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ウクライナ、抗戦継続を7割支持 24日で侵攻2年、長期化必至

 【キーウ共同】ロシアによるウクライナ侵攻は24日、開始から2年を迎える。全土奪還を掲げるウクライナ国民の7割以上が依然として戦争継続に賛成する。国内で高い支持を集めるロシアのプーチン大統領に譲歩の余地はなく、長期化は必至だ。犠牲が拡大し、社会に疲労が蓄積するウクライナは難局が続く。

キーウの集合住宅に描かれた壁画。首都防衛の兵士らをたたえた=1日(AP=共同)
キーウの集合住宅に描かれた壁画。首都防衛の兵士らをたたえた=1日(AP=共同)
ロシア・ウラジオストクにあるウクライナ侵攻作戦の戦死者らの墓=1月30日(共同)
ロシア・ウラジオストクにあるウクライナ侵攻作戦の戦死者らの墓=1月30日(共同)
キーウの集合住宅に描かれた壁画。首都防衛の兵士らをたたえた=1日(AP=共同)
ロシア・ウラジオストクにあるウクライナ侵攻作戦の戦死者らの墓=1月30日(共同)

 キーウ国際社会学研究所が今月上旬、ウクライナで約1200人を対象に実施した世論調査によると、侵攻開始当初の2022年5月と同水準の73%が「必要な限り戦争に耐える」と回答した。ロシアが併合した南部クリミア半島や東部ドンバス地方(ドネツク州とルガンスク州)を含む全土を奪還して終戦すると信じる人は65%に上った。
 東部ハリコフ州や南部ヘルソンを相次いで奪還した軍の躍進は22年秋以降に停滞。昨年の反転攻勢は失敗とされ、社会に落胆が広がった。ゼレンスキー大統領は欧米の支援強化に奔走するが、求心力は下り坂だ。
 占領地の固定化につながり、再侵攻の脅威を残す即時停戦を望む声は圧倒的に少ないが、一部の領土損失を見込む人も侵攻当初より7ポイント増の32%となった。
 一方、厳しい言論統制下にあるロシアでは、ウクライナでの「特別軍事作戦」に調査上、高い支持が続いている。ロシアの独立系世論調査機関レバダ・センターが今月発表した世論調査によると77%が支持。「ロシアの勝利で終わる」との回答も77%だった。
 ただ和平交渉を求める人も52%に上り、作戦継続を支持した人の40%を上回った。兵士の家族らから反戦の声も上がっており、長期化による疲労感を反映した形。ただプーチン政権が交渉で譲歩する気配はない。
 調査は昨年12月と先月、それぞれ約1600人を対象に行われた。

 多数の兵士が遠く離れた戦地に赴いたロシア極東ウラジオストクでは、戦死者の墓が増え続けている。侵攻継続に固執するプーチン政権の強権に翻弄(ほんろう)される親族らは戦争に意味を見いだせず、静かに不満を募らせる。

残された妻子
 「帰還兵が墓地に集まっては酒盛りし、叫び声を上げる。戦場が精神をむしばんだのは明らかだ」。海を望む町外れの丘にある広大な墓地を1月末に訪ねると、管理人のビクトリアさん(49)が打ち明けた。
 戦死者用の区画には、土盛りした簡易な墓が整然と遠くまで並び、国旗や所属部隊の旗が風になびく。中央アジア移民の男性3人がスコップを手に急ピッチで墓穴を掘り進める中、霊きゅう車の車列が墓地内の葬儀場へ向かう。ウラジオストクに司令部を置く太平洋艦隊の紋章と若い兵士2人の遺影を掲げていた。
 ビクトリアさんのおい(35)は侵攻前から契約軍人で出征した。ロシアが占領するウクライナ東部のドネツクで昨年、狙撃手によるとみられる銃弾を背中に受けて死亡。年明けに約7千キロ離れた現地から遺体が戻り、近郊の町で葬儀が営まれた。「親族は戦場に行ってほしくなかった。早期退役を望んでいたのに」。妻と子2人が残された。
 政権が作戦参加と引き換えに重大犯罪者に与える恩赦も批判の的だ。女性を強姦(ごうかん)の上で殺害し懲役24年の判決で服役中の男が昨年10月に保釈されて前線に赴き、今年1月に帰還し恩赦された。服役はわずか1年。被害者の夫は怒りの声を上げ、ビクトリアさんも「法の軽視だ」と訴える。収賄罪で昨年、懲役12年判決を受けた前市長も服役中に作戦に志願した。

経済も厳しく
 港の太平洋艦隊の埠頭(ふとう)を見下ろす高台では、巨大文化施設の建設を中国企業が請け負う。政権は文化や観光業の発展を宣伝し、戦時下の社会で安定を演出する。ただ地元弁護士は「制裁で西側企業の撤退が相次ぎ、友好国の投資も難しい。経済は厳しい」と明かす。
 鮮魚店員ラリサさん(35)は、太平洋艦隊士官の夫(41)が作戦に参加し、砲弾の破片で負傷、左腕と耳に障害を負い除隊した。夫の親友は妻子を残して戦死。高給目当てで軍に志願した弟(25)と動員されたいとこ(50)は今も前線にいる。
 弟からは公式に発表されない前線の実情も聞く。10代の息子がいるが「娘の方が良かった。戦地で失う心配がない。早期終結を願うが、長引くだろう」と嘆いた。

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