テーマ : ウクライナ侵攻

見えない終戦、定住視野 日本語の壁も、自立へ歩み 避難のウクライナ人

 ロシアによる侵攻開始から2年が過ぎても、終戦の兆しが見えないウクライナ。日本に逃れた避難民らは「帰国は非現実的」と覚悟し、長期滞在を見据え始めた。政府も、就労可能な定住を認めて後押し。安定した生活には日本語習得という高い壁があるが、支援団体のサポートを受け、自立へ歩みを進めている。

小野一馬さん(手前左)が大分県別府市の集会場で開いているウクライナ避難民の日本語教室。奥は通訳者の山口英文さん=2月
小野一馬さん(手前左)が大分県別府市の集会場で開いているウクライナ避難民の日本語教室。奥は通訳者の山口英文さん=2月
避難を続けるウクライナ人に日本語を教える、通訳者の山口英文さん=2月、大分県別府市
避難を続けるウクライナ人に日本語を教える、通訳者の山口英文さん=2月、大分県別府市
日本語を学ぶウクライナ避難民=2月、大分県別府市
日本語を学ぶウクライナ避難民=2月、大分県別府市
山口英文さん(奥)や小野一馬さん(右端)と日本語を学ぶウクライナ避難民=2月、大分県別府市
山口英文さん(奥)や小野一馬さん(右端)と日本語を学ぶウクライナ避難民=2月、大分県別府市
NPO法人「Beautiful World(ビューティフル・ワールド)」の小野一馬さん(奥)から日本語を学ぶウクライナ避難民=2月、大分県別府市
NPO法人「Beautiful World(ビューティフル・ワールド)」の小野一馬さん(奥)から日本語を学ぶウクライナ避難民=2月、大分県別府市
日本語を学ぶウクライナ避難民のストロミナさん(右)ら=2月、大分県別府市
日本語を学ぶウクライナ避難民のストロミナさん(右)ら=2月、大分県別府市
避難を続けるウクライナ人に日本語を教える、通訳者の山口英文さん=3月、大分県別府市
避難を続けるウクライナ人に日本語を教える、通訳者の山口英文さん=3月、大分県別府市
小野一馬さん(手前左)が大分県別府市の集会場で開いているウクライナ避難民の日本語教室。奥は通訳者の山口英文さん=2月
避難を続けるウクライナ人に日本語を教える、通訳者の山口英文さん=2月、大分県別府市
日本語を学ぶウクライナ避難民=2月、大分県別府市
山口英文さん(奥)や小野一馬さん(右端)と日本語を学ぶウクライナ避難民=2月、大分県別府市
NPO法人「Beautiful World(ビューティフル・ワールド)」の小野一馬さん(奥)から日本語を学ぶウクライナ避難民=2月、大分県別府市
日本語を学ぶウクライナ避難民のストロミナさん(右)ら=2月、大分県別府市
避難を続けるウクライナ人に日本語を教える、通訳者の山口英文さん=3月、大分県別府市

 「わたし たち」。3月中旬、大分県別府市内の集会場で、通訳者の山口英文さん(61)が平仮名を示し、ロシア語で説明すると、7人いたウクライナ人受講者の1人が尋ねた。「『たち』は常に『たち』として使うのか」。ロシア語のように、前につく言葉によって単語が変化するのかと確認。東部や都市部を中心に母国で広く普及するロシア語での授業は熱を帯び、質問が相次いだ。
 授業を運営するのは、地元NPO法人の「Beautiful World(ビューティフル・ワールド)」。侵攻後、約30人の避難民が市内に滞在中という。別府市には留学生が多く、受け入れに積極的だった。
 大半が同じ団地に住み、支援が容易だったが、“身内”での密な交流が逆に、言葉を覚える妨げとなった。日本語で授業をする語学学校を紹介しても、乏しい日本語能力では受講は難しいと判断。ロシア語による教室を無償で開くことにした。
 授業内容が「伝わらずに困ることがない」と効果を語る山口さん。受講したストロミナさん(46)は「分かりやすく面白い」と笑顔を見せた。
 政府は滞在の長期化を踏まえ、避難民に「定住者」の資格を与える制度を昨年導入した。ただ、支援団体などが給付する生活費には限りがある。語学講習の運営に注力する背景には、定住に欠かせない就労の成否にとって、語学力向上が大きな鍵を握る事情がある。
 政府によると、3月20日時点で約2100人のウクライナ避難民が日本で暮らす。日本財団が昨年11~12月、約千人に行った調査では、73%が残留を望むと答えた一方、全体の53%は就労しておらず、うち57%が職探し中だと回答。財団担当者は「日本語の壁」が就職難の主因とみる。
 別府市の放課後児童クラブ(学童保育)で働くツビリュークさん(40)も言葉の壁を時折痛感するといい「家族を養うため日本語を上達させなければ」と決意を示した。
 ビューティフル・ワールドの小野一馬さん(37)は「しっかり稼いで税金を納めるなど、日本に貢献できる人になってほしい」と願う。畳職人として働く東部ドネツク州出身のクラリカウスカスさん(46)は「故郷はロシアに実質的に制圧され、帰国は現実的ではない。ゆくゆくは日本で家を持ちたい」と語った。
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 避難民支援 昨年成立した改正入管難民法で、紛争地の住民らを、難民に準じる「補完的保護対象者」として救済する新制度が創設された。ウクライナ避難民が主な対象で、就労も可能な定住者の在留資格が与えられる。政府は従来、避難民は条約上の「難民」には当たらないとの解釈で、人道上の特例措置として、1年ごとに更新する「特定活動」の資格で滞在を認めていた。ロシアによる侵攻が続き、避難生活が長期化する中、より安定した在留資格での保護が必要だと判断した。

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