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「夫や息子守りたいだけ」 ロシア兵の妻ら 早期帰還訴える 各地で集会計画、当局警戒【ウクライナ侵攻】

 厳しい言論統制が続くロシアで、ウクライナ侵攻のためロシア軍に動員された兵士の妻や母親が早期帰還を訴える集会を開こうとする動きが出ている。昨年9月に発表され約30万人が対象となった部分動員から1年余り。治安当局は厭戦(えんせん)ムードの高まりを警戒し集会開催を禁じるが、侵攻長期化で死傷兵が増える中、早期帰還を求める声が広がる可能性がある。=関連記事2面へ

ロシア・サンクトペテルブルクで、動員された男性に別れを告げる家族=2022年10月(タス=共同)
ロシア・サンクトペテルブルクで、動員された男性に別れを告げる家族=2022年10月(タス=共同)

 「夫らは帰りたがっていて、何とかしてほしいと訴えている。私たちだけが頼りだ」。今月7日、モスクワで十月革命の記念日を祝う野党共産党の集会があり、動員兵帰還を求めるポスターを掲げた30代の女性が英BBCロシア語版に語った。1歳の娘を持つ別の女性(34)も独立系メディアに「衛生兵の夫は前線近くで2月以来、1日2~3時間の睡眠で働き続けて疲れ切っている」と訴えた。
 ロシアでは政権支持のイベントが開かれる一方で、動員兵の妻らが帰還を訴える集会の開催はモスクワやサンクトペテルブルク、シベリアの主要都市で禁止された。当局は新型コロナウイルス対策などを理由とするが、妻らの声を封じるのが狙いとみられる。1990年代のチェチェン紛争では兵士の母親団体が帰還運動に取り組み反戦デモが拡大した経緯がある。
 西シベリア・ノボシビルスクでは今月19日、妻らが計画した集会の代わりに当局者との会合が開かれた。動員に1年の期限を設けることや負傷兵の除隊を求めたが、参加者は「当局が耳を傾けると思わない」と話した。
 「祖国を守る仕事」。モスクワの街頭や地下鉄、テレビでは契約兵募集の広告が目立つ。プーチン政権は契約兵を増やす方針を掲げ、月額20万ルーブル(約34万円)以上の高給をうたう。追加動員の観測は消えないが、来年3月に大統領選を控え、通算5選を目指した立候補が確実視されるプーチン大統領が国民の反発覚悟で踏み切る可能性は低いとみられている。ただ兵員不足は深刻で、カルタポロフ下院国防委員長は、動員兵の帰還はウクライナでの作戦完了後になると発言した。
 主要メディアが帰還要求の動きを報じない中、情報統制が及ばない通信アプリ「テレグラム」のチャンネル「プーチ・ダモイ(家路)」は関連情報を発信している。反政府活動家ナワリヌイ氏支持者や外国の支援を受けていると中傷も受けるが、チャンネル側は「戦地の夫や息子を守りたいだけだと知ってほしい」と強調した。
 (共同)

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