1896~1971年)だった。68年の個展を飾った代表作「平和のための宴」も、大石が買い上げた。長く門外不出だったが、寄託先の駿府博物館が今年、約半世紀ぶりに公開している。 板谷は福岡県出身。東京美術学校卒業後、清水に赴いた。清水四中で教えたのは約9カ月。大石はこの短期間に、二科展入選しか実績がない板谷の後押しを決めた。 近代の日本美術に詳しく、自らの父親が板谷と縁
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♪ハママツ・ジャズ・ウィーク最終日 エリック・ミヤシロさん、佐藤竹善さんら熱く
「第29回ハママツ・ジャズ・ウィーク」(浜松市、市文化振興財団、ヤマハ、静岡新聞社・静岡放送など主催)は24日、最終日のメインイベント「ヤマハジャズフェスティバル」を同市中区のアクトシティ浜松で開いた。編成の異なる3組が、ジャズの多面的な魅力を届けた。 最終の第3部では、トランペット奏者エリック・ミヤシロさんがリーダーと指揮を務めた17人編成の「ヤマハ・オールスタービッグバンド」が、重厚で緻密な管楽器のアンサンブルを披露した。シンガー・ソングライター佐藤竹善さんを迎え、ジャズのスタンダード曲やロックバンド「クイーン」のヒット曲など、幅広い選曲で楽しませた。 第1部ではピアニストRINA(
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記者コラム「清流」 10年でバッハ全曲
10年後、自分はどこで何をしているだろう。久しぶりに自分の未来像を思い浮かべた。 きっかけは、8日に静岡音楽館AOIで聴いたオルガニスト大木麻理さんのリサイタルだ。J.S.バッハが残したオルガン作品約250曲を、約10年、演奏会14回を費やして全て弾くという。 第1回は「トッカータとフーガ ニ短調」など9曲を披露した。プログラムには14回までの各回のテーマが記されている。マラソンのスタート、といった趣だ。“完走”を見届けたくなった。 かつて取材した調律師によると、管の集合体であるパイプオルガンは「寒いと音程が下がり、高いと上がる」そうだ。秋は楽器にとっても適期。
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静岡に美術史 故飯田昭二さんの功績 藤枝・学芸員らトーク
1960年代後半から70年代初頭にかけて静岡を拠点に活動した現代美術家集団「グループ幻触」の主要メンバーだった飯田昭二さん(27~2019年)の業績や人柄を振り返るトーク企画が藤枝市のアートカゲヤマ画廊で開かれた。同所での遺作展の関連企画。 1986年の開館前から県立美術館に関わった元学芸員の立花義彰さん(静岡市葵区)=西蔵寺住職=は80年代初頭の飯田さんとの初顔合わせを「シャープできれっきれの方で、ちょっと怖いぐらいだった。話す時は緊張を強いられた」と振り返った。町工場が多かった地域で創作していたことを踏まえ「(職人的な)技術やノウハウが作品を支えている。膨大なトレーニングが下地にある」
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木目生かし多様な版画 美術家鈴木さん個展 伊東
美術家鈴木安一郎さん(57)=御殿場市=の木口版画を集めた個展「みのへるねる ウッド・ブロック」が、伊東市八幡野のカフェ「壺中天の本と珈琲」で開かれている。 約4年前から取り組む木材の木目を生かした版画約50点を出品した。小山町の家具職人から入手したサクラ、クルミ、ヒノキなど多種多様で大きさもさまざまな端材に墨を塗ってスタンプし、表情豊かな画面構成を出現させている。鈴木さんは「一つ一つの作品は即興で出来上がる。計算や事前の計画をできる限り排除する」と創作の様子を語る。 約4年間、ほぼ毎日、スケッチブックで創作を繰り返したという。今回展では、蓄積した約1200点から多様性を意識して選んだ。
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M.O.J.I. フットサル「アグレミーナ」をラップで後押し
浜松市中区のラッパーM.O.J.I.(モジ)(36)が、フットサルF2リーグのアグレミーナ浜松の応援歌「Day By Day」を発表した。F1リーグ昇格を目指して戦うチームとヒップホップに支えられて生きる自分を重ね、不撓[ふとう]不屈の精神をリリック(詞)に込めた。 背に背負ったエリアナンバーは053さ/浜松から羽ばたくまた/何度だって諦めず/Going my way(「Day By Day」) 静岡市の高校生トラックメーカーIbukiEni9ma(イブキ・エニグマ)による端正なトラックに乗せ、チームをラップで後押しする。「選手との個人的なつながりが楽曲制作の発端だった。楽しみながらチャ
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佐藤竹善「ポップスとの“接着剤”に」 ヤマハジャズフェス出演
浜松市で16~24日に開催される「第29回ハママツ・ジャズ・ウィーク」(浜松市、市文化振興財団、ヤマハ、静岡新聞社・静岡放送など主催)のメインステージ「ヤマハジャズフェスティバル」(24日)に、シンガー・ソングライターの佐藤竹善がトランペッターのエリック・ミヤシロ率いる17人編成のビッグバンドとともに出演する。ライブや音源を通じて何度となくジャズへの敬愛を表現してきた佐藤は「僕のボーカルが、ポップスのファンとジャズの“接着剤”になってくれたら」と願いを込める。 2019年に東京、大阪で演奏し、20年のライブCDも好評を博したビッグバンドプロジェクトの“続
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ドラマ「前科者」、映像化で考える「更生保護」 再犯防ぐ歩みに寄り添う
保護観察処分を受けた人や刑務所から仮出所した人などの再犯を防ぐ目的で社会復帰を支援する保護司を描いた漫画「前科者」(原作・香川まさひと、作画・月島冬二)が、今秋WOWOWで連続ドラマ化され、年明けには映画が公開される。静岡県は静岡市で約130年前に金原明善らが全国初の更生保護施設を開いたことで、現在の更生保護制度の出発地点とされている。映像作品発表を機に、制度の現状とこれからを考えた。 (文化生活部・橋爪充、社会部・佐藤章弘) ■「前科者」映像化 加茂義隆プロデューサーに聞く 「前科者」の映像化を企画した加茂義隆プロデューサーに、製作のいきさつや作品に寄せる心情を聞いた。 -どん
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古関裕而 幻の楽曲「静岡ファンタジー」をCD収録 今春静鉄で発見
1964年東京五輪の「オリンピック・マーチ」を作曲した古関裕而(09~89年)の「幻の楽曲」とされ、今春静岡市内で音源が発掘されたご当地ソング「静岡ファンタジー」が、古関楽曲を集めたCDに収録されることになった。 29日発売のCDは、古関が所属していたレコード会社日本コロムビア(東京)が編集した「古関裕而秘曲集」の「歌謡曲編」「社歌・企業ソング編」に続く第3弾「新民謡・ご当地ソング編」。古関が生涯に作った約5千曲から47曲を選んだ。 「静岡ファンタジー」は、レコード会社の「吹き込み台帳」に49年の録音が記録されているが、音源や楽譜のありかが不明で、研究者の間で「幻の楽曲」とされていた。古
