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【阪神大震災】震災経験、戦災復興に活用 兵庫県がウクライナ支援

 兵庫県は1995年の阪神大震災から町の復興を遂げた経験や教訓を、戦禍が続くウクライナに伝えようと昨年3月から支援検討会を設置している。戦災と状況は異なるものの、被災者の「心のケア」の知見や、行政主導による再開発事業の課題など「震災から29年を経て蓄積した経験から、ウクライナ支援に生かせる知恵や共通点を見いだすことに意義がある」と専門家は指摘する。

ウクライナ出身で神戸学院大客員教授のナディヤ・ゴラルさん(右)と話す伊東正和さん=2023年12月、神戸市長田区
ウクライナ出身で神戸学院大客員教授のナディヤ・ゴラルさん(右)と話す伊東正和さん=2023年12月、神戸市長田区
ウクライナ出身で神戸学院大客員教授のナディヤ・ゴラルさん(右)と話す伊東正和さん=2023年12月、神戸市長田区
ウクライナ出身で神戸学院大客員教授のナディヤ・ゴラルさん(右)と話す伊東正和さん=2023年12月、神戸市長田区
取材に応じる神戸学院大の岡部芳彦教授=2023年12月、神戸市
取材に応じる神戸学院大の岡部芳彦教授=2023年12月、神戸市
取材に応じる兵庫県こころのケアセンターの加藤寛センター長=2023年8月、神戸市
取材に応じる兵庫県こころのケアセンターの加藤寛センター長=2023年8月、神戸市
ウクライナ出身で神戸学院大客員教授のナディヤ・ゴラルさん(右)と話す伊東正和さん=2023年12月、神戸市長田区
ウクライナ出身で神戸学院大客員教授のナディヤ・ゴラルさん(右)と話す伊東正和さん=2023年12月、神戸市長田区
取材に応じる神戸学院大の岡部芳彦教授=2023年12月、神戸市
取材に応じる兵庫県こころのケアセンターの加藤寛センター長=2023年8月、神戸市

 ▽変貌
 「行政が言うならと従ったが、長田は被災後の町づくりの失敗例になった」。昨年12月に神戸市長田区で開かれた検討会。大正筋商店街で日本茶店を45年間営む伊東正和さん(75)は胸中を明かした。
 震災時、古い木造家屋が立ち並び下町風情が残る長田区は火災で甚大な被害を受けた。市はいち早く復旧しようと行政主導で再開発事業を進め、中心部はビルやマンションが立ち並ぶ近代的な町並みに変貌した。商業用地は従前の面積を確保したが実際には権利者の半数ほどしか入居せず、ビル管理費の負担増にも不満がくすぶる。事業を検証した市の報告書は「経済環境の悪化、制度や運用の硬直性などが背景となって、事業者と行政の関係にひびが生じてきたことは否めない」と問題点を指摘した。
 震災前は店舗兼の住宅だったが、再開発で別の場所の集合住宅に住むことになった人も多い。伊東さんは「商売を再開しても(店舗と自宅で)二重に余計なお金がかかる」と述べ、町の実情を知る住民が再開発を主導すべきだったとした。
 ウクライナ出身で神戸学院大(神戸市)の客員教授を務めるナディヤ・ゴラルさんは検討会にオブザーバーとして参加。「故郷でも古い町並みが残る地域があり、復興に向けた課題が共通する部分がある。経験を伝えるのは大事だ」と話す。
 ▽ニーズ
 阪神大震災を契機に被災者のトラウマや心的外傷後ストレス障害(PTSD)など精神的問題の支援や研究に取り組むため2004年に設立された兵庫県こころのケアセンター(神戸市)。県はここでウクライナの医療従事者の受け入れと研修を検討している。
 ウクライナでは戦争で家族を失った遺族や、前線で戦い傷を負った兵士らへの心のケアのニーズが高まる一方、専門人材の不足が課題となっている。災害と異なり戦争には敵がいて怒りや恨みを抱く。加藤寛センター長は「身近な人が亡くなるなどトラウマ的な体験は共通する部分もある。心にどういう問題が生じるかは分かるはずだ」と述べ、現地のニーズを見極めたいとしている。
 ウクライナ情勢に詳しい神戸学院大の岡部芳彦教授によると、一部地域では戦争と同時並行で復興に向けた建設ラッシュが始まり、インフラ整備などハード面での資金や技術的支援の必要性が高まっている。
 それを踏まえた上で、兵庫県が復興経験の伝達や人々の心のケアなどソフト面を支援する意義について「県は継続して震災復興の検証をしてきた。ウクライナが今後直面する復興全体のプラン作りや、国と自治体の財政負担のあり方など多方面でヒントになる事例があるはずだ」と指摘した。

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