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日本 ロ朝接近で脅威拡大【ウクライナ 3年目の侵攻と世界⑤完】

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響は、日本を取り巻く東アジアの安全保障環境に波及した。国際社会から孤立するロシアと北朝鮮が接近、軍事協力を進める。北朝鮮はロシアの技術を取り入れ、核・ミサイルの脅威は拡大した。日本は米韓両国との連携で抑止を図るが、分断は深まり緊迫の度合いを増す。台湾海峡情勢、米大統領選の影響も見通せず、岸田文雄首相は困難なかじ取りを迫られる。

軍事偵察衛星の打ち上げ成功を喜ぶ北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(中央)=2023年11月21日、北朝鮮北西部東倉里の西海衛星発射場(朝鮮通信=共同)
軍事偵察衛星の打ち上げ成功を喜ぶ北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(中央)=2023年11月21日、北朝鮮北西部東倉里の西海衛星発射場(朝鮮通信=共同)
東アジア情勢を巡る相関図
東アジア情勢を巡る相関図
軍事偵察衛星の打ち上げ成功を喜ぶ北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(中央)=2023年11月21日、北朝鮮北西部東倉里の西海衛星発射場(朝鮮通信=共同)
東アジア情勢を巡る相関図


 ■警戒感
 「ロ朝間の戦略的協力が北朝鮮への核・ミサイル関連技術の移転につながる可能性を深く懸念している」。昨年11月22日、松野博一官房長官(当時)は北朝鮮が同21日に弾道ミサイル技術を使って打ち上げた軍事偵察衛星を巡り警戒感をあらわにした。
 北朝鮮は昨年5月と8月に相次いで衛星打ち上げに失敗したものの、11月の打ち上げでは地球周回軌道に進入させたと発表した。専門家はこの間、ロシアから宇宙関連技術の支援を受けたと指摘する。北朝鮮は軍事物資の不足にあえぐロシアに砲弾や短距離弾道ミサイルを供与しているとされ、軍事面の相互依存を強めている。
 日米韓は連携した対処を図る。昨年12月19日、北朝鮮の弾道ミサイル警戒情報の即時共有システムを稼働させた。同盟関係にある日米、米韓の間でそれぞれ共有してきたミサイルの発射地点や軌道の予測について、日韓でも即時共有するものだ。防衛省関係者は「3カ国の安保協力の象徴」と評価する。

 ■課題露呈
 だが、北朝鮮はミサイル技術を高度化させている。
 今年1月に極超音速弾頭を搭載した中長距離弾道ミサイルの発射実験に成功したと発表。極超音速兵器はマッハ5(音速の5倍)以上で飛行するため探知が困難とされ、日本政府筋は「迎撃は困難になる」とうなる。日韓がそれぞれ発表したミサイルの飛距離は500キロも差があり、システムの課題も露呈した。
 ロ朝と日米韓の対立は深まる。秋葉剛男国家安全保障局長ら日米韓の安保担当高官は昨年12月9日、ソウルに集まり、ロ朝の軍事協力が懸念すべき動きとの認識を共有、緊密な連携を確認した。一方、ロシアのラブロフ外相は今年1月、モスクワで北朝鮮の崔善姫[チェソンヒ]外相と会談し、北朝鮮の核・ミサイル開発を非難する日米韓を批判した。

 ■分かれ道
 台湾では総統選で中国との統一を拒否する民主進歩党の頼清徳氏が当選。中国が台湾への経済、軍事面での圧力を強める展開が予想される。中国と覇権を争う米国では11月に大統領選が控える。共和党候補指名が有力視されるトランプ前大統領が返り咲けば、東アジアの安定を重視するバイデン政権の外交戦略からの急転換も予想される。
 首相は1月4日の年頭会見で「今後の10年を決める分かれ道の年を迎えたと言っても過言ではない」と言明した。予測が難しい国際情勢で、外交手腕が厳しく問われる。

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