テーマ : ウクライナ侵攻

男性器負傷兵の治療に光 ウクライナ、社会復帰後押し

 【キーウ共同】ロシアによる侵攻が続くウクライナで、男性器を負傷した兵士の治療に光が当たりつつある。声を上げにくかったり、緊急性が低かったりすることから後回しにされてきた分野だが、治療への要望は潜在的に多い。戦争が長期化する中、兵士の社会復帰を後押しする取り組みの一つだ。

人工性器を手に説明する医師のヤロスラフ・メリニチュクさん=2023年12月、キーウ(共同)
人工性器を手に説明する医師のヤロスラフ・メリニチュクさん=2023年12月、キーウ(共同)

 注目されたきっかけは、支援に携わる慈善団体が昨秋、メディアを通じて発信したことだ。「より質の高い人生のために」と呼びかけると相談者が殺到し、社会で問題の認知が広がった。
 団体創設者のオレクシー・ペトリフシキーさん(44)によると、治療の需要は東部で紛争が始まった2014年以降あったが、軍の病院では命の救出が優先され、手術できる医師も少なく注目されてこなかった。打ち明けるのが「恥ずかしい」という風潮も社会にあったという。
 手術を担う医師の一人ヤロスラフ・メリニチュクさん(33)は「男性にとって性器は第二の心臓だ。手術で希望を与えたい」と話し、治療機会の拡大を訴える。
 防弾チョッキで完全に守ることができない性器は負傷しやすく、損傷したことで自殺を考える人もいる。最近は妻が相談に訪れるケースも増えているという。
 慈善団体などによると、22年2月の侵攻開始以降、患者は1万4千人に上る。高額な人工性器の入手や医師の技術レベル向上が課題で、これまで米国やリトアニアが支援をしているという。
 手術を受けたウクライナ兵イホールさん(55)は昨年11月、東部の激戦地バフムトで重傷を負った。「息ができなくなるほどショックだったが、手術ができることを知って救われた」と振り返った。
 兵士だけでなく、地雷などで負傷した民間人も治療の対象となる。ペトリフシキーさんは「この分野で経験のある海外のパートナーと協力を強めたい」と話している。

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