テーマ : ウクライナ侵攻

社説(2月24日)苦境のウクライナ 支援継続へ連帯強化を

 ロシアがウクライナへの侵略戦争を開始してから24日で2年となる。戦線は膠着[こうちゃく]気味だとはいえ、兵力と装備で勝るロシア軍が攻勢を続ける。米欧諸国の軍事支援が先細り状態のウクライナ軍はじりじりと押されている印象だ。
 ロシアは侵略したウクライナ東部と南部の4州併合を一方的に宣言し、さらに拡大しようとしている。ロシアが領土の強奪を諦めない限り、戦争の終わりは見えない。それまではウクライナを支援する必要がある。野蛮な侵略行為を容認してはならない。
 一方で大統領選を控えた米国では野党共和党の反対で支援が滞る。NATO(北大西洋条約機構)加盟国もまだら模様だ。もともとロシアと国境を接する東欧とそれ以外では危機感が異なる。加えて支援の負担に耐えられなくなる「支援疲れ」も見えているという。自由と民主主義を重視する国々は、今こそ連帯を強めなくてはならない。

 第2次世界大戦で数多くの命を失った欧州で、21世紀に本格的な全面戦争が起きるとは思いもしなかった。ロシアのプーチン大統領が抱く前時代的な領土拡張欲なのか。米国と覇を競った旧ソ連の栄光を追い求めたのか。
 国内では反対意見を徹底的に封殺して戦争に突き進み、米欧には核兵器の使用もちらつかせて威嚇した。このロシアが国連安全保障理事会の常任理事国なのだ。世界の平和と安定を図る安保理は当然、機能不全に陥った。
 ロシア軍は一時、首都キーウに迫ったが、米欧の軍事支援もあってウクライナ軍は押し返すことに成功した。東部ハルキウ州でも奪われた領土の一部を奪回した。ところがその後の南部などでの反攻作戦は失敗。軍事支援の停滞で弾薬が不足すると、主導権を再びロシアに握られた。
 侵攻2年を前に、ウクライナ軍の総司令官は交代。東部ドネツク州では約4カ月にわたる激戦の末、要衝アブデーフカから撤退を余儀なくされた。ロシア軍は多数の兵士や戦闘車両を失ったとみられるが、ウクライナ軍の消耗も大きく、各地の戦線で守勢に転じざるを得なくなった。
 この2年間、ロシアは戦線から離れた社会インフラや住宅地にも容赦なくミサイルを撃ち込んできた。全土で空襲警報が鳴りやまず、ウクライナ国民にも疲労感が漂っていることは否定できない。今後の展開も不透明で、正念場を迎えているともいえよう。

 また、昨年10月にはパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを越境攻撃。反撃に出たイスラエルがガザに侵攻、多数の民間人が犠牲になる不条理に世界が注目した。その分ウクライナへの関心が薄れているかもしれない。
 中東情勢も看過できないが改めてウクライナの現実に目を向ける必要がある。民間施設の破壊、民間人への拷問や虐殺、子ども連れ去りなど、戦地ではさまざまな戦争犯罪や国際人道法の違反行為が繰り返されている。蛮行を止めるには、ロシアの意図をくじくしかないだろう。
 3月の大統領選でプーチン氏の5選は確実とされる。反戦を訴える対立候補を立候補させないなど選挙は茶番でしかない。とはいえ「再選」を誇示することで、特別軍事作戦と呼ぶ侵略戦争は国民の信任を得ているとして、戦闘を激化させる恐れがある。
 これまで米欧は厳しい経済制裁をロシアに科してきた。ただ、ロシアには資源国の強みがあり、その継戦能力は揺るぎそうもない。グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国も多様で、ロシアとのつながりが強い国もある。
 戦争の長期化も見据えてウクライナ支援の枠組みを構築する必要があるだろう。日本政府は先日、都内でウクライナ経済復興会議を開いて支援継続の姿勢を示した。軍事援助以外の必要性も強調することで、支援に向けた国際世論を喚起していきたい。

いい茶0

ウクライナ侵攻の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