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アウトドアブームの火付け役 アニメ作品「ゆるキャン△」 原作者のあfろさん(浜松市出身)インタビュー【しずおかアウトドアファン】

 静岡県や山梨県を舞台に、キャンプが好きな女子高校生5人の日常を描いたアニメ作品「ゆるキャン△」は、アウトドアブームの火付け役の一つとされる。漫画原作者のあfろさん(浜松市出身)に、創作の端緒や描写の工夫を聞いた。

静岡県内 ゆるキャン△モデル地の例
静岡県内 ゆるキャン△モデル地の例


 漫画の連載開始は2015年。現在のようなアウトドア人気の高まりはなかったが、自身の興味関心を出発点に「女子高校生とキャンプ」というテーマにたどり着いた。
 「前に連載していた2作はSFだったので、編集担当との打ち合わせで次は日常の話をやろうということになりました。たまたまキャンプが趣味だったので題材にしたんです。夏ではなく冬を舞台にしたのは、落ち着いた話が描きたかったから。虫がいない、たき火や温泉が気持ちいい、食事をよりおいしく感じられる、キャンプ場が空いているなどの理由で、もともと冬キャンプの方が好きでした」
 ソロキャンプを愛する志摩リンと天真らんまんな各務原なでしこという対照的なキャラクターのやりとりが作品に彩りと深みを与える。
 「ソロキャンプ、冬キャンプが一般的には知られていなかったので目を引くと思って、まず静かに冬ソロキャンプをする女の子を主人公にしたんです。もう一人の主人公に明るく活発な性格の女の子を据えて、話を広げていくことにしました」 photo03 志摩リン(右)と各務原なでしこ ©あfろ・芳文社/野外活動委員会
 キャンプに親しみがない読者も、登場人物と一緒にノウハウや楽しみ方を学習できる構成が特徴。テント、たき火台はもちろん、まき割りの道具に至るまで、さまざまな用具の解説は実用性が高い。キャンプ場の詳細な描写も見どころだ。
 「主人公たちが使っているキャンプ道具は、自分も使ったことがある道具を参考に。モデルにするキャンプ場はいろいろなキャンパーさんのブログなどを見て決め、現地取材に行きます。景色を重視していますね。本当は1回の取材で済ませたいんですが、話を作るうちに見せたい場所が変わってしまって、少ない時でも2~3回は下調べに出かけています」
 キャンプの華である料理の描き方は特に力を入れている。土鍋を使ったアヒージョやすき焼きといった少し凝ったものから、マシュマロのスモアといった簡便なものまで、バリエーションも幅広い。
 「料理は一度実際に作って食べています。作品の最初の方は簡単にできるレシピが中心で、周囲の人を参考にしていますが、最近はなるべく『地の物』を使うようにして考えています。いろんなレシピを調べたりもしますが、完全なパクリにならないよう、オリジナルになるように気をつけています」 photo03 スモアを作るためにマシュマロを焼く志摩リン(左)と各務原なでしこ ©あfろ・芳文社/野外活動委員会
 物語が進むにつれて、ソロキャンプとグループキャンプそれぞれの楽しさが対比的に描かれる。作中で登場人物がそれを語る場面もある。
 「みんなでワイワイするならグループキャンプ、一人でゆっくりしたいならソロキャンプですね。ソロキャンは風景や心情を、グルキャンは会話の魅力を描くようにしています」
 連載開始から7年半が経過し、キャンプ場は利用者が増加している。「ゆるキャン△」がこうした現象を後押ししたとする声もある。
 「作中で取り上げた物を、ファンの方が食べてくれたり感じてくれたりするのがうれしい。喜んでいただいているお店や地域の方のお話を聞くこともあり、それも素直にうれしいです。一方でキャンプ場が季節を問わずどこも混んでしまっているところには、ブームを感じますね。多くの人がキャンプを楽しんでいる半面、行きづらくもなってしまっている。痛しかゆしですね」
 作品には静岡県内のキャンプ場も頻出する。作者本人はお気に入りを2カ所挙げる。
 「朝霧高原の『富士山YMCAグローバル・エコ・ヴィレッジ』は景色が良くて広い。比較的空いているイメージもあって気に入っています。大井川の『アプトいちしろキャンプ場』の秘境感もいいですね。他では見られないアプト式鉄道車両の走行を見ながらキャンプできるのも魅力です」 photo03 富士山YMCAグローバル・エコ・ヴィレッジをモデルに描いた場面。富士山麓でクリスマスにキャンプを実施 ©あfろ・芳文社/野外活動委員会
 ゆるキャン△ 2015年7月に連載が始まったあfろさんの漫画を原作とし、18年1~3月にテレビでアニメ作品を放送。20年1~3月にショートアニメ「へやキャン△」、21年1~3月に「ゆるキャン△SEASON2」が続いた。22年7月には映画「ゆるキャン△」が公開された。単行本は14巻まで発刊されている。静岡県から山梨県に引っ越した女子高校生の各務原なでしこが、転入した高校の同級生志摩リン、野外活動サークルに所属する大垣千明と犬山あおい、リンの親友の斉藤恵那らとの交流を通じてキャンプの楽しさと奥深さを知る過程を描く。

 <メモ>2022年夏に公開され、観客動員74万人を記録した映画「ゆるキャン△」ブルーレイ・DVDが26日に発売される。本編に加え、公開時の声優らによる舞台あいさつ映像を収録。作品を振り返るオールカラーのブックレットも封入した。別にブルーレイコレクターズ版も発売。制作現場に約1年間密着した約110分のメイキングドキュメンタリーを収録した。発売はフリュー。詳細は公式サイト(https://yurucamp.jp/cinema/bddvd/)参照。 photo03 映画「ゆるキャン△」から ©あfろ・芳文社/野外活動委員会
 あfろ(あふろ) 浜松市出身、甲府市在住。「月曜日の空飛ぶオレンジ。」(芳文社刊)でデビュー。「ゆるキャン△」以外の作品に「シロクマと不明局」「魔法少女ほむら☆たむら~平行世界がいつも平行であるとは限らないのだ。~」(原作・MagicaQuartet)「mono」など。 photo03 ©あfろ・芳文社/野外活動委員会

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