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外国人材に「選ばれる県」へ サポートセンター開設 受け入れ環境整備 膨らむ介護ニーズに対応【静岡県24年度予算案】

 介護現場で人手不足が深刻化する中、外国人の受け入れが拡大している。静岡県は13日発表した2024年度当初予算案に「国際介護人材サポートセンター(仮称)」の開設を盛り込み、人材確保対策を強化する方針を打ち出した。膨らみ続ける介護需要の担い手として期待が高まる一方、人材の奪い合いは国境や業種を越えて激しさを増す。介護サービスを持続させていくためにも受け入れ環境のさらなる充実が求められる。

利用者に笑顔で接するフェブリ・ヨランダさん。介護現場で外国人材の活躍の場が広がっている=2月上旬、沼津市のみはるの丘浮島
利用者に笑顔で接するフェブリ・ヨランダさん。介護現場で外国人材の活躍の場が広がっている=2月上旬、沼津市のみはるの丘浮島

 「お元気ですか」。沼津市の特別養護老人ホームみはるの丘浮島で、インドネシア出身のフェブリ・ヨランダさん(26)が打ち解けた様子で利用者に話しかけた。経済連携協定(EPA)の介護福祉士候補者として働き始めて3年目。日本語や国家試験の勉強をしながら、食事や入浴介助をこなす。「『ありがとう』という言葉がうれしい」とやりがいを口にする。
 みはるの丘浮島は19年から外国人職員を受け入れ、現在は7人が働く。長田直樹施設長(56)は「欠かせない存在。介護業界は人がいないと成り立たず、働きやすい職場環境をつくっていきたい」と話す。
 県内で働く外国人介護人材は増え続けている。県の最新の調査では初めて千人を突破し、雇用に前向きな施設も4割に上った。ただ、資金やノウハウの不足で雇用に二の足を踏む施設も散見される。
 県が開設するサポートセンターは雇用や生活などに関する相談にワンストップで対応し、人材確保と定着を一体的に支援する。外国人を雇用した施設に対して最大20万円を助成する取り組みも始める。
 県の推計では、団塊の世代が全て後期高齢者となる25年に県内で5766人の介護職員が不足する。加藤克寿介護保険課長は「国内の人材だけでは担い手が足りないことは目に見えている。外国人を受け入れる事業所の裾野を広げることが必要」と語る。
 もっとも、人手不足は全国共通の課題。海外に目を向ければ先進国を中心に介護ニーズが膨らむ。静岡市内の社会福祉法人は「円安で採用が難しくなった」と明かす。来日外国人は今後も増える見込みだが、現地の経済成長もあって日本で働く魅力は薄れつつある。
 外国人介護人材に詳しい県立大経営情報学部の天野ゆかり講師は「『選ばれる県』になるためには、日本語教育や定住に向けたサポートなど、外国人が住民として安心して暮らせる環境を整えていくことが必要」と話す。自力で採用が難しい小規模事業所への手厚い支援とともに、働き手が日本人か外国人かを問わず魅力的な就労環境をつくっていくことが欠かせないと指摘した。
 (政治部・森田憲吾)

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