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「生」と「もろさ」ガラスで表現 静岡市美術館で松藤さん個展

 ガラスを使って自然と人間の関係を描き出すアーティスト松藤孝一さん(富山市)の個展「世界は生きている」が、静岡市葵区の市美術館エントランスホールで開かれている。暗がりで鮮やかな蛍光緑の光を放つウランガラスのインスタレーション「世界の終わりの始まり」は、物質の「生」と命あるものの「もろさ」という相反する要素を強烈に視覚化した。

松藤孝一さんとウランガラスを使った作品群。自然光の強弱で色合いが変化する=静岡市葵区の市美術館
松藤孝一さんとウランガラスを使った作品群。自然光の強弱で色合いが変化する=静岡市葵区の市美術館

 表現の素材としてガラスを選び取ったのは大学時代。溶鉱炉で溶け、形を変えるガラスの姿に魅せられた。生命が存在できない炎の世界から取り出されたガラスが、冷えるにつれて徐々に透明な光と美しい表情を獲得していく。「物質の生」を感じた瞬間だった。
 「千度を超える熱で溶けたガラスは、すさまじいエネルギーを持ち合わせている。そして時間の経過とともに透明になる。太陽の下で光と闇の間を行ったり来たりする僕ら人間と同じような捉え方ができると考えた」
 2011年、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を契機に極めて微量のウランを含んだ「ウランガラス」を使い始めた。エネルギーの源として活用できる一方、軍事利用で多数の犠牲者を生んだ過去もあるウランを内包する素材が、芸術と社会の接点を生むと判断した。自身が長崎県出身で被爆者の近親がいることも背中を押した。「美しさと危うさが同居する。『おまえが用いるべき素材だ』と言ってくれる人もいた」
 「世界の終わり-」は無数の塔が立ち並んだ都市のよう。緑色の発光が鑑賞者を引き付け、架空の街並みにいざなう。「ドローイングに合わせて形を作った。(アニメ作品の)『鉄腕アトム』『銀河鉄道999』の未来都市をイメージしている」
 個展は3月5日まで。「世界の終わり-」のほか、自然光の下に並べたウランガラスの立体作品群、気泡ガラスをレンズに使った平面作品など約10点を展示する。観覧無料。

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