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【ウクライナ侵攻3年目】子どもたち守る同盟を ロシア凍結資産の活用も エストニア外相 マルグス・ツアフクナ

 バルト3国のエストニアにとって優先課題の一つは、ウクライナ国内のロシア占領地域から連れ去られた子どもたちを守り、帰還させるための国際的な「同盟」を主導することだ。

エストニアのツアフクナ外相
エストニアのツアフクナ外相

 ウクライナは20万人以上の子どもが連れ去られたとしており、ロシアは70万という数字を公表している。うち2万人の身元をわれわれは特定した。連れ去られた子どもが戦場に送られ、母国と戦うケースも散見される。
 こうした事実こそが、この侵略戦争が残忍であることを物語っている。事態は切実であり、だからこそウクライナを支援し続ける必要がある。
 ウクライナは「われわれのため」というより「われわれの代わり」に戦っている。そもそもクリミア半島を併合した2014年の時点でロシアは侵略行為を開始していた。戦争は2年前に始まったわけではないのだ。
 エストニアはロシアの隣国だ。私が16~17年に国防相を務めた当時、国境には運用可能な12万のロシア兵がいた。この兵力が今戦争に投入され、ウクライナ軍が撃退している。そうした意味において、ウクライナはエストニアの代わりに戦っているのだ。
 エストニアの対ウクライナ軍事支援は国内総生産(GDP)の1・4%に上り、コンスタントな支援に注力してきた。弾薬など武器の在庫を比べるとウクライナとロシアは「1対8」だ。これでは領土奪還は困難だ。弾薬、武器の供給など軍事支援は、われわれが果たすべき責任でもある。
 プーチン(ロシア大統領)が戦争に勝つようなことがあれば、全ての国、特に非民主的な国家に次のメッセージを送ることになるだろう。国連憲章はじめ国際法に背き、子どもを連れ去り、力で国境が変えられる―。
 ウクライナは武器が枯渇しているが、戦う意思は堅固だ。だから支援し続けるべきなのだ。ロシアを今たたかないと、侵略が繰り返される。
 またエストニアは国防費のGDP比を3・2%にまで高めた。巨費だが政府は増税を行い、国民も支持している。
 ロシアと国境を接する国にとって中立はあり得ず、「グレーゾーン(あいまいな領域)」は存在しない。だからこそウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を支持している。
 またエストニアの総人口の3・6%はウクライナからの避難民だ。彼らはエストニアの社会に包摂されており、国民と同じ権利や福利厚生、行政サービスを享受している。戦場から避難した子どもたちを学校で受け入れ、心理的なケアを行う支援プログラムも実施している。
 経済制裁によって欧米各国などで凍結されたロシアの資産を活用する政策も、エストニアがけん引している。エストニア国会では関連法案が審議中だ。凍結資産の活用は前例がなく、エストニアがモデルケースとなることを目指している。
 今年は欧米で数多くの選挙が行われるが、各国の納税者たちは「破壊行為を続けるロシアが一円も支払わない中、いつまで自分たちが戦争のコストを負い続けることになるのか」との疑念を抱いている。
 欧州連合(EU)内では凍結資産の収益を活用する方向で総意が形成された。この点を巡り、日本はじめ先進7カ国(G7)とも政策論議を推進していきたい。(談)
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 MARGUS・TSAHKNA 1977年エストニア・タルトゥ生まれ。タルトゥ大、カナダのトロント大卒業後、地元の市議、国会議員を経て国防相などを歴任。2023年4月より現職。

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