【２０２３年　十大ニュース　国際】ガザで戦闘激化、人道危機続く／ロシア、ウクライナ侵攻長期化

　共同通信と静岡新聞社など全国の加盟新聞社の編集・論説責任者らが選ぶ今年の十大ニュースが決まった。国際の１位は、イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザ侵攻で、いずれも国内外を大きく揺るがした。国際の２位は、ロシアによるウクライナ侵攻から間もなく２年となる戦争の長期化。３位は米大リーグで大谷翔平が２年ぶり２度目の最優秀選手（ＭＶＰ）に選ばれ、本塁打王にも輝いたニュースだった。
２０２３年　十大ニュース　国際
　①ガザで戦闘激化、死者２万人超に
　１０月７日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの戦闘員が越境し住民を殺害、多数を人質にした。ハマス壊滅を訴えるイスラエルはガザを空爆し地上侵攻。病院や学校、国連施設も攻撃されガザ側の死者は２万人を超えた。人口８割以上の約１９０万人が避難を強いられ、水や食料、エネルギーが欠乏する人道危機が続く。７日間の戦闘休止中に人質解放で進展はあったが、米国の拒否権発動で国連安全保障理事会も機能せず。イスラエル側の死者は約１２００人。
イスラエル軍の空爆後、病院で治療を待つパレスチナ人の子ども＝１２月５日、パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニス（ゲッティ＝共同）
　②ウクライナ侵攻２年目、戦争長期化
　昨年２月に始まったロシアの侵攻は長期化の見通し。米欧の武器供与を受けるウクライナは６月に反転攻勢を開始。ロシアが併合を宣言したザポロジエ州の一部でロシア軍の防衛線を突破、ヘルソン州での渡河作戦では複数の拠点を築くも戦況は膠着（こうちゃく）状態に。同州では水力発電所の巨大ダムが決壊し洪水被害も。メキシコ国境の管理強化を優先したい米共和党の抵抗で支援に不透明感が漂う。中国に接近するロシアは北朝鮮とも首脳会談、軍事協力を模索か。
４月８日、ウクライナ東部ドネツク州の前線の塹壕（ざんごう）に立つウクライナの兵士（ロイター＝共同）
　③大谷が日本人初の米大リーグ本塁打王、２度目の満票ＭＶＰ
　米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平が４４本のホームランを放ち日本勢初の本塁打王。満票でアメリカン・リーグの最優秀選手（ＭＶＰ）の栄冠も。２度目の右肘手術を受けた後、ドジャース移籍を発表。１０年契約で総額７億ドル（約１０１５億円＝為替レートは入団合意時）。米メディアはスポーツ史上最高額の契約と伝えた。来年は打者に専念し、２０２５年の投打「二刀流」復活を目指す。
　④米ＦＲＢが利上げ停止、一時円安止まらず
　昨年春に事実上のゼロ金利政策を解除した米連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）は年明けも利上げを継続。ただ７月を最後に、９月以降は３会合連続で金利を据え置き。物価上昇の勢いが減速傾向にあるためで２４年末の金利は４・６％と予測。日米の金利差拡大で一時１ドル１５０円台まで円安が進行したが、その後１４０円台に。
　⑤中国の習近平国家主席が初の３選
　中国の全国人民代表大会（全人代＝国会）は３月、習近平国家主席の３選を満場一致で決めた。３選は史上初。権力基盤はより強固に。一方、不動産不況や個人消費低迷で中国経済は力強さを欠く。米国との覇権争いが続く中、来年１月の台湾総統選が台湾統一を目指す習体制の動向に大きな影響を与えそうだ。
　⑥ＷＨＯが新型コロナ緊急事態宣言終了
　世界保健機関（ＷＨＯ）は５月、２０年１月末に出した新型コロナウイルス感染症を巡る緊急事態宣言の終了を発表した。ワクチン普及などで重症化率が下がり死者数は減少、各国が規制を撤廃し日常生活が戻っている現状を踏まえた。発表時の世界の累計感染者数は７億６５００万人超、死者数６９２万人。
　⑦ＷＢＣで侍ジャパン優勝
　国・地域別で野球の世界一を決めるワールド・ベースボール・クラシック（ＷＢＣ）で日本代表侍ジャパンが前回覇者の米国を下し１４年ぶり３度目の優勝。栗山英樹監督の下、大リーグの大谷、日本球界から山本由伸らが参加。ＭＶＰは大谷。
　⑧生成ＡＩ巡り国連で規制と活用のルール作り議論
　インターネットを巡る政策課題を話し合う国連の会議「インターネット・ガバナンス・フォーラム（ＩＧＦ）」が開かれ、人工知能（ＡＩ）規制や偽情報対策などが論じられた。先進７カ国（Ｇ７）の協議にも影響。欧州連合（ＥＵ）はＡＩ規制法案に大筋合意した。
　⑨ＧＤＰ世界第３位が日本からドイツへ
　国際通貨基金（ＩＭＦ）によると、今年の日本の名目国内総生産（ＧＤＰ）はドルベースで世界３位から４位に転落、ドイツに逆転される見通し。円安によるドル換算の目減りやドイツの物価上昇率が背景に。
　⑩北朝鮮がＩＣＢＭ発射、軍事衛星打ち上げも
　北朝鮮は大陸間弾道ミサイル（ＩＣＢＭ）「火星１５」を発射し日本の排他的経済水域（ＥＥＺ）に。固体燃料型の「火星１８」も試射。２回失敗した軍事偵察衛星の打ち上げはロ朝首脳会談後の１１月「成功」と発表された。