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【ウクライナ支援】英国が武器供与で存在感 先駆者役、米独けん引

 英国がウクライナ軍事支援で存在感を増している。高性能ミサイルや主力戦車、戦闘機操縦士の訓練などウクライナが望む兵器や技術の供与を他国に先駆けて表明。核威嚇を続けるロシアを過度に刺激したくないと慎重姿勢の米国やドイツの背を押してきた。2020年の欧州連合(EU)離脱で陰る国際社会での影響力を高める狙いがあるとみられる。

スペイン・グラナダで会合前に話すウクライナのゼレンスキー大統領(左)とスナク英首相=10月5日(ゲッティ=共同)
スペイン・グラナダで会合前に話すウクライナのゼレンスキー大統領(左)とスナク英首相=10月5日(ゲッティ=共同)
英国の主力戦車「チャレンジャー2」=2022年9月(ゲッティ=共同)
英国の主力戦車「チャレンジャー2」=2022年9月(ゲッティ=共同)
英国のイラクでの作戦で、トーネード戦闘機への搭載準備中のストームシャドー=2003年3月(ロイター=共同)
英国のイラクでの作戦で、トーネード戦闘機への搭載準備中のストームシャドー=2003年3月(ロイター=共同)
ミサイル攻撃を受けて煙を上げるロシア黒海艦隊司令部の建物=9月、ウクライナ南部クリミア半島セバストポリ(タス=共同)
ミサイル攻撃を受けて煙を上げるロシア黒海艦隊司令部の建物=9月、ウクライナ南部クリミア半島セバストポリ(タス=共同)
英、米、独のウクライナへの主な武器支援(似顔 本間康司)
英、米、独のウクライナへの主な武器支援(似顔 本間康司)
スペイン・グラナダで会合前に話すウクライナのゼレンスキー大統領(左)とスナク英首相=10月5日(ゲッティ=共同)
英国の主力戦車「チャレンジャー2」=2022年9月(ゲッティ=共同)
英国のイラクでの作戦で、トーネード戦闘機への搭載準備中のストームシャドー=2003年3月(ロイター=共同)
ミサイル攻撃を受けて煙を上げるロシア黒海艦隊司令部の建物=9月、ウクライナ南部クリミア半島セバストポリ(タス=共同)
英、米、独のウクライナへの主な武器支援(似顔 本間康司)

 ▽虎の子兵器
 9月下旬の晴れた日。ロシアが併合したクリミア半島の軍港セバストポリで巨大な黒煙が上がった。ロシア黒海艦隊司令部にミサイルが命中した瞬間だった。直後にもう1発。黒煙はさらに広がり、爆発音が響いた。
 ウクライナ軍当局者は英国から供与された巡航ミサイル「ストームシャドー」を発射したと述べた。ステルス性に優れた射程250キロ超のミサイルで、空軍機に搭載し、安全な距離から敵を攻撃できる。ウクライナにとって「虎の子」兵器だ。
 ▽戦車も戦闘機も
 ドイツのキール世界経済研究所によると、英国の7月までのウクライナ軍事支援額は米独に次ぐ3位。スナク首相は今年2月の記者会見で「英国が長射程兵器を供与する最初の国になる」と語り、各国で大きく報じられた。スナク氏はその1カ月前、英主力戦車「チャレンジャー2」の供与を発表したばかりだった。
 米独は強力な兵器提供に消極的だが、スナク氏の表明後、他の欧州諸国にも押される形で、それぞれの主力戦車「エーブラムス」「レオパルト2」の供与に踏み切った。
 スナク氏はウクライナが熱望する米国製F16戦闘機の供与に向けた環境整備でも動いた。5月、操縦士の訓練を早期に始める用意があると述べ、F16を保有するオランダと戦闘機供与のための「戦闘機連合」創設で協力すると明らかにした。バイデン米大統領は間もなく、欧州同盟国によるF16の供与容認に転じた。
 ▽「ほら大丈夫」
 キャメロン英外相は今月、ウクライナを訪れ「外交や経済、軍事面でウクライナを支え続ける」と訴えた。米国もこの秋、長射程の地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」を供与し、すぐに実戦投入された。最大射程165キロの型で、ウクライナの期待にようやく応えた形だ。
 米外交筋は英国が国際社会で「新たな立ち位置を見つけた」と指摘。ロシアの軍事に詳しい東京大の小泉悠専任講師は英国について「新型兵器の供与に弾みをつけている。周囲が恐れるレッドラインを自ら踏み『ほら大丈夫だよ』と言ってみせる役回りを演じているようだ」と話している。(共同=菅野麻衣子)

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