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テーマ : 芸能・音楽・舞台

興津舞台の米小説復刻 鈴与グループ/鈴木与平会長「若者に伝えたい」 1961年ベストセラー翻訳本「ニッポン歴史の宿」

 1961年に米国でベストセラーになった小説「ジャパニーズイン」の翻訳本「ニッポン歴史の宿」を鈴与グループの鈴木与平会長(81)が復刻し、このほど刊行した。小説は、かつての静岡市清水区興津地区が舞台。戦後の高度成長期に興津の風情は移ろい、名著も忘れ去られていた。鈴木会長は「ぜひ地元の若い人に手に取ってもらいたい」と話す。

復刻した「ニッポン歴史の宿」を手にインタビューに応じる鈴木与平会長=静岡市清水区入船町の鈴与本社(写真部・杉山英一)
復刻した「ニッポン歴史の宿」を手にインタビューに応じる鈴木与平会長=静岡市清水区入船町の鈴与本社(写真部・杉山英一)

 文化庁長官も務めた作家三浦朱門さんの翻訳本を再刊行するため、数年前から遺族への了解を取ってきた。復刻版では小説に出てくる実際の場所をカラー写真で新たに紹介。古刹(こさつ)・清見寺などに残る絵画などを「資料編」として収録した。巻頭には今は国際コンテナターミナルとなっている興津の海岸線についての鈴木会長の思い出が紹介されている。
 「フィクションなのに読み進めて時代が下るうちに史実に近くなってくる。混在したところが一つのおもしろさになっている」という鈴木会長。米国人のオリバー・スタットラーが日本の文化や歴史に関心を持ち、原著を記したことに「深く日本のことを知ると本当に日本人の良さは分かる。外国人をのめり込ませるような魅力が興津にあった」とする。
 「清見潟」と呼ばれた海岸線には国道1号バイパスが通り、海は埋め立てられて変容を遂げた興津地区。鈴木会長の出版の動機は「本を復刻することによって少しでもかつての宿場町の思い出を若い人に伝えたい」との思いだ。「かつてはホウボウなんかがたくさんいた」と話す鈴木会長。移りゆく港の風情を本を手に取ることで感じることができる。
 お茶やミカンに始まり、缶詰、オートバイと輸出品が変わるにつれて清水港は時々刻々と姿を変えてきた。港の表情は今後も時代とともに移ろいそうだ。
 地元が拠点の企業グループのトップを務める鈴木会長は「福岡と博多がそれぞれの顔があって光っているように、静岡と清水もそうなればよい」と話す。名著の復刻は興津をはじめとする清水への郷土愛の吐露でもある。
 「新版 ニッポン歴史の宿」は鈴与が発行し静岡新聞社が発売。いずれも税込みでハードカバー版2640円、文庫版990円。問い合わせは静岡新聞社出版部<電054(284)1666>へ。

 <メモ>ジャパニーズイン 1947年に軍属として来日したオリバー・スタットラー(1915~2002年)が興津の旅館「水口屋」を舞台に日本の歴史を描いた小説。徳川家康や歌川広重、西園寺公望などの歴史上の重要人物が多く登場する。著者のスタットラーには四国のお遍路をテーマにした著書もある。

 

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