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【米国のウクライナ支援】共和が予算阻止、枯渇迫る 国境警備優先、戦局影響も

 米国の対ウクライナ軍事支援予算が年末までに枯渇する可能性が高まっている。野党共和党の一部が不法移民対策を声高に求め、米南部の国境警備強化を優先するよう主張して予算確保を阻止している。バイデン大統領は12日、訪米中のゼレンスキー大統領と会談。ウクライナが頼みの綱とする支援の重要性を訴えるが、滞れば戦局に甚大な影響を及ぼす。

11日、ワシントンの国防大で演説するウクライナのゼレンスキー大統領(ウクライナ大統領府提供、ゲッティ=共同)
11日、ワシントンの国防大で演説するウクライナのゼレンスキー大統領(ウクライナ大統領府提供、ゲッティ=共同)

 ▽譲れない一線
 「支援のコストが高いというなら、米国民の血の代償がいかに高くつくか考えてほしい」
 国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は8日、ロシアのウクライナ侵攻が成功し、北大西洋条約機構(NATO)の領土も脅かせば米軍が出動する事態になると指摘。軍事支援よりはるかに多額の支出が必要になると警告し、予算案の早期可決を要請した。
 民主党のバイデン政権は10月に約610億ドル(約8兆8600億円)の緊急予算を議会に要求。一方、共和党の保守強硬派は、来年の大統領選の党候補指名争いで独走するトランプ前大統領の「米国第一主義」に呼応し、欧州の戦争への関与継続に反対する。
 トランプ氏支持を表明したジョンソン下院議長は、国境警備の抜本的な改革が「譲れない一線」だと政権に通告した。
 共和党議員が強気を崩さない背景には、世論の変化がある。調査機関ピュー・リサーチ・センターが8日発表した世論調査によると、共和党支持者の48%がウクライナを支援し過ぎだと答えた。侵攻長期化で支援疲れが広がっている。
 ▽ジレンマ
 来年の大統領選と同時に上下両院選も実施されるため、議員は有権者の声に一層敏感になる。議員が地元に戻る冬休みが近づく中、与野党の歩み寄りは難しい状況だ。
 ウクライナへの最大の軍事支援国である米国が揺らげば、欧州や日本との同盟の結束にもひびが入りかねない。再選を目指すバイデン氏はパレスチナ自治区ガザ情勢でもイスラエル寄りの姿勢を取り、欧州や日本との温度差がにじむ。
 バイデン氏は不法移民対策について「大幅な譲歩をする用意がある」と述べ、共和党の要求をくんで強化する考えを示した。亡命申請者の制限などを検討しているとされるが、人権問題を重視する民主党リベラル派は安易な妥協に批判的だ。対応次第で党内の突き上げが強まりかねず、ジレンマに陥っている。
 「自由に対する世界戦争を始めようとしているロシアを止めてみせる。ウクライナは最初の前線だ」。危機感に駆られるゼレンスキー氏は11日、ワシントンの国防大で講演。反転攻勢の今後の成功を約束し、支援継続を訴えた。(ワシントン共同=高木良平)

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