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テロに乗じ侵攻正当化か ロシア、ウクライナに責任示唆 過激派問題対応苦慮

 モスクワ郊外で22日起きた銃乱射テロを巡り、ロシア側ではウクライナの関与を示唆するような言動が、プーチン大統領を筆頭に目立つ。ロシアは長年、イスラム過激派への対応に苦慮してきたが、今回は責任がウクライナにあるかのように見せることで侵攻を正当化する狙いが透ける。
23日、銃乱射があったモスクワ郊外の「クロッカス・シティ・ホール」で、犠牲者を悼む花を手向ける人(ゲッティ=共同)
 白いルノーの車で、ウクライナへ逃げようとしていた-。モスクワから約340キロ離れたブリャンスク州で外国籍の実行犯が拘束された際の様子を、ロシアの下院議員が語った。同州はウクライナと国境を接する。

 ▽痕跡 
 プーチン氏はテロの3日前にも連邦保安局(FSB)幹部との会議で、ロシア国内への越境攻撃を強めるウクライナが「テロリストの戦術」に移行してきていると強調。ロシアの独立メディア「メドゥーザ」は23日、国営報道機関の情報筋の話として、政権寄りのメディアに対し今回のテロで「ウクライナの痕跡」を強調して報じるよう指示が出ていたと伝えた。
ISホラサン州の勢力地域とロシア
 英BBC放送によると、ロシアの民放NTVは事件後、ウクライナのダニロフ国家安全保障・国防会議書記が関与を認めたとする映像を報じた。BBCは、人工知能(AI)で作成した音声で本物そっくりに仕立て上げた「ディープフェイク」だったと分析している。

 ▽温床
 2002年のモスクワの劇場占拠、04年のベスランの学校占拠など、イスラム教徒のチェチェン独立派らによる大規模テロが起きてきたロシア。だが今回のテロの遠因ともいえるのが、米軍撤退で力の空白が生じたアフガニスタン情勢だ。
 犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)系勢力の「ISホラサン州」は、米軍が21年8月にアフガンから撤退した際に、首都カブールの空港周辺で自爆テロを決行し、米兵13人を含む180人以上を殺害。22年9月にはカブールのロシア大使館への攻撃で6人が死亡し、イラン南東部で今年1月に約90人が犠牲となった自爆テロにも関与したとみられている。「テロの温床化」が進むアフガンを象徴する存在だ。
モスクワのコンサートホールでの銃乱射テロの実行犯が、逃走に使った車=23日、ロシア西部ブリャンスク州(Ostorozhno Novosti提供・ロイター=共同)
 米軍は01年9月の米中枢同時テロをきっかけにアフガン駐留を開始したが、テロを根絶し、民主主義を根付かせようとする目的は頓挫。バイデン政権は撤退が拙速だったと国内外から批判を浴びる。ウクライナ情勢を巡り対立が深まっている米ロ両国だが、対テロでは「共通の敵」に悩まされている。
 (キーウ、ワシントン共同)

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