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1杯の「原型」に衝撃 外食業から醸造家へ GKB(御殿場市)加田雄一郎さん【しずおかクラフトビール新世代⑯】
東京、新宿御苑近くのビアパブで飲んだ1杯のビールが人生を変えた。GKB(旧御殿場高原ビール)=御殿場市=の副工場長、加田雄一郎さん(38)=熊本市出身=は5年前を振り返る。 「チェコのラガービール『ピルスナーウルケル』を飲んだ瞬間、衝撃を受けた。ホップの苦みをしっかり感じて、モルトの甘みも十分。バランスが自分の好みにどんぴしゃだった。『ビールをつくりたい』という強い気持ちが湧いた」 ピルスナーウルケルは国内大手の主力スタイル「ピルスナー」の原型とされる、19世紀半ばにチェコで生まれたビール。現地から空輸し、生で飲ませる店は希少だった。 都内の大学で欧州の文学、哲学を学び、大手外食会社に
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詩の「形」から感じるもの 中原中也の会で岡本さん、三角さん
中原中也記念館(山口市)に事務局を置く愛好者組織「中原中也の会」が第26回大会をオンラインで開き、静岡県内で毎秋開催している「しずおか連詩の会」への参加歴がある詩人2人が「中也賞詩人が考えるデザインのこと」と題して、詩の文字配置や意図について語り合った。 登場したのは岡本啓さんと三角みづ紀さん。岡本さんは、奇数行に1文字下げを用い、単語と単語の間に空白を多用した中也の「曇天」を紹介し、「詩の形によって、詩の中に出てくる黒い旗がぱたぱた動く様子が強調される。空白部分に風が通過するような感じが伝わる」と評した。 三角さんは字数をそろえた3行、2行を連ねた自作「金景菊」を引用した。だいだい色の
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記者コラム「清流」 画面からの挑発
静岡市美術館で開幕した「グランマ・モーゼス展」と、長泉町のベルナール・ビュフェ美術館で開催中の「丸木スマ展」。70歳超で絵筆を取った2人の女性が、20日の敬老の日を挟んで、本県で“共演”している。 高齢女性の作品と聞くと「ほっこり」「素朴」などと形容されがち。だがこの2人、かなり挑戦的なことをやっている。 101歳まで生きたモーゼスは刺しゅう絵を油彩画に変換する色彩実験を試みているし、スマは琳派(りんぱ)の技法で知られる「たらし込み」を試した形跡がある。 「何かを始めるのに、遅すぎることはない」。格言が、実感を伴って浮かび上がる。「さて、あんたはどうなんだい?」
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静岡県高総文祭の総合開会式 ウェブで公開、17日から
静岡県高校文化連盟は17日、県内高校の優れた文化部活動を紹介する県高校総合文化祭「総合開会式」のウェブ公開を始める。新型コロナウイルス感染拡大を受けて中止を決めたロゼシアター(富士市)での「総合開会式」(17~19日)に代わる取り組み。2022年8月31日まで閲覧できる。 今夏に和歌山県で開かれた“文化部のインターハイ”全国高総文祭出場校の作品を中心に紹介する。静岡西の軽音楽演奏、浜松市立の器楽・管弦楽演奏などステージ部門の演目、美術・工芸や写真、書道などの優秀作品約70点が、部門別にインターネットを通じて鑑賞できる。 県高総文祭総合開会式のリアル開催が2年続けて
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米国で人気の低カロリー酒製造 静岡県内醸造所 地場産品加え
静岡県内のクラフトビール醸造所が、米国で人気の炭酸入りアルコール飲料「ハードセルツァー」の製造・販売に力を入れている。夏から秋にかけて大手が新商品を投入する中、地域の産物を加えたローカル色豊かな製品を開発し、消費拡大を図る。 沼津市のリパブリューは2020年初頭に製造開始。畑翔麻代表は「国内で最も早く造り始めた」と胸を張る。19年秋の米国西海岸への研修で流行を目にし、現地の醸造所に製造法を教わった。 発酵過程で糖分を残さないため、低カロリーに仕上がるのが特徴。飲み口は酎ハイやサワーに近いが、酵母の香りや味も感じられる。20年12月に果実3種を加えた「トリプルベリーミックス」とかんきつ2種
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江戸時代の富士山巡礼路、明らかに 静岡県世界遺産センター調査
静岡県富士山世界遺産センター(富士宮市)はこのほど、富士市、富士宮市と共同で富士山の大宮・村山口登山道を調査し、富士山本宮浅間大社、村山浅間神社を経て山頂に達する江戸時代の巡礼の経路をおおむね明らかにした。調査結果を報告書にまとめた。 調査は、巡礼路の位置・経路の全体像を描くよう求めたユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会の勧告に基づいて行った。学識者でつくる「富士山巡礼路調査委員会」の助言を受け、2017~20年度に実地調査した。中心的な役割を果たした同センターの大高康正教授は「(現在は使われていない)六合目から下のルートを明らかにしてほしいという地元要望も強かった」と振り返る。
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静岡の醸造所「WCB」 ユナイテッドアローズと新ビール開発
静岡市駿河区用宗のクラフトビール醸造所「ウエストコーストブルーイング(WCB)」はこのほど、アパレル大手「ユナイテッドアローズ」(東京都渋谷区)との協働による新ビールを発売した。 「#refresh(リフレッシュ)」と名付けたビールは、爽やかな酸味が特徴のサワースタイル。醸造時にマンゴーとライムのピューレを使用し、ミントで香り付けした。 ユナイテッドアローズが8月から開始した、都内2店舗で厳選した酒類を販売するプロジェクト「ユナイテッドアローズ ボトルショップ」の一環。ビール醸造所と組むのは初という。同社のデザイナーが手掛けたTシャツやキャップなど、オリジナルグッズも開発した。WCBのキ
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BCビアトレーディング(静岡市駿河区)草場達也さん カナダと日本橋渡し【しずおかクラフトビール新世代⑮】
カナダのクラフトビール輸入業者の先駆けとして知られる草場達也さん(32)。2016年に東京で輸入販売会社BCビアトレーディングを起こし、20年11月に静岡市駿河区用宗に本社を移した。「静岡の人は、地元の醸造所にすごく愛着を持っている。全国的に見てもクラフトビールの消費が多い街。ここへ来るのは必然だった」 同市清水区でのビールイベント出展をきっかけに19年、葵区駿府町にクラフトビール専門の酒販店「ビア・アウル」を開店。あっという間に市内のビールファンに浸透した。自社倉庫を市内に整え、商材の到着先も東京港から清水港に切り替えた。本社移転は自然な成り行きだった。 留学先のカナダ東部の都市トロン
