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重大汚職容疑で70人手配 ウクライナ、中銀前総裁ら

 【キーウ共同】重大汚職を捜査するウクライナ国家汚職対策局(NABU)が昨年2月のロシアの侵攻後、国立銀行(中央銀行)前総裁や元副検事総長ら71人を指名手配したことが18日、NABUへの取材で分かった。容疑者は大半が欧州など国外に逃れたとみられるが、居場所を特定しても戦時を理由に相手国に身柄引き渡しを拒まれるケースが大半。侵攻後に実現したのは3件にとどまり、侵攻が捜査の壁になっている。
 ウクライナでは汚職が深刻で、目標とする欧州連合(EU)加盟には撲滅が求められている。ウクライナは対策を強化している。
 指名手配されたのは、昨年10月まで中銀総裁だったキリロ・シェフチェンコ氏(51)や国有財産基金の元長官ドミトロ・センニチェンコ氏(49)、元副検事総長のミコラ・ゲラシミュク氏(54)ら。元オデッサ市長や最高会議(議会)の議員数人も含まれる。
 身柄引き渡しに応じたのはドイツ、スロバキア、リトアニアの3カ国。NABUのリセンコ副長官は「戦時は容疑者の安全を保証できないとの理由で、引き渡し拒否が相次いでいる」と述べた。
 シェフチェンコ氏は別の国有銀行のトップなどを歴任した2014~20年に仲介業者を装った法人や個人との架空の取引契約を通じ、銀行の資産のうち2億600万フリブナ(約8億5700万円)を不法に支出させた疑いがある。
 シェフチェンコ氏は共同通信の書面インタビューに応じ、ウィーンに滞在中と説明。「市場原理に基づく取引で違法性はない。中銀トップに圧力をかけるための捜査だ」と容疑を全面否定した。
 ウクライナでは侵攻後も国防省を巡る贈収賄事件や徴兵逃れと関連した賄賂の授受が明るみに出た。9月にはゼレンスキー大統領の初当選を後押しした有力者で、オリガルヒ(新興財閥)のコロモイスキー氏が巨額の資金洗浄容疑で拘束された。
 EUはウクライナに対し、政府高官への捜査やオリガルヒの取り締まり強化を求めている。

 ウクライナと汚職 ウクライナでは政治腐敗が深刻で、2015年以降、大統領や閣僚、国家機関の長らが関与した汚職事件を専門に扱う国家汚職対策局(NABU)のほか、NABUの案件を扱う検察と裁判所が創設された。ゼレンスキー大統領は19年の選挙で汚職撲滅を公約の柱の一つに掲げて初当選したが、改革は既得権益者の抵抗で難航。世界の汚職状況を監視するNGOが今年1月に公表した汚職指数では、ウクライナは「清潔度」で180カ国・地域中、116位と低調だった。ロシアは137位。(キーウ共同)

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