テーマ : ウクライナ侵攻

米国 政権 支援継続で苦境【ウクライナ 3年目の侵攻と世界①】

 バイデン米政権がウクライナ支援継続で苦境に陥っている。議会の与野党対立で予算審議が停滞し、武器供与の発表は昨年末で中断。バイデン大統領は支援の重要性を訴えるが、11月の大統領選で再対決が見込まれるトランプ前大統領は「米国第一主義」を掲げ、支援に消極的だ。選挙結果が戦争の行方を左右する。

米ホワイトハウスで記者会見するバイデン大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=2023年12月(ロイター=共同)
米ホワイトハウスで記者会見するバイデン大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=2023年12月(ロイター=共同)
ウクライナを巡るバイデン氏とトランプ氏の発言
ウクライナを巡るバイデン氏とトランプ氏の発言
米ホワイトハウスで記者会見するバイデン大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=2023年12月(ロイター=共同)
ウクライナを巡るバイデン氏とトランプ氏の発言


 ■危機感
 「予算案に反対すればロシアのプーチン大統領の術中にはまることになる」。バイデン氏は2月15日、X(旧ツイッター)への投稿で、ウクライナ支援を含む緊急予算案の即時承認を議会に訴えた。
 新たな軍事支援が届かなければ、ウクライナは不足する弾薬と手薄な防空システムで防戦を余儀なくされる。ウクライナが敗北すれば、プーチン氏は必ず北大西洋条約機構(NATO)の国々に手を伸ばす-。バイデン氏の危機感は強い。
 議会調査局によると、米政府は2022年2月の侵攻開始以降、ウクライナに対し442億ドル(約6兆6千億円)の軍事支援を拠出。直接的な財政援助は229億ドル、人道支援は23億ドルに上る。
 欧州に米兵約2万人を追加配備するなどし、NATOと共にロシアをけん制。多くのロシア人や企業を制裁対象に指定し、ロシア産原油の上限価格を設定するなど経済圧力も強めてきた。

 ■戦略転換
 しかしロシアを締め付け、莫大(ばくだい)な資金や武器をつぎ込んでも、戦争は終わりが見えない。調査機関ピュー・リサーチ・センターが昨年12月に発表した世論調査によると、ウクライナ支援が「多すぎる」との回答は31%。共和党支持者では48%に上り、支援疲れを印象づけた。
 昨年10月、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まると、世界の関心は中東に移った。バイデン政権もイスラエルへの軍事支援に加え、イラクやシリアで駐留米軍を攻撃する親イラン組織への報復攻撃を重ねる。
 米政権内では、ウクライナの戦況が膠着(こうちゃく)し、短期でロシアに勝利するのは困難との見方が広がる。今年1月末には、領土奪還よりもウクライナの長期的な戦力強化や経済基盤立て直しに重点を置く戦略への転換を検討していると米紙が報じた。

 ■再登板
 「米国を再び偉大に」がスローガンのトランプ氏の存在も外交方針を揺さぶる。対外支援より南部の国境管理や不法移民対策など国内問題を重視する姿勢が鮮明だ。再登板すれば「ウクライナでの戦争を24時間で終わらせる」と豪語。軍事費を適切に負担しないNATO加盟国は守らないとの趣旨の発言を繰り返し、対外支援も融資にすべきだと主張する。
 バイデン政権はウクライナ防衛支援で約50カ国が参加する関係国会合を実施し、欧州やインド太平洋の同盟国と連携を深めてきた。トランプ氏が返り咲けば、こうした国際協調も脆弱(ぜいじゃく)になりかねない。
 (ワシントン共同)
      ◇      
 ロシアによるウクライナ侵攻は3年目に突入した。世界の主要国・地域はどのように向き合うのか。各地から報告する。

いい茶0

ウクライナ侵攻の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