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ウクライナ復興需要61兆円、民間が鍵 インフラ被害深刻、日本企業参入に期待感

 ロシアに侵攻されるウクライナでは、住宅や運輸交通、エネルギー関連インフラが多数破壊された。世界銀行は昨年3月時点で、復興には今後10年間で4110億ドル(約61兆円)が必要になると試算。巨額の復興需要を支援国の公的資金だけで賄うのはほぼ不可能だ。シュミハリ首相は8日、民間投資の重要性を強調し、日本企業の参入障壁も除去すると訴えた。
日本がウクライナへ供与した発電機=2023年4月、キーウ近郊(共同)
 ■将来性
 「日本企業にウクライナを紹介したい。大きな将来性があるからだ」。首都キーウ(キエフ)の政府庁舎の応接室で、シュミハリ氏は熱っぽく答えた。共同通信との会見は、ゼレンスキー大統領からシュミハリ氏の携帯電話に緊急連絡があり一時中断したものの、計約1時間10分に及んだ。
 ウクライナが戦争で受けた傷は大きい。キーウ経済大の昨年6月の報告によると、ウクライナでは侵攻開始以降、140万世帯(約340万人)の住居が破壊されたり、損壊したりした。交通インフラでは計19の空港と飛行場、少なくとも126の鉄道駅が破壊された。2万5400キロの道路、500キロ以上の鉄道線路も損傷した。
ロシアの攻撃によるウクライナの損害額
 ロシアの攻撃による建物や施設の被害額は総計で1505億ドルに上り、うち37%が住居、24%がインフラ、8%が企業、7%が教育、6%が農業に関する被害だった。社会経済活動の停止などによる経済損失は2656億ドルに及び、被害額を大きく上回った。

 ■「慈善でない」
 東部や南部の前線に近い地域は荒廃し、キーウを含む都市部も空爆で破壊されており、復興には民間企業の進出が欠かせない。シュミハリ氏は、日本企業の協力に期待する業種として、インフラ、農業、エネルギー、エンジニアリング、IT、防衛の6分野を挙げた。
 エネルギー分野ではロシアによる攻撃や施設占拠などによって、原子力、火力発電所の施設の44%、風力、太陽光では80%を失ったと説明した。日本はガスタービン発電機などを供与した。
 岸田文雄首相も「官民一体となったオールジャパンのウクライナ支援が重要だ」と述べ、民間の関与を重視する。19日に東京で開かれる日ウクライナ経済復興推進会議には、両国から各100前後、計200社超の企業が参加する見通し。
 日本の支援拠出額は軍事分野を含めた全体では6位。財政分野ではEU、米国、英国に続く4位、人道分野では米国、ドイツ、スイス、EUに次ぐ5位で、世界有数のウクライナ支援国だ。シュミハリ氏は「ウクライナ支援は慈善事業ではなく、世界の安定への投資だ」と訴え、一層の支援拡充を訴えた。

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