テーマ : ウクライナ侵攻

中国 ロシアと戦略連携強化【ウクライナ 3年目の侵攻と世界②】

 ロシアのウクライナ侵攻後、中国の習近平指導部はロシアとの関係を戦略的に強化した。米国がウクライナと中東の二正面の対応を迫られる中、米国主導の国際秩序に不満を持つロシアと共闘し中国中心の対抗軸形成を狙う。台湾統一を念頭に「ロシアの失敗」(中国軍関係筋)から教訓を蓄積する一方、急接近するロシアと北朝鮮の軍事協力の動向を注視する。

会談で握手するロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席=2023年10月、北京の人民大会堂(タス=共同)
会談で握手するロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席=2023年10月、北京の人民大会堂(タス=共同)
中国とロシアの貿易総額
中国とロシアの貿易総額
会談で握手するロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席=2023年10月、北京の人民大会堂(タス=共同)
中国とロシアの貿易総額


 ■蜜月
 「両国は密接に協力し、国家主権を防衛すべきだ」。2月8日の中ロ首脳による電話会談。習国家主席が米国を念頭に「外部勢力による内政干渉に断固反対しなければならない」と呼びかけると、プーチン大統領は「台湾問題で中国を挑発するいかなる行為にも反対する」と応じた。
 冷戦時代に中ソ対立を経験した両国は「必要な時に利用し合う関係」(中国人学者)だったが、米国との対立をにらみ、「全面的戦略協力パートナーシップ関係」を構築した。“準同盟”とも指摘され、習氏が国家主席に就任した2013年以降、プーチン氏との会談は40回を超える。
 中国は侵攻後、米欧の制裁に苦しむロシアからの原油、天然ガスの輸入を拡大させ戦費調達を事実上支援。23年の中ロ貿易総額は過去最高の2401億ドル(約36兆円)に達した。

 ■距離
 ただ中国はウクライナ問題では対外的に中立をアピールし、隣国の主権国家を侵略したロシアへの非難を避けつつ、微妙に距離を置く。
 昨年2月には自国の立場を示す文書を発表し、当事国の歩み寄りと停戦を訴えた。ロシアへの制裁停止を米欧に求める一方で「核兵器は使ってはならない」とも明言し、ウクライナを核で威嚇するロシアをけん制した。
 中国軍関係筋はロシアとの共闘は戦略上必要だが、ロシア兵による民間人殺害や原発攻撃は「人道上問題でまずかった」と本音を漏らす。「ロシアは国際秩序の破壊者だが、中国は更新しようとしている」

 ■変数
 米国の情報収集能力、米欧が提供する武器の種類、制裁の影響-。1979年の中越戦争を最後に大規模な戦闘を経験していない中国は、ウクライナの戦況から「台湾侵攻時の参考になる教訓」(軍事専門家)を得たとみられている。
 中国は今年で国交樹立75年を迎えるロシアとの連携を軸にグローバルサウス(新興・途上国)への浸透を図る構えだ。だが、足元ではロ朝接近という「変数」(外交筋)も。ロシアが軍事技術を供与し、北朝鮮の核・ミサイル開発が加速する事態が生じれば北東アジアの安全保障に影響する。
 同外交筋は「中国はウクライナ危機が朝鮮半島に飛び火し、複雑化するのを警戒している」と分析した。
 (北京共同)

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