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ウクライナ帰国者6割超 安全より家族、祖国愛 御殿場に移るも夫思い決断【ウクライナ侵攻】

 2022年2月から約2年にわたってロシアの侵攻にさらされ続けるウクライナから国外避難した市民の帰還が進んでいる。同国の民間調査団体によると、昨夏までに6割以上が帰国。「家族に会いたい」「自分だけ逃げていてはいけない」-。それぞれの願いや決意を胸に、安全な避難先での生活をやめ、戦争が続く故郷に戻った。

日本での思い出を振り返るマリナ・イバシェンコさん=1月20日、キーウ(共同)
日本での思い出を振り返るマリナ・イバシェンコさん=1月20日、キーウ(共同)

 「家族みんなで暮らしたかった」。マリナ・イバシェンコさん(46)は昨年11月、日本から首都キーウ(キエフ)近郊へ帰った。侵攻開始から3カ月後、戒厳令と総動員令のため出国できない夫(47)を残して東京へ避難。22年7月から御殿場市に住んだ。重度の脳性まひで車いすに乗り、素早く逃げられない長女マルタさん(22)のためでもあった。
 マルタさんは日本で初めて電動車いすに乗り、健常者らと踊る「車いすダンス」も体験。マリナさんにも親しい友人ができ、日本語で日常会話ができるようになった。
 穏やかな生活と住民の温かさが身に染みたが、戦争が長引くにつれて家族が欠ける寂しさが募った。「侵攻直後よりは安全」との認識も帰国の判断を後押ししたという。
 ウクライナ出身の有識者らによる「Vox Ukraine」のアンケートによると、昨年8月時点で、避難者の63%が帰国していた。複数回答の理由は「ホームシック」が最多で58%。「祖国愛」が51%、「家族、親族ら愛する人に会いたかったから」が41%、「避難している後ろめたさ」が20%などだった。
 衝動的に帰国を決めた人も多かったようだ。「私だけ安全で快適な暮らしをしていてはいけない」。知人を頼り侵攻直後からドイツ・ベルリンなどに約2カ月間避難したマリア・チェルノバさん(22)は、ある夜にいてもたってもいられなくなり、帰国を決めた。ベルリンが好きになり、働ける見通しもついていたが、手にしたスマートフォンですぐ列車の切符を購入した。
 マリアさんは今、「ウクライナにとどまることがロシアへの抵抗になる」と信じている。キーウで、避難前の職場に復帰した。空襲警報が鳴っても、地下シェルターで仕事を続ける。もう国外避難するつもりはない。
 (キーウ共同)

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