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新時代のまちづくりとは… 浜松「社会実験室踊り場」がトーク
浜松市内で人文・哲学系の文化事業を行う団体「社会実験室踊り場」が、同市中区鴨江の改装工事中の民家「竪穴の家」で、トーク企画「『まち』を巡る対話」を開いた。同団体主催の曽布川祐さん、同市出身の美術家中村菜月さん、空き家を再生する「ヤドカリプロジェクト」を推進する1級建築士の白坂隆之介さん(同市中区)が、新旧の価値を共存させる新時代のまちづくりについて語り合った。 中村さんの個展会場内で開かれたオンラインを交えたイベント。石粉粘土の羊約30頭や着色した木片などで構成される作品「旅のひつじ」を前に、それぞれが考える「まち」の在り方について意見を交わした。 中村さんは住宅街に作品を置く意義や波及
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中世のビールどんな味? 静岡大教授とゼミ生、文理協働で再現
静岡大人文社会科学部の大原志麻教授(スペイン史、比較文化)とゼミ生はこのほど、中世欧州で愛飲されていた「グルートビール」を再現した。プロジェクトには農学部の教授らも加わり、文理協働で「中世の味」の復元に取り組んだ。 同ゼミの西ケ谷彩華さん(4年)の卒業論文のテーマが発端。大学や研究機関では初の試みとみられる。大原教授は「食文化史は上流階級を中心に語られがち。『庶民の飲料』を実際に口にし、当時の空気感を理解することが重要」と判断し、復元を決めた。 中世欧州のビールは香り付けとしてホップではなく、複数のハーブの集合体「グルート」を使うのが特徴。国内外の文献を基に検証し、主原料のヤチヤナギは北
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句集「桜紅葉」発刊 「海坂」主宰の久留米脩二さん(掛川市)
月刊俳句誌「海坂[うなさか]」主宰で、「馬醉木」同人の久留米脩二さん(80)=掛川市=が2冊目の句集「桜紅葉」(文學の森刊)を発刊した。第1句集「満月」から16年後の第2集。2005~10年の300句を収めた。 鉄風鈴父との旅の一度きり 駐在の忌や村中に曼珠沙華 五感を研ぎ澄ませて季節のかたち、色、音、手触りを誠実に活写する。慈愛に満ちた家族へのまなざしは、生きる楽しさとそのための工夫を示唆しているようだ。 収録句の創作時期は、俳人水原秋桜子が残した「馬醉木」の東京例会に足しげく通った月日に重なる。「主宰の水原春郎先生が浜松市で行った全句講評がきっかけ。先生の誠実な人柄にも引か
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ベルナール・ビュフェ美術館 「父と息子」 少年期 挑戦の成果【美と快と―収蔵品物語⑬】
第2次大戦後の具象絵画をけん引したフランスの画家ベルナール・ビュフェ(1928~1999年)の作品は、彼の名を冠したベルナール・ビュフェ美術館(長泉町)の存在によって、本県県民の心に深く刻まれる。約70年前、戦地から復員した銀行家岡野喜一郎をとりこにした詩情とエネルギーは、今も見る者を奮い立たせる。1996年には同館で自選展を開催。館内で選んだ作品群のうち、特に思い入れが強かったのは、10代半ばに描いた自画像だった。 親日家のビュフェは7回来日している。自選展はその最後の機会となった。「父と息子」は展示された重要作の一つだ。 作品は2日がかりで選んだ。2000年開幕の追悼展の図録に当時
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静岡・匠宿にビール醸造所 福山さん「多様性表現」今冬にも稼働
静岡県内2カ所でビール醸造に携わった醸造家福山康大さん(32)=静岡市駿河区=が、同区丸子の観光施設「駿府の工房 匠宿」内に新しい醸造所を開くことがこのほど決まった。稼働すれば、市内4カ所目のビール醸造所となる。 かつての飲食施設の一角に240リットルの発酵タンク5基、原料の麦芽やホップの貯蔵庫などを設置し、多様なビールを提供する。米国から輸入するタンクなど資機材の到着、申請済みの酒類製造免許の取得を経て、今冬に醸造開始する予定。 青森県出身の福山さんは静岡市葵区のアオイブリューイング、富士宮市のフジヤマハンターズビールで醸造経験を積み、ことし静岡醸造株式会社(静岡市駿河区)を設立。知人
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ラッパーAwich 9月に新作 葛藤と覚悟、曲に込める
9月に新EP「Queendom」を発表することが決まったラッパーのAwich(エイウィッチ)が8月1日、沼津市内でライブを行った。音源やライブで急速に評価を高める「ヒップホップクイーン」に、自身の表現の根源を聞いた。 リードトラックとして7月30日に「GILA GILA feat.JP THE WAVY, YZERR」をリリースした。「正しいとか間違いとか。良いとか悪いとか。全ての価値は絶対的ではなく相対的なもの。この曲には、それを伝える上での私の葛藤と覚悟を込めた」 川崎市出身の人気グループBADHOP(バッドホップ)のラッパーYZERR(ワイザー)が参加している。「ただ曲を作ろうとい
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専門店フロアに劇場空間 沼津の松島さん、即興パフォーマンス
国内屈指の舞台芸術カンパニー「パパ・タラフマラ」(2012年解散)のメイン・パフォーマーを務めた美術家松島誠さん(57)=沼津市=が7、8の両日、同市のイシバシプラザでインスタレーション展示と即興のソロパフォーマンスを行った。専門店が並ぶフロアの一角に、劇場空間を現出させた。 施設2階の約100平方メートルの店舗跡にかつて舞台美術として使用したオブジェや、7月に掛川市のアート企画「原泉アートプロジェクト」で制作した作品を配置。沼津市の海岸の映像を流す中、約5分の舞いを披露した。 空中から何かをつかみ取るかのように手を上下させたり、緩急を付けてくるりくるりと体の軸を回したり。滑らかに波打つ
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ラップミュージック 米国発祥、8月11日が誕生日【ストリートカルチャー温故知新㊤】
東京五輪での新種目スケートボードの日本勢の活躍を機に、街路や公園など都市空間に根差した「ストリートカルチャー」への注目が高まっている。代表例を三つ取り上げ、起源やスタイルなどを県内の識者に解説してもらう新連載。第1回は言葉を武器にした音楽ラップミュージックについて、四半世紀にわたり活動を続けるラッパーGOMAさん(41)=静岡市葵区=に聞いた。 ■起源はパーティー ラップは米国の黒人がつくりだした音楽表現です。1973年8月11日、ニューヨークの公営住宅で催されたパーティーが発祥。米国上院は先日、この8月11日を、ラップを含めたヒップホップ文化の記念日とすることを決めました。 ジャマ
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名画、間近でスケッチOK 池田20世紀美術館で夏の名物企画
伊東市の池田20世紀美術館で7月、毎夏恒例の絵画教室「世界の名画を描こう!」が開かれた。館内に子どもたちを招き入れ、展示作品を模写してもらう企画で、今年が21回目。国内では希少な取り組みに伊藤康伸館長は「幼少期に本物にじっくり向き合う機会は大切。かつての参加者が美大に進んだり、学芸員になったりする例もある」と意義を強調する。 今年は3日間に延べ35人が参加。新型コロナウイルス禍を受けて、昨年に続き人数を絞ったが、年によっては100人以上が館内で絵筆を動かす。 同館は1975年の開館以降、観覧者と作品の距離をできるだけ近くする方針を維持しており、作品はガラスケースなどに入れずに展示している
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駿府城夏まつり「ナツゲキ」 ストリートカルチャー前面に 静岡で8月21日から計4日間
静岡市内で8月21日から計4日間開催される「駿府城夏まつり ナツゲキ」(実行委員会主催)の主要イベントが7月27日までに決まった。葵区の駿府城公園を主会場とする8月21、22の両日はヒップホップやストリートカルチャーを紹介する「HITOYADO JAM(ヒトヤドジャム)」を特別開催。音楽ライブやスケートボードの高度なデモンストレーションなどが、入場無料で楽しめる。 両日を使い、ラッパー32人によるトーナメント方式のラップバトルを展開する。同公園内にスケートボードの特大ランプを設置し、東京五輪日本代表の青木勇貴斗選手(静岡市清水区)や気鋭のスケートボーダーが妙技を披露する。 22日のメイン
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富士山かぐや姫ミュージアム「富士参詣曼荼羅」 富士山と西国、縁の証し【美と快と―収蔵品物語⑪】
中世から江戸時代にかけて庶民に富士登山が広がる中で、登山道や寺社の習俗などを描いた「富士参詣曼荼羅[ふじさんけいまんだら]」は案内絵画として重宝された。富士山かぐや姫ミュージアム(富士市)が松栄寺(愛知県常滑市)から寄託された「富士参詣曼荼羅」もその一つ。約400年前の西国と富士山のつながりを伝える貴重な資料だ。寺の意向を受け、縁をつないで2016年、ミュージアムに移された。20年には修復が終了。神仙の世界と目されていた富士山と人々の信仰が生き生きと描かれている。 富士川の渡し船、湧玉池での水ごり、富士山興法寺(村山浅間神社)を経由して山頂に向かう白装束の人々。画面には参詣者75人に加え、
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96歳、詩人の歩み1冊に 静岡・平林敏彦さん発刊
太平洋戦争中に詩作を始め、戦地から復員した直後に田村隆一や鮎川信夫らが参加した詩誌「新詩派」を創刊するなど、戦後の詩壇で長く存在感を発揮してきた詩人平林敏彦さん(96)=静岡市清水区=が、その半生を振り返る書籍「言葉たちに 戦後詩私史」を発刊した。 横浜市に生まれ、中学生で詩に目覚めた。陸軍に召集され、常軌を逸した軍隊生活の中でひたすら詩を渇望した。戦後は詩作に励み、1946年の「新詩派」を皮切りに、中島可一郎、柴田元男、飯島耕一らが参加した「詩行動」(51年)、大岡信、辻井喬、吉野弘、鶴見俊輔らが作品を寄せた「今日」(54年)などの詩誌を創刊した。 書籍では、こうした詩友との交流を当事
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故事描いた日本画や版画 駿府博物館、24日から前期特別展
駿府博物館(静岡市駿河区)の開館50周年を記念し、所蔵する作品を三つのテーマに分けて3期で紹介する特別展「名品 天・人・地」(同館、静岡新聞社・静岡放送主催)が24日、開幕する。同館で19日、前期「天の巻・物語歴史画」(24日~9月20日)の展示作業が始まった。 下村観山(1873~1930年)が三国志にモチーフを求めた「草廬(そうろ)三顧」、現在の静岡市清水区に生まれた石原春秋(生没年不詳)による人物画「二仙人」など、故事来歴を下敷きにした日本画や版画など約40点を飾った。 会場の一角には、清水市立四中(現静岡市立清水四中)で教えた後に渡仏した洋画家板谷房(1923~71年)、官展を中
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Art@東静岡始動 コンテナに空間芸術、静岡大講師と学生表現
静岡市葵区東静岡の東静岡アート&スポーツ/ヒロバで17日、アーティストと市民の交流を目指した新しい文化プロジェクト「Art@東静岡(アート・アット・ヒロバ)」(実行委員会主催)の第1回企画展が始まった。大小二つの貨物コンテナを使って2人が空間芸術作品を展示している。25日までの土日祝日に開催。 静岡大教育学部美術教育専修講師の占部史人さん(36)は、自身の作品を入れた大小の空き箱をコンテナ内に置いた「箱の生活“Life in the Boxes vol.2”」を出品。新型コロナウイルス禍で部屋にこもらざるを得なかった自らの生活や心情を作品に重ねた。 同大教育学部3
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ヘッドホン通じライブ楽しむ 浜松で新機軸の音楽イベント
音楽バンドのライブ演奏をスピーカーではなく、ヘッドホンやイヤホンを介して楽しむ新機軸のイベント「昭和フェス2021」(実行委員会主催)が17日、浜松市西区の舘山寺門前広場で開かれた。 ローランド元社長の菊本忠男さん(79)=同市北区=が提唱し普及を進める「サイレントストリートミュージック」プロジェクトが支援する、初めての本格イベント。三つのステージに市内で活動する10組が出演した。 ギター、ベース、キーボード、ドラムなどの音を直接音響機器につなぎ、バランスを整えた上で、聴衆一人一人に配布したラジオに電波を介して届けた。ザ・ビートルズの楽曲を披露した5人組「The音楽部」のリーダー尾崎誠さ
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記者コラム「清流」 死線から詩作へ
清水区で96歳の詩人に会った。新刊を出した平林敏彦さん。表現の根っこにあるのは戦中、死と隣り合わせの毎日だ。 千葉県の陸軍連隊に入った。私物検査で隠し持った詩集や創作ノートを没収され、それがもとで下士官にいじめられた。「詩を書く自由を自分で圧殺した」と振り返る。戦後に詩作を再開する際、戦争の狂気にあらがえなかった後ろめたさを主題にしようと思った。 行く手に待つ死者たちにおくる/いとおしい一度かぎりの言葉はあるか(2014年の「言葉たちに」から一部引用) 国民的高揚、失われた命、破滅-。今年も8月がやってくる。生還した詩人の問い掛けを心に焼き付け、戦争の本質を考えたい。同じ“言葉”を扱う者とし
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擬音語、擬態語「オノマトペ」 魅力は…可能性は… 巻上公一さん/町田康さん 熱海で対談、ライブも
擬音語、擬態語を意味する言葉「オノマトペ」の魅力や可能性を音楽、文学、演劇などさまざまな表現スタイルで提示する「オノマトピアミーティングin熱海」が6月26、27の両日、熱海市の起雲閣で開かれた。40年以上活動するバンド「ヒカシュー」のリーダーで詩人の巻上公一さん(同市)が企画し、2日間に延べ8組が出演。オノマトペをキーワードにライブを繰り広げた。東京五輪・パラリンピックに合わせた県文化プログラムの一環。(文化生活部・橋爪充) オノマトペは文学や音楽にどう関わってきたのか-。表現の壁を超えた活動を続ける巻上さんと芥川賞作家で音楽家の町田康さん(熱海市)が、それぞれの作品に言及しながらオ
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開催事例を蓄積共有、野外フェス文化つなぐ コンソーシアムを設立した「スマッシュ」取締役/石飛智紹氏【本音インタビュー】
スマッシュ(東京)は、2001年から毎秋富士宮市で開催する野外フェスティバル「朝霧JAM(ジャム)」を企画制作。持続可能なフェス文化形成を掲げて関連7社によって設立された「野外ミュージックフェスコンソーシアム」の発起人に名を連ねた。 -今春のコンソーシアム設立の経緯は。 「新型コロナウイルスの広がりを受け、(音楽プロモーターで組織する)コンサートプロモーターズ協会が感染予防対策のガイドラインを作った。ライブハウスのコミッションも続いた。こうした中で、全国に300以上あるフェスにも同様のものを作ろうという機運が高まり、関係7社がまず集まった。今後も参加社は増えるだろう」 -活動の状況は。
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世界のアニメ特集 静岡シネ・ギャラリーで
静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーで、日米のメジャー作とは趣を異にするアニメ表現を紹介する「ワールド・アニメーション特集」が行われている。 6月に好評を博したロシアのSFコメディー「クー!キン・ザ・ザ」(2013年)に続き、7月16日からフランス・チェコスロバキア合作「ファンタスティック・プラネット」(1973年)を上映する。フランスのSF作家ステファン・ウル原作で、青い肌に赤い目の巨人族と彼らに虐げられる人類の戦いを描く。切り絵アニメーションの手法で画面を動かし、同年の第26回カンヌ映画祭ではアニメ作品として初めて審査員特別賞に選ばれた。 30日からの「ベルヴィル・ランデブー」は2002
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雑談から社会課題探る 医療、福祉関係者ら参加 グリーフケアなど話題に ACしずおか「へそちゃ会」
静岡県民の文化芸術活動を支援する県文化財団内の組織「アーツカウンシル(AC)しずおか」(静岡市駿河区)は30日、同組織所属の専門家が主導するオンライン対話の場「へそちゃ会」を初開催した。雑談を通じて隠れた社会課題やニーズを探る取り組み。 県内外の11人がオンライン会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使って参加し、ACしずおかの櫛野展正チーフ・プログラム・ディレクター、鈴木一郎太プログラム・ディレクターを交えて気軽な対話を楽しんだ。 参加した医療従事者や福祉関係者らの自己紹介を発展させる形で、親しい人を亡くした悲しみに寄り添う「グリーフケア」について意見交換した。県内の地域アート祭の現状、ア
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静岡人インタビュー「この人」 野本人丸さん 静岡県高校文化連盟の会長に就任
4月の理事会、評議員会で選出された。新型コロナ禍で停滞を余儀なくされた高校文化部の活動の立て直しを図る。掛川工高校長などを経て2020年度から駿河総合高校長。59歳。 -就任の感想は。 「大役を仰せつかった。運動部経験の方が長いので多少気後れがあるが、コロナ禍を乗り切るために指名されたとも感じている。昨年度は中止になった総合文化祭をはじめ、発表の場を正常化させたい」 -本年度の力点は。 「22専門部会の催しや活動を支援し、9月に富士市で予定する総合文化祭を安全に実施することだ。ステージ部門は観覧者を絞らざるを得ないが、演目を撮影するなど、広く見てもらえる方策を考えたい」 -高校文化
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ベアードブルーイング(伊豆市)大川英紀さん 日本酒業界から転身、醸造の楽しさを満喫【しずおかクラフトビール新世代⑭】
琉球大でコウモリの研究に没頭し、卒業後は関西の三つの酒蔵で日本酒づくりにいそしんだ大川英紀さん(38)は5年前の7月、狩野川沿いにあるベアードブルーイング(伊豆市)の門をたたいた。見知らぬ土地。知り合いはいない。ビールづくりへの情熱だけを携えてやってきた。 同社のオーナー、ブライアン・ベアードさん(54)=米国出身=は、沼津市で2001年に自家製ビールの提供を始め、同社を国内屈指のクラフトビールメーカーに押し上げた立志伝中の人。大川さんは「ビールを好きでたまらない人が、会社までつくってしまった。ビール、酒が心底好きな人が集まる場所で働けると思った」と語る。 転身前は京都市の老舗、玉乃光酒
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「祝祭芸術」確立目指す アーツカウンシルしずおか・アーツカウンシル長 加藤種男氏【本音インタビュー】
静岡県民の創造活動を伴走支援する新組織「アーツカウンシル(AC)しずおか」のトップに就任した。東京五輪・パラリンピックの県文化プログラム推進委員会を基盤として県文化財団内に設置されたACのかじ取りを担う。 -ACの役割は。 「県の文化施設ではこれまで、質の高い芸術・文化の鑑賞機会を提供してきた。『県民文化の振興』という目的のために重要なことだが、特定の施設だけで県民全てをカバーすることはできない。アウトリーチという考え方も、全県に届けるのは無理がある。ならば、県民の皆さんに芸術・文化活動をやってもらい、それを応援し手伝う方が『文化の振興』に寄与するのではないかというのがACの発想だ。『県
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記者コラム「清流」 もう一つの選挙
知事選のさなか、県立美術館では物言わぬ絵画が静かに支持を競う。「忘れられた江戸絵画史の本流」展の関連企画「江戸狩野派総選挙」。狩野探幽らが祖の奥絵師4家をはじめ、江戸期の絵師千人超から選ばれた8人がエントリーしている。 展示室にポスターが並ぶ。「有名社寺に絵馬納品実績‼」「徳川吉宗推薦」「セレブだけど苦労人」-。史実に基づくアピールが熱い。来場者はシールで一票を投じる。 13日現在、“非主流派”の久隅胖幽(くすみはんゆう)が一歩リード。同展出品の「竹虎図」の愛らしさが人気の理由だろう。奥絵師4家の狩野永悳立信(かのうえいとくたちのぶ)ら“主流派”2人が必死に追う。 会期は27日まで。結末は番
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静岡県出身ザ・ウェマー、KMC ジャンル超え熱量競う 静岡でライブ
2006年に静岡市で結成し、13年には米国ツアーを行った3人組ロックバンド「THE WEMMER(ザ・ウェマー)」と、都内を中心に活動する吉田町出身のラッパーKMCが、静岡市葵区のライブバー「フリーキーショウ」で共演した。新型コロナウイルス禍で活動がままならない中、ジャンルを超えた“ホーム”での再会ライブ。両者からは演奏の喜びがあふれた。 都内在住メンバーのPCR検査陰性を確認し、観客にはマスク着用と検温を義務付け、演奏時間も各30分ずつに縮減した“コロナ禍仕様”のライブだったが、熱量はすさまじかった。KMCは今年リリースした「BLACK R
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画家大石勝広さんしのぶ 藤枝でK展 仲間6人 新作など17点
2011年に亡くなった画家大石勝広さん(藤枝市)をしのぶ、画家6人による「第4回K展」が、同市小石川町のアートカゲヤマ画廊で13日まで開かれている。 展覧会は、本紙連載「鎌倉だより」(三木卓さん執筆)の挿絵を担当する松井正之さん(74)=静岡市清水区=ら、生前の大石さんと親しかった画家グループが17年に始めた。新型コロナウイルス禍で中止した20年を除き、毎年油彩画や水彩画の新作を複数持ち寄って開催している。 第4回展には大石さんによる静物画やポートレート全3点を含め、全17点を展示した。心象風景を描いた3点を出した藤ケ森勉さん(72)=富士宮市=は「画家同士が切磋琢磨(せっさたくま)する大切
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静岡県内の音楽事情語る DJ3人、フェスで対談
富士市で5月に開催された野外フェスティバル「FUJI&SUN'21」で、県内の主要なDJ3人が静岡のクラブや音楽の状況を語り合うトークイベント「静岡ローカルミュージック・シーンの現在」が行われた。司会はライターでエディターの大石始さん。 1980年代から活動するDJ KAZUYOSHIさんは、ディスコが盛況だったかつての静岡市内を振り返った。「70年代前半から増え始めて、一時期は面積当たりの店舗数日本一と言われるぐらい店があった。両替町に30軒ぐらいあったんじゃないかな」 現在はハウスやテクノ、ヒップホップとともに、サルサのパーティーを主催する。「サルサという音楽はクラブに来る人たちと、
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ウエストコーストブルーイング(静岡市駿河区)小島直哉さん カナダでの宣言胸に “二足のわらじ”実現【しずおかクラフトビール新世代⑬】
飲食店経営者と醸造所の社員。小島直哉さん(33)は“二足のわらじ”でクラフトビールの世界を歩く。静岡市内の専門店「クラフトビアステーション」「cove」を運営する一方で、2020年3月、同市駿河区の醸造所「ウエストコーストブルーイング(WCB)」に入社した。 「約10年前から自分で醸造することを考えていた。日本トップクラスの醸造所でそれを学べるのは幸運」。タンクの洗い方、ホース類の殺菌方法、酵母の扱い方-。「手を動かさないと作業の意味が理解できない。全てが将来の役に立つ」 出発点はカナダだった。大学院を出て就職を決めた自動車部品メーカーには、内定者の海外研修制度が
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作家安部龍太郎さん、作品群に感慨 彫刻家御宿さん個展 静岡で6月27日まで
駿府博物館(静岡市駿河区)で開催中の彫刻家御宿至さん(富士宮市)の個展に、静岡新聞朝刊で「家康飛躍篇」を連載中の作家安部龍太郎さんが足を運び、自身の頭部像「挑む男」をはじめとした作品群と対面した。 2人は約30年前から親交がある。イタリア・ローマの御宿さんのアトリエに安部さんが滞在したこともある。 展覧会は新作を中心に約40点を展示する。頭部像は約3年を費やして2019年に完成したもの。安部さんは“分身”を前に「骨や筋肉が丁寧に描かれている。農民の顔だね。うちは代々農家だったから、一族郎党を思い出す」と満足げに話した。 御宿さんは、作品の創作意図を説明しながら会
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FUJI&SUN’21 「歌の力」富士山麓を支配
富士市の富士山こどもの国で15、16の両日、野外フェスティバル「FUJI&SUN’21」が開かれ、3ステージに28組が出演した。初夏の光が差した初日、早朝から雨が降り続いた2日目。正反対の天候が、両日の演奏に異なる色を添えた。 ♪ 2年ぶりのフェス開催をことほぐように、初日は「歌の力」が会場を支配した。打楽器が大活躍する10人組「民謡クルセイダーズ」は「真室川音頭」「会津磐梯山」など日本の民謡を中南米のリズムにのせて歌い上げた。「月が出た出た、月が出た」。ラストの「炭坑節」では歌詞に呼応するように雲間から太陽が顔をのぞかせた。 クラシックギターを抱えて登場した君島大空はドラ
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FUJI&SUN’21 注目の出演者、青葉市子に聞く
5月15、16日に富士市の「富士山こどもの国」で開かれる野外フェスティバル「FUJI&SUN」(静岡新聞社・静岡放送、WOWOWほか共催)。陰影に富んだクラシックギターの演奏と透き通った歌声を聴かせるシンガー・ソングライター青葉市子は、2019年の同フェスにも出演している。2年ぶりの“帰還”を前に、ライブ演奏やフェスティバルについての考え方を聞いた。 19年の出演は好天の午後だった。富士山麓での弾き語り演奏を存分に楽しんだ。 「空気がとてもおいしかったですね。深呼吸すると体の底まで届く感じでした。小高い丘に組んだステージで、吹き抜ける風がとても心地よくて。お客さ
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古関裕而 幻の楽曲「静岡ファンタジー」どこに…【NEXT特捜隊】
作曲家古関裕而の幻の楽曲を探してくれないか-。2020年6月25日本紙夕刊の見開き特集「古関裕而楽曲 静岡県内にも」を見た古関の研究者から、紙面を作った静岡新聞社文化生活部に、依頼が届いた。曲名は「静岡ファンタジー」。研究者は楽曲を聴いたことがなく、古関の故郷にある福島市古関裕而記念館やレコード会社にも音源がないという。曲名を手掛かりに取材を進めると、思わぬ発見があった。 >>「静岡ファンタジー」 依頼者は日本大商学部の刑部[おさかべ]芳則准教授。古関研究の権威として知られ、古関をモデルにした20年放送のNHK連続テレビ小説「エール」の風俗考証も担当した。 古関は生涯で約5000曲
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ガルシアブリューイング(静岡市清水区)フレディ・ガルシアさん 夢の場所まで10年超 ペルー雑穀で独自色【しずおかクラフトビール新世代⑫】
醸造機器は少しずつ買った。時には自分でつくった。ガルシアブリューイング(静岡市清水区)の工場は、長い時間をかけて整えられている。ペルー出身の醸造責任者フレディ・ガルシアさん(44)は「夢が実現するまで10年以上。でも、疑いはなかった。いつかかなうと信じていた」と振り返る。 一番古い240リットルのタンクは2013年に購入。もちろん、それだけでビールはつくれない。自動車工場、水産会社、大工-。仕事から得た給料を積み立て、一定の額がたまるごとに一つ一つ機器を購入した。「外国人だから金融機関の融資は望めない。最初は全部自己資金」。2019年に醸造免許を取得し、工場を稼働させるまでは、臥薪嘗胆[が
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静岡県立美術館「(無題2)」 1997年ごろ、石田徹也作 共感の広がり、世界へ【美と快と―収蔵品物語⑦】
2005年に31歳の若さで亡くなった画家石田徹也(焼津市出身)。志半ばで世を去った石田の作品は、08年の県立美術館への収蔵以後、世界へ向けて大きく羽ばたいた。「(無題2)」をはじめとした多くの作品で描かれた、諦念や絶望がにじむ人物の表情は、先行き不透明な現代社会を生きる人々の共感を得て、世界中で受容されている。 作品の寄贈は、2007年に同館県民ギャラリーで開かれた追悼展が契機だった。石田の兄道明さん(55)=焼津市=は「東京のアパートから180点を持ち帰った。知り合いの倉庫に預けていたが、処分することも考えていた」と振り返る。 美術界での評価は定まっていなかったが、遺族からの申し出を検
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FUJI&SUN’21 注目の出演者、君島大空に聞く
ライブ演奏や自然を活用したワークショップを楽しむ野外フェスティバル「FUJI&SUN」(静岡新聞社・静岡放送、WOWOWほか共催)が5月15、16の両日、富士市の「富士山こどもの国」で開かれる。2年ぶり2回目のフェスには約30組のアーティストが集う。ギターノイズを効果的に使ったドリーミーなトラックにのせて中性的な歌声を聴かせる君島大空[きみしまおおぞら]は15日に出演。同フェスに向けた心境を聞いた。 1995年生まれ。2014年に多重録音による音源制作を開始した。19年のデビューEP「午後の反射光」の発表後、初めてバンドを結成した。 「高校生のころからバンドをやることは想像していませんで
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宇佐美麦酒製造(伊東)小川大河さん 消費者の好みを熟知 売り手から醸造側へ【しずおかクラフトビール新世代⑪】
クラフトビールを売る側からつくる側へ-。宇佐美麦酒製造(伊東市)の小川大河さん(34)は、営業専従から醸造スタッフに転身した、県内ビール業界では数少ない人物だ。 2008年に「風の谷のビール」で知られる酪農王国(函南町)に入社。クラフトビール専門の営業マンとして、市場が拡大する様子を、販売の最前線で体感した。 県内外の酒販店や飲食店を巡り、時には飛び込み営業をかけて販路拡大を図った。小売店用の販促グッズを自作し、売り場の棚から付加価値の高さを訴えた。「消費者の手元に鮮度を落とさずに届ける。工場を出たところから店頭で買ってもらうまでが責任領域だと認識していた」。国内各所で行われる「ビアフェ
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沼津市戸田造船郷土資料博物館「ヘダ号設計図」【美と快と―収蔵品物語⑥】
安政2年3月22日(1855年5月8日)、戸田港(現沼津市)から1隻の帆船がロシアに向けて出発した。田子の浦沖で沈没したロシア船「ディアナ号」の代船として約100日かけて同地で建造された「ヘダ号」。ディアナ号のプチャーチン艦長が戸田への感謝を込めて命名した。同市戸田造船郷土資料博物館の展示品は、日本で初めて造られたこの洋式帆船の意義を雄弁に物語る。 日ロ外交の端緒である「ヘダ号」の物語を伝える上で最も重要な資料が、同船の設計図だ。上から、横からなど四つの視点による図面3点と、帆柱の形を示した図面1点の計4点。写真が現存しないヘダ号の姿を知る、唯一の手掛かりである。 描き手は戸田の船大工石
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酪農王国オラッチェ(函南町)木村岳司さん ドイツで醸造を習得 「職人」の気構え実践【しずおかクラフトビール新世代⑩】
ビールの本場ドイツのベルリン工科大で醸造を学び、公的資格「ブラウマイスター」を取得した酪農王国オラッチェ(函南町)のビール工房工場長木村岳司さん(45)は、「職人」という言葉に特別な思いを込める。「顧客の好み、与えられた条件に従ってベストの仕事をするのが職人。そのためにはビールづくりの全てを知っておかないと」 自分のつくりたいビールを追求するのも醸造家の在り方として認める。一方で、ドイツの伝統的なものづくりの考え方に共鳴する。「販路や会社の方針などに対して柔軟でありたい。ドイツで、そういう人間として育てられたから」 国内の大学では法律を学んだ。在学中にドイツ人留学
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フジヤマハンターズビール(富士宮市)深沢道男さん 全ての原料を地元で 循環型ブルワリーへ【しずおかクラフトビール新世代⑨】
地域の産物でビールをつくり、地域で消費する。2018年に開業したフジヤマハンターズビール(富士宮市)の醸造責任者深沢道男さん(48)の考えは、まさしく「循環型ブルワリー」と言うべきものだ。「原料の100%自給を達成するには、まだまだ超えなくてはいけないハードルがある。でも、少しずつ実現しているのも事実」と自負を示す。猟師、農業従事者を兼ねる、全国でも珍しい醸造家だ。 「教科書通りのビールばかりじゃつまらない。つくりたいのは、例えるなら農産品直売所に置かれたゴツゴツのコンニャク。形は整っていないが、原料の良さが全て引き出されている」 芝川を見下ろす小さな醸造所の構想
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柿田川ブリューイング(沼津市)片岡哲也さん 英国パブ文化に憧れ 飲み手の人生を彩る【しずおかクラフトビール新世代⑧】
17年前に英国で出合ったパブ文化、ビール文化の美点を日本にも広めたい-。柿田川ブリューイング(沼津市)のエンブレムに刻まれた「SLOW BEER SLOW LIFE」のスローガンには、社長片岡哲也さん(36)=秋田市出身=の願いが込められている。「ビールはコミュニケーションを豊かにするツール。英国のパブに通って、それを学んだ。おいしいビールを通じて、飲み手の人生を豊かに彩りたい」 語学留学で住んだブライトンは、ロンドンの南に位置する港町。現地に着いてすぐ、ホームステイ先の近所のパブに一人で行った。住宅街の真ん中にある約20席の小さな店は、近隣住民と常連ばかり。だが片言の英語でラ
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時之栖富士(富士市)冨川宏一さん 醸造20年新たな挑戦 知見をレシピに凝縮【しずおかクラフトビール新世代⑦】
傘下に御殿場高原ビールや伊豆の国ビールを持つ時之栖(御殿場市)が、富士市の常葉大富士跡地に開業した複合型スポーツ施設内で醸造する「富嶽麦酒」。今夏完成した新ビールブランドは、工場長の冨川宏一さん(43)=御殿場市=が、約20年の醸造経験と欧州各国を訪問して得たビールの知見をレシピに凝縮した。 「1月に缶のデザインが決まり、キャッチコピーの『濃くて苦い』が刷り込まれていた。苦みを生かしたIPL(インディアペールラガー)というスタイルは決めていたが、缶に合わせる形でレシピを最終調整した」 新工場はビールだけでなく、ウイスキーやハイボールも製造する。冨川さんにとっては、
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アオイビール(静岡市葵区)宮脇浩樹さん 鉄道マンから醸造士 「個の評価」求め転身【しずおかクラフトビール新世代⑥】
県中部初のクラフトビール醸造所、アオイビール(静岡市葵区)の醸造士宮脇浩樹さん(25)=沼津市出身=は、かつてJR東海道線や御殿場線で車掌を務めていた。社内研修を経て「運転士」に進むレールが敷かれていたが、「醸造士」への道を選んだ。「好きなことをやっていく。生活するためのお金はどうにでもなる」 従業員1万8千人超のJR東海を20代半ばで退職してビールを造る。約2年前にそう決めた。周囲は止めたが「何を言われてもぶれなかった。自分がつくったものへの評価を、顧客からダイレクトにもらう。そんな世界に身を投じたかった」。 クラフトビールとの出合いが、胸の奥底に眠った感情を呼
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リパブリュー(沼津市)畑翔麻さん 多様なレシピを公開 市場拡大図る起業家【しずおかクラフトビール新世代⑤】
25歳で合同会社を設立し、JR沼津駅前に醸造所兼パブを開いたリパブリュー(沼津市)の畑翔麻さん(29)は、醸造家としてだけでなく起業家としても注目を集める。技術や成功事例を同業者と「シェア(共有)」し、クラフトビール市場全体の拡大を図る。 約240平方メートルの店には20本のタップ(ビールサーバーの注ぎ口)がある。最大で生ビール20種を提供可能だが、約1年前から全て自社銘柄とした。醸造所の発酵タンク約10本をフル回転させて多種多様なスタイルのビールを造り、来店客に出来たてを提供する。 「10年前に構想した姿」。16年にはクラフトビールの中心地の一つ、米国サンディエ
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池田屋麦酒(牧之原市)月居麻水さん 老舗継承の「最適解」 酒屋に小さな醸造所【しずおかクラフトビール新世代④】
県内では希少な女性のビール醸造家、月居麻水(つきおりまみ)さん(46)。2019年秋に池田屋麦酒(牧之原市)を設立し、20年5月から醸造を始めた。 実家の酒販店「池田屋酒店」の一角を区切った工場は約20平方メートル。容量300リットルの発酵タンク4基、煮沸釜など必要最小限の機器を置いたマイクロブルワリー(極小醸造所)だ。机や椅子も設置し、来店客が出来たてのビールが飲める仕組みも整えた。 月居さんは約150年前から続く同店の7代目。「高齢の両親の後を継いで、この店をどう維持していくか。その最適解がビール造りだった」と明かす。 少し前までは自分がビールを
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反射炉ビヤ(伊豆の国市)山田隼平さん ワイン製造技術応用 木のたるで発酵熟成【しずおかクラフトビール新世代③】
世界遺産構成資産の韮山反射炉の隣で醸造する反射炉ビヤ(伊豆の国市)。1994年の酒税法改正に端を発する第1次地ビールブームさなかの97年に開業した、県内有数の老舗ブルワリーだ。浮沈が激しいビール業界の中で生き残り、24年目の夏を迎えている。 醸造長の山田隼平さん(27)=東京都出身=は山梨大工学部の特別コースでワインを学んだ。酵母菌をはじめとした微生物の生態から、ブドウの栽培と収穫、仕込みの方法、味わいの表現まで、実地研修を交えてあらゆる知識と技術を習得した。 2015年、反射炉ビヤに入社。今度は一からビール造りを教え込まれた。工程の違いに改めて気付かされた。「ワ
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マウントフジブリューイング(富士宮市)会森隆介さん “背水”で技術習得 切れの良さを追求【しずおかクラフトビール新世代②】
加和太建設(三島市)のビール醸造部門として2019年3月に産声を上げたマウントフジブリューイング(富士宮市)。醸造責任者の会森隆介さん(42)が醸造を学び始めたのは開業の1年前だった。異例の短期間で醸造法を習得し、今春のビール審査会「ジャパン・グレートビア・アワーズ」(日本地ビール協会主催)で3部門入賞を果たすなど急成長を遂げている。“背水の陣”で身に付けた技術を礎に、新しいビール造りを見通す。 「ビールについては知識ゼロだった」と3年前を振り返る。県内外の飲食店でソムリエやホール担当を経験し、17年に加和太建設入社。函南町のすし店を任されていたが、18
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オクタゴンブリューイング(浜松市中区)千葉恭広さん 運命変えた一冊の本 醸造家志しドイツへ【しずおかクラフトビール新世代①】
小規模醸造所がつくるクラフトビールが人気を高めている。静岡県は20以上の醸造所がひしめく国内屈指のビール大国。近年醸造を始めたブリュワー(醸造家)を訪ね、それぞれの“ビール人生”をひもとく。 2018年1月に醸造を始めたオクタゴンブリューイング(浜松市中区)の醸造責任者千葉恭広さん(45)は、05年からドイツのミュンヘン工科大ビール醸造工学部で理論と実践を学んだ。 出発点は1990年代半ばに出合った一冊の本だった。英国人ビール評論家のマイケル・ジャクソンが著した「地ビールの世界」。ウィートエールやトラピスト系など、多種多様なベルギーのビール